(116 / 274) ラビットガール2 (116)

一方、C棟では…突然辺りに大きな物音が響き、傍にいた囚人達は驚き誰もがその爆発音のような音を立てた方へと振り返る。


「何でダストボックスから人が!?いや…人と竜!?」

「"麦わら"だな貴様ァ!!」


振り返るとそこにはダストボックスからルフィが現れた。
突然の事に辺りは騒然とし、しかし敵であるルフィの姿に一人がハッと我に返り銃を構え、仲間の声に周りにいた囚人たちも我に返り一人に続き銃を構える。
自分に銃を向けてくる囚人達をよそにルフィは表情一つ変えず囚人達に歩み寄っていた。
その体には赤い色の竜が巻かれており、腕には黒髪の民族衣装を着ている少女が抱えられていた。
どうやら一人と一匹は気を失っているらしく、騒がしい周りにも反応せずピクリとも動かない。
ルフィは少女…直葉を抱えていない方の手を近くにいた囚人に伸ばし、胸ぐらを掴む。


「ひィ〜〜っ!」

「シーザーは?」

「ゴゲフ!!――っこ、ここ、この通路まっすぐ行った『R棟』にィ!!」


囚人の胸ぐらを掴み、ルフィは静かな…しかし低い声でシーザーの居所を聞き出そうとした。
しかし心優しいボスの居場所を囚人は喋ることはなかったが、ルフィの手に力が入り首を絞められる感覚に囚人は思わず居場所を喋ってしまう。
囚人はルフィと自分の力の差を感じたのだろう…決して喋らないという固い決意は約数秒で粉々に崩れていった。


「分かった!!」


囚人の言葉にルフィは手を放し、そのまま一人と一匹を連れてR棟へと向かった。



◇◇◇◇◇◇◇



直葉はふと騒がしい音で目を覚ます。
空腹や疲れ、出られないかもしれないストレスや敵陣にいるという緊張感の限界が来たのか、ルフィの登場で出られるかもしれないと言う安心感にいつの間にか気を失っていたらしい。
物音に目を覚ませば隣にモモの助がいた。
竜の姿のモモの助の姿に安心感を持ちつつ、直葉は次第に意識もはっきりしはじめゆっくりと倒れていた体を起こす。
モモの助は直葉には気づかず声を上げて部下らしい囚人達に支持を出している男をギロリと睨んでいた。


「ルフィ!そやつでござる!心優しき童たちを…っ!!」


直葉がモモの助の言葉にその睨んでいる方へ目をやれば、そこには囚人達に指示を出している男――…シーザーがおり、モモの助は睨みつけながらルフィに声を掛けた。
モモの助はその先は言えなかった。
口惜しさで一杯なのだろう。
しかし先を言わずともルフィは分かっていた。
だから『分かってる』と零す。
直葉は2人のやり取りやルフィから感じる殺気に何もできずただ見守るしかなかった。


「…みんなダマされてここにいるんだな…この島何なんだ!!」


ここまでくる間、ルフィたちにも色々な事が起きた。
政府の島だったはずのこの島には政府も立ち入ることが許されておらず、しかし海賊がこの島を占拠している。
かと言って海賊が政府から奪ったという訳でもない。
ルフィの殺気立った言葉にシーザーは笑い声を零した。


「シュロロロ…そうだな……まるで"空気"のようなモンさ!『ある様でない島』!――だからこそ闇の世界と密接に結びつく!!ここは闇の科学の拠点だ!!許されねェ実験も必要な実験体の調達も好き放題だ!!全ては強力な後ろ盾によってその存在自体もみ消される!!全てなかったことになる!!」


笑いながらシーザーはルフィに話す。
"ジョーカー"と言う名の後ろ盾にシーザーは好き勝手していた。
泣こうが叫ぼうが苦しもうが死のうが…実験をする側のシーザーにはどうでもいいことである。
結果さえよければシーザーは人が何人死のうが関係なかった。


「お前はこの島の何も分かってねェんだ!!"麦わら"!!ハンパな気持ちで首ィ突っ込んで命が持たねェぞ!?『同盟』もそうだ!ローは『SAD』に手を出そうとしている!!アレを作れるのがおれだけだから誘拐をも企てた!!『SAD』はあの"王下七武海"で最も危険な男…!!ドンキホーテ・ドフラミンゴの持つ工場で『SMILE』という果実に変わる……!!『SMILE』とは動物系の"人造悪魔の実"の事…!!力を求める誰もが欲しがる果実だ!!」


ローがシーザーを誘拐したいのはシーザー曰くSADというものを使えるのが…人造悪魔の実が作れるのがシーザーだからという。
その人口悪魔の実に目をつけたのが、ジョーカー…ドフラミンゴだった。
そして、更に大きな後ろ盾――四皇の1人もついているという。
ドフラミンゴと四皇という強い後ろ盾にこれまで非道と言われる実権をシーザーはしてきた事を自慢げに話す。
直葉はその話を聞きながら子供ながらにシーザー、そしてドフラミンゴを嫌悪した。
しかし、同時に罪悪感も感じていた。
直葉は脳裏に一人の男が浮かんだが、今はそれどころではないと頭を振ってその男を追い出す。


「話のでかさが理解できたか!?ドフラミンゴのビジネスを邪魔する事でお前らがどれだけの大物達をブチキレさせるか!!大物たちが動き出せば…世界がうねり始める!!ローはそれを狙ってるんだバカ!!お前らなんか一溜まりもねェレベルさ!!シュロロロ 捕まえて見ろ…!おれは守られてる…!!"ドフラミンゴ"!"四皇"!お前こいつらにケンカ売る度胸あんのかよ!!」


ドフラミンゴがどれほどの実力者かなんて直葉には分からない。
だが、その四皇はよく知っている。
正確には四皇の一人だが、四皇が海賊たちの頂点にも等しい存在なのも、その席に座るだけでもどれだけの強さが必要なのかも幼くして理解していた。
直葉は大人びている。
だが、まだ5歳の子供なためシーザーの話の全てを理解はできていない。
しかし、全てを理解できなくても彼らがしている所業が決して善良なわけではないのは子供にも理解できた。


(みんなそう…力がある人はみんな…なんで力があるのに傷つけるんだろう…)


直葉は幼い頃から権力や力に恵まれた人間がどんな行動を起こすのか見てきた。
だから、シーザーを含めた彼らの行動が理解できない。
力があるのならその力を守る方へと向ければいいのに、直葉が知っている実力者は全て破壊へとその力を使う。
父もそうだ。
父はいつも母を虐げる。
母を愛しているくせに、母の嫌だと思うことばかりする。
娘である自分たちだって、本当は母は生みたくなかったのだ。
母はそれでも自分たちを愛してくれたが、直葉は世間一般的な愛し合って生まれた子供になりたかった。
だから、直葉はモモの助が羨ましい。
だから、直葉は他の子供が妬ましい。
直葉は実力者が嫌いだ。
不快な感情をそのまま表情に表していた直葉だったが、ルフィが一瞬にしてシーザーの懐へと飛び込んでいき―――…


「そんなもんいくらでも売って来た!!」


ルフィはシーザーを殴り飛ばした。
直葉はルフィの行動、そしてその力に唖然とし目を丸くする。

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