「その心臓なくて平気なのかたしぎちゃん」
「ええ、不思議と…」
「大佐ちゃん接しづらい…」
ミコトはモネと話をし、そして少し落ち着いたのもあり怪しまれる前にスモーカー達のもとへと戻ってきた。
丁度心臓がない事を話していたのか、心臓がないというスモーカー(たしぎ)に海兵はそれでも平気なのかと聞いていた。
心臓がないのは不思議な感覚だが、そんなに違和感がない事を告げれば感心したように海兵は返事を返し、そして周りはスモーカーの姿なのに口調や態度が素直な事に違和感がありすぎていると若干スモーカー(たしぎ)と距離を置いていた。
「心臓を抜かれても生きているのは…悪魔の実の恐ろしさ故ですわね」
「!、ミコトさん!」
夫の部下達のやり取りをミコトは微笑ましそうに笑みを浮かべた。
弟とその幼馴染の仲間に骨だけでも生き返った人間もいるのをミコトは思い出しながら本当に悪魔の実の恐ろしさを実感した。
こちらに歩いてくるミコトにスモーカー(たしぎ)はちゃんと戻ってきたことに安堵し、笑みを浮かべるスモーカー(たしぎ)にミコトはまたドキリとさせてしまう。
「……たしぎ、あなたそういえば船の存在に気付かれまして?」
「ああ…ついでに言うとだな、おれはたしぎじゃねェ」
「ご、ごめんなさい…」
スモーカー(中身は同性)に微笑まれミコトは不意打ちを食らったようにときめいてしまった事に動揺した。
つい先ほどまでスモーカーをからかい相手でしか見ていなかったのに…何故か抱きしめられてから彼に対して胸の高まりが納まらないのだ。
そう、その感覚は……まるでシャンクスといた時のように。
だけど薄々感じていたミコトはまだ認めたくなくて気付かないふりをし、それを隠すようにミコトはサッとスモーカー(たしぎ)から目を逸らし姿が女のスモーカーへと咄嗟に問いかけた。
しかし動揺は意外にも隠し切れなかったようで、ミコトは中身が夫というのを知っていながら姿そのままの名を呼んでしまう。
それを指摘されてもミコトはいつものようにコロコロと笑い『あらごめんなさい?』とわざとを装う事は出来ず、思わず素で謝ってしまう。
いつもの様子とは違い困惑し間違えた事を照れているように自分から顔を逸らし素直に謝るミコトに違和感を感じ片眉を上げながらもたしぎ(スモーカー)はミコトの問いに頷いた。
「黒蝶、お前も見たのか…研究所の脇に隠してあった船を。」
「ええ…」
「その船に『CC』のマークが入ってた事は」
「見ました」
「え!?そんなのあったスか!?スモーカー中将!ミコト様!」
たしぎ(スモーカー)は口に咥えていた葉巻を吸い、息を吐くと共に煙を吐き出す。
体はたしぎなため、葉巻特有の味がどうも今日は美味しいとは思えずたしぎ(スモーカー)は無意識に眉を顰める。
ミコトは必死にボロを出さないよう装いながらたしぎ(スモーカー)との真面目な会話に落ち着きを取り戻す。
しかし2人の会話についていけない海兵達はまず、『CC』のマークよりも船が隠されていたことに驚きを見せる。
そんな部下達をよそにたしぎ(スモーカー)はまた葉巻を口に咥えた。
「以前、この島で使われていた物には全て『パンクハザード』という名前から取り、『PH』という文字が刻まれていたはずです………ハートの船長さんの裏に誰かが潜んでおられると考え…『CC』というイニシャルが誰か、というのなら……あなたも心当りあるはず…」
「ああ…"あいつ"がこの島にいるというのなら色々と頷ける部分がある!Dr.ベガパンクの元同僚、現在賞金首のマッドな野郎だ…!―――大量殺戮兵器の第一人者…!科学者"シーザー・クラウン"!あいつしかいねェ!!」
ミコトは『CC』というイニシャルの人物を知っている。
会った事はないが、以前ドフラミンゴに聞いたのだ。
その中でパンクハザードの事も知り、ミコトはあたかも資料で知りましたという顔で話を続けた。
そしてその人物の名前が丁度『CC』というイニシャルになるのだ。
シーザー・クラウン…『Caesar Clown』と書かれる彼のイニシャルは『CC』――船に書かれていたイニシャルと全く同じである。
ミコトは忌々しそうに呟くたしぎ(スモーカー)の答えに、くすりと笑みを深める。
「そういえば…」
やっと本題に入りミコトもいつもの調子に戻り胸の高まりも収まった頃、スモーカー(たしぎ)が思い出したようにポツリと呟いた。
その呟きを耳にしたミコト達は全員ポツリと呟いたスモーカー(たしぎ)へと視線を向ける。
スモーカー(たしぎ)は深刻の顔を浮かべ、言うか言わないか戸惑っているのか視線を泳がせていたが決意したように泳がせていた視線をミコトとたしぎ(スモーカー)へ向ける。
「私の記憶が確かなら近年…この辺りの海で子供たちの"誘拐事件"が多発していたハズです」
「誘拐事件〜〜!?」
「――そんなことより馴染めねェ!大佐ちゃん!!」
「仕方ないでしょ!?一旦慣れてください!」
思い出したのは子供の誘拐事件だという。
突然誘拐の話になり驚いたが、何よりやはり敬語で険しくない表情のスモーカーが慣れなくて困惑のざわめきが大きくなる。
こればかりは慣れてもらうしか仕方がないとスモーカーの体を借りてたしぎが突っ込んだ。
「おい、たしぎ…どういう事とだ?おれァ知らねェぞ、ガキの誘拐事件なんて…」
「前締めてください!スモーカーさんっ!!」
「こっちのオープンな大佐ちゃんは見た目がいいのに中身が恐ェ!!」
部下達の馴れ合いなどよそにスモーカー(たしぎ)からの情報にたしぎ(スモーカー)は反応した。
ミコトは突っ込む事はなかったが、たしぎの体を借りているスモーカーはたしぎの上の服全てのボタンを取ってしまい、肌があらわとなっている。
いつも上を肌蹴ているたしぎの体を借りているスモーカーからしたらボタン全てを閉じているたしぎの体はキツいのだろう。
しかも下着はキツかったからと引き千切ったというではないか。
「あなた…それは流石にたしぎが可哀想よ」
「あ?普通だろ?」
「ふっ!普通じゃありません!!!私が風邪引いちゃいます!!」
「「「突っ込むところそれなのかよ!スモーカー中将…!」」」
「スモーカーはおれだ!」
「「「あっ!そうだった!!」」」
それを聞いたスモーカーの体に入っているたしぎは顔をサーッ、と青くさせ、それには流石のミコトも同じ女として同情するしかなく、軽く夫を咎めるもたしぎ(スモーカー)は気にもしていない様子を見せる。
たしぎ本人は慌てて言い返すも突っ込みどころが少しズレているスモーカー(たしぎ)に思わず海兵達が突っ込んだ。
しかし見た目がどうもスモーカーなためまだ慣れない海兵達は見た目どおりの名前を言ってしまい、たしぎ(スモーカー)に怒られてしまった。
ミコトはもう全く締める気のない夫に諦めたのか軽く溜息をついた後適当な場所に座る。
ミコトが適当な場所に座り諦めたと察したたしぎ(スモーカー)は早速話を戻そうと本題に入った。
「…この海域じゃあ度々海難事故の報告を受けるくらいだ…―――だが確かに…ガキのよく死ぬ海だとは思っていた」
「あ〜〜、そういやそうだ!ガキはよく死ぬ!」
子供の誘拐事件はたしぎ(スモーカー)のところにも報告が来ていた。
しかし上司にあたるヴェルゴが『事件』を『事故』として処理していた為怪訝とさせつつも何も言わずにいたのだ。
当然たしぎ(スモーカー)はヴェルゴがちゃんとした捜査をして出した答えだと、この時は思っていたからだろう。
「実は通信部に出入りしてると『G−5』には子供誘拐の通報が多いんです…――でもそれが新聞の記事になる頃には海難事故や海賊事件、失踪事件に変わっていて…勿論…!!通報が早とちりだったという事でしょうけど…なにか……可能性はなくもないような…って…」
「言いにくそうだなたしぎ」
言いよどみながらもスモーカー(たしぎ)はずっと心に引っかかっていた事を口にする。
言葉にしてしまえばずっと言わずにいた不安が大きくなり、そして証拠もない言葉をスモーカーに聞かせてしまいもし本当に早とちりだったらどうしようとも思った。
不安気なスモーカー(たしぎ)にたしぎ(スモーカー)は目を細める。
「それがお前の読みならハッキリ言ってみろ!!!―――つまりさっきのガキ共の数を見て…誘拐の通報が真実だったんじゃねェかと考えた訳だな?誘拐犯がこの島にいるんじゃねェかと……―――だがもしそれが本当だった場合…!」
「…………」
さっきのガキ共、とはローと戦った時に現れた子供達のことである。
大きさはバラバラでその中には大人をも上回る巨人族らしい子供がいた。
ミコトは子供達の事は知らなかったが、誘拐されたであろうあの子供達がどんな事をされているのかは予想できていた。
過去、ミコトが海兵になる前にこの島で行われていた実験がミコトの脳裏に過ぎった。
というよりは、その実験しか子供達の大きさの理由とミコトの予想が合わなかった。
口を閉じるミコトなどよそに、スモーカー達は話を進めていく。
「世間に出回った記事がウソで…『G−5』内部の誰かがガキの誘拐事件をもみ消したってことになる…!」
「!?――じゃ…『G−5』の中に誘拐犯の手先がいんのか!?」
「おうおう!スモさん!!見くびって貰っちゃ困るぜ!?おれ達がいくら軍のはみ出し集団でも海兵として最低限のプライドはもってらァな!!!」
「黙れ!!!」
「ギャーー!!!やっぱ恐ェ!!!」
たしぎ(スモーカー)の言葉に流石のG−5も怒り心頭になる。
例え上司だとしても自分達を疑うのが心外だったらしい。
しかしその怒りも一喝され、怒りでブーブー言っていたG−5達はたしぎ(スモーカー)の一喝にビクリと体をびくつかせ降参したように両手を挙げた。
「最初からお前らみてェなバカ疑う価値もねェんだよ!!」
「ええ〜〜!!?」
「だがお前ら自身海軍に妙な夢は見るな!!」
確かに、乱暴者とは言え子供を誘拐して何かを企てるという頭脳が必要な計画などこのG−5達が出来るはずもない。
馬鹿なほど素直な彼らを誰も疑ってはいなかった。
「人間が徒党を組む以上この世に完璧な組織などねェと思え…!!思い込めば敵を見逃す!!見てくれにダマされるな!!」
「「「ハイ!大佐ちゃん!!!」」」
「………もういいお前ら」
「大佐私です!」
「そうだ!見てくれにダマされた!!」
言っている傍から見た目の名を呼び敬礼するG−5にたしぎ(スモーカー)は呆れてしまう。
大佐という地位は確かに見た目では当たっているが、肝心の中身は今中将の中にいるため、慌てて自分を指差し間違いを訂正する。
「スモーカーさんでも私…そこまでの自信は…」
「いいんだ、頭の隅に置いとく価値はある……どの道おれは『心臓』と『体』をローに抑えられちまってる…島から出るわけにはいかねェ……お前ら3分の1は船でこの事を通報しにいけ。」
「何言ってんだよー中将!軍艦はもうズタズタのバラバラに…」
「相手の船があると言ったろ……盗め」
「そうだ!その手があった!アンタ!!悪っ!!!」
誘拐話で忘れていたが、先ほどたしぎ(スモーカー)とミコトとの会話で相手の船の話題も出ていたのを思い出す。
海兵として咎められるであろう言葉をすんなりと呟くたしぎ(スモーカー)に海兵達はハッとさせた。
「慎重にな…――事態が大事になる前におれはてめェの心臓と体を奪い返し……この島の黒幕を暴いておく!!!」
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