ドゴン、と大きな音がその場に響き渡る。
その瞬間、子供達から悲鳴が上がった。
「さっき取ってきてくれるって言ったじゃんか!!!」
シンドは突然そう言ってなだめるルフィを殴り飛ばした。
巨人族にも劣らないその体は、腕力もあるのかルフィは簡単に吹き飛ばされてしまい、氷りついた廃材に叩きつけられる。
「ルフィ!!アスカ!!」
当然ルフィに肩を抱かれていたアスカも巻き込まれ、強い衝撃に一瞬息が止まった。
突然の攻撃、そして子供という油断もあってかアスカとルフィは受け身もとれず強く叩きつけられ雪の上に落ちる。
「わーーっ!!」
「シンド!やめてー!!」
「こんな乱暴なシンド見たことないよっ!!」
そんなに地上との距離がなかったのもあるが、雪がクッションとなり更なる怪我は避けられ、アスカとルフィはゆっくりと起き上がる。
シンドは暴れ始め、その辺に転がっていた大きな廃材を持ち上げ、投げる。
投げる標的はいないのか、取り合えず暴れているようだが、子供とは思えないその凶暴さと腕力、そして相手がたとえ暴れていても子供と言うのもありウソップ達は手も足も出せなかった。
「巨人族の子なら腕力もこのくらいあるだろ!!」
「だがここまでかァ!?」
「シンドは巨人族じゃないよ!!」
「え!?」
「おっきい子供もみんな違う!!この島に来た時は全員普通の大きさだったの!!」
「ねェ僕ら大きくなる病気なんじゃないの!?それ以外どこも悪くないよ!?」
体が大きいからてっきり、シンドや他の体の大きな子供達は巨人族の子供だと思っていた。
しかしまだ正常な子供達の言葉によれば、誘拐された子供他達の中で巨人族の血を引く子供は1人もおらず、更にはこの島に連れてこられ時間が長い子供ほど、体は大きいという。
その子供達の言葉にサンジ(チョッパー)は信じられないと言わんばかりに目を丸くさせた。
「普通の子供が巨人族の様になる病気なんてないよ!!でかい奴は始めからでかい!!…じゃあ…脳下垂体のホルモンが異常高進してるのは…元々じゃないんだ………――だったらこの子達は…"実験"されてる…!!!何がしたいんだ!!"M"っていうやつは!!!こんな幼い子供達をドラッグで抑えつけて…!!」
例え、巨人族の子供でも、普通の大きさから巨人族のような大きさに成長していく事も、巨人族のように大きくなる病気も、ない。
それは医師としてハッキリ言えた。
そして、同時にMという男のしている事が徐徐に分かってきた。
ハッキリした事はまだ分からないが、子供達はそのMという男に実験をさせられ、そして逃げ出さないように覚醒剤で縛り付けた。
医師として…人として…チョッパーはそのMが心から許すことができなかった。
「おい!やっていいか!?」
「ダメだ!ルフィ!どけ!!」
「ウソップ!傷つけないで!!」
「わァってら!バッキャロー!―――"必殺!爆睡星"!!!」
暴れ始めた子供達は手が負えなかった。
普通の大きさの子供なら、この人数なら押さえつけることは出来るがここまで大きな子供の場合、少人数でも手が焼けてしまう。
襲い掛かる子供達に手と手を握っていられるはずもなく、ルフィはアスカから手を離しグッと拳を握った。
それを見てウソップが止め、カブトを構える。
ウソップが子供達にカブトを向けたのを見てフランキー(ナミ)が慌てて止めたが、相手が子供というのを頭に入れているとウソップは攻撃性のない種を子供達に向けた。
眠くなる種のようで、あんなに暴れていた子供達があっと言う間に眠りに着いた。
「やっぱり誘拐された子供達だったのね…」
ぐーぐー、と眠る子供達に、取り合えずウソップ達はホッと胸を撫で下ろす。
このまま暴れられても抑えることは出来るだろうがそれでは暴力になってしまう。
子供を大切に思うチョッパーやナミには出来ない選択だった。
それに…この子供達は誘拐されて薬漬けにされてしまった言わば『被害者』。
暴れていたからと言ってあまり暴力的な事はしたくはなかった。
「ルフィ」
「ん?」
アスカは子供はあまり得意ではない方なので暴れられればきっと殴って気絶させる方法を選ぶだろう。
流石のアスカも手加減の1つや2つしてくれるとは思うが…(遠い目)
ウソップの技で眠らされた子供達をアスカはルフィの隣で見つめていた。
離れていた手は既にルフィと繋がっており、アスカはそれに抵抗も不思議がる事もなく自然と握り返しながら、これから先この眠っている子供達はきっと目を覚ませば薬が切れている状態なためまた暴れるのは必須…その度にウソップの技で眠らせるのも多分限度があるとアスカは考える。
なら、最終的には……そう思っていると隣で同じく子供達を見ていたルフィにサンジ(チョッパー)が声をかけてきた。
ルフィはサンジ(チョッパー)に振り返り、アスカも考えを止め同じくサンジ(チョッパー)へと振り返った。
サンジ(チョッパー)は真剣な瞳で子供達を見つめている。
「こいつら可哀想だ…!!家に帰りたがってた…親に会いたがってた!!助けてやろうよ!!」
サンジ(チョッパー)は子供達と共に行動していたため、子供達がナミに向かって『助けて!』と言っている場面を直接見ている。
だから帰りたがってた家に帰してあげたい、会いたがってた親に会わせてあげたい…心からそう願う。
しかし自分は『麦わらの海賊団』という組織に所属しており、船長の了解なくしては大きな動きは取れない。
特に子供達を助けるなど自分の勝手な判断で決めていいものではないのだ。
別にルフィなら勝手に決めても仲間が決めた事に文句は言わないだろう。
しかしこれはケジメである。
「…………」
ルフィは口を閉ざしてしまった。
『家』、『親』…この言葉が嫌に頭の中に残る。
それはあの侍の言った『アスカの家族』が関わっているのだろう。
どんなにアスカが大丈夫だと、決してルフィの傍から離れないと、言ってもきっとルフィの不安は拭えない。
アスカはルフィが、ルフィはアスカが離れるのを1番に恐れていた。
だからアスカのことではないのに『家』と『親』というキーワードに反応してしまうのだ。
ぎゅっと手を握る力を強くするルフィにアスカはハッとさせサンジ(チョッパー)に向けていた視線をルフィに向ける。
「んー……じゃあ全員親の所へ送り届けてやるか!」
チョッパー達からしたら僅かだろう時間。
しかし、アスカとルフィからしたら長い時間、ルフィは考えていた。
アスカと子供達を重ね、親に会わせてやりたいというチョッパーの願いを叶えるか否かを、ルフィは考えていた。
考えるなどキャラではないルフィだったが、結局はチョッパーの願いを受け入れた。
アスカはアスカだと割り切ったようである。
ルフィはアスカの手を引っ張り大きな子供の1人…シンドの顔へと上る。
「バカ!簡単に言うな!!問題は山積みだぞ!!」
「そうね…それにまだ全てが予想でしかない……"元凶"に尋ねてみなきゃ何も確定しないわ」
「マスターってやつか…」
子供の顔に土足で踏み込むのは流石に戸惑うが、まあ眠ってるしいいか、とアスカは早くも開き直る。
ぽてぽてと柔らかい肌を2人が踏んでもシンドは目を覚ます気配を見せない。
そうとうぐっすりと眠っているようである。
サンジ(チョッパー)の願いを受け入れたルフィにチョッパー(フランキー)とロビンが待ったをかけた。
サンジ(チョッパー)の言っている事はあくまで予想でしかなく、疑いはしないが確定ではない。
敵の敷地内というのもありあまり容易に動くのはいい案ではないと2人は言いたかった。
「でも今ゾロ・サンジ・ブルックはサムライ捜しに行っちまったし…まーいいか、おれ達はさっきの研究所に行こう!!"M"に会いに!!」
「おれはここで待つよ…!本当はおれ"M"って奴絶対許せねェ…ぶっ飛ばしてやりてねェけど……子供達が心配だ…看てなきゃ…」
「そうね!…そ、そう!じゃ私も残るっ!!」
「てめェナミ!!汚ねェぞ!!コエェんだろ!!」
サンジ(チョッパー)は心の底からMの事を恨んでいる。
しかし子供達もいるため子供達を残していくのも気が引けていた。
そんなサンジ(チョッパー)にフランキー(ナミ)も便乗して残ると言い出し、ウソップが汚い、と声を上げるが、今のフランキー(ナミ)は危険とは関わりたくないという一心だったため聞いてはいなかった。
サンジ(チョッパー)、フランキー(ナミ)を残しルフィ、アスカ、ロビン、ウソップ、チョッパー(フランキー)は外を調べに向かった。
75 / 274
← | top | back | →
しおりを挟む