ドフラミンゴとの話はそれから暫く続いた。
先ほどの用件の事もありミコトはあまりいい気持ちでドフラミンゴと会話していたわけではないが、表向きは平常心を保っていた。
「お待たせいたしました」
ドフラミンゴが電伝虫を切り、自分の持っている電伝虫が眠ったのを見てミコトは預かっていた電伝虫をモネに返した。
ずっとドフラミンゴとミコトの話が終わるまで黙っていたモネは差し出された電伝虫を受け取る。
「…あなた、何故若様の誘いに乗らないの?」
「ならこちらもお聞きしますが…なぜ、わたくしがドフラミンゴの誘いに乗らなければならないのかしら?"海賊"の後ろ盾を大将が必要だと思うなどありえない」
モネは電伝虫をしまいながらミコトに気になった事を聞いた。
モネが若様と呼んでいるドフラミンゴはミコトに熱を上げている。
それはもう昔からの彼を知っている人間だったら信じられないと言わんばかりに。
ドフラミンゴの女遊びの酷さは知っているが(しかしだからといって咎める気はない)、本気で愛した女性が出来たことには驚きながらも安心もした。
ドレスローザにいる彼の部下達は誰もがドフラミンゴを『若』と呼び、慕い、見守ってきた。
女遊びだって上に立つ立場である彼の気が紛らわせれるならと誰もが見て見ぬふりをしてきたし、そもそも女遊びに眉を顰める人間などドフラミンゴの周りにはいない。
そんなドフラミンゴが本気で愛する女性が出来たと、全員が喜んだのだ。
しかしドフラミンゴに落とせない女はいないと誰もが思っていたのだが…そのドフラミンゴが愛した女であるミコトはドフラミンゴの口説きを全て撥ね退けてきた。
ドフラミンゴに靡かないミコトに驚きすぎてミコトに対する怒りさえ湧く事はなかった。
だからモネはミコトの印象がただの『絶世の美女』だったのが、『若様が口説いても落ちない信じられない女』という印象に変わった。
ミコトは海賊に寛大なところがある。
だから、海賊と海軍の壁など彼女にとったら薄いとばかりモネは勝手に思っていた。
そのため、ミコトから返ってきた拒絶の言葉にモネは無意識に眉間のシワを深める。
ミコトはそのモネの反応にドフラミンゴを貶されたと受け取ったと気づき笑みをそのままに謝る。
「ごめんなさい、言葉が乱暴すぎましたね……では、正直に答えましょう…あの方の誘いはわたくしにとっても勿体無いほどのお誘いですわ」
「ではなぜ?若様はあなたを本当に愛しているのに…あなたもそれを知っているんでしょう?」
「そうですね…冗談口調でもあの方の真っ直ぐな好意は届いておりますよ…ですが…わたくしは海賊とは決して…恋に落ちないと決めていますから」
「…?」
彼からの好意は正直女として嬉しい。
だが、ミコトは決してドフラミンゴと恋に落ちない。
それはミコトが海軍、ドフラミンゴが海賊だからなのもそうだが…ミコトはシャンクスと別れてから決めたのだ。
――もう、シャンクス以外の海賊とは恋をしない。
、と。
シャンクスとの恋はきっと忘れない。
忘れるほど彼との関係は浅くはなかった。
ミコトはきっとシャンクス以外の男を愛するだろう。
愛を与えられて絆されないほどミコトは冷めていない。
だが、それでも、シャンクスの存在はミコトの中に生き続ける。
それはシャンクスが幼い頃からミコトに掛けた魔法でもある。
その魔法の存在はミコトも知ってはいるが、どうしても自ら切り捨てることはできなかった。
シャンクスを捨てたのに。
シャンクス以外の男を選んだのは自分だというのに。
ミコトもシャンクスが自分以外を心から愛することはないと知っていた。
結局、2人はお互い似た者同士だったということだろう。
だからこそ、ミコトはもう海賊とは恋に落ちないと決めた。
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