(39 / 293) ラビットガール (39)

ルフィはゾロと話をし、ゾロから伝言を頼まれたらしく、海軍基地から離れてルフィは女の子にその伝言を伝えた。


「ほんと!?」

「ああ!一つ残らずバリバリ食ってたよ!」

「うれしいっ!!」


伝言、とはあの踏まれまくって泥だらけのおにぎりの感想だった。
ゾロはよっぽど空腹だったのか、ルフィでさえ戸惑う泥だらけのおにぎりを平然と食べたという。
それを聞いてアスカは『え…あれを?』と素直に驚く。
コビーはルフィの話を聞き、自身が聞いたゾロの噂と大きく違う事に戸惑いを隠せない。


「あの人…本当に噂通りの悪人なんでしょうか…」


コビーの零した呟きに女の子は真っ先に否定した。
女の子の話によれば、ゾロが磔にされたのは女の子のせいだという。
あの女の子のおにぎりを踏みつぶした人物はヘルメッポと言い、この町の海軍基地のトップであるモーガン大佐の息子だという。
そのモーガンは恐怖でこの町を支配しているらしく、海軍らしからぬ暴挙を繰り返していた。
権力を使い好き放題し、この町の住民に"貢物"を要求していた。
逆らう者には容赦なく切り殺し、その行いは既に海軍ではなく、海賊そのものである。
その男の息子であるヘルメッポは父の立場を利用し好き放題していた。
ペットの狼を散歩させる時だって外にいた町の住民はみんな跪いて頭を下げさせられており、ドラ息子のペットなんて躾がなっているはずもない。
案の定狼は傍にいた女の子に襲い掛かろうとした。
それを助けたのが、通りかかったゾロだった。
ゾロは狼にかみ殺されそうになったのを持っていた刀で斬ったのだ。
そのせいでゾロは海軍基地に磔にされてしまったという。
コビーはその話を聞き、更に混乱してしまう。
コビーが聞いたゾロは海賊狩りと恐れられ、人々には魔獣だと恐れられるほどだったはず。
だが女の子やルフィから聞くゾロはどうも恐ろしいだけの人間とは思えなかった。
うーん…と頭を悩ませていると非常に耳障りな笑い声が4人の耳に届く。


「ひえっひえっひえっひえっ!!頭がたけぇっつえんだろ親父に言うぞ!!」


その笑い声に大通りの方へ目を向ければ、話題の一人だったモーガンの息子、ヘルメッポがいた。
相変わらず海兵達を引き連れて偉そうに歩いていた。


「3日後にはゾロのやつを公開処刑にする!!みせしめだ楽しみに待ってろ!!」

「3日後?…―――おい!お前!一ヶ月の約束はどうしたんだ!!」


大通りにいた町の人達は中央を開けてヘルメッポに跪き頭を下げていた。
それでも不快だというのに更にはヘルメッポは町の人達にゾロの処刑をすると言い始めた。
それも一か月後飲まず食わずで生きていたら解放するという約束を交わしておきながら三日後に処刑という無茶苦茶な物だった。
それを聞いて真っ先にルフィがヘルメッポに声を上げた。
ヘルメッポは突然現れた男に怪訝とさせ、自分の前に立つことに苛立ちを覚えルフィを睨む。


「そんな約束ギャグに決まってんだろっ!!それを本気にする奴もまた魔獣的にバカだけどな!!」

「―――!!」


ヘルメッポは元々ゾロを解放させる気はなかったようで、1人吹き出し笑うヘルメッポにルフィはブチリと切れた。
気づいたらヘルメッポを殴り飛ばしていたが、ルフィはそれを見ても当然だと思い反省はないし、そして後悔もない。
ゾロは約束を守ろうとしたのだ。
そんなゾロを踏み躙るヘルメッポを許せなかった。
しかし、長い間モーガン親子を恐れていた町の人達からはざわめきが起こり、全員がルフィの行動に顔を青くさせる。
女の子は目を丸くさせ、先ほどからルフィの突拍子もない鼓動にコビーは頭を抱え、ルフィの性格をよく知っているアスカは予想していたように平然としており、何よりもアスカもヘルメッポに腹を立てていたのだ。
自分の代わりに殴ってくれたルフィを『よくやった!』と褒め、グッと親指を立てた。
幼馴染の褒め言葉にルフィもアスカへ振り返りニカッと笑い、自分も親指を立て返す。
その場に呑気でいられたのはこの2人だけだった。







それからヘルメッポはモブのチンピラのようなセリフを吐きながら父親にチクるため海軍基地へと戻っていった。
ルフィは女の子を救い約束のために一ヶ月生き延びようとするゾロを気に入り仲間にすると言い出し早速海軍基地へ向かいゾロを救い出そうとする。


「無理ですって!!ルフィさん!絶対無理です!!っていうか逃げましょうよ!!」

「なんでだよ。おれはゾロを仲間にするって決めたんだ!逃げたきゃお前だけ逃げればいいだろ?」

「〜〜〜ッアスカさん!なんか言ってくださいよ!!ルフィさんを止めてくださいっ!!」

「無理。こうなったら梃でも動かないよ」

「そ、そんなァ〜…」


ルフィと付き合い始めた人間は、いつもアスカに助けを求める。
それはルフィと幼馴染だからだろうし、ルフィはアスカに甘いのに気付いているからだ。
しかしルフィはある意味本能で動いているとは言え、自分がこうだと思ったものはいくらアスカでも考え直さない。
勿論、それはアスカも承知の上なため、頼られても全て承諾してルフィを宥めるなどはしない。
こういう今のようなルフィの場合は特に。
頼りのアスカに断られたコビーは肩を落とし、前をどんどん進むルフィとアスカにとぼとぼとと続く。

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