(101 / 274) ラビットガール2 (101)

麦わら一味達が先へと急ぎ暫くするとたしぎは部下達の励ましに涙を止める事が出来た。


「行こうぜ大佐ちゃん!!先へ!!」

「閉鎖された筈のパンクハザードでこんな兵器が作られてたんだ!!ほっときゃ被害は世界に及ぶ!!」

「島を出て海軍本部に知らせるんだよ!!おれ達が軍に帰れなきゃ誰も報われねェんだぜ!大佐ちゃん!!!」


しかしまだ足を止めているたしぎを説得させる為海兵達は次々に声をかける。
その言葉はどんな慰めより効いた。
確かにここで燻っていてまたガスが入ってきて逃げれなかったら軍に知らせる事も出来ない。
スモーカーに部下を任されたのを思い出したたしぎは気持ちを切り替える。


「ごめんなさい…よく分かってます…行きましょう!!」


グッと涙を呑むたしぎに海兵もゾロ達を追いかけるように脱出しようとした。
しかしある海兵の1人がある事に気付き、天井を指差す。
そこにはありえないモノが飛んでいた。


「ぎゃああ〜〜!!!」

「何だァーー!!あの生物は!!あれは"麦わらの一味"について来てた奴だろ!?」

「いつの間にここまで…!!」


脱出するために動こうとしたその途端に頭上から勢い良く炎が降ってきた。
その炎を降らせていたのが小型のドラゴンである。
口から炎を吐き海兵達に襲い掛かるそのドラゴンに海兵達は目を丸くさせる。
トカゲだと思っている海兵にたしぎは少し前に聞いたことのある情報を口にする。
ここパンクハザードにはベガパンクが護衛として創ったドラゴンがいるという情報に海兵達は驚きが隠せない。
その間でもドラゴンは素早く動き海兵達を襲っていく。
幸い海兵達に怪我はないが、鋼鉄で出来ている頑丈の壁を粉々にする顎を持つドラゴンに海兵達はゾッとさせた。


「逃げろ!!B棟へ〜〜!!!」

「飛ぶわ速ェわ火ィ吹くわ鉄噛み砕くわ!!なんだ!この怪物〜〜!!」


バキバキと音をさせ鋼鉄を粉々に噛み砕くのを見て顔色を蒼くさせ向かって来るドラゴンにガス以上に海兵達は逃げる。
逃げる海兵を追いかけ近くにいる者達に襲うドラゴンだったが、次の瞬間何かを察知したように海兵達など目もくれず我先にB棟へと飛んでいく。


「何だ!!?」

「素通り!!?逃げた!?何か焦ってねェか!?」


先ほどまで襲っていたはずのドラゴンだったが、突然何かに怯えながら飛んでいき、そんなドラゴンにたしぎは呆気にとられながら見送った。
B棟には海賊達がいるが、あの海賊達ならどうか切り抜けるだろうとたしぎは騒ぐ海兵達に振り返る。
通路の出口の辺りの海兵が酷く騒がしく、海兵達は喜んでいるのが見える。


「たしぎ大佐〜〜!!喜んでくれ!!パンクハザートに強力な援軍が!!」

「あー!!えー!!?ホントかよ!!信じられねェ!!」

「やった!よかった!これで助かった!!」


一体なんだろうと思っていると、目の前に現れた人物にたしぎは目を疑った。
その人物とは――…


「大佐ちゃん!見てくれ!!ヴェルゴ中将が助けに来てくれたァ!!」

「電伝虫を奪われる前に誰かの通信が通じたんだ!!じゃ!もう本部にも伝わってんのか!?中将!!」

「援軍はどのくらい来るんだ!?」

「――ッ!!!」


その人物こそ最も警戒しなくてはならない人物である……ヴェルゴだった。
ヴェルゴの裏切りを知らない海兵達はヴェルゴを何の疑いもせず素直に喜んだ。
ヴェルゴはただ1人ヴェルゴの裏切りを知り違う意味で驚きを見せるたしぎを視界に写すも表情ひとつ変えず歓声の中を悠々と歩いていた。


「スモやん中将!ヴェルゴ中将!『G−5』の2トップが揃った!!もう無敵だぜ!!」

「違う…!逃げて…みんな…!!」


ヴェルゴを心から慕うG−5の海兵達はヴェルゴが来た事に喜んで歓迎していた。
スモーカーもいて、ヴェルゴもいて、そしてミコトもいる。
無敵だと思っていた。
しかしそれは全くの真逆だった。
海兵達は味方だと信じ込んでいるヴェルゴの『指銃』によって次々と倒れていく。


「え…」

「え!?」

「ギャーー!!」

「痛ェ〜〜!!」


無表情に人差し指1つによってヴェルゴは海兵達を刺していき…仲間達はヴェルゴによって次々と血を吐き出しながら倒れていく。
すでに瀕死の者もいた。


「ヴェ、ヴェルゴ中将!?そいつら何か失態でも!?いくら体罰でも…!!あんたの『指銃』なんかくらっちゃ命が…!!!」


突然の行動に周りの海兵達は呆気にとられていた。
味方だと思っていたヴェルゴがまさか自分達を殺しに掛かるなど誰が思ったのだろうか。
中将クラスの『指銃』などただの一般兵の自分達には死に繋がる。
失態をしたとしてもそれはあまりにも酷い仕打ちだった。
止めに入った海兵もまたヴェルゴに刺され無残に倒れていく。
それをたしぎは見ていられなかった。


「みんな!!離れて!!そいつはもう…!あなた達の知る男じゃないッ!!!」


たしぎは衝動的に剣を抜いた。
たしぎとって今剣を抜く動機はどうでもよかった。
ただたしぎは海軍を騙した上に自分を心から信頼し尊敬していた部下であるG−5達を何の躊躇もなく殺しに掛かるヴェルゴが許せなかった。
自分も騙されたが、それは別に構わない。
悔しい気持ちではあるが、G−5達を容赦のない力で倒していくのを見て腹が立ったのだ。
力の限り地面を蹴り己に向かって剣を抜くたしぎにヴェルゴは焦る事なくただ立っていた。


「コイツは…!ずっと昔から……―――、!!!」

「大佐ちゃん!!!」


しかし、ヴェルゴとたしぎの実力はあまりにも格差があり、たしぎは剣を振り下ろすも武装色の覇気によって防がれてしまう。
それでもたしぎは攻撃をやめなかった。
今は怒りに任せながらも的確に急所を狙いヴェルゴが裏切った事を海兵達に伝えようとする。
しかしそれを察したヴェルゴがその先を言わんとするたしぎを殴り飛ばして遮ってしまう。


「コイツ偽者だァ!!ヴェルゴさんがこんな事するわけがねェ!!変装か!?能力者か!?マネしてんじゃねェよ!!!ヴェルゴ中将はなァ…!!こんなはみ出し海兵のおれ達をいつも庇ってくれる…!仁義の男だ!!マネすんじゃねェ!!偽者ォ!!!」


海兵達は今目の前で広がっている光景が今も信じられなかった。
海兵達の信じるヴェルゴは、優しく、だがただ優しいだけではなくはみ出し者と呼ばれる自分達を叱ってくれる人物であり、女性に手をあげ人を意味もなく殺しにかかる人物ではない。
だからどうしても目の前のヴェルゴがあの自分達の知るヴェルゴだと信じ切れなかった。
だから偽者なのだと叫ぶ。
ヴェルゴはそんな叫びなど余所に偽者を倒そうと向かって来る海兵達をあっと言う間に倒してしまう。
海兵達は涙を流し、血を流し…たしぎの目の前で倒れていった。


「…やめ、て……っやめて…!!」


立ち上がろうとしても倒れた拍子に頭を打って朦朧とするたしぎの悲痛な声はヴェルゴにも誰にも届かない。
ただただ部下が次々に倒されていくのを見ているだけしかできなかった。
それが堪らず悔しい。
スモーカーに任されたはずの任務も出来ない自分に、たしぎは腹を立てていた。
しかし…



「お止めなさい」



たしぎの耳に、優しく、柔らかい……―――ミコトの声が届いた。

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