(77 / 274) ラビットガール2 (77)

大男達の姿も消え、辺りは吹雪く音しか聞こえない。
ナミ達の安全の確認の為、ルフィ達は急いで隠れ場所に急ぐ。


「え!?茶ワニ!?」


しかしルフィ達が予想していたのは隠れ場所に倒れいてるナミ達に助け出され姿を消した茶ひげだったのだが…その場には真逆の状況が広がっていた。
サンジ(チョッパー)の姿は怪我1つなく、逆に茶ひげが大怪我をし、大砲を食らったように丸こげだった。


「今の奴らコイツのこと助けに来たんじゃねェのか!?」

「目的は子供達みたいだ!!俺達の命と…!!――でも"M"の依頼でまず茶ひげは消されたんだ!!仲間のハズなのに!!茶ひげはあんなに慕っていたのに!!!」


目の前で起こった事実をサンジ(チョッパー)は必死に伝えようとした。
茶ひげからは『M』への絶大な尊敬が見てとれていたのに…その『M』からは『足手まといだからもういらない』と言われた挙句に『殺せ』とも言われてしまった。
それは敵であるはずのサンジ(チョッパー)やフランキー(ナミ)から見ても許せないものである。
ルフィもアスカもまさか茶ひげを殺しに来たと思っても見なかったため唖然としていた。


「ルフィ!!"M"って相当心の捻じ曲がった奴だよ!!そんな非道な奴のところへあの子達は絶対返せない!!連れてかれた『ナミ入りのフランキー』も心配だよ!!何されるか分かんないよ!!」


フランキー(ナミ)が攫われたと、ここに来て最初に言われたルフィは目を丸くした。
目的はどうであれ、仲間を攫われて黙っていられるほどルフィの気性は優しくはない。
それが大事な仲間なら尚の事である。
再び放していた手を握りなおしたルフィの手が強まり、アスカも心配そうにルフィを見つめる。
サンジ(チョッパー)は子供達も心配だった。
仲間として受け入れたはずの部下を何の躊躇もなく殺し屋に殺しを命ずる『M』にサンジ(チョッパー)はどうしても子供達を返すことなど出来なかった。
そんなサンジ(チョッパー)の言葉に当然だとルフィも頷く。


「ああ!必ず奪い返す!!お前達コドモら頼むぞ!!」

「待てルフィ!!おれも行く!!攫われたのはおれの体だ!!チョッパー!こんな体じゃ戦えねェ!!お前いつもの変形できるマメよこせ!!怪物になるマメ!!」


ルフィが走ったため、手を繋いでいたアスカも一緒に走ることになる。
どうしてかルフィはずっとアスカと手を繋ぎっぱなしで、それを突っ込む余裕も指摘する余裕も今のサンジ(チョッパー)達にはなかった。
だが、走り出す2人にチョッパー(フランキー)が待ったを掛けた。
自分の体を自分で取り戻したいと言い出したのだ。
その言葉にルフィとアスカは足を止め、チョッパー(フランキー)は体の張本人であるサンジ(チョッパー)へと振り返る。
サンジ(チョパー)は"マメ"と言われて首を傾げていたが、『マメ=ランブルボール』だと察し慌てて首を振った。


「ランブルボールは凶薬だぞ!!一粒だけあげるけど…!多分お前じゃコントロール無理だよ!」

「まァよこせ。」

「いいか?モンスターになれるのは3分だけ!!それ以降一時戦えなくなるからできればさっきの『カンフーポイント』で――…」


ランブルボールは2年前、チョッパーでもコントロールが出来ない薬であり、2年前はどうしてもという時に使用した物である。
今は修行して使いこなせているが…本人でもないフランキーが使いこなせるわけがないとサンジ(チョッパー)は本当はあげたくはないが、戦えないのとやはり自分もフランキーと同じ立場なら同じく自分が奪い返したくなるのを考え渋々一粒だけ渡した。
ちゃんと注意事項を説明していたのに…フランキーは話を聞かず……


「ブゥウゥバァアアア!!!」

「早すぎるよォーーーーっ!!!!」


その場でたった一粒のランブルボールを食べてしまった。
そのためチョッパー(フランキー)は巨大化し正気を失い雄叫びを上げる。
その雄叫びに負けないツッコミを、サンジ(チョッパー)は上げた。


「いくぞ!!フランキー!こっちだ!!」

「ブオォ!」

「うわあァーー!!なんでおれ達を狙うんだ!!」

「フ、フランキー!!待って…!!」

「ブォオオオォォ!!!」

「ダメだ!!やっぱり暴走したァ〜〜!!!」


やはりランブルボール使いこなす為の修行もしていないフランキーでは暴走が始まり、ルフィとアスカを襲い始めた。
ドカン、ドカン、と大きな音を立て目の前の物を壊そうとチョッパー(フランキー)は攻撃を繰り返す。
仲間に攻撃をするわけにもいかず、ルフィとアスカは避けるしかない。


「……で、フランキーは何をしに行ったんだ?」

「…暴れたら後動けなくなるから……うーん…助けにはならないというか…」

邪魔なだけね。


消えていく3人をロビン、ウソップ、サンジ(チョッパー)は見送るしかなかった。
もう暴走が始まれば後は薬が切れるのを待つしかなく……ロビンの呟きが冷たくチョッパー(フランキー)の背中に刺さった。



◇◇◇◇◇◇◇



暴走したチョッパー(フランキー)に追われながらルフィとアスカは足跡を追いかけていた。


「足跡足跡!!助かる!!随分分かりやすくついてんなー!!」

「罠じゃなきゃいいけど…」


足跡をつけた2人はバカなのか、それともわざとなのか…アスカは警戒を高める。
しかし肝心のルフィは何も考えていないようで、足跡を追いアスカの手を引き更にチョッパー(フランキー)の攻撃を避けながら進んでいた。


「おい!!フランキー!やめろって!!!」

「もういい加減にしてよフランキー!!」


薬のせいで我を失っているとは言え、アスカの堪忍袋の緒はもう切れ掛かっていた。
ザザ、と滑るように止まったアスカと手を繋いでいたルフィは思わず手を放してしまう。
それに慌ててルフィも立ち止まり背を向けるアスカに声を掛ける。


「おい!!アスカ!!」

「フランキーは私が止める!!ルフィはナミのところへ!!」

「だがよ…」

「大丈夫!!!私はこんなところでやられないしルフィの傍から絶対離れない!!フランキーを沈めたら絶対ルフィのところに戻るから!!」


離れるのが辛いのは自分も一緒。
しかしいつまでも仲良しこよしで手を繋いでいては話にならない場面もある。
きっと手と手を繋いでいるのはルフィやアスカが不安だからで、その不安は一時のことなのだろう。
しかし今の状況でフランキーを相手にしながら大男2人を相手にするのは強さから言えばルフィは楽勝だが、仲間な分質が悪い。
だからここは二手に別れるしか方法はなかった。
今度は着直していた上着を脱がないまま耳としっぽを出し臨戦態勢でこちらに向かって来るチョッパー(フランキー)を睨むアスカの背を見つめながら、ルフィはグッと拳を握り、『絶対だからな!!』と言ってナミを救いに向かった。
それを見送ったアスカはポンポンポン、と可愛らしい音を立て次々にウサギを取り出す。
次々と出てくるウサギ達は出てきた順から巨体なチョッパー(フランキー)の体に張り付いてく。
アスカとチョッパー(フランキー)との距離はそう離れておらず、暴走しているチョッパー(フランキー)はただただ目の前の敵を倒すだけしか考えていない。
長い手を伸ばし大きな拳をアスカに向かって振り下ろす。
そんなチョッパー(フランキー)の攻撃を避けながらもアスカはひたすらウサギを出してはチョッパー(フランキー)の体に張り付かせる。
あらかたチョッパー(フランキー)の体がウサギで包まれたのを見たアスカは手袋を外し―――…



「ごめん!チョッパー!!―――"ラビット爆弾"!!」



悴む手でパチン、と指を鳴らす。
その瞬間今まで聞いた事のない爆音が雪山に響き渡った。

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