(37 / 293) ラビットガール (37)

コビーのお蔭でルフィとアスカはやっとフーシャ村以外の島にたどり着いた。
ちなみに遭難して救い出された島は二人からはノーカンとされていた。


「ついた!!海軍基地の町!!」

「ついたね、海軍基地の町」

「はい!ついに!!」


船をつけて降りた三人はやっとついた目的地を見渡す。
そこは海軍基地が入っているためかフーシャ村より若干大きく、人も賑わいを見せていた。
ルフィはやっと海軍基地につき興奮気味のコビーを見下ろしニカッと笑って見せる。


「お前すごいなコビー!」

「え?」

「ちゃんと目的地に着いたよ!!」


ルフィの言葉にアスカも頷く。
しかしどちらかと言えば『いや、すごいのはルフィさんとアスカさんですよ…』と苦笑い交じりに零す。


「当り前ですよ!海に出る者の最低限の能力です!ルフィさん達だって毎度漂流してちゃ海賊になんてなれませんよ?せめて航海士を仲間にするとか…」

「ああ、そうする!!メシ食おう!」

「あんたコビーの話し聞いてた?」


ルフィとアスカはなんと航海技術を持っていないのにボートで生まれ育った村を出たという。
それを聞いてコビーは驚いたのを通り越し、そして呆れも通り越し、ある意味行き当たりばったりな2人(特にルフィ)に尊敬の念を送っていた。
ルフィはコビーの話を聞いているのか聞いていないのか分からない返事を返し、早速飲食店を探しに一人走っていく。
相変わらず食べ物一直線の幼馴染にアスカは呆れたため息をつく。


「駄目だわ…食べ物の事で頭がいっぱいで全く人の話聞いてないよ、アレ」

「アハハ…しょうがないですよ、ルフィさんですし…」


コビーは呆れたようなアスカの言葉に苦笑いを浮かべ、二人もルフィの後に続く。







その後、ルフィが入っていった店にアスカとコビーも入り、三人は食事を済ませ一休みしていた。
相変わらずルフィの食欲は物凄く、アスカはマキノ経由でミコトに渡されたお金が底をつく前に暴食魔神の食欲をストップさせる。
ミコトは流石ルフィの姉をしているだけあって、ルフィが夢のために一直線となって周りの言葉を聞かないのを知っており、海兵の雑用をしながらもルフィのために貯めていたお金をタイミングよく出航する前日にマキノに渡していたらしい。
渡したといってもミコト本人は来ておらず、『アルダ』と言う女海兵が来てマキノにお金を渡していったらしい。
そんな姉と慕うミコトの大切なお金をたった一食で使い果たすわけにはいかず、アスカはまだ食い足りないと文句を抜かす幼馴染にギロリと睨んで黙らせた。
昔からルフィはアスカに甘くて喧嘩なんて一度も勝てたことはない。
勿論、力ではルフィの方が勝っているし、戦闘だってルフィの方が上である。
だがフーシャ村に来た時からアスカを見てきたルフィはどうしてもアスカとの喧嘩は本気になれず、どうしても自分が折れてしまうのだ。
そんな二人のやり取りを見てコビーは『力関係はアスカさんの方が上なんだなァ…なんか納得…』と思ったとか。


「そういえばこの町でコビーとはお別れね」


食後のお茶を呑んでいると、不意にアスカはコビーとここで別れる約束だと思い出した。
アスカの言葉でルフィも思い出し、『そういやそうだな』と零す。


「海軍に入って立派な海兵になれよ」

「はい…!ありがとうございます!ルフィさんもアスカさんも立派な海賊になってください!いずれは敵同士ですけど」


コビーにはコビーの目的と夢があるとはいえ、やはり助けてくれた恩人達と別れるのは寂しい。
コビーは2人の言葉に涙ぐむ。


「そういや基地にいるのかな?あの…"ゾロ"って奴…」

「「「―――ッ!!!!」」」


別れの感動もそこそこに、ルフィは自分の目的である『ゾロ』の名前をポロリと何気なく零す。
それは本当に何気なく、ただ思ったことを言っただけだった。
だが、何故かルフィが"ゾロ"の名前を言った瞬間店中の客が驚いたように飛び上がって机やまだ食べ途中の食事も文字通り放り出し壁に張り付き怯えはじめる。
その異常な反応にコビーはゾロの名前がここまで怖がられるとは思ってもみず驚きながらも小声でルフィとアスカに耳打ちする。


「ここではゾロの名は禁句のようですね…」

「ふーん…」

「そうみたい」

「あ、そうだ…さっき張り紙を見たんですけど、ここの基地には"モーガン大佐"という人がいて…」

「「「―――ッ!!!!」」」


ゾロの名前を聞いただけで緊迫した空気になり、その空気を変えようとコビーは『モーガン大佐』の名前を出した。
それは本当に何気なかったのだが、また店の客たちはゾロの時同様机も何もかもひっくり返し壁にくっついた。


「……なんなの…この人達…」


コントのような客たちに思わずアスカはそう零してしまったが…それに関しては誰も責めないだろう。







結局、緊迫した空気は変わらず3人は仕方なく店を出ることにした。
ルフィは『ロロノア・ゾロ』と『モーガン大佐』の名前を聞いただけで大げさに怯える客たちが面白かったのか腹を抱えて笑っていた。


「はっはっはっ!!おもしろい店だったなーっ!おれ後でもっかい行こうっ!!」

「そう?何か変じゃなかった?」

「ぼくもそれ思いました!あれは妙ですよ…!!ぼくなんだか不安になってきました…いつ脱走するとは限らないロロノア・ゾロの名に過敏になる気持ちはわかりますがなぜ海軍の大佐の名にまで怯えるんでしょうか…」

「さあなーなんかノリで吹っ飛んじゃったんじゃねェか?」

「そんなわけないじゃないですか!!ぼくはまじめに言ってるんですよ!?」

「コビー、ルフィに真面目を求めても無駄。」

「……それも…そうでしたね、アスカさん…」

「??」


あのコントもどきを見て面白がるのはルフィだけで、アスカもコビーも違和感を感じていた。
コビーの言う通り、ゾロの名前を怖がるのは分かる。
コビーもゾロは正直、怖い。
だが、海軍であるはずのモーガンも怖がるのはおかしいと思うのが当然である。
笑い飛ばすルフィに肩を落としているコビーにアスカがルフィにそれを求めるのは無駄だと諭せば即納得され、肝心の本人は全く分かっていなかった。

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