「あのバカ…!!誰が全軍相手にしろと言った!?」
ルフィは起き上がり息を思いっきり吸い上げれば大音量で叫ぶ。
その内容にロビンは軽く咎め、フランキーは案外近道だったことに笑い、アスカは呆れたように肩をすくめるだけ。
ローは全部相手にするようなルフィの言葉に声を上げてしまい、たしぎ(スモーカー)もルフィのまさかの登場に驚きが隠せないでいた。
「討ち取れェ〜〜!!"麦わらの一味"だァ〜〜!!」
どちらかが叫んだかは不明である。
だが、海兵と囚人達、ルフィ達はどちらともに狙われ、向かって来る両軍をフランキーが"ストロングライト"で蹴散らしてくれた。
「さて、来たはいいけど…"M"はどこだ?」
「まさか外にはいないでしょ?研究所の中へ入りましょ。」
ローの協定の条件を満たす為にルフィは"M"を捜す。
キョロキョロとMを捜すルフィにロビンが笑みを浮かべ肩をすくめた。
ロビンの言葉に『そうか!』と返したその時、目の前に見慣れた人物が現れる。
「"麦わらのルフィ"!!この島で何を企んでいるんですか!?」
「お!ケムリン!!無事だったのかー!!さっきやられたみたいで心配したよー!!」
「馬鹿にしてっ!!」
ルフィの前に現れたのはケムリンこと、スモーカーだった。
正し、中身はサンジ(ナミ)同様たしぎであるが。
まだルフィはたしぎとスモーカーが入れ替わっていることに気付いておらず、再会した時倒れたのを覚えていたルフィはスモーカー(中身はその部下)に嬉しそうに笑う。
その笑みと馴れ馴れしさにスモーカー(たしぎ)はカチンと来たのかグッと己の獲物の柄を握り締めた。
しかしルフィとスモーカー(たしぎ)の間に1人の人物が入って来た。
「待ってルフィ」
「ん?なんだ、アスカ?」
2人の間に入って来たのは、アスカだった。
戦闘が始まるからとルフィに乗っていた時から手を放していたアスカは鋭い視線をスモーカー(たしぎ)に向けながらルフィを押し退ける。
押し退けられたルフィはアスカの行動に首をかしげ、スモーカー(たしぎ)は因縁の1人でもあるアスカにキッと睨みつける。
「"冷酷ウサギのアスカ"…!!2年前の時は逃がしましたが今度こそ逃がしません!!」
「はあ?何言ってるの?2年前あんたと戦ったのルフィじゃない。意味が分からない。というかさ、私はあんたなんか絶対認めないから!!!」
「認めない!?私の実力をですか!?見くびってもらっては困ります!!」
「実力!?見くびってる!?何言ってるわけ!?あんたもしかして誤魔化そうとしてる!?逃げようとしてる!!?私さ、あんたに一言だけ言いたい事があるんだけど!」
「私に…?私はあなたと馴れ合うつもりはありません!!!さァ!何を企んでいるんです!?吐きなさいっ!!」
「ええ!勿論!!吐きますとも!毒をね!!!その役立たずな耳の穴を掻っ穿ってよく聞きな!!いい!?私は……―――あんたとお姉様との結婚なんて許さないから!!!」
「え………、へ…?」
ルフィがスモーカーとたしぎの中身が入れ替わった事を知らないのなら…当然アスカも知らないのは当たり前である。
そのためアスカはスモーカーを見た瞬間、頭の中が真っ白となり怒りに任せルフィとスモーカーの間に入っていった。
ここまで見ればお互い話がすれ違っていてもギリギリ成立していたが、最後のアスカの言葉にスモーカー(たしぎ)だけではなくその場にいる麦わらの一味以外の全員が氷ったように固まった。
それは海兵・囚人全てである。
「な、なに言って…」
「ここまで来て惚ける気!?お姉様はパパと結婚するの!!あんたじゃないの!!!」
「パパ…結婚…?お姉様?――!、ミコトさんが赤髪のシャンクスとけ、けけ結婚!?」
スモーカー(たしぎ)はあまりの突然の事で呆気に取られていた。
そして必死にアスカの一つ一つの言葉を整理する。
まず、お姉様とは『ミコト』の事だとスモーカー(たしぎ)は推測した。
というよりはミコトとの会話でそれらしい事を聞いていたのだ。
そして、『パパ』。
パパとは誰だと呆気に取られながらもスモーカー(たしぎ)は懸命に考える。
そして2年前に発覚したアスカの父親を思い出す。
センゴクのマイク越しの言葉をそのままハッキリと脳裏に思い出させたのだ。
たしぎ(外見おっさん)は今でもあの衝撃を忘れていない。
この目の前の最悪の時代のルーキーと呼ばれているルフィとアスカの父親はとんでもない人物である。
そして残りは『結婚』。
これはもう考えるほどでもなかった。
スモーカー(たしぎ)はこれらを繋ぎ合せアスカが『ミコトはシャンクスと結婚するわけだから諦めな!』、とまで推理した。
目をまん丸とさせるスモーカー(たしぎ)だったが、それは何もスモーカー(たしぎ)だけではなかった。
周りにいる両軍、そしてスモーカー(外見女性)本人もアスカの言葉に驚きが隠せなかった。
(赤髪と黒蝶は繋がっていやがったのか…!)
たしぎ(スモーカー)本人は嫉妬どころかミコトの背後にシャンクスがいることに表情を険しくさせる。
何度もミコトが海賊を逃がしていたのは海賊を愛した甘さだからと、アスカの話を聞きたしぎ(スモーカー)は考える。
だが、実際は切り捨てられる人形を集めているだけだとは知らない。
全員呆気に取られ静まり返るその場など気にもせず、アスカは口をポカーンと開けるスモーカー(たしぎ)に腰に両手を当て踏ん反り返り、呆気に取られているスモーカー(たしぎ)をアスカは鼻で笑った。
アスカの鼻で笑う声にハッと我に返ったスモーカー(たしぎ)はワナワナと体を震わせ俯かせていた顔をバッと弾かれたように上げアスカを睨みビシッと指差す。
「意味が分からないのはそちらの方です!!!あなたが何をどう言おうがミコトさんはもうスモーカーさんの奥さんです!!!知ってますか!?スモーカーさんとミコトさんはとても仲のいいご夫婦なんですよ!?お似合いなんですよ!?ラブラブでハートもこれでもかと飛んでて私なんて入る隙間がないんですよ!?相手がスモーカーさんじゃなかったら掻っ攫ってましたよ!!!」
「おいィィィィ!!!たしぎィィィ!!!何言ってんだおめェはァァ!!!!」
断言したアスカに対し、周りはスモーカー(たしぎ)が何を言うのか固唾を呑んで見守っていた。
そしてビシッとアスカを指差したスモーカー(たしぎ)はとんでもない事を言い出す。
それはまるでスモーカーとミコトが心底愛し合っているような言い方で、実際はハートどころかラブラブでもなければ入る隙などオープンすぎてありすぎである。
しかしたしぎにはラブラブに見えていたのかスモーカーは思わず突っ込みを入れてしまう。
『なんでおめェが突っ込んでんだ?』と自分の後ろでルフィがキョトンとさせているのを背景にアスカは『あ゙ァ?』と極悪な表情を浮かべスモーカー(たしぎ)に歩み寄った。
「あんたさっきから何言ってるわけ?いい!?お姉様の全てはパパのモノなの!お姉様に似合う男はパパなの!あんたみたいな中将どまりの海兵じゃなくて海の王者のパパなの!分かる!?パパはお姉様が生まれる前からお姉様に恋をしてるの!!!お姉様もパパが生まれる前から恋してるの!!!それこそ誰も間に入れないくらいにね!!!だからあんたが入る隙間なんてありゃしないんだから!!!」
「〜〜っっ分かってますよ!!!私もミコトさんも女性ですし!何より大佐である私なんかをミコトさんが相手するわけがないって事くらい!!!でもしょうがないじゃないですか!!ミコトさん可愛いですもん!!女の私から見ても可愛いですもん!!」
「お姉様が可愛いのは世の常識なの!!だからお姉様は絶対パパと結婚するんだから!!あんたさっさと本部に戻ってあの駄犬に『離婚届け』を出してきなさいよ!!!今すぐ役所行って出してきなさいよ!!!ついでにあの駄犬潰してきなさいよ!!」
「そんなことできるはずがないです!!!だって…ミコトさん…とても幸せそうで……2人の世界に入ってて…それ見てると胸が苦しくて…そりゃ私も一時期スモーカーさんに嫉妬して早く離婚しろ!とか思ってましたけど…」
「だったら離婚届を出せ!」
「だから出せないって言ってるでしょ!!!」
「だせェー!!」
「出しませんーー!!!」
やはりこの2人の会話はすれ違っていた。
通じてるようで通じていないその会話はルフィ達全てには理解不能で…しかし2人は気にせず自分の言いたい事はちゃっかり言っていた。
その際下克上を狙っているたしぎの言葉にスモーカーはげんなりとさせる。
ついには睨み合いでは我慢できず、スモーカー(たしぎ)にアスカは蹴りをいれようとした。
しかしケムリ人間のスモーカー(たしぎ)には覇気を纏っていない蹴りでは素通りとなり、アスカは怒りのあまり覇気を纏うのを忘れていたようである。
今度は仕返しとスモーカー(たしぎ)が腕を伸ばす。
その際あれほど自分の体を自由に煙に出来なかったのにミコトを渡さんと言わんばかりの力でスモーカー(たしぎ)は腕を煙にすることに成功した。
しかし煙に出来るからと言って制御できているとは限らず、スモーカー(たしぎ)は覇気を纏ったアスカに掴まってしまった。
「…オイオイ!勘弁してくれ!!おれの姿でそいつに敗けてんじゃねェよ!!」
「―――、!!!」
グッと自分の体を地面に押しつけるアスカについにたしぎ(スモーカー)はブチ切れてしまう。
アスカも能力者だと記憶していたため海楼石の十手をアスカに向かって伸ばす。
殺気と海楼石の嫌な気配にアスカは咄嗟にスモーカー(たしぎ)の上から跳び避ける。
「―――部下に庇われるなんて最低!!!男のクズね!!!」
「だから違ェって言ってんだろ!!!そいつはおれじゃねェ!!スモーカーはおれだ!!」
「うわっ…!弁解どころか部下に冤罪をかぶさせるなんて…!男っていうより人間のクズね!!」
「だァかァらァァァ!!!!」
たしぎ(スモーカー)が見ていられず手を出したのを、アスカは庇ったのだと誤解した。
何故庇っただけで最低といわれ男のクズだと言われるかは不明だが、そんな言葉を掛けられるよりも何よりも…何を言っても話が通じないアスカにたしぎ(スモーカー)は苛立ちを覚える。
「アスカ、きっとローの仕業なのよ」
そんなたしぎ(スモーカー)に救いの手が差し出された。
それが様子を見ていたロビンであり、アスカはようやくロビンの言葉『えっ』と目を見張る。
「これ、あの大佐?」
「多分ね」
「じゃあ…あれが………ケムリン?」
何故仲間だったら一発で誤解が解かれるのか…たしぎ(スモーカー)は小一時間アスカに問いたいと心から思った。
まあ仲間だからと言われてしまえば終わりだが…
ロビンの言葉にアスカは起き上がったスモーカー(たしぎ)を指差し、それにロビンは頷く。
そして今度は目の前で十手を向けるたしぎ(スモーカー)を指差し、そしてやはりロビンはゆっくりと頷いた。
テンテンテン、と点が続き、そして…
「ぶふぅっ!」
アスカは噴出した。
「何が可笑しいんだ!!!!」
アスカが噴出したその瞬間、たしぎ(スモーカー)の怒鳴り声が灰色の空に響く。
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