ゴゴゴ、とうねりをあげるようにモニターから不気味な音が零れる。
ミコトはモニターを見なくても大体の想像はつくため、振り返りもしない。
「終わりだ!!シュロロロ!!このパンクハザードにもはや生物が生きられる空間はない!!」
それに対し、シーザーはモニターから映し出される映像を見て満足気に笑い声を上げる。
聞いていたミコトはその笑い声が無性に腹が立った。
目の前のモニターには紫色のガスがもうもうと立ち込めており、ガス以外では山のような氷しか映し出されていない。
しかしシーザーは『だが!』と続け目を凝らしてモニターを見た。
「なぜ正面入り口に『G−5』共がいない!!なぜ奴らの固まった姿が映らない!?これは『シノクニ』の公開実験だぞ!!!」
どんなに目を凝らしても、睨みつけても、モニターにはG−5の姿がなかった。
その上檻も固まっており中を確認できなかった。
シーザーの苛立った声を耳にしたミコトはゆっくりと顔を上げ振り返って地獄絵図であるモニターを見る。
それに気付いたモネがヴェルゴに声を掛ければヴェルゴもまたミコトへと振り返る。
ミコトはG−5の姿がない事に『ある憶測』を立てた。
それはG−5が無事だという事である。
しかし短い間だが彼らに毒ガスから逃げきるという知能はないはずだと、失礼ながらもミコトは思い、では…、とミコトはある結論に辿り着く。
その瞬間、張り詰めていたミコトの緊張が解かれミコトの意識は暗闇に包まれた。
「黒蝶…!」
ヴェルゴは突然倒れるミコトに駆け寄り抱きとめた。
どうやら気を失っているようで、いくらヴェルゴが声を掛けても眉1つピクリともしない。
弟達が無事だろうという安心感によって張り詰めていた緊張が解かれ気を失ったミコトを抱き上げたヴェルゴは静かにモネとシーザーの後ろに置かれているソファへと横に寝かせる。
漆黒の瞳を閉じ眠るミコトの髪を撫でているとモニターへ視線を戻していたモネがヴェルゴに声を掛ける。
「どう思う?ヴェルゴ」
「…『G−5』が見当たらねェのは檻の奴らが逃げた証拠だ……"ウチの"海兵は暴力バカの集まり―――自力じゃ逃げられねェ……まあ、何にせよ…ローを逃がすのはいかんな…目的次第では――直接消すしかない。」
「何だヴェルゴ!あいつらが逃げたとでも!?」
モネに問われヴェルゴはミコトの傍を離れモニターを見上げる。
ヴェルゴの言葉にシーザーが信じられないと言わんばかりに声を上げるも、慌てて入って来た囚人の言葉に耳を疑った。
「"M"!!海賊"麦わらのルフィ"を筆頭に…!!敵全員が研究所内A棟ロビーに侵入!!更に奥へと動きはじめました!!!」
「…!!――んなァァにィィイ〜〜!?中へェ!!?」
囚人の言葉にシーザーは声を上げて驚く。
能力者は海楼石で拘束していたはずで、それでなくても鎖は生身の人間でも解く事は難しい。
パシフィスタを元に作られたであろうあの改造人間なら考えられるが、フランキーには他の鎖よりも頑丈な鎖で拘束していたはずでその考えはすぐに消える。
檻や閉まったはずのシャッターをどう突破したのか不明だが、囚人達の言葉にモニターに映らないG−5にモネやヴェルゴは納得した。
更に報告を続ける囚人の傍らを、小さなモノが通り過ぎたのだが…まさかの事態に驚くシーザーは気付きもしなかった。
「我が兵士達はどうしてる!!」
「A棟にはわずかな警備兵しかおらず本隊はB棟奥の屯所にて戦闘準備中!」
とりあえず驚きも少しは落ち着き、シーザーは現状を聞きだす。
その報告を聞き、シーザーは頭の中である作戦を立てた。
「奴らの目的は脱出だろう…!R棟66番ゲートへ向かう一本道!!そうはさせねェ!!A棟B棟間連絡通路を塞げ!!A棟を隔離しろ!!A棟の外壁を破壊し『シノクニ』を流し仕込むんだ!!」
「え!?そんな事すればウチの警備兵も一緒に…!」
「いいからやれ!!"監視電伝虫"の準備も忘れるな!!」
シーザーは最初の公開実験の失敗を改めてしなおそうとした。
侵入すれば侵入したでそれを利用すればいいと、シーザーは監視電伝虫を置くように指示を出す。
囚人は心優しい"M"のその指示に唖然とした。
戸惑う囚人に一喝したシーザーだが、ヴェルゴが動き振り返る。
「何かする気か、ヴェルゴ!」
「そんな罠にかかるのはせいぜいザコだけだ…ローやスモーカーを取り逃がして居場所を失うのはお前だけじゃねェんだ!シーザー!任せちゃけねェ!全てを切り裂いてやる!……ん?変だな…剣が見当たらない…」
「あなた剣士じゃないじゃない」
「そうだ、おれは剣士じゃなかった―――どれ、若造共を叩き潰して来よう!」
シーザーの失敗……それは自分達の失敗でもある。
ジョーカーであるドフラミンゴからシーザーの補助を任されているモネとヴェルゴもこの実験が失敗しスモーカー達が逃げれば居場所がなくなる。
そのため、ヴェルゴ自身が動かなければならなかった。
だがヴェルゴは剣を探すもモネの言葉に剣など持っていないことに気付く。
そして、ヴェルゴは脱出しようとするロー達のもとへと向かった。
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