(108 / 274) ラビットガール2 (108)

ヴェルゴは任務を遂行するため、ローのいるSADの製造室へ到着していた。
SADの製造室へと到着すると丁度ミコトの目も覚ますも当然説明などなく、ミコトは手すりの柵を背もたれに降ろされる。
すでにそこにはローが立っており、ローは着地しミコトを横抱きに抱えなおすヴェルゴに表情1つ変えず見つめる。
周りを見渡してもアスカの姿がないことにローは顔には出さず安堵した。
ミコトはローの姿にロー達が何をしようとしているのかを察し、流れに身を任すかのように今にも死闘を始めんばかりの空気の2人を見つめていた。


「ロー、お前…本気か?」

「…ああ」

「……………」


2人の会話はとても短い。
何も言わなくても2人はもう取り返せないところにいることを知っているのだろう。
蚊帳の外であるミコトは冷静にそう判断した。
足と腕を折られあちこちに怪我を負っているミコトに手を出す余裕はない。
ただミコトはどちらかが命を散らしていくのを見ているしかなかった。
動いたのは、同時。
ローは能力を使い自分の心臓を取り返そうと必死だった。
ローの能力を使えば心臓など簡単に取り返すことはできる。
だが取り返しても体に戻す前にヴェルゴに奪い返されてしまう。
暫くその繰り返しで、ヴェルゴの体は傷1つなかったがローの体はボロボロだった。


「―――ハァ…ハァ…"ROOM"!!」


何度目か分からない能力を、ローは発動した。
丁度ミコトは届かない位置にいるためローの出した『ROOM』には入る事がなかった。
すでに何度も繰り返している為ローの体力の消費も激しいのか肩で息を繰り返す。
ローは再び取り合えした心臓を体に戻す前に、やはりヴェルゴが一瞬にしてローの前に現れ蹴り飛ばして失敗に終わった。
ローは蹴り飛ばされ手すりへと転がり勢いよくぶつかる。
ぶつかった部分が凹むほどの威力をローは受けていた。
蹴り飛ばした際ローの手から心臓が天高く舞い、その心臓をヴェルゴは見上げることなく手を伸ばし受け止めた。
そしてヴェルゴは受け止めたローの心臓をギュッと強く握りしめる。


「―――ッ!!!」


心臓を力を込めて強く握り締められたローは絶叫した。
心臓を潰されそうになって声をあげない人間などいやしないだろう。
震える手でローは手すりを支えにたたい上がり、再び心臓を奪い返そうとした。
しかしヴェルゴは立ち上がるローに覇気を纏い殴りかかった。
鉄のようなモノに殴られたローの脳は揺らぎ一瞬だが身動き1つとれない。
その一瞬にヴェルゴは反対の腕でローを殴り、何度も何度もそれを繰り返す。
だが、表情を崩さなくてもローがやられていく様をただ見ているのは少し歯がゆかった。


「"カウンターショック"」

「―――――」


殴られていたローは切れた口端から血を零しながら両腕をヴェルゴへ伸ばす。
何か仕出かそうとしているローに気付いたヴェルゴだったが、ローはヴェルゴに触れた瞬間『カウターショック』で強力な電気を放つ。
強力な電気ショックにヴェルゴの体からは煙が上がり、動きを止めた。


「………ジョーカーから伝言がある…―――『残念だ』と。」

(効かねェか…!)


ヴェルゴには『カウンターショック』が効かなかった。
口から血を吐いていたためダメージは"0"ではないが、ヴェルゴが1歩2歩下がっても立っていられるのに対しローは手すりを支えにしなければ倒れてしまうほどのダメージを食らっている。
暫く無言だったヴェルゴだったが、ジョーカーの伝言を今思い出したように呟く。
そんなヴェルゴを見てローは効かなかった事には驚く事はなかった。


「ジーザーから心臓を奪う返す算段はついてた………お前の登場だけが誤算だった――ヴェルゴ」

「『さん』だ。」

「――――ッ、!!!」


上下関係を崩すローの言葉にヴェルゴは低い声を零しながら罰を与えるようにローの心臓をまた握りつぶすように力を入れる。
それと同時にローからまた絶叫が零れた。
ヴェルゴはずっと握り続けており、その度にローからは何度も叫び声が響く。


「…!」


ローの絶叫はあまり聞いていていいものではない。
ミコトは流石に見ていられず目をそむけたが、ふとミコトの耳にローでもヴェルゴでもない足音が届き、振り返る。
そこには……


「今取り込み中だが…今じゃなきゃイカンかね…―――スモーカー中将!」


スモーカーの姿があった。

108 / 274
| top | back |
しおりを挟む