(81 / 274) ラビットガール2 (81)

落ち着いた頃、フランキー(ナミ)達は自分達の状況を思い出したのかハッと我に返り自分達の体と精神を入れ替えた張本人に戻せと(主にフランキー(ナミ)が命令調で)騒ぐ。


「"シャンブルズ"」


ブゥン、とまたあの時のようにルフィ達を囲むようにドームのような物が現れ、ローの言葉と共にフランキー(ナミ)、チョッパー(フランキー)、サンジ(チョッパー)は中身を入れ替えなおした。


「ウォ〜〜〜!!戻ったぜェ!!おれの絶好調ボディ〜〜!!!やはりおれはおれに限る!!ん〜〜!!スーパ〜〜〜!!!」

「ふふ、良かったわね、フランキー…もうチョッパーの体には入らないでほしい、二度と。


チョッパーの体に入っていたフランキーは、ようやく自分の体に戻る事ができ、いつものように腕を合わせて声を上げて喜んだ。
その傍らでロビンも嬉しそう笑っていたが、言葉の棘がフランキーにチクチクと突き刺す。
が、フランキーは慣れたもので気にも留めていない。


「おれも…戻ったけど!!!なんだこのボロボロの体!!!お前ら人の体に何してくれてんだよ!!!」

「はあ…すいません…」

「ごめんね…でもフランキーが悪い。」

「なにィ!?どう見てもお前の技で大怪我してんだろ!!」

「あんたがチョッパーの説明聞かずにランブルボール食べたからでしょ?だから私は仕方なく…」

「どっちもだよ!!」

「「はあ…すみません…」」


怪物となったのはフランキーのせいであるが、チョッパーの体を丸こげにした挙句の重傷を負わしたのはアスカのせいである。
開き直っていたアスカは取り合えず怒り狂うチョッパーに謝るものの、やはり本気で怒られ本気で謝る事となってしまった。
珍しくもアスカにも怒るチョッパーにアスカはしゅぼーんとさせる。
2人とも正座させられているが、手を繋いだままのルフィもついでにアスカを止めなかった罰として正座させられていた。


「自分に戻れただけでいいじゃない!チョッパー!!!何で私だけたらい回しなのよ!!!フランキーの次はサンジ君!?」


ムキー、と包帯を巻きウサギ(ラビットセラピー)の背を枕にして横になっているチョッパーだったが、サンジが涙ながらに声を上げた。
その声にサンジの方を向けば、なんとも女々しい。
それもそのはずである。
今度はサンジの中身がナミになったからだった。
サンジ(ナミ)の女のような口調と泣き崩れる姿に仲間であるはずのルフィ、ウソップ、チョッパーはゲラゲラと大笑いしていた。
そんな仲間((恨みありすぎな)ナミ曰く頭脳は小学生以下な)3人に『他人事だから笑えんのよ!あんた達!!』と鬼のように怒鳴った。
…が、本体(ナミ)だったなら恐ろしいまでの威力だが…今のナミの見た目は女好きのコックである。


「しょうがねェよ、お前の体はサンジが侍捜しに持ってっちまったんだから」

「〜〜〜ッッ何とかしてよ!アンタ!!!」

「体がねェとムリだ。」


大笑いし、少し涙が溢れているウソップの言葉に言い返せずサンジ(ナミ)は怒りの矛先を原因であるローへと向ける。
しかしローは平然とさせキッパリとナミの怒りを切って捨てた。
『あの3人…!!私の体を変な事に使ったら絶対許さないんだからね!!』、と正論なため言い返せないもどかしさと原因を作っておきながら反省の色がない(言っておくが当たり前である)ローへの怒りなど行き場がない2つを取り合えずこの場にいない3人に向けて発散させた。
エロキャラ代表であるサンジやブルックだけではなくゾロにも怒りをぶつけるところはナミらしい。
そんなナミの怒りの声を背景にローは柱に拘束され気持ちよさ気に眠っている子供達を見上げながら歩み寄る。


「こいつらか…」

「ああ!助けてェんだ!!こいつら!!」


同盟を結ぶ際、子供達の事も聞かされていたローは改めて子供達を見やる。
ローも子供の事は知らされていないが、なぜここに実験台にされているのかは見当がつく。


「こんな厄介なモン放っとけ…薬漬けにされてるらしい」

「分かってるよ!調べたから!!…――だから家に帰してやりてェけど薬を抜くのに時間がかかるし…なによりこんなに巨大化してる!!」

「"人の巨大化"ってのは何百年も前から推進されてる『世界政府』の研究だ」

「!?―――政府が?何の為にそんな…」

「"兵士"だろうな…好きなだけ巨大な兵士を増産できりゃ政府に敵はいなくなる――コレを成功させてシーザーは政府やベガパンクの鼻を明かそうってハラだろうが…そうそう上手くはいかねェよ。」


ローは昔耳にした事のある政府の実験を話した。
政府は数百年も前からこの実験を繰り返してきた。
歴史を見れば成功した事はない。
しかし成功すれば確実に政府の敵はいなくなるだろう。
だが、体が大きいから強敵だとは限らないのも事実である。
巨人族だってルフィやアスカのような小柄や普通の体格の人間に負ける事だってあるのだ。
しかし巨大な体の兵士を持てば雑魚はひとたまりもないだろう。
だから政府はずっと巨人以上の兵士を求めてきた。
今、黒蝶という存在がいるため現在も実験を行っているかは不明だが…その黒蝶の伝説とも言える強さは2年前に破られてしまった。
海兵に入ってから無敵を誇ってきた黒蝶であるミコトだが…2年前白ひげと黒ひげによって傷を負わされた挙句1年ほど行方不明だったのだから。
それを公開してしまえば政府への恐怖は弱まる。
それを恐れたからこそ政府は黒蝶の事を伏せていた。
一般の世間はあれほどの大きな戦争の後極秘任務に就くミコトを『流石黒蝶だ』と信じ込んだ。
しかし名のある人物は疑問視している。
復活した今、疑問視していた事を問う者はいないが…2年前と今では黒蝶の強さの認識を改めた者も多いだろう。
勿論、黒蝶は弱くなったのだと……最悪な方に。


「…本気で助けてェのか?どこの誰かもわからねェガキ共だぞ」


ローからしたら子供などどうでもいいのだろう。
自分は海賊であり、どうしてもやらなければならない目的がある。
そのためならば子供でも見捨てる事だって造作のないことである。
そんな冷たいローの言葉にサンジ(ナミ)は『ええ』と頷いた。


「見ず知らずの子供達だけど…この子達に泣いて『助けて』と頼まれたの……"M"は上手くダマしてここへ連れて来たようだけど…本人たちだってもうとっくにあの施設がおかしいと気付いてる………この子達の安全を確認できるまでは私は絶対この島を出ない!」

「……じゃあ…お前1人残るつもりか?」


アスカはローの問いに違和感を感じた。
そして、自分が麦わらの一味に染まっているのに気付く。
と、いうよりはルフィに染まっていたのだろう。
ローの問いは間違いではない。
自分達のような海賊団が異色なのだ。
海賊の奴隷になったこともあるアスカだが、ルフィと育ち、ルフィと共に海に旅立ち、心優しい仲間達と出会って共に冒険をしていく中で、すっかりアスカも麦わらの色に染まっていた。
海賊が見ず知らずの子供をただ助けを求められただけで助けたいと言い出し、安全を確認できるまで島を出ないと言い出す事などありえないことなのだ。
しかし海賊団にもし1人でもそういう考えの持つものがいたとしても…大半の海賊団はその人物を置いてとっとと航海をするだろう。
それも重要な人物ではなかったらなおの事。
だからローはナミの言葉に怪訝とさせ、寄せていた眉のシワを深くし、ローの問いにナミではなくルフィが答える。


「仲間置いてきゃしねェよ…ナミやチョッパーがそうしてェんだからおれもそうする。」

「…?」

「あとサンジがサムライをくっつけたがってた。お前おれ達と同盟組むんなら協力しろよ!!」

「………、…??」


ローはルフィの言葉に疑問符ばかりが浮かんでいた。
それはアスカも目に見えて分かり、今、ローはルフィの言葉を処理しているのだろう…何も言い返しては来ない。
ルフィは天然やら鈍いやら鈍感やらとついてくる性格だが…長年幼馴染をしているアスカもたまに良く分からないときがある。
ルフィは本当に自分の気持ちに忠実である。
まるで純粋無垢な子供のようでもある。
だからたまにアスカは『ルフィの頭の中を見てみたい』と本気で思う事もある。
ローもルフィ特有の考え方に戸惑いが隠せないのだろう…そんなローに解説係でもあるウソップが付け足してくれた。


「あァ、お前言っとくがルフィの思う"同盟"って多分ズレてるぞ。」

「友達みてェなもんだろ?」

「主導権を握ろうと考えてんならそれも甘い。」

「そうなんだってよ」

「思い込んだ上に曲がらねェコイツのタチの悪さはこんなもんじゃねェ!!自分勝手さではすでに四皇クラスと言える!」

「大変だーそりゃー」


ローが怖いのかは不明だが、ルフィとアスカの間からローを指差し、ウソップはローに『ルフィが考えている同盟』と、『ローの考えている同盟』の違いを伝えた。
本人は分かっていないのか…呑気に合いの手を入れながら鼻をほじっていた。


「…だがお前の仲間の要求は…同盟に全く関係が……、―――ああ…いや、もういい…分かった…時間もねェ…じゃあサムライの方はお前らで何とかしろ。ガキ共に投与された薬の事は調べておく。」


もうすでにローは言い返すのが億劫になっていた。
だから言いかけた言葉を飲み込み、時間がないからとこの話は受け入れる事で落ち着いた。
溜息をつきながらローは船医がいるかと問い、いるならシーザーの目を欺くために一緒に来いとも呟いた。
しかし麦わらの一味の船医は――…


「わりいな、おれ今動けねェから!よろしく頼む!!」

「…、………」


麦わらの一味の船医…そう、手配書ではペットと表示されていたチョッパーである。
ランブルボールをフランキーが使ったため暫く動けないチョッパーをウソップは『じゃあ』といって何故かローの帽子の上に乗せ落ちないようにロープで括りつける。
普段クールな分、その姿はとても笑いを誘う。
そのためルフィをはじめとする麦わらの一味からドッと笑いが起こった。


「……お前ら…」

「ロー、可愛い」

「…………」


『また入れ替えてほしいようだな…』、と振り返り様に能力を出そうとしたローだったが、アスカの呟きによってその能力も解除される。
振り返ったローとチョッパーの組み合わせにやはりアスカもクスクスと笑っていたが、好きな人と可愛いチョッパーの組み合わせはどうしてもアスカにとって可愛く見える。
可愛いと言うキャラではないアスカだが、本当にそう思ったからこそ口に出していた。
ふふ、と笑みを浮かべるアスカにローは苛立ちなどあっと言う間に吹き飛ばす。
なんとも簡単な男である。
しかし同時に今だ握られている手を振り解かないアスカと自分の物だと言わんばかりに手を握るルフィを見てローは機嫌が上昇していたのを降下させ元に戻ってしまう。
一瞬ふと目を細めてたローが何故か自分を見て視線を外し無言でチョッパーを取って今度は刀にぶら下げるのを見て、やはりアスカはローの機嫌が悪くなっているのに首をかしげた。
『なんだ、やめるのか?面白かったのに!』と呑気に笑うルフィはローを更に腹立たせる。
それはルフィが自分をからかっているからではないということだけは…言っておこう。

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