基地へ近づくと一刻も早く仲間がほしいのかルフィは一足先に基地へと向かってしまった。
それを冷静なアスカともう慌ててルフィを追いかけるのも面倒になってきたコビーがのんびりと追う。
基地へつき塀の中へと入ると何故かゾロはいるがルフィの姿がなかった。
「ねえ、ルフィ知らない?」
「あ?あいつならおれの刀を探しに基地の中に入ってったぞ」
「ええ!?またあの人はムチャクチャな事を…!!」
「本当だぜ…何者なんだ、あいつは」
「ただの考えなし」
「ああ、なるほど…」
磔場にはルフィはおらず、魔獣と恐れられているゾロでもアスカは平然と普通に話しかける。
問いかけられゾロはルフィが基地内に入ったことを教えた。
ゾロの情報にコビーは敵の基地に単独で入るルフィに驚き、アスカは『ああ、そう』とただそう零すだけだった。
頭を抱えるコビーの言葉に頷くゾロだったが、アスカの言葉にも納得した。
コビーはアスカの言葉で納得するゾロに『そこ納得するところですか!?』と突っ込んだ。
まあ、ルフィの行動を読める者などこの世にはおらず、アスカはルフィが静かに侵入できるはずもないと知っており時間もないため早速ゾロの縄を解こうとし、縄に手を伸ばすアスカにハッと我に返ったコビーも同じくゾロを解放するために縄へと手をやった。
自分の縄を解こうとする2人にゾロは驚き目を丸くさせる。
「おい!いいのか!おれに手を貸せばてめェらが殺されるぞ!!」
「あなたに捕まる理由はない筈です!!ぼくはこんな海軍見てられない!!」
女の子の話を聞き、海賊を狩っているゾロが捕まる理由がないのに気付く。
今までゾロの恐ろしさから忘れていたが、海賊を狩る者は確かに金目的だと海兵達からはあまり好かれてはいないが、海賊を捕まえてくれているのだからこうして磔にされる理由はゾロにはなかった。
話を聞いて海兵になりたいという夢を持つコビーはどうしても許せなかった。
「ぼくはきっと正しい海兵になるんです!!ルフィさんが海賊王になるように!!」
だからこそ、自分がなるべき海兵の道を決めた。
まだ海兵になるという夢だけを追っている時はふわふわとした具体的な道は決めていなかったが、この町のような海軍を見てコビーは自分がすべきことを決めたのだ。
ゾロはコビーの言葉を聞いて目を見張る。
「何?か、海賊王だと…!?意味わかって言ってんのか、あいつ…」
「えへへ…ぼくも驚きましたけど…だけど本気なんです!!彼はそういう人です!!」
「小さい頃から言ってたからね…絶対、本気」
海賊王、という称号はそう簡単には手に入らない。
まだどちらかと言えば海軍大将となる方が簡単だと揶揄されるほど、海賊王という称号は遠い存在だった。
海賊になるにも障害が大きく壁も高く厚いのに、その海賊の王となるのは容易ではない。
そのためルフィは多くの人に笑われ、笑われなくても本気にはされていなかった。
子供だったから特にだろう。
だが、アスカは何となく、ルフィが海賊王になるのではないかと思っていた。
だからアスカは自分の夢を海賊王をこの目で見ることに決めたのだ。
幼い頃からずっと言っていた、彼の夢を…この目で見たいと思った。
ゾロはコビーとアスカの言葉に唖然としていると、一発の銃声が響いた。
「コビーッ!!」
その銃声と共にコビーが倒れた。
ゾロもアスカも倒れるコビーに目を丸くする。
どさりと倒れるコビーにハッと我に返ったアスカは慌ててコビーに駆け寄る。
「ッ―――撃たれたああ!!血だああ!!血が出たあああ!!死ぬううああ〜〜っ!!!」
コビーに駆け寄ればコビーは痛みに声を上げ、血を見て顔を青ざめる。
今までアルビダの海賊船に乗っていたが、こうして銃を撃たれたり、あの頃は殴られたりして流血はあったがここまで大量の血が流れる怪我を負ったのは初めてで、混乱しているのだろう。
アスカも、そしてゾロもコビーの叫びにとりあえず生きていたことにほっとする。
どうやら撃たれたのは肩だったようで、命に別状はなかった。
「生きてたか…すぐに逃げろ!あいつらが下りてくるぜ!」
生きていた事に安堵していたゾロだが、撃ったのは海兵でしかありえず、海兵達が下りてくる前に逃げろと言った。
初めて感じる強い痛みに涙を浮かべていたコビーだったが、ゾロの言葉にハッとさせ自分の目的を思い出す。
「い、いえ!!…ッ、そ、そうだ…あなたの縄を解かなきゃ…!!」
「俺はいいんだ!!1ヶ月耐えれば助かるんだから早く…」
「言っておくけど、あんたは助からない。三日後に処刑されるの」
ゾロはとにかく自分を助けるために殺されるであろうアスカとコビーを逃がしたかった。
だが、コビーは痛みに震え血で濡れている手で必死に固く結ばれている縄をほどこうとし、アスカはあの約束は無意味な事を教える。
アスカの言葉にゾロは絶句した。
縄を解こうとするコビーへ顔を向けていたゾロはアスカの言葉に目を丸くしアスカを見た。
「何言ってやがる…!俺はここで1ヶ月生きのびれば助けてやるとあのバカ息子が"約束"を…!」
「そんな約束、あのバカ息子は守る気は更々ないみたいだよ?あいつ自慢げに三日後にあんたを処刑するって言いふらしてた」
「そうです…!だからルフィさんはあなたにかわってあいつを殴ったんだ…!!真剣に生き抜こうとしたあなたを踏みにじったから!!」
当然、ゾロは約束通り一ヶ月生き延びれば解放されると思っていた。
海賊ならいざ知らず、海兵なら、という考えもあったのかもしれない。
しかしあのバカ息子…もといヘルメッポは海兵の息子という立場でありながらも素性も悪かったが、約束など一切守る気はなかった。
それを知ってルフィはヘルメッポを殴り、海軍基地へと乗り込んだのだ。
ゾロは二人から聞き唖然とする。
そんなゾロをよそに縄をほどきながらコビーは続けた。
「もう海軍はあなた達の敵に回ってるんです!!お願いです!!この縄を解いたらルフィさんを助けて下さい!!彼は僕の命の恩人なんです!!あなたに海賊になれとまではいいませんがルフィさんが強いというのは本当です!!あなた達が手を組めばきっとこの町からだって逃げ出す事ができるでしょう!!逃げて下さい!!」
コビーは必死に痛みに耐えながらゾロに訴えた。
自分はともかくルフィやアスカ、ゾロがそろえばきっと海軍から逃げることが出来ると思った。
アスカの実力は知らないが、もし戦闘が出来なかったとしてもルフィがアスカを守るだろうと踏んでいる。
それを聞きながらアスカも縄をほどこうとするも海兵に見つかってしまい、三人を包囲いた海兵は銃を向ける。
「そこまでだ!!モーガン大佐への反逆につきお前達3人を今この場で処刑する!!」
海兵に銃を向けられ、アスカは2人の前に立ち壁となろうとした。
2人の前に立つアスカにコビーもゾロも目を丸くしたが、海兵達はアスカが間に入ったことで警戒を高め構えていた銃を握る手を強める。
アスカがやられる前にやろうと思いウサギを出そうとした。
その時…海兵達の後ろからこの基地のトップであるモーガンが現れる。
モーガンは三人を睨みつけ、アスカとゾロは睨み返し、まだ殺伐とした空気に慣れていないコビーは怯えきっている。
「面白ェ事やってくれるじゃねェか…!てめェら"4人"でクーデターでも起こそうってのか?―――ロロノア・ゾロ…てめェの評判はきいていたがこのおれを甘くみるなよ!貴様の強さなどおれの権力の前にはカス同然だ…!!」
モーガンはゾロとルフィとアスカ、コビーが結託してクーデターを起こそうとしていると勘違いしていた。
否、ある意味勘違いではないが、ゾロを含む4人が共犯者だとは思っているようである。
モーガンは自分の石像をルフィに壊されたこともあり、その仲間であろう3人を逃がす気は更々なく、モーガンは部下達に射殺するよう命じた。
その命令に部下達は戸惑った様子を若干させながらも上からの命令のためそれに従う。
銃声が響き、アスカはウサギを壁とする技、"ラビットウォール"で銃弾を防ごうとした。
しかしウサギを出す寸前にアスカの目の前に何かが降って落ちてきた。
アスカは一瞬でその降って来た正体に気づき技を取り消す。
アスカの前に落ちてきたモノ…それは…
「お前っ…!!」
「ルフィさん!!!」
ルフィだった。
ゾロの刀を取りに言っていたらしいルフィは見つけた刀を持ってその部屋からアスカ達のところに文字通り飛んできたのだ。
ルフィは3人を庇い体に銃弾を受けるが…ゴムゴムの実を食べたゴム人間であるルフィの体は銃弾を貫通させることなく、その受けた弾全てを弾き飛ばした。
ルフィが銃弾を受けたことで色々限界を超えてしまったようで、コビーは気絶してしまう。
「ルフィおそい!」
「いやー!すまん!」
長年ルフィの幼馴染をしているアスカはルフィが銃弾に効かないのも、打撃も効かないのも知っているため初見のゾロのように驚くことはなかった。
逆にギリギリになって来たルフィにアスカは怒っており、ルフィはぷんすか怒るアスカに笑って誤魔化した。
それほど怒っていないアスカは笑って誤魔化すルフィにため息を送る事で許してやる。
「てめェ!一体何者なんだ!!?」
「おれは海賊王になる男だ!!」
「…!」
ルフィが悪魔の実の能力者とは知らなかったゾロは銃弾を貫通させず弾き飛ばすルフィを見てギョッとさせ驚く。
ゾロの問いに素直に答えるルフィにゾロは驚愕させた。
能力もだが、何より海賊王になるとはっきりと答えるルフィに驚いたのだろう。
海賊王になるという夢は世間で言えば夢のまた夢…絶対かなうはずもない夢なのだから。
ルフィは驚き唖然とするゾロをよそに手に持っていた3本もの刀を見せる。
「ほら、お前の宝物どれだ?わかんねェから三本持ってきちゃった」
「三本ともおれのさ…おれは"三刀流"なんでね」
ルフィは悪魔の実のため武器は必要ない。
だからどの刀がゾロのかが分からなかった。
そのため三本掛けてあった刀を全部持ってきたのだが、その三本全てがゾロのらしい。
銃弾が効かないルフィの登場に海兵の中で困惑が生まれた。
海兵のざわめきを背景にルフィはゾロにある提案をする。
「ここでおれと一緒に海軍と戦えば政府にたてつく悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」
「てめェは悪魔の息子かよ…まァいい…ここでくたばるくらいならなってやろうじゃねェか… 海賊に!!」
ある提案とは、死ぬか・海賊となって生きるか、であった。
ゾロは究極の選択に『悪魔の息子』という表現に聞いていたアスカもゾロの言葉に深く頷いた。
そして、ついに―――ゾロが仲間になった。
ルフィは仲間が一人増え、ニカッと嬉しそうに笑った。
40 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む