ロビンは無事にアスカと共に茶ひげに乗り込むことが出来た。
どうやらゲートが閉まる騒ぎでロビンとアスカに気付かなかったらしいが、シーザーの指示らしいゲートの扉が閉まるのを見てロビンが『酷い事するわ』と零すとサンジ達はようやく傍に座るロビンと、ロビンに抱きついているアスカに気付く。
「うお!ロビン!アスカ!いつも間に…」
「ふふ、ちょっとルフィに頼まれ事をね」
海賊と海軍は相容れない関係である。
こんな非常時でもそれは変わらない。
G−5達は逃げ出そうとする麦わらの一味達を捕まえようと銃を構えた。
海賊を見れば銃を構えてしまうのは職業病とも言えるだろう。
しかしたしぎは剣を抜くゾロから海兵を庇い、海兵達を止めた。
たしぎがまさか海賊を庇うとは思ってもみなかった海兵達は驚きが隠せなかったが、シーザーが自分達を閉じ込め脱出できなくなるというたしぎの言葉に海兵達は慌てて武器を降ろし負傷者を運びながら急いでゲートの奥へと走る。
「とにかく聞いた!?今の話!!頑張れ茶ひげっち!!もっとダッシュよ!!」
「ハアハア…!ムチャな…!もう最速だ!」
たしぎの声はナミ達にも届き、ナミは茶ひげの肩に乗って茶ひげを急がせる。
だがワニである茶ひげにチーター並の走りを期待するのはムリというもので…すでに茶ひげは息を上げていた。
「アスカちゃん?どうしたんだ?」
サンジは笑みを浮かべるロビンにメロメロだった。
ナミからの叩きで減った体力ゲージは何故か『ナミさんからの励ましのエール!』とすり替えシーザーから与えられた傷もろとも回復していた。
まさに人間離れしたその所業を見てウソップはサンジにもう突っ込むのはやめようと諦める。
目をハートにさせるサンジは当然、ロビンに抱きついて離れないアスカにも気付く。
アスカは息を整うと何故かノソノソとロビンに近づき抱きついた。
珍しいそのアスカの行動にロビンは驚いたが耳が赤くなっているのを見て微笑みを浮かべ、宥めるポンポンとアスカの背中を軽く叩いてやる。
それはウソップも気付いており、珍しい光景に首をかしげた。
サンジはぎゅーっ、とロビンに甘えるように抱きつくアスカにどこか怪我でもしたのかと心配そうに声を掛けるもアスカからの返事はない。
それが更にサンジを心配させ、アワアワとさせるサンジにロビンが笑みを深め答えた。
「ちょっと色々あったのよ」
「へェ…あ、またルフィが駄々捏ねたか?」
「ああ、なるほど…最近ルフィの奴ずっとアスカちゃんの手を握ってたしな…………くそ羨ましい。」
何かを含ませて答えるロビンにウソップはあえて聞かないことにした。
しかしふと我らが船長の事を思い出し、ウソップの言葉にサンジも納得した。
自然だったため気付くのが遅かったが、この島に入ってみんなと合流した時からルフィの様子が可笑しい事にサンジ達は気付いていた。
何故かアスカの手を握って放さないのだ。
どうしてかは本人ではないサンジ達には分からないが、ルフィが言って聞くような性格ではないのを知っているためあえて触れずにはいた。
ボソリと本音を零すサンジにロビンは『そうね』と答えるだけだった。
そこでこの話題は終わり、呑気にしていても今の状況は危機なのは変わらず…今にも閉じられるゲートにサンジもウソップも気を取られていた。
それを見てロビンは2人に聞こえないようにギュッと力を入れて抱きつくアスカに小さく声を掛けた。
「アスカ、どうしたの?」
「……………」
耳が真っ赤だということはロビンしか分からない。
サンジもウソップも事情や上で起きた事など知りもしないため顔が赤くなっているだろうことには気付かなかったようである。
ただルフィが無理難題を言ってアスカが拗ねているのだとしか考えていないようだ。
しかしロビンは一部始終上で起こった事を見た。
だから出来るだけ優しくアスカが落ち着くように背中を優しくぽんぽんと叩きながら問いかけた。
「………ローは…」
「ええ」
「ローは…嘘つきだ…」
「嘘つき?」
ロビンの問いからアスカは口を閉じ、暫く無言が続いた。
しかしアスカは小さな声でポツリと呟く。
それをざわめきや騒ぎで聞き逃さないようロビンは聞き耳を立てる。
するとアスカからは何故か『ローは嘘つき』と答え、その答えにロビンは首をかしげた。
問い返すロビンにアスカはきゅ、と口を固く閉じかけたが…ゆっくりと口を開く。
「キス……しないって…」
「キスをしないって彼が言ったの?」
「ん。…2年前…助けてくれたとき…告白、されたんだけど……その時に…『キスは両想いになったらもらう』って…」
「そう彼が言ったのね?でも、それを彼自身が破ってキスをした…だからアスカは彼が嘘つきだって言いたいのね?」
「ん。」
サンジとウソップの考えどおり、アスカは拗ねているのかもしれない。
ロビンは幼い仕草を見せるアスカにそう思った。
それと同時に微笑ましくて胸の奥があたたかくなった気がした。
いくら体が年相応に成長しようと、好きな人と恋をしようと、ロビンにとってどんなに女らしく成長したとしてもアスカはいつまでたっても可愛い妹なのだ。
拗ねるアスカを見てロビンは少しホッとしたのかもしれない。
ロビンがアスカの呟きを整理してくれたお陰でアスカは少し落ち着きを取り戻したのか抱きしめる力を少し弱める。
そしてアスカの体が震え鼻を啜る音が聞こえ、ロビンは切なくも感じた。
だから傍観を決め付けてもフォローに回ったのかもしれない。
「アスカはキスされて彼を嫌いになった?」
「……なってない…」
「そうね…じゃあ驚いただけなのね」
「…分からない……もしかしたら…ルフィの前でされたのがショックなのかもしれない…」
「そうね…ルフィ、凝視してたものね…」
「…………マジで…?」
「マジで。」
「……………」
今、アスカの心境はきっと色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざっているのだろう。
そうロビンは推測していた。
まだ恋という恋をしたことのないアスカにとって、初めての恋に戸惑っているのかもしれない。
ロビンに縋りついたのもきっと相談しやすかったのだろう。
同じ女であるナミは考えるよりも結果は見えており、サンジもまた然り。
ロビンの予想ではナミは怒り狂ってモンスターになり、サンジは女のような悲鳴を上げて気を失いついでに心肺停止になるのだろうと予想していた。
それが正しいにせよ間違っているにせよ、アスカの選択は正しかった。
まああれだけ過保護な姿を見ていれば自然とロビンを頼りにしてしまうのは無理もないのだろう。
ロビンは少しずつ混乱と戸惑っているであろうアスカの心と気持ちを整理させてやるも、ルフィの様子を思い出し愉快そうに笑った。
別にルフィやアスカを馬鹿にはしていない。
ただあれほど凝視するルフィが面白かったのだ。
何もあんなに見つめなくても、とロビンの感想はこうである。
アスカはロビンの言葉に顔をあげる。
その表情は目をまん丸とさせ驚いていたが、頷いたロビンを見てアスカは再び顔を真っ赤にさせ幼馴染に見られていたと知り羞恥から言葉なくまたロビンの肩へと顔を戻した。
ロビンは同情半分愛しさ半分に慰めるようにアスカの髪をなでてやる。
「……あとでなぐってやる…」
ポツリとアスカはそう零した。
当然ロビンにも聞こえており、その相手が『ロー』なのか『ルフィ』なのかは分からない。
だがどちらかにせよ同情の余地はないとロビンは素で思ったという。
いくら同盟相手の船長でも、自分の船長でも…可愛い妹には勝てないようである。
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