(85 / 274) ラビットガール2 (85)

たしぎ(スモーカー)の怒鳴り声が響いた瞬間、ドン、という大きな爆発音が続けざまに響く。
それはアスカとたしぎとスモーカーのやり取りに構ってられるかと思ったフランキーがレーザーで扉を壊した音である。
ルフィもアスカも、その音に振り返れば大笑いしているフランキーが見えた。


「がははは!!ルフィ!アスカ!ロビン!!扉破ったぞォー!!突入だァ〜〜!!」


そう高々と笑うフランキーにルフィは『仕事はえェなフランキー!』と言って笑い、そしてアスカ越しにたしぎ(スモーカー)を見やる。


「じゃあな!ケムリン!!戦いはまた今度だ!!本気出せねェお前となんて戦ってもしょうがねェし!!」


ロビンの言葉でようやくルフィもスモーカーとたしぎの中身が入れ替わったことに気付きそうたしぎ(スモーカー)に伝えた。
その言葉にたしぎ(スモーカー)からは『生意気言うな!!』と怒鳴られてしまうがルフィは笑って済ませアスカの手を取り『行くぞ!』とその場を去ろうとした。
たしぎ(スモーカー)も追いたいが今は追える状況ではないというのもありギリッと奥歯噛み締める。
するとG−5の海兵が慌てた様子でたしぎ(スモーカー)に駆け寄ってくるのが見えた。


「スモやーーん!!船がァ!!」

「なんか様子が変だ!!」


部下の言葉にたしぎ(スモーカー)は振り返り、問題が発生したらしい船を見る。
そして船の現状にたしぎ(スモーカー)は目を見張った。


「何だアレは…!!!」


たしぎ(スモーカー)の目の前には、マストの上を覆うように液体が大量に掛かっていた。
それはまるでスライムのようで、生きているようにゆっくりと下へと落ちていく。


「ルフィ!フランキー!アスカ!!待って!!」


それをロビンも気付き、慌ててルフィ達を呼び止める。
ルフィ達はロビンに呼び止められ振り返ればその光景に驚いていた。


「オイ!何なんだ!あれは!!」

「し、知らねェよ!!あんなの見たことねェ!!」


たしぎ(スモーカー)はすかさずあの正体をその辺に転がっていた元囚人の胸倉を掴み聞き出そうとする。
だが、たしぎ(スモーカー)の問いを囚人が答えることは出来なかった。


「スモーカーさん!あの船にはG−5とミコトさんが…!!」

「…………」


スモーカー(たしぎ)も船に落ちてくるスライムのようなものを見て驚いていたが、ハッとさせたしぎ(スモーカー)に歩み寄った。
あの船にはG−5だけではなくミコトも乗っているからだろう。
しかしたしぎ(スモーカー)は何も言わずただ船を見守っているだけ。
様子見というところだろうか。



◇◇◇◇◇◇◇



「あら」


そんなたしぎが心配する中、ミコトは落ちて来たスライムを目を見張って見ていた。
ボトボトと落ちて来たスライムはまるで生き物のように動き、1つに集まっていき大きくなっていく。
その様子を見て船に乗っている海兵達からはざわめきが生まれた。
その間も落ちて来たスライムはまた1つのスライムを吸収し、そしてまた、吸収し、巨大化していく。


「こんなもん!!川に突き落としゃ終わりだろ!!!」

「お、おい!」

「!――無暗に触るのはおやめなさい!!」


巨大化していくスライムに1人の海兵が突き落とそうとした。
それに仲間達は止め、気付いたミコトも慌てて止めようとしたが制止も聞かず海兵はゼリー状のスライムに突っ込んだ。
ブシュー、と音を立て海兵の体からガスが漏れる。


「今すぐ引き離しなさい!」

「は、はい!!!」


ミコトはガスを漏らすそのスライムから海兵を引き離せと命じ、命じられた海兵達は慌ててスライムに突っ込んだ海兵をスライムから引き離す。


「ギャアアア〜〜!!ゲホッ!オエ!!痛ェ!!痛ェェ!!」

「お、おい!何か布切れ!!」

「退きなさい!誰も触れてはなりません!」


引き離された海兵は触れた部分から煙が上がり、どうやら激痛が走っているようである。
拭ってくれと言う海兵に仲間達は布を探すもミコトが下がるように伝え、素早くスライムが触れた部分だけ常に身につけている羽衣を被らせる。
するとジワリと桃色だった羽衣が赤色へと変色していった。
バサリと被らせていた羽衣を退かせば不思議な事に海兵からは激痛はもとよりスライムの液体すらなくなっていた。


「え?今…おれァ…」

「あのスライムは毒性を持っているようです…その毒を抜かせていただきました。」

「あ、ありがとうございます!!ミコト様!!」

「これからは分からない物に無暗に触れないように」

「は、はいっ!!」


傾世元禳には解毒の効果はない。
ミコトの無数の能力の中にはやはり、毒があるのなら解毒する能力は勿論ある。
傾世元禳を使いその能力で毒を全て吸い取り回復させたのだ。
痛みも消えた海兵はミコトの言葉に強く頷き、ミコトは頷いた海兵を見たあとスライムへと顔を上げる。


「ミコト様!火で燃やしますか!?」

「いえ、どういう物なのか分からない以上、火は危険が伴います。」

「ではどうやって…」

「船は諦め、スライムごと吹き飛ばしましょう。」

「へ?」


放火が出来る銃を持ちミコトに断りを入れてから、と海兵がミコトの傍に歩み寄った。
しかしミコトに首を振られ、首をかしげていた海兵達の体がふわりと浮き上がる。
『うわっ!』と思わず声を上げた海兵達はあっと言う間にたしぎ(スモーカー)達のいる陸へと飛ばされた。


「お前ら…!どうしたんだ!?」


重力を諸共せず飛んで来た同僚たちに陸で囚人達と戦っていたG−5達が目を丸くさせ慌てたようすで飛んできた同僚に駆け寄る。
その少し後にミコトもふわりと降り立つ。


「おい、黒蝶…どういう…」

「説明は後です、少々動かないで頂きたい」


ふわりと降り立ったミコトにたしぎ(スモーカー)は怪訝とさせミコトに歩みより、立ち止まっていたアスカとルフィはミコトの姿に『お姉様!/姉ちゃん!』と声を上げたが、ミコトはチラリと2人を見ただけで何の反応もせず、手に扇子を持つ。


「"五火七禽扇"」


バッ、と扇子を開き、ミコトは軽く振り下ろした。
軽く振り下ろしたはずなのに突風が吹き荒れ、あたり一面台風のように物が舞う。
しかし何故か海兵・麦わらの一味は何かに守られるように風の影響を受けずにいた。
ただ囚人達は強い風に体が浮き上がり海へと放り出されてしまった。
突風は直ぐにやみ、辺りは瓦礫だけが残され、せっかく取り返した船ごとスライムも消えていた。


「奪還した船ごとは痛いが…どうやらあのスライムは消えたようだな…」

「そうでもないようです」

「あ?」


船が粉々になったのは正直痛い。
連絡する方法がなくなったのだか、たしぎ(スモーカー)はミコトに文句は言わなかった。
あのスライムの正体が分からない以上、下手に触れば多大な被害が広がる。
それだけは今の状況からして避けたかった。
戦う人数は多いほどいいのだ。
しかしホッと胸を撫で下ろしていたたしぎ(スモーカー)の言葉にミコトは首を振る。
そして空を指差したのだ。
それに釣られて灰色の空を見上げたその瞬間、たしぎ(スモーカー)の耳にボトリと不吉な音が届く。


「うわあああああ!!!出たあああ!!!」


音のした方へ確認すればそこにはミコトが吹き飛ばしたはずのスライムが落ちて来た。
それも1つではなく何個も。


「どうやら親がいるらしいですね…その親がこのスライム達をこちらに飛ばしてきている…だから吹き飛ばしても無駄、という事のようですわ」

「なに呑気なこと言ってんですかー!どうにかしてくださいよーっ!!」

「無理ですわ。ここからじゃその親元が見えないですし……見えない物をどう始末しろと?」

「ええええ!!?そんなァァ〜〜!!!」


辺りは危険物が降ってくる事に慌てふためいていた。
其の中でもミコトは異様に落ち着いており、スライムが振ってくる空を見上げ冷静に分析していた。
そんなミコトを頼りにしていた海兵だったがきっぱりと断られた事に絶望が襲う。


「ミコトさん!スモーカーさん!!危険です!!屋根のある場所へ!!」

「…ああ」

「そうね」


空を見上げるミコトとたしぎ(スモーカー)にスモーカー(たしぎ)は慌てて避難するように伝えた。
頷いた2人はゆっくりと屋根のある場所へと向かおうとしたが、たしぎ(スモーカー)がある影を見つけ、足を止める。
立ち止まったたしぎ(スモーカー)にミコトも気付き、視線を伝っていけばミコトも驚きの表情を見せた。
その影とは…


「シュロロロ…いいコだ…3年も閉じ込めて悪かったな…!」


政府が切って捨てた賞金首の科学者…シーザー・クラウンである。
シーザーは軍艦の残骸の上で呑気にも座り、そのシーザーの姿に残っていた囚人達は慌てた。


「やっぱりか!!お前がシーザー・クラウンで間違いないな!?」

「お前かァーーー!!マスターってのは!!!」


ミコトは一度もシーザーとは会った事はない。
それどころかここに足を踏み入れたことがないのだ。
だが、そんなミコトでもシーザーという科学者がこの目の前の男だろうという事は予想は出来た。
たしぎ(スモーカー)とルフィの声が重なったのを聞きながらミコトは何も言わず表情をそのままにシーザーを見上げていた。


「シュロロロ!いかにもそうだ!!海賊"麦わらの一味"ど海軍G−5゙!!そして、―――゙海軍大将黒蝶゙!」

「…………」


軍艦の大砲に座り、ルフィとスモーカー達の名を呟く。
その際、ミコトの名も呟くが…今までただ下を見下ろしていたシーザーの視線が、ミコトへと向けられ目を細めた。
その反応にミコトは嫌な予感が過ぎる。
それはきっとシーザーの後ろにいる後ろ盾の存在からだろう事はミコトは知っている。
グッと息を飲むような表情を浮かべるミコトにシーザーは愉快そうに笑う。


「もう少し待ってくれ…あいつは水が苦手だからよ!あの湖を越えるために今少しずつ自分の゙欠片゙を飛ばしてんのさ!!」


クツクツと逃げ惑う海兵と囚人達を見つめながらシーザーは呟いた。
そして独り言のように更に続ける。


「炎の地からこの氷の地へ!!スライムの欠片が全てこっちへ届いた時!!お前ら全員味わうんだよ!!あの4年前の―――…」

「捕まえたァ〜〜〜!!!!」

「ええええ〜〜〜!!!?」


シーザーは舞台のように声をあげ、告げる。
しかしシーザーが完全に全て言い終わる前にルフィが飛んでシーザーの体に抱きついて拘束したのだ。
最後までいえなかったシーザーの驚きの声が辺りに響く。

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