(121 / 274) ラビットガール2 (121)

宴会が始まり、直葉は目の前の光景に驚いた。


「錦えもん殿にモモの助…食べても大丈夫なのですか?」


目を瞬いて直葉は目の前の光景…食事をする錦えもんとモモの助を見る。
コテンと小首をかしげる直葉に、サンジがスープを差し出した。
直葉はモモの助達に合わせて何も食べずにいたせいか、お腹が空いていた。
モモの助達に比べて食べなかった日数は少ないが、それでも子供にとって空腹は堪えたのだろう。
警戒してはいたが、錦えもんとモモの助が食べているのを見て直葉もそれに口を付けた。
ただ、泣きながらがっつく二人と違い、直葉は育ちの良さを感じさせる品のある食べ方をしていた。
サンジ達は直葉はともかくモモの助達のがっつきように何やら訳ありだと気づくが、今は何も聞かずお腹いっぱいになるまで食事を運ぶことにした。
アスカも何か事情があるんだろうなと食べっぷりを見て思う。
しかしふとある事を思い出したアスカは立ち上がろうとするが、アスカの腕をルフィが掴んで引き留めた。


「どこいくんだ?」

「お姉さまにスープを持って行こうと思って」


周りもあんなことがあったために気も回らず、アスカはミコトを思い出しまだ碌に話してないとスープを持って行ってあげようとしていた。
アスカはもうお腹一杯だったためもある。
ルフィはそれを聞き掴んでいた手をパッと放した。
それを許可したとみてアスカは『行ってくる』と一言行ってサンジにスープを取りに向かった。


「サンジ」

「なんだい?アスカちゃん」

「スープを三人分貰えないかな?お姉さまにあげようと思って」


サンジはアスカの言葉に『アスカちゃんはなんて優しい子なんだ!!』と大げさに褒め、ミコト達ようにスープを入れてやる。


「お姉さま!ロー!………………ついでにケムリン」


サンジに雪で滑るからという注意され、長身ウサギに全部持ってもらうことにした。
アスカは手を振って主にミコトの元へ駆け寄る。


「まあ、アスカったら…滑るとあぶないからゆっくり歩きなさい」

「はいっ」


自分に駆け寄ってきてくれる妹にミコトは微笑ましく見つめていたが、雪で滑ると怪我をしてしまうと注意し、その注意にアスカは素直に受け止める。
ウサギにスープを運ばせ、ミコト達に配る。
ローやスモーカーは男性らしく器を口に寄せて飲み、ミコトは骨折しているため片手で受け取り、膝の上に置いてスプーンでいただく。


「どうですか?サンジの料理、美味しいですか?」

「ええ…体が温まるスープね…美味しいわ」


アスカはミコトの隣に座り、怪我に響かない程度にぴったりとミコトにすり寄る。
アスカは大切な姉に仲間の料理を褒めてもらい、嬉しそうにはにかんで見せ、ミコトも笑みを浮かべる。
にこりと笑うアスカにミコトも釣られたように微笑む。


「お姉さま」

「なぁに?」

「お姉さまは今幸せですか?」

「え…?」


突然のアスカの質問にミコトはスプーンを持ち上げようとしたのをやめ、器に戻し、アスカを見た。
不思議そうにアスカを見れば、アスカはまっすぐミコトを見つめ返し、真剣な表情を浮かべる。
その表情にミコトは茶化すこともできないと思い、少し考えるそぶりを見せ頷く。


「そう、ね…幸せね…」

「…あんな人と結婚しても?」


アスカは姉の返ってきた言葉にジト目でスモーカーを睨む。
睨まれたスモーカーは気づいていないフリをして無視し、アスカを相手にせずローと何やら話していた。
アスカはミコトの事情を知らないからミコトとスモーカーが恋愛結婚ではないとは知らず、スモーカーは無理やり結婚させられたとも知らないのだろう。
そんな妹をミコトは苦笑いを浮かべる。


「ええ、幸せよ…ルフィとアスカみたいな可愛い弟達がいて、おじいさまみたいな素敵な家族がいて……部下にも恵まれ上司にも恵まれて……理想の旦那さまにも出会えたもの……とても幸せ」


夫に関しては理想とは言い難いが、彼の性格は嫌いではなかった。
曲がった事が大っ嫌いな彼との生活も悪くはないと思ってきており、迷惑がられるのも面白くもある。
だが偽りの結婚など最初から死ぬまで続くとは思っておらず、いずれこのまま子供も宿さずいれば政府側に強制的に離婚させられ知りもしない男性と結婚させられると分かっていた。
だけど、分かっていても…ミコトは知りもしない男に触れられるのは嫌だった。
だから『いつまで続けられるか分かりませんが』とも心の中で続けながらミコトは幸せだと装う事にした。
アスカもそれに引っかかったが、ミコトが決して探ってほしそうにしていなかったから何も言わなかった。
本当は問い詰めたかったが、海軍大将である姉は姉で何か苦労しているのだろうと思いやめた。
『ならよかったです!』とにっこりと笑うアスカにミコトも釣られて微笑む。


「あなたは?」

「え?」

「あなたはどう?今、幸せかしら」


アスカは逆にミコトに問われ目を瞬かせた。
キョトンとさせるアスカにミコトはくすりと笑みを深める。
アスカはミコトの問いに間を置いた。


「幸せです」

「すごく?」

「すっごく!」


アスカが考えた出した答えは、『幸せ』だった。
その言葉に、そしてその表情にミコトは少し違和感を感じた。
アスカの表情は少し複雑そうだったのだ。
答える前にチラリとローを見ていたのに気づいていたミコトは―――ああ、なるほど…と気づいた。


(甘酸っぱいわねェ)


ミコトも一応恋をしたことがある女。
アスカの目線の意味を理解は出来、微笑ましくも思えた。
姉として、妹の恋を応援してやりたいと思う反面…やはり手から離れるのが寂しく思っていた。
『どうせだったらルフィと付き合ってくれればいいのに』、と思うのはアスカを保護者として名乗る者の基本なのだろうか。

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