完全にルフィとローに当てられたスモーカーとたしぎはキッパリと今の事を忘れると決めた。
特にスモーカーはこの事を知って更に鬱陶しい人物を思い出し、忘れた方が身のためだと思ったのか忘れると本気で決める。
下にいるG−5にローの言葉通りに『R棟66』へ向かい、その間誘拐された子供も回収しろと指示をだし、G−5はローの言葉、そしてそれに従う麦わらの一味達に戸惑っていたが上司であるスモーカーの言葉に戸惑いなど消し去る。
走り出した部下達を見送りながらスモーカーはたしぎにも指示を出した。
「たしぎ、お前は野郎共率いて先に行け!」
「え…!?スモーカーさんはどこへ!?―――!、まさか…ヴェルゴを…!?」
「………」
スモーカーのその指示にたしぎは目を見張る。
てっきりスモーカーもG−5と共に脱出と子供たちの救出に向かうとばかり思っていたためだろう。
だが実際は違っていた。
たしぎはスモーカーの指示に怪訝とさせていたが、その意図を察しハッとさせる。
「法律じゃあ"落とし前"ってもんはつけられねェんだ…たしぎ!おれの手でやる…!海軍をナメくさりやがって…!!」
スモーカーの言葉にたしぎは一瞬言葉を失くした。
確かに、法律では落とし前というものはつけられない。
しかしそれはあまりにも危険すぎた。
たしぎは反対しようとしたが、ふとミコトの事を思い出し我に返る。
「スモーカーさん…ミコトさんは…」
「……あいつなら無事だろう」
「そんな!!ミコトさんは今普通の女性なんですよ!?それにドフラミンゴはミコトさんを執拗に狙っていると聞きます!!もしもミコトさんが…」
「たしぎ、お前があの女を心配するのは勝手だが……少しはあの女を信用しろ。」
「―――!!」
「あいつは腐っても大将だ。」
たしぎはミコトを心配した。
ミコトは自分の目の前で海楼石と同じ効果を持つ液体を飲まされてしまい今は普通の人間となっている。
いくら大将だからといっても普通の人間されては男と女の力は歴然である。
だからたしぎはミコトの事が心配で仕方なかった。
だが、たしぎはスモーカーの言葉にハッとさせた。
そして確かに、と思った。
スモーカーの言う通り、ミコトは大将という役職に付き、ずっとその地位を守ってきている。
ミコトは最強と言われてきた海兵なのだ。
たしぎはそれなのにミコトを信用などしていなかった事に気付かされた。
心配はいくらでもしてもいいだろう。
しかし同じ海兵として、そして彼女から見て部下である自分がミコトの力を信用しなくてどうするのだと、たしぎは気付く。
「じゃあ…じゃあ!ヴェルゴのもとにいくのなら私も連れてってください!!彼の強さは本物ですよ!?もしもの事があったら…!!」
たしぎはミコトの心配はしても『きっと大丈夫』と言い聞かせた。
そして役に立たなくてもせめてついて行きたいと思う。
ヴェルゴの強さはまだ分からない。
しかし半端な強さでは海賊という事を隠して海軍に忍び込めないし、ジョーカーの一味で最もジョーカーに信頼されているのなら油断は出来ない。
だからたしぎも一緒について行きたいと思った。
自分はスモーカーの部下なのだから、と。
しかし…
「部下達を誰が守るんだ!あのガキ共を逃がせ!ガキ達もな!!」
「…!」
また、たしぎはスモーカーの言葉に気付かされた。
そして今度は何も言わず、表情を引き締めスモーカーにゆっくりと力強く頷いて見せ…たしぎは下へ向かう階段へと掛けていった。
◇◇◇◇◇◇◇
スモーカーは下へ向かう部下の背を見送り、咥えていた葉巻を吸い込み白い煙を吐き出す。
「……信用しろ、か」
そして、ふと言葉を零した。
思い出すのは研究所前でシーザーに捕まったミコト。
まだローによってスモーカーの中にたしぎがいた時。
たしぎが倒れるミコトに駆け寄った時、スモーカーはただ見つめていた。
それは信用しているとかミコトがどうでもいいとかそんな理由ではない。
まさかシーザーが現れミコトが行動に移すなど思ってもみなかったのだ。
休暇だと言っていたミコトが動くと、スモーカーは思ってもみなかった。
いい訳にすぎないが、本当にそう思った。
だから唖然とミコトを見ていてスモーカーは気付いたのだ。
気を失う寸前、たしぎが中にいたスモーカーが自分に向かってくるのを見てミコトが何かを呟いたのを。
もし…スモーカーが間違っていなければ
それは――…
『シャンクス』
あの海賊だった。
ミコトは何故かルフィでもなければアスカでもなく……密かに繋がっていたらしい『赤髪』の名前を、呟いた。
その意味をスモーカーは知らない。
いや、気付かないようにしていた。
「……………」
スモーカーは何ともいえない感情が湧き上がりまた葉巻の煙を吸い込んだ。
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