アスカは船の先端に移動して目を凝らす。
しかし前は海ばかりで、後も、左右も海、海、海。
アスカは溜め息をつき後ろへと振り返る。
「ねェ、全然なんだけど……まだなの?」
「もっ、もう少しです!!!」
「えー、まったく見えないんだけど…担いでないでしょうね?」
「か、担いでませんよ!!全然担いでません!!」
アスカが振り返れば、そこにはゾロと男三人がいた。
その男達はボロボロになっており、アスカの問いに慌てて首を振る。
なぜ、仲間になったばかりのゾロ意外に男が三人乗っているというと…少し話はさかのぼる事になる。
――――あの後、ゾロを助け仲間にしたルフィとアスカは、最初に食事をした店で久々の食事であろうゾロと食べていた。
そこは食欲魔神としてルフィは一週間以上食べていなかったゾロより食が進んでいた。
海賊と聞き捕まえに来た海兵達の前でコビーの海兵となる道のためコビーを殴り、三人はコビーと別れることになる。
アルビダ一味からコビーが貰った船で出航しようとした際、コビーと、そしてあの町で町の人達と共に苦しんだ海兵達が全員敬礼をして海賊であるルフィ達を見送ったのだ。
あの海兵達も恩人だと分かっているからこそ、追い払うようにしながらも本部への連絡を避けてくれたのだろう。
海兵に見送られるという奇妙な出航となった。
―――ゾロを仲間にし、コビーとは別れたルフィ達三人は海のど真ん中に彷徨っていた。
というか遭難していた。
「だいたいお前達が航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?」
「おかしくねェよ漂流してたんだもん俺達は!!」
「ルフィ、それ威張れない……あんたこそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったの?」
「おれはそもそも賞金稼ぎと名乗った覚えはねェ…ある男を探しにとりあえず海へ出たら自分の村へも帰れなくなっちまったんだ…仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた…それだけだ」
「何だ、お前迷子か」
「何よ、あんたも迷子なのね」
「その言い方はよせ!!!――まったく…!航海もできねェなんて海賊が聞いて呆れるぜ!これじゃ"偉大なる航路"も目指し様がねェ…早ェとこ"航海士"を仲間に入れるべきだな」
遭難したと発覚し、航海技術がない2人にゾロは呆れた。
よくもまァ航海の知識がなくて海にでようとしたな…と思っているとアスカの問いにゾロは眉間にしわを一つ増やしながら答える。
しかしその答えとは、ただの迷子発言だった。
自分と同じ迷子な彼に突っ込む2人にゾロは決して『違う!!』とは言えなかった。
仲間、と言えばルフィはずっと仲間にしたいと思っていた仲間がある。
それは"コック"と"音楽家"である。
昔からアスカの父の影響で"海賊は歌って踊る!"と言っており、コックはブラックホールの腹を持つが故だろう。
しかし小さい小舟にキッチンもなければ追われるように出航したため食べ物もない。
あるとしたら飲み干せないほどある塩辛い水分に、生臭い魚のみ。
三人の空腹も限界となっていた。
ルフィとゾロは空腹に寝転がっており、アスカも空腹から体に力が出ず船べりにもたれていた。
すると仰向きでダウンしていた二人の目の前に鳥の姿が見え、鳥の姿に真っ先に反応したのはルフィだった。
「え?何?鳥?食べ物??」
「食おう!あの鳥!!」
「でもどうやって…」
ガバリと起き上がったルフィにアスカも俯いていた顔を上げる。
ゾロものそりと起き上がり、食べると言い出すルフィに2人は怪訝とした。
アスカもゾロも空を見上げれば確かに鳥の姿は確認できるが、鳥はその自慢の羽で大空を飛んでおり、手が届く場所にはいない。
空を見上げながらのアスカの問いにルフィは手をマストに伸ばした。
「なるほどね…」
「ルフィにしては頭使ったわね…」
ゴム人間の体は非常に伸びる。
喧嘩している時も相手はこちらに手は出さないが、アスカの性格上だからと言って遠慮はせず頬を抓るくらいはさせてもらっており、その際もルフィの頬はこれでもかという具合に伸びに伸びる。
その伸びる体を利用し、ルフィはマストを掴みその勢いで空を飛んでいる鳥に向かって飛んだ。
それにアスカもゾロもなるほどと納得したのだが…
「あ…」
「は!?」
飛んだルフィは着地を誤り、鳥の体を掴むのではなく、何故か鳥に頭を咥えられてしまった。
ルフィはそのまま鳥に連行され、アスカとゾロは慌てる。
櫂はゾロの傍にあったため、ゾロが船を漕いでルフィと、ルフィを咥えた鳥を追う。
「アホーー!!一体何やってんだ!てめェは!!」
アスカは船の先端へと移動し後ろ向きに漕ぐゾロが見失わないようにルフィ達を見上げていた。
すると漕いでいる途中に遭難者らしき三人組と出会う。
海で溺れている三人組はアスカ達に乗っている船に気づき大声で助けを求める。
「ゾロ、あそこ…」
「ん!?遭難者かこんな時にっ!!船は止めねぇ!勝手に乗り込め!」
「な、なにィ!!?」
とりあえず無視はできずゾロは無理難題を言う。
船を止めず勝手に乗り込めというゾロに遭難者達は驚きの声を上げるも、言葉通りゾロは船を止めず速さをそのままに突っ切ろうとしていた。
それに慌てた遭難者達は文句を言うよりも迫ってくる船に手を伸ばす。
「ひき殺す気か!!なんて乱暴な奴らなんだ…!」
無事乗れたらしい遭難者達は慌てていたのとずっと溺れていたのとで息が上がっていた。
しかし息が整えば遭難者達はどこからかナイフを取り出しゾロとアスカに向けて脅しをかけてきた。
「おい、船を止めろ!おれ達ァあの海賊"道化のバギー"様の一味のモンだ!」
鋭いナイフ、そして強面の男三人…男達が睨めば大抵の一般人は恐れていう事を聞く。
だが、運が悪い事にこの小船に乗っているのは……アスカとゾロだった。
「「あァ?」」
空気を読まずナイフを向け脅す男達にアスカとゾロの低い声が重なった。
そして…容赦のないゾロに反撃され、今に至るのである。
―――ゾロはタンコブだらけの男達に舵をさせ寛いでいた。
遭難者達に気を取られていたせいでルフィを見失い、アスカもゾロと同様のんびりとしていた。
「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかくまっすぐ漕げ。あいつの事だ陸でも見えりゃ自力で下りるだろう」
アスカもゾロと同じくそこは心配はしていない。
ルフィの生命力の高さは十分に知っているし、アスカもまたしかりである。
逸れた事に関してはもう仕方ないとあきらめるしかないと思い、ゾロは不意に気になった事を遭難した海賊たちに聞く。
「で?何で海賊が海の真ん中で溺れてたんだ?」
「それだっ!!よく聞いてくれやした!!」
海賊が遭難という愉快な出来事を聞こうとゾロは海賊たちに問いかけた。
その問いを待っていたらしい海賊の一人が経由を話し始める。
自分達はある海賊団に所属しており、一隻の船を襲った帰りだったという。
アスカ達も海賊だし海兵みたいに正義を信じているわけではないためそこはスルーした。
その船には奪った船から運んだ宝石などが乗っており、船長に届ける途中だった。
しかしその途中、女を乗せた船を発見し、様子を見にいけば女はぐったりとしており、遭難しているという。
女は乗せていた宝石などが入っている箱と交換に、水とパンを望んだ。
勿論、水とパンを差し出すだけで金目の物を貰えるというのなら、海賊は喜んだ。
しかしその中身が確実に金目の物とは限らず、確認してからという海賊を女は衰弱寸前で力も出ないためこちらの船に来て確認してほしいと言った。
海賊たちは辛そうに言う女を疑いもせず全員女の船へと乗り込んだ。
しかし…女はいつの間にか海賊の船に乗り込み、気づけば女と自分達の船は遠くに。
女の船に乗せてあった宝箱も開ければ中は空だった。
女に騙された海賊たちだったが、更に女にしてやられたらしい。
「天候まで操るのか…海を知り尽くしてるなその女…航海士になってくれねぇかな…」
「そうだね、そうしてくれるとありがたい」
女は天候を読んでいたらしく、海賊達が乗っている船は豪雨に当たり沈んでしまったという。
それを聞いてゾロは今一番欲しい航海士にピッタリだと零し、アスカもそれに同意し頷く。
アスカだって好きで遭難しているわけではないし、何より遭難はもう嫌である。
「あいつは絶対探し出してブッ殺す!!」
「それより宝をまずどうする?」
「そうだぜこのまま帰っちゃバギー船長に…!!」
「そのバギーってのは誰なんだ…?お前知ってるか?」
「知らない」
思い出せば腹立たしいのか、海賊達は声を荒げた。
しかしそれよりも宝である。
声を荒げた男は仲間の言葉にハッとさせる。
ゾロは海賊達の話に出てくる"バギー"という名前が気になりアスカに聞くもアスカも聞き覚えがなく首を振った。
「おれ達の海賊船の頭ですよ…"道化のバギー"を知らねェんで?"悪魔の実シリーズ"のある実を食った男でね……恐ろしい人なんだ!!!」
「悪魔の実を…?」
「ふーん」
海賊たちは、アスカもその悪魔の実を食べた人間だと気づいていなかった。
ゾロには既に言ってあるため、ゾロは海賊達の言葉にチラリとアスカを見る。
ゾロがアスカに目をやれば、アスカは興味なさげに呟いていた。
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