(113 / 274) ラビットガール2 (113)

C棟のゴミ箱。
そこはルフィが落ちた場所だった。


「なんだここ?」


ガタクタのようなゴミの上に落ちたルフィは相変わらずの強運と強固な体のおかげで命は助かった。
ゴミを退かし起き上がって周りを見渡せばそこはガラクタばかりだった。
ここがゴミ箱だと知らないルフィは薄暗く人気のなく、足元に落ちているリモンコンのようなものを手に取りスイッチを押しても動かず、周りはガラクタだらけな事からゴミ箱だとようやく理解した。
落ちてきたルフィは上を見上げるも落ちた穴が見えないため、登れるほどの天井の高さではないのを察する。


「結構下まで落ちちまったなァー…」


目を凝らしても落ちた穴は目でとらえることができず、ルフィはそう呟き腕を組んで唸った。
しかし考えるよりも腹の虫が鳴り、空腹に力尽きたように項垂れた。
何か食べ物はないかと探しガラクタをあちこちに放り投げる。
そんなルフィを二つの影が見ていた。


「…………」

「…………」


薄暗いため影しか見えないが、一つの影はちょこんと座ってルフィの背を見つめ、もう一つは蛇のような影で不安気にルフィを見つめていた。
ルフィは今、空腹なため食べれれば何でもいいのかゴミの中から食べ物を探し、大きなガラクタを軽々と持ち上げ放り投げた。
その放り投げた場所は影達がいた場所である。
影の1人はこちらに飛んでくるガラクタにあわあわと慌て、もう一人は対照的に冷静にこちらに飛んでくるガラクタを見上げていた。


「…………」


あわあわと慌てる影を余所に座っていた影は手を静かに上げる。
その瞬間ブワッと大量の花が溢れ飛んできていた大きなガラクタを押し返す。


「な、なんだ!?」


突然甘い匂いと共に桃色の花と共に飛ばしたガラクタも返ってきた。
ルフィは目を丸くして驚いた様子を見せたが、押し返されたガラクタから大量の花びらと共に飛びさがって避ける。


「あ、危ないではないか!!無礼者!!」


着地と同時に自分以外の声が辺りに響き、ルフィは雪崩のようにこちらになだれ込んできた花びらを避けながらその声の方へ視線を向けた。
花びらのおかげで鉄臭かった周辺の匂いが花の甘い香りに包まれている。
そんな甘い香りに包まれながらも声を上げたのは――…


「喋ったな!?今!何だ!?お前…!」

「そ…そちこそ!何者にござるか!!」


赤い色の小さな龍、そして…その龍に守られるようにちょこんと正座して座るショールを御高祖頭巾のように頭から被って顔を隠す幼い少女がいた。
喋った生き物にルフィは驚き声を上げるも龍も声を上げる。
2人の大声が狭い周りに響き木霊のように反射し、少女は座ったまま眉間にしわを寄せ無言で耳ある場所に手を当てる。
どうやら煩くて耳を塞いだらしい。
ルフィは奇妙な生き物である龍にばかり目がいっていたからか少女からの批難の視線には気づかなかった。


「おれか?おれァ、ルフィだ!」

「そ、そうか…」

「で、お前は?」

「拙者はモモの助でござる!」


ルフィは警戒もなく簡単に龍の問いに答えた。
スパッと答えたルフィに構えていた龍…モモの助も呆気に取られ、ルフィの返しの問いに答えてしまう。
答えたことにハッとさせるも時すでに遅し…出た言葉は撤回できない。
敵かもしれない相手に安易に名前を教えたことに慌てるモモの助など余所にちょこんと空気のように口を閉ざして座っていた少女にもルフィは同じ問いをした。
少女は慌てるモモの助とは対照的に落ち着いており、ルフィに問われた少女はルフィへ視線をやりながら静かに口を開いた。


「…直葉」


その声は凛としているがどこか愛らしい。
しかし直葉と名乗ったその少女には表情というものがなかった。
無表情というわけではないが、その感情が見えない目をルフィはどこか見たことがあるような気もしないでもなかった。
結局どっちだよ、と突っ込んでくれる狙撃手は今はいない。


「しっかし…さっきのすごかったなァー!」

「…………」

「どっから花が出たんだ?花の木なんてどこもなかったのにな〜」


まだ周りには花びらが広がり、さながら花びらの絨毯である。
甘い香りも相まってここがゴミ箱だと忘れるほどだった。
それを独り言のように呟けば2人はなぜか口を噤む。
返事を期待していないルフィはそれを不思議に思わずただただ周りを見渡しているだけだった。


「あ、そういえばお前モモの助って言ってたよな?」

「そうでござるが……お主…結構、コロコロと話題を変えるでござるな…」

「んで、お前が直葉」

「人の話しはちゃんと聞かぬかっ!!」

「…………」


花びらの絨毯を見ていたルフィだったが、ふと思い出したようにモモの助と直葉に振り返る。
突然ルフィに振り返られモモの助はビクリと体を揺らして驚き、直葉は相変わらず無反応。
先ほどは花びらの話題だったが、次には名前の話しになり、コロコロと話題が変わるルフィにモモの助は呆れたようにつぶやくもルフィには話しが通じず思わず突っ込んでしまう。
指差された直葉は不快そうに眉間にしわをよせる。
頷く2人にルフィは腕を組み悩むように唸った。


「おれ、お前らのその名前どっかで聞いたことあんだよなァ〜……どこだっけ?」

「知らぬわ!人違いでござろう!そんな事よりおぬし…!」

「ん?」

よだれを止めろーーっ!!!


会話からして一見普通に見えるだろう。
しかしルフィはモモの助を目の前に何故か涎を大量に流していた。
それはルフィが空腹なのとモモの助を龍として見ていないからだろう。
自分を捕食対象として見ているルフィに更に警戒を高め、モモの助はキッと睨み付け直葉の前に出て守るように体を巻き付ける。


「せっしゃ食い物ではござらん!!食われるくらいなら食ろうてやる!!」


威嚇するように声を上げるモモの助にルフィはポカーンと口を開けていた。
しかし『あっ』と声を零しポンと手を叩いたかと思うと何故かモモの助達に近づき、近づいていたルフィにモモの助達は警戒を高める。


「あれ?この辺に"モモノスケ"がついてて屁で喋ってんじゃ……おーい!」

「何を意味の分からぬ戯言を…!!」


ルフィが手を伸ばし、モモの助は目をギュッと瞑り、直葉は無言のまま手を静かに上げようとした。
しかし2人の予想に反し、ルフィの手はモモの助の角へと伸ばされ何故か額を見ようとし、モモの助は突然の事に呆気に取られ、直葉はルフィの行動にピリッ、と殺気を立てかけたが不思議そうなルフィの言葉に怪訝とさせながらも少し様子見をしようと上げかけた手を下げ殺気も収める。
鈍感(?)なルフィは直葉の殺気に気づかず必死に額を見ていた。


「えー!?ウナギが直接喋ってる!!」

よだれを止めろーーっ!!ウナギではない!!」


額に下半身がなく屁で喋っているわけではないとようやく気づいたルフィは驚きの声を上げるもどうしてか決して龍と気づかない上にウナギだとお腹を鳴らして涎を垂らす。
ウナギウナギと勘違いするルフィにモモの助はこれでもかと声を張り上げ突っ込むが、ルフィに続き腹の虫が鳴り項垂れるようにその場にヘタレ込んだ。


「お前も相当ハラ減ってんだな」

「ばかをもうせ…10日ばかりの断食で武士がハラなど…空こうもの、か…!」

「10日!?」


ヘタレ込むモモの助にルフィは涎を拭いながらそう声を掛けた。
しかし帰ってきた断食の日数に驚きが隠せずにいる。
自分だったら1日でも無理だというのに、モモの助は10日も食事を一切取っていないと言う。
当然傍にいる直葉も同じかとルフィが問えば直葉は言葉なく頷いた。
平然とした顔をしているが直葉のお腹からも遠慮がちに腹の虫が鳴り、直葉は恥ずかしそうに俯き頬を赤くしていた。

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