スモーカーは凍りの大地に炎が上がり驚愕し、ドフラミンゴはすぐに分かったのかくつくつと笑い出す。
「フフフ!!これは驚いた!!ヴェルゴから聞いていたが本当に薬が効いていないようだなァ―――ミコト!!」
「!?」
ドフラミンゴは炎の壁に声を上げる。
スモーカーはドフラミンゴが呼んだ名に驚きが隠せずドフラミンゴから炎へと目をやる。
するとドフラミンゴの声に反応するように炎の壁は人型へと戻り、姿を現した。
その姿はドフラミンゴが言う通りミコトの姿へと。
「黒蝶!?…お前…!!怪我は…!?」
「治りました」
「な…!?」
「―――と、言いたいところですがまだ…」
炎から人へと戻ったミコトの姿を見てスモーカーは目を丸くする。
ミコトは立っていたのだ。
しかも両足で。
骨折しているはずの足がちゃんと支えなしに地についており、その凛としている姿はまるで怪我をしていないように見える。
しかしそれは見かけだけらしい。
ミコトはドフラミンゴの姿を捕らえてから急いで自己再生を開始した。
まだ骨折が治っておらず、立つだけで痛みが走り今にも崩れそうなのだがそこはやせ我慢でなんとか動けていた。
我慢している証拠に脂汗がミコトの額から流れていた。
ミコトだって慕ってくれる海兵を見殺しにすることなどできないのだ。
ミコトは驚くスモーカーからドフラミンゴへと目線を向け、笑みを張り付ける。
「ごきげんよう、ドフラミンゴ」
「フッフッフッフッフ!!よう!ミコト!!怪我してるお前も魅力的だなァ!」
「あら、お褒めのお言葉ありがとうございます……誰かさんの部下がわたくしの自慢のお顔に傷を作るものだからあなたの前には出たくはなかったのですが…好評で何よりですわ」
「フフフ!!おれァ、お前だったらなんでもイケる口だからな!」
「まあ…良いご趣味をお持ちですこと」
ドフラミンゴはミコトの姿に機嫌よく笑う。
しかしミコトは本当の意味で機嫌が治ったわけではないのを知っている。
今、ドフラミンゴの腸は煮えくり返っている状態だろう。
腹心の部下たちを二人も消され、研究所もなくなり、その研究員も誘拐され、その犯人はいない…トラファルガー・ローが何か企んでいるとみていたミコトはここに来る途中にローと何かあったと読み、それも機嫌の悪さの原因だろうと思う。
勿論読み通りではいるが、しかしもうミコトは原作を知るすべを持たないから彼との間に何かあったかは分からない。
でも正直に言ってこの場にドフラミンゴに勝てる者はいない。
ミコトも海楼石に似た液体を呑んで今では能力も半分以下しか出せないのだ。
先ほどの炎だって無理して部下を庇ったため、正直、体が辛い。
ただ救いなのはたしぎや子供たちがいないことである。
こんな惨めな海軍の姿これ以上見られたくはなかった。
「なァ、ミコト…あのガキ共どこに行ったか知ってんだろ?教えてくれよ」
「お断りいたします」
「理由は?」
「知らないからです…知らないものを教えろ、という方が無理な話ではなくって?」
「……あァ、そういやァ…麦わらはお前の"弟"だったな……そりゃァ、お前が答えるわけがねェか……」
ドフラミンゴはミコトに聞こうとするが、ミコトも当然行こうとしている場所は知っているがドフラミンゴに言うつもりはない。
ドフラミンゴは途中でルフィがミコトの弟だと思い出しミコトの性格を知っているため、知ってても教えないだろうと気づく。
その言葉にミコトは笑みを深めて答えた。
その笑みにドフラミンゴは『まァいいか…』と呟き、下げていた手をミコトへと向ける。
手の先にいるミコトをドフラミンゴは睨みつけた。
「お前の体に聞くから別に答える必要なねェ」
そう言ってドフラミンゴはミコトに能力を向けた。
ヴェルゴの報告からミコトにあの海楼石の液体は効いていないことを知っていた。
ただし、威力は半分以下とも。
ドフラミンゴの能力を知っているミコトは自分に真っすぐに向かってくるソレに笑顔一つ変えず桃色の羽衣を手に取りだし自分を守った。
「やっぱそれは壊せねェか!!」
桃色の羽衣、
傾世元禳に守られたミコトは力が半分以下とはいえほぼ無敵ともいえるだろう。
白ひげクラスでないと壊せるないほどの強度を持っているのだから余計に。
だからドフラミンゴは標的を変えた。
ドフラミンゴはミコトではなく―――海兵へとソレを伸ばす。
それに気づいたミコトがまた体を炎へと変えようと傾世元禳を消し体を燃やし始める。
だが、その選択は間違いだった。
「そう来るだろうと思っていたさ!!ミコト!!」
「―――ッ!!」
ドフラミンゴが背後にいた夫の部下を狙いを定めたのを見てミコトは体を炎にしソレを焼き切ろうとした。
しかし、それを読んでいたドフラミンゴがソレに覇気を纏わせミコトの体を拘束したのだ。
傾世元禳は覇気は通さないが、自然系の能力ならば覇気は効果抜群である。
まだ完璧ではないミコトの能力では傾世元禳は自分を守るならば強度は申し分ないが、後ろの海兵達を守るとすると強度を犠牲にしなければ全員は守れなかった。
それが仇となったのだ。
ミコトは覇気入りのソレに捕まり手首を拘束され宙釣り状態となる。
無駄とは分かりつつも抵抗すればドフラミンゴの能力で拘束されている肌の部分がツッと赤い線が走り血が垂れる。
「いい格好だなァ、ミコト」
戦いはあっという間に終わった。
本来の力があればもっと時間も稼げたのだが…そう思えばミコトは悔しくて仕方なかった。
だがそれをドフラミンゴに見せるほどミコトのプライドは低くはない。
チリチリとした痛みや屈辱も抑え平然とした顔でドフラミンゴを見上げる。
クイッとドフラミンゴが指を動かせば拘束されているミコトの体は更に宙を浮き、長身のドフラミンゴと同じ目線まで浮かび上がった。
ドフラミンゴは捕まっていても強気を見せる目の前の女にクツクツと喉を鳴らして笑う。
「まさかお前をこうして捕まえることができるとはな」
「わたくしもまさかあなたに捕まるとは思ってもみませんでしたわ…」
後ろから海兵達の声が聞こえた。
ミコトが捕まったため『ミコト様!!』という叫び声だろう。
だが、炎の壁で守っていたとき、決して手は出さないよう後ろに避難をと言ってあるのをちゃんと守っているようで、銃弾が飛んでは来なかった。
痛みや屈辱など感じてもいないと言わんばかりに涼しい顔をするミコトにドフラミンゴは笑みを深めミコトの顔についているガーゼに触れようとした。
その瞬間―――
「――!!」
ドフラミンゴの背後からスモーカーが拳をくらわしたのだ。
不意打ちを狙われ、ドフラミンゴは覇気入りの拳を食らい吹き飛ぶ。
ミコトはスモーカーの登場に目を丸くし、後ろに下がって避難していた海兵達からは歓声が上がる。
代わりに氷の山にぶつかったドフラミンゴにファミリーであるベビー5とバッファローがドフラミンゴを呼ぶ声を上げた。
ドフラミンゴが吹き飛んだというのにまだミコトの能力は解除されておらず、ミコトは冷静になりまだドフラミンゴを倒せていない事に気付く。
それはスモーカーも同じらしい。
警戒を解かないスモーカーだったが、次の瞬間…そのスモーカーの体が一瞬にして刻み込まれたように傷が出来た。
「ぐ――ッぅ゙…!!?」
ベビー5やバッファロー、そしてミコト以外の周りも、そして本人も何が起こったのか理解していないだろう。
スモーカーは自分の体から出る血と、そして倒れているであろう風景を他人事のように見ていた。
「おれは…今…ミコトと話てる途中だったんだがなァ…スモーカー!!」
やはり体にキズ一つ負っておらず、ドフラミンゴは倒れるスモーカーに歩み寄りうつ伏せで倒れている体を踏みつける。
その痛みにスモーカーはくぐもった声を漏らした。
「や、やめてくれェ!!スモやんが死んじまう!!」
「その人がいなぐなったら…!!おれ達みてェなゴロつき一体誰がまとめてくれんだよォ!!!」
痛みに顔を歪めるスモーカーに海兵達は声を上げた。
自分たちのようなはみ出し者の集まりであるG−5をスモーカーは見下すことなく部下として扱ってくれた。
スモーカーという人にG−5の海兵達は憧れ、そして好いている。
そんな人がいなくなればこの荒くれ物の海兵達を誰がまとめ上げれるのか…きっと本部から沢山の上官が来てもスモーカー以上の上官はいないとみんな答えるだろう。
そんな上官が今七武海に殺されそうになっている。
必死に海兵はドフラミンゴを止めようとした。
しかし近づけば今にもスモーカーを殺そうとする勢いノドフラミンゴには中々近づけず、海兵達の悲鳴を聞いてもドフラミンゴは苛立ちをそのままにスモーカーの体を蹴り仰向けにさせその上に乗る。
「安心しろ!!皆殺しだ!!誰が何を知っちまったか頭の中はわからねェ!!――そしてローも麦わらも…!!必ず今日中に見つけ出してやる!!!」
腕を上げ、ドフラミンゴは苦しみすでに虫の息のスモーカーを見下ろした。
スモーカーを殺した後はこのうるさい海兵達も皆殺しにし、そしてベビー5達にミコトを連れ帰らせ、麦わらの一味とローをも殺しリサを取り戻す算段だった。
しかし…―――
「あらら…ちょっとごめんな、兄ちゃん…そこどいてくれるか?友達なんだよ」
手を振り下ろす寸前、ドフラミンゴの後ろに影が現れた。
その影を見てミコトは目をこれでもかと丸くする。
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