急いで動いても仕方ないと、ミコトの提案の通りスモーカー(たしぎ)とたしぎ(スモーカー)は休む事になった。
「おいたしぎ。」
「はい?」
「お前の体だと疲れが強いんだが……お前ちゃんと鍛えてるのか?」
「き、鍛えてますよ!!ちゃんと毎日!!スモーカーさんと一緒にしないでください!!」
既に廃材になっているモノを椅子にして座っていたたしぎ(スモーカー)は休もうとしたが、体が異常に重たいのに眉間にシワを寄せる。
手を握ったり閉じたりを繰り返した後、ダルさに更に機嫌を悪くさせながらこの体の主であり自分の体に入り込んでいるたしぎを睨み声を低くする。
ギロリと睨まれ疑われたたしぎは必死に首を振って鍛えていると断言した。
その断言が効いているかは不明だが睨みは和らいだが、睨み自体は止まない。
たしぎはそっと目を逸らすしかなかった。
「…………」
たしぎに睨まれそっと目をそらすスモーカーの光景はとてもシュールだった。
ミコトは冷や汗をかき目をそらすスモーカー(たしぎ)の姿と、顔が整っているためギロリと睨む迫力が半端ないたしぎ(スモーカー)の姿を交互に見たあと、何かを閃いたように嬉しそうに笑い早速行動に移そうとした。
スモーカー(たしぎ)は気まずげにしながらも体を起こし傍にあった氷りつき転がっている大きな廃材に腰を降ろす。
なぜかミコトもスモーカー(たしぎ)に続いてスモーカー(たしぎ)の隣に座った。
スモーカー(たしぎ)は必死にたしぎ(スモーカー)から視線を逸らすことに専念していたのだが、不意にミコトがピタリとくっ付いて座ってきた事に心臓もないのにドキリとさせ、頬を染める。
ミコトは夫の姿だが中身が違うだけでこうも反応が違う事に面白そうに目をほそめ、そしてたしぎのその反応が可愛くて今度はコテンと肩に頭を預けてみた。
コテンと頭を預けてみたら案の定スモーカー(たしぎ)はビクリと体を揺らした。
ミコトの予想通りの反応にミコトは機嫌を良くする。
「……おい…」
今度は擦り寄ればどうなるのだろうか…ミコトにいつしか悪戯心が生まれてしまう。
すり、と一度擦り寄ってみれば『うひゃァっ!』とスモーカーの中にいるたしぎが良く分からない声を零す。
その声は当然体の持ち主であるスモーカーの声で、その声は施設に響いていた。
エコーも追加された自分の情けない声にスモーカーは顔を俯かせ、声を低くさせる。
たしぎでも中身がスモーカーでは恐ろしく聞こえ、怒りのためかたしぎの体は震えていた。
周りの海兵達はそのスモーカーから発せられる絶対零度の恐怖から傍にいた者同士くっついていた。
たしぎ(スモーカー)は俯かせていた顔を上げ、先ほどの睨み以上の睨みをミコトへと向ける。
しかし傍にいたスモーカー(たしぎ)も巻き込まれ見たことのない睨みにビクリと怯えていたが、睨まれた張本人であるミコトは怖がる様子を見せずスモーカー(たしぎ)の肩に頭を預けたまま笑みを深めていた。
そんなミコトにやはりスモーカーは苛立たせる。
「たしぎで遊んでんじゃねェよ」
「あら、嫉妬ですの?」
「違う!中身がおれじゃねェからって色仕掛けすんなって話だ!!」
「あら…あらあらあら…まあ、そうだったの…」
どう見ても夫に甘える幼な妻の光景で、美女に甘えられるスモーカー(しかし中身は女)は男達にとって嫉妬の対象にしかならない。
しかしスモーカー(しかし体は女)からしたらとても鬱陶しい光景にしかならずイライラは高くなるばかり。
誰だって好きでもなく気に入らない女が自分にくっ付いているのを見ればいやだと思うだろう。
見当違いの言葉を零すミコトについに苛立ちも頂点に達し、思わずたしぎ(スモーカー)は怒鳴り声を上げた。
それもまた狭い場所ではエコーとなり次第に消えていくも、ミコトは怒鳴り声を上げ怒る夫(しかし体は女になりました)に怯えず、何故かビックリと目をまん丸にさせ、そして1人で納得したように頷き嬉しそうに微笑む。
そして嬉しそうに笑みを浮かべながらスモーカー(たしぎ)の傍から離れたしぎ(スモーカー)の隣に移動する。
「もう、あなたったらそうならそうと言ってくださればよろしいのに…」
「……何がだ…というかこっちくんな。」
「あら、だってご自分に嫉妬なさっていたのでしょう?」
「
どうしてそうなった!!?」
「中身がご自分でないから色仕掛けするなって…そういう意味でございましょう?」
「違う!!!」
自分の隣に移動したミコトはスモーカー(たしぎ)にしたように寄りかかってきた。
しかもたしぎ(スモーカー)の腕に絡みスモーカー(たしぎ)の時より密着していた。
甘えた声もプラスされ、海兵達からは羨ましそうに、そして、何故かスモーカーの中にいるたしぎも羨ましそうに上司を見ていた。
その視線もまた苛立たせる要因でもある。
たしぎ(スモーカー)は苛立つ感情そのままミコトの腕を振り払いミコトから離れる。
自分から離れる夫(体は女)にミコトはムスッと小さく頬を膨らませ、その愛らしさに海兵達の頬はあっと言う間に赤く染まる。
そしてミコトはまたスモーカー(たしぎ)のもとに戻るのだが…何故か隣ではなくスモーカー(たしぎ)の膝の上に座った。
「ミコトさ、ささ…さん!!?」
「な…、〜〜ッッ!!?」
「ふーんだ。あなたがそうならわたくしだって考えがありますわ。―――ねぇ、たしぎ…わたくしとの子供がほしくなくって?」
「こ…ッ!ここここ…こ、こ…子供ぉぉぉ!!!?」
「てめえええええ!!!黒蝶ォォォ!!!!!」
「こ、ここ子供なんて!!!は、はや…早すぎです!!!だって私まだスモーカーさんになって1日も経ってないんですよ!?そ、そりゃ…ミコトさんとの子供は作りたいと思いますけど……、…で、でも…でも!!ミコトさんが望むなら…!私だって男です!!!頑張ります!」
「やめろ!!!やめろ!頑張るんじゃねェ!!それだけはやめろ!!!いいか!お前は今!体は男だが中身は女なんだぞ!!元々の性別は女だ!!!それにその体はおれなんだぞ!?おれだぞ!?おれ!!!よく考えてみろ!!!おれなんだぞ!?」
「大丈夫です!スモーカーさん!!私たしぎ!まだ男になって間もないですが!ミコトさんを幸せにしてみせます!!!」
「いや、だから…!!」
「安心してください…最初は男性の体に戸惑うと思うんですけど…きっと物にしてミコトさんを満足させてみせます!!!」
「何をだ!!何を満足させる気だ!!もういい加減にしろお前ら!!!遊んでいる暇なんてないんだぞ!!!」
スモーカー(たしぎ)の膝の上に座ったミコトはスモーカー(たしぎ)の首に腕を回し先程より密着する。
ミコトの柔らかで豊満な胸が自分の体に触れ、スモーカー(たしぎ)の中で何かがプツリと切れる音が聞こえた。
スモーカー(たしぎ)はミコトの腰に腕を回し、お姫様抱きのように更に密着させ抱きしめる。
ミコトはスモーカー(たしぎ)の行動に予想してはいたが、ここまで力強く抱きしめてくることが予想外だったのか目を見張りスモーカー(たしぎ)を見つめる。
ミコトは半分本気、半分冗談で、子作りをしようとたしぎに言った。
真面目なたしぎが本気で自分の言葉を受け取るわけがないと思い、しかし半分は抵抗をし続けるスモーカーの中身が代わり簡単に手懐けるたしぎを落とした方がいいという計算もあった。
中身はどうであれ、どうせ体はスモーカー本人なのだから、子供はスモーカーの遺伝子を受け継いでいるのは変わらない。
どちらかと言えば中身がたしぎの方が都合がいい。
しかしたしぎの反応はミコトの予想に反して本気で頷き、受け入れた。
更に抱きしめる力を強め、真剣な表情で怒り狂うたしぎ(スモーカー)に告げるスモーカー(たしぎ)の表情にミコトは思わずドキリとさせてしまう。
胸が高まったのを感じた瞬間顔が熱くなるのを感じ、それを隠すためミコトはスモーカー(たしぎ)の首に顔を埋めて赤い顔を隠す。
それにたしぎ(スモーカー)は悲鳴を上げたが、今のミコトにその悲鳴は届かない。
68 / 274
← | top | back | →
しおりを挟む