(114 / 274) ラビットガール2 (114)

「大体…お主、ここの者か?」

「違うぞ?おれは海賊王になる男だ!」

「!!?」


自己紹介はすでに済んでいるため名前を聞く必要はない。
しかし素性はお互い分からないことだらけだった。
解きはじめていた警戒を再び高めモモの助は声を微かに低く唸るように問う。
無頓着なルフィはそんな唸るような声など気にも留めずケロッとした表情で返した。
返ってきた言葉にモモの助と直葉はギョッとさせ目を丸くさせる。


「か…か…か…か…!!………!!!…か!」

「ん?」

「ウ、ウソをつけ!…かいぞくなるは目方百貫もある大男にて…もっと…凶暴で強そうな者にござる!!」

「どうでもいいけどよウナギー、ここから…」

「モモの助でござる!!」


『海賊王』と聞き、モモの助と直葉は驚いた表情を浮かべた。
モモの助は顔を真っ青にし、直葉はあんぐりと口を開け初めて表情らしい表情を見せる。
言葉を詰まらせるモモの助にルフィは首を傾げていたが、ルフィにとってはどうでも事を呟かれ興味を失くしたのか上wお見上げここから出れないのかと問いかけた。
それでようやくモモの助もルフィがここの人間ではない事に気づく。


「そうか…おぬしもよそ者か……拙者達はここが病気の童子がおる施設としか知らぬ…ここがどのような島で自分に何が起きたのかも知らぬ…事の成り行きでとある船に"密航"した事が始まり…」


モモの助は何も知らないであろうルフィに話し始めた。
モモの助と直葉は間違えて乗るはずのない船に乗ってしまいここまで来てしまったという。
その船の中でも、ビスケットルームにいた時も、子供達はモモの助と直葉に優しくしてくれた。
しかし空腹の他にも知らない場所に2人だけというのもありモモの助はピリピリしていて優しくしてくれた子供達につらく当たってしまったらしい。
モモの助は隙を見つけ直葉とビスケットルームを抜け出した。
それにすぐ基地の者達は気づくが名簿の人数は当然合っており、モモの助と直葉の事はすぐに忘れられてしまう。
そうしてモモの助と直葉の脱出は騒ぎにはならず、モモの助は空腹ながらも直葉の手を引っ張り出口を探していた。
そして、モモの助はある実を見つけたのだ。
それが―――悪魔の実だった。
しかもそれはベガパンクが作り出した人造の悪魔の実。
そうとは知らずモモの助はまずその身を半分ほど食べた後、後の半分を直葉にやった。
正直今まで食べてきた食べ物よりも不味かったがそれも空腹が調味料となり2人は全部食べてしまう。
悪魔の実は分け合った時、最初に食べた人間に力が宿り、同時に食べればどちらか一人が力を得るため、悪魔の実の能力はモモの助に宿ってしまったようである。
それにもし直葉が最初に食べてしまえばここに直葉はいないだろう。
そして、モモの助は続けた。
お腹もとりあえずは落ち着き、体力の限界もあってか直葉とモモの助はその場で少し休憩をしようとしていた。
そんな2人に1人の少女が声を掛けてきたのだ。
モモの助と直葉がいる場所は『秘密の部屋』と言われ入ってはいけない部屋だった。
その部屋に入っていく2人を見た少女が心配して来てくれたらしい。
大人達に怒られるよ、と困ったように笑う少女にも…モモの助と直葉は構うなと言った。
そんな2人に少女は離れることなく、何故かモモの助の隣へと座る。
少女はモモの助と直葉を親と離れて暮らし寂しくて強がっていると勘違いしているようで慰める言葉をかけた。
その言葉はモモの助と直葉の心に響く。
確かにモモの助も直葉も親と逸れ迷い込み寂しかったのだ。
少女の言葉に心が揺らいだかと言われれば否定はできない。
だがだからと言って少女たちのようにモモの助や直葉は連れてこられたわけではないためいつまでもここにはいられないし、父達が助けに来てくれるとも思えない。
見捨てられたという意味ではなく、居場所が分からないのでは、という意味である。
少女と話しているとついには見つかってしまい、パニックを起こしたモモの助は龍の姿となり直葉を連れてその場から逃げ出し、そしてこのゴミ箱へと落ちたという。
それから少女が無事逃げ出せたかは分からない。


「…つまり拙者は人間でござる……」

「そうか、『悪魔の実』か…!『ウナギ人間』かな…じゃあお前人間に戻ればいいじゃねェか!」

「え…も、戻れるのか!?元の姿にどうやって??」

「さァ〜、おれ動物系じゃねェからなー……しかし天井どんだけ高ェんだ?おれが通った穴も見えねェ…」

「拙者もこの穴から出たい!――そして童達に伝えたい!!聞いてしまったのだ…あのシーザーという者の話…!」

「?」

「あの男は医者かと思っていれば、実は童達を死なせる気でいる悪い男だった!」

「…!」


ルフィは超人系なため、動物系の能力者へのアドバイスはできない。
もしできたとしても意味は伝わらないだろう。
そしてもしもここに動物系の能力者であるアスカがいたとしても『気合』と言って終わるため頼りにはならないだろう。
落ちたとき出来たであろう穴が見えない天井をルフィは目を凝らして見上げる。
しかしやはり天井どころか空いた穴から零れる光すら見えない。
どうにかここから脱出しようとするルフィにモモの助もここから出たいと言いだし、ルフィは子供達に伝えたいというモモの助に首を傾げた。
モモの助はここに落ちる前にシーザーとモネの会話を聞いてしまった。
その会話の中でシーザーが子供達を実験台にし、使い捨てのように殺すという会話を聞きモモの助はそれを伝えたいと言った。
空腹と見知らぬ場所で気が立っていたからと言って辛く当たった自分達に優しくしてくれた子供達を救いたいとモモの助は心からそう思ったのだ。


「……シーザー!!」


モモの助の話しをルフィは黙って聞いていた。
直葉はモモの助が話ている間ルフィを見上げていた。
その漆黒の瞳はまるで何かを探っているようにルフィを見る。
ルフィはモモの助の話しを聞き、低い声で絞り出すようにシーザーの名を呟く。
その表情は怒りに満ち、その表情を見た直葉は微かに目を見開いた。


「――よしモモ!!ナオ!!すぐここ登るぞ!お前らも連れてく!!」

「え…!どうやって…」

「壁を登る!おれにしがみつけ!!」


モモの助の話しを聞き、ルフィは行動に移した。
仲間たちの心配もあり、時間もなく、一刻も争うため壁を登る事にした。
どこまで高さがあるかは分からないが落ちたのだから登っていけば必ず出口はあるはずである。
そこまで考えているかは分からないが、ルフィの言葉にモモの助は戸惑う。
戸惑うモモの助をよそにルフィは背を向けたまま続けた。


「子供達の事なら大丈夫だ!おれの仲間がもう助けに行ってる!!やるっつったらやる奴らだ!何も心配すんな!!」

「真か!?――ならばほっとした…見ろ、お主海賊などでは、な…い…」

「!――モモの助!?」


ルフィの言葉は信用していい物か分からなかったが、それでもモモの助は僅かな希望を信じた。
仲間がいた事には驚きだが、モモの助はルフィの言葉を聞き安心したのか急に力が抜けていき、ガクッと力なく倒れそうなモモの助に気づいた直葉が慌ててモモの助の頭を抱き留めた。


「おいおい!しっかりしろ!なんだホラ!腹ヘリすぎだろ!!」

「モモの助!」


モモの助は直葉もいたため、空腹はもちろん気を張っていたこともあり、ルフィの言葉に安心した事によって一気に力が抜けて行ってしまった。
もう目の前がグルグルと回っているようでルフィの声が別人にも聞こえる。
何度も声を掛けモモの助の意識を取り戻そうとしていると…



「ッ―――うわああぁぁぁぁぁぁ!!!」



モモの助は突然叫びだす。
どうやら目が回り錯乱しているようで、叫び声をあげたのと同時にモモの助の周りにオレンジ色の雲が現れた。
叫んだままモモの助はその雲を掴み上っていく。


「えええ〜〜〜〜!!?」

「〜〜〜っ!!」


目を回し叫びながら無我夢中で逃げ出すように上へと上っていくモモの助にルフィは驚きながらも咄嗟に腕を伸ばしてモモの助に捕まった。
同じくモモの助の突然の行動にあんぐりと口を開けていた直葉を片腕で抱き上げて伸びた腕を縮ませ、ルフィと直葉はモモの助の上に乗り上へと上がっていった。


「すげェェ!!お前空飛べんのかーっ!」


ルフィが空を飛び上へと上がっていくのを見て愉快そうに笑いながらモモの助にそう話しかけるも、錯乱しているモモの助には届いていない。


暫くして、ゴミ箱はいつもの静けさが戻った。

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