逃げ遅れていたG−5とサンジ、アスカは、まだB棟を進んでいた。
A棟と違いB棟は広く、進むにしろ距離が長すぎなのだ。
「何事だ…コリャ…」
その上、B棟は何故か炎に包まれており、サンジはごうごうと燃える炎を見渡す。
すると復活を遂げたアスカがサンジに声をかけ『サンジ、あれ』とどこかを指差す。
そこに目を映せば一緒に逃げ込んだドラゴンが転がっていた。
どうやらこの炎はドラゴンの仕業のようで、先に避難しているゾロ達に斬られたのだろうとサンジとアスカは推測する。
「熱ィ!あチャチャ!!」
「足の踏み場が…!」
「何が起きたんだよ!ここで!!」
「あのドラゴンの仕業だろ!?今はとにかく逃げるんだ!!急いで負傷者を前へ!!―――そしてたしぎちゃんとアスカちゃんを守れ!!」
「「「ウォーー!!!」」」
「やめてくださいっ!!」
サンジの頭には常に女のことのみ。
その次が料理であり、男など次の次の次の次の……次である。
むしろ男の事など考えたくもないとも思っている。
まあそれは同じ男性ならそう思うのは当たり前だが…例え非常事態でもサンジはきっと女性に危害は加えないのだろう。
サンジの言葉と(主にたしぎに)ハートをばら撒く海兵達にたしぎは声を上げた。
「馴れ合わないで!!敵ですよ!!」
「それは世間が決めた事さ!"海賊"は自由なんだぜ!!」
「〜〜〜〜っっ」
海軍に入ってから特訓ばかりで女ッ気はあまり記憶になかったたしぎはサンジのようなタイプはどう関わったらいいのか分からないのだろう。
口説くような甘い言葉にたしぎは言い返すことも出来ず思わずサンジの仲間でありこの中で唯一同じ同性であるアスカに助けを求めるように目をやる。
だがアスカはたしぎの目線に気付いているであろうに、何もしてくれなかった。
敵味方うんぬんよりも面倒だったのだろう。
何も言わず自分を追い抜き先頭を走るアスカの背をたしぎは怨めしそうに見つめながら同じくサンジと離れようと足を速める。
「やー、しかし偽ヴェルゴに一撃かました時のアニキ男でもホレちまいそうだったぜ!!」
「そうそう!!イカしてたぜ!アニキー!」
「うっせー!!男の支持はいらねェっつてんだろ!!」
「海賊をアニキと呼ぶのはやめなさい!!!」
アスカの隣へ移動しようとしたたしぎだったが…後ろの部下達の会話に突っ込む為に振り返る。
『おれはたしぎちゃんとアスカちゃんの声援以外受け付けません!!』とG−5達の声援・支持を断固拒否するサンジにアスカは前を走りながら『アホか』と小さく呟いた。
女性の声なら半径数十メートルでも届く自慢できない耳を持つサンジにはその小さな呟きは届いておりサンジは呆れたように呟くアスカに『アホでもいいさァ〜!アスカちゃんのためなら火の中!水の中!毒ガスの中〜!!』と何の主張か分からないことを話しながら何故かクルクルと周りながら走る。
緊張感が足りないサンジとG−5達にたしぎが一喝入れようとしたその時、大きな爆発音が響いた。
誰もがその音へ顔を上げれば、タンクが爆発した音であり、その衝撃から外壁が壊れそこからまた毒ガスが流れ込んできた。
その上一度爆発してしまえば周りも釣られたように爆発を起こし、緊張は更に高まる。
毒ガスによって最後尾にいた海兵の数人が他の仲間達のように白く固まってしまう。
それを見てアスカ、サンジ、たしぎは立ち止まり、アスカは滑るように立ち止まった後素早くウサギ達を呼び寄せ後ろにいる海兵達を運ぶ。
「海軍!!怪我人はウサギに運ばせるからさっさと渡してあんたらは逃げるのに集中する!!!」
「お、おう…!!」
けが人1人に一羽のウサギを用意し、大きさも出来るだけ大きなウサギを呼び寄せる。
二足歩行で強面のウサギを初めて見る海兵達はその威圧感に襲われ躊躇う。
ためらいを見せる海兵達にアスカはイラッときたらしく珍しく怒涛のような声を上げた。
その声にハッとさせた海兵達は慌てて『グフ!』と手をそっと差し伸べて舞っていた強面ウサギに恐る恐る怪我人を渡す。
怪我人を渡されたウサギは主の命令によって誰よりも早い速さでR棟へと向かった。
ウサギ達が先頭にいたアスカを抜かしていくのを見ながらサンジは『流石アスカちゅわ〜んっ!!』と目をハートにさせ恒例の体をクネクネさせていた。
たしぎはこの目でアスカの能力を見たのは今が初めてで、ウサギ人間らしい事は知っていたが強面ウサギを呼び込んだことには驚きが隠せなかったようである。
むしろウサギに強面がいるとは思ってもみなかったようである。
ウサギは可愛い…これこそ正義である。(意味不明)
しかし、怪我人をウサギに任せても毒ガスのスピードは早く、1人、また1人と毒ガスの犠牲になっていく。
アスカは本来なら敵である海軍、しかも愛しい愛しい姉を奪っていったスモーカーの部下など助けたくもなければ見捨てていきたいのだが、見捨てれば愛しいと思っている姉が悲しむと思い仕方なく脱出に協力をしていた。
出来ればこれ以上被害を大きくさせないためウサギで全員運びたいが、アスカの能力も限界というものがあり、1年半レイリーとの修行をして昔よりもウサギを呼び込める数は増えたといっても流石に怪我人何十人分を出して更に出すことは不可能だった。
あとウサギを呼び出せるのは十数羽ほどしかない。
しかし海兵達はまだ何十人もいる。
ウサギを出すよりも自力で走ってもらわなければならなかった。
その判断が正しいか間違っているかは分からないが次々に犠牲になっていく海兵達にアスカはギリッと奥歯を噛み締める。
「この広いB棟にも…!!」
「!、ちょっと!!あんた何引き返そうとしてるわけ!?」
「でもG−5達が…っ!!」
「――たしぎちゃん!アスカちゃん!!前を走れ!!迷えば命取りとなる!!絶対に道を間違えるなよ!!」
「!…"黒足"!」
「…いくよ!」
「"冷酷ウサギ"!?」
「大丈夫…サンジを『信じて』」
「…!」
次々と白く固くなっていく部下達にたしぎは引き換えそうとした。
しかしそれに気付いたアスカが咄嗟にたしぎの腕を掴んだ。
引きとめられたたしぎはアスカに振り返って言い換えそうとするも、サンジにも背中を押されてしまう。
サンジは何故か毒ガスの方へ走ってしまい、たしぎは目を丸くするもアスカがサンジに急かされ先に走って逃げていた海兵達を追うようにたしぎの腕を引っ張る。
戸惑っているたしぎだったがアスカの言葉にハッとさせ表情を引き締め止めていた足を進めた。
たしぎの背を見送ったアスカはふとサンジの向かった方へと視線をやり、グッと何かに耐えるように拳を握りたしぎを追いかけるようにアスカも走っていく。
―――目指す"ビスケットルーム"はあと少し。
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