ローは電伝虫を切る。
目的を失ったわけではないが、これ以上は危険だと判断したのだろう。
ローは出来るだけアスカをドフラミンゴと接触させるつもりはなかったから余計に焦ってしまったのだ。
「おい!相手の人数指定をしてねェぞ!!相手が一味全員引き連れて来たらどうする!!」
「―――いや、それでも構わねェ」
「?」
「すでにこの作戦においてシーザーの引き渡しは囮のようなもんだ」
電話を切ったローにサンジが慌てた。
詳しい指定なども何も行なわず切ってしまったローだったが、サンジの言葉にそれでも構わないと呟く。
どうやらローの作戦だと、シーザーを囮にし、その隙に『SMILE』の工場を潰すのが目的らしいのだが…どうやらその工場がどこにあるのかだけは調べられなかったらしい。
まあ工場だから行けばわかるという結論に行きついたのだが…
「ところで"リサ"って誰の事なの?ドフラミンゴは"妹"って言ってたけど…」
ナミがドフラミンゴとローの会話を聞いていたとき耳に入った新たな人物の名前を問う。
ローはサンジ達との会話で落ち着きを取り戻していたが、ナミのその問いにドキリとさせ息を呑んだ。
ナミへ振り返れば、ナミは不思議そうな表情を浮かべており、周りのサンジ達も同じ表情を浮かべていた。
当たり前と言えば当たり前である。
ローやアスカの中で『リサ』は何度か上がった名前だが、ナミ達は今が初めて聞く名前なのだから。
ただフランキーとロビン、ルフィはヴェルゴが口にしたのを聞いていた。
しかし、ローは…
「この取引には関係ない事だ…気にするな」
口を閉ざすことを決めた。
その時のローの表情がこれ以上踏み入れる事を許さないと言わんばかりの鋭き目線をナミ達に向けていたため、ナミ達はこれ以上口出しは出来なかった。
しかし、
「やっぱり、ローは知ってたんだ」
今まで黙って話を聞いていたアスカが口を開いた。
アスカの言葉にローはギクリとさせ、ナミ達はローからアスカへ振り向く。
アスカはまっすぐローを見つめていたが、その瞳は非難しているようにも見えた。
そんなアスカの表情にナミ達は戸惑う。
「ローは言っていたよね…リサは知らないって……でも、さっきのはなに?ローは知っていたんでしょ?最初から……私を騙してたんだ」
「違う」
「違う!?何が違うの!?私聞いたじゃん!!リサの事を…!!なのにローは知らないって言ったよね!?」
「それは………、…アスカが知っていい事じゃない…お前とリサは"無関係"だ…これ以上この件に首を突っ込むな」
「…ッ!」
アスカはリサの事を知っていた。
ドフラミンゴとヴェルゴにもそう呼ばれたのだ。
どうして自分にはアスカという名前があるのにリサと呼ばれるのか…全く分からなかった。
だが、ローは知らないと答えた。
アスカはそれに知っていることを気づいていたが、問い質すタイミングがなくて今まで強く出れなかった。
だが今回は逃げ切れないほどの証拠をアスカは聞いた。
しかし…ローは『アスカとリサは無関係』と言ったのだ。
その言葉にアスカは頭に血を上らせる。
「おいトラ男…!お前言いすぎだぞ!!」
「言い過ぎも何も事実だ」
「それでも言い方っつーもんがあんだろうが!」
黙って聞いていたサンジがグッと拳を握り怒りで体を震わせるアスカを見て、思わずローに声を上げた。
それでもローの態度は変わらず、アスカだけではなくサンジもローに突っかかろうとしたのだが…アスカが『分かった』と呟きサンジは開きかけた口を閉じた。
「……分かった……もういい……じゃあ、もうローには聞かない」
アスカは怒りの表情を浮かべ、ローに突っかかろうと思った。
その前にサンジが代わりに声を上げてくれたが、アスカはそのお陰ですぐに冷静になり、怒りをグッと堪え船内に入ろうとした。
それはこれ以上話すことのないと言ったローと一緒にいたくないからだった。
アスカの言葉にローは引っかかりを感じ、通り過ぎようとするアスカにローは思わず腕を掴んで止める。
「何するつもりだ」
「……ローが教えてくれないのなら…別の人に聞く」
「!!」
腕を掴まれてもアスカは足は止めたがローを見ず背を向けていた。
アスカが諦めたわけではないと気づいたローは、アスカに何をするのかと聞く。
別の人、と答えたアスカにローはハッとさせた。
自分以外にリサを知っている人となると当然先ほどのやり取りの相手…ドフラミンゴしかいない。
ローはその言葉にカッとなりアスカの腕を掴んでいた力を強めグイッと己の方へ引き寄せた。
「ドフラミンゴに会うつもりか!!」
「ローには関係ない!!」
「ある!!」
「どこが!?だって私はリサと無関係でしょ!?だったら別に私がそいつに会ってもローには関係ないじゃん!!」
「確かに、そう、だが…!!―――とにかくドフラミンゴに会うな!!」
「だからその理由を言ってよ!!」
「―――ッ」
何を言ってもローは駄目だ、会うな、としか言わない。
それがなぜだかも言ってくれない。
アスカはもう訳が分からなくなって涙が無意識にあふれ出てしまった。
ポロポロと出てくる涙を止めるのも忘れアスカは逆上したように声を荒げる。
「こっちは意味がわかんないのよ!!ドフラミンゴは私をリサって言ってくる!でも私はリサとは無関係なんでしょ!?私はどっちを信じればいいの!?私だって敵よりローを信じたい!!でも…!今のローをどうやって信じればいいの!!!」
アスカだって何もローに反発したくてしているわけではない。
ただ、ローの言葉全てを信じきれないのだ。
ローはリサを知っているくせにそれをアスカに話そうとはしない。
だからアスカは信じきれなかった。
感情に任せてローの腕を振り払いアスカは船内に入っていった。
「アスカ!!」
ナミが船内に入っていくアスカを心配し追おうとしたとき、それよりも先にルフィがアスカを追って船内に入り、ナミは自分が行くよりも幼馴染であるルフィの方がアスカも落ち着けるだろうと判断し追おうとした足を止めた。
そしてローをギッと睨みながら振り返る。
「トラ男!!今のなによ!!あんな言い方しなくてもいいでしょ!!」
ナミも口出しが出来なかったが、可愛い妹であるアスカの泣いている姿に我慢できなかった。
だからローを責めるような強い口調になってしまった。
そんなナミをよそに、ローもアスカの言葉にはショックを受けたのか後ろに下がり、フォアマストのイスに座り込み、片手で顔を覆う。
深い溜息をつくローにナミはむっとさせ何かまた言いかけた。
しかしそれをロビンが手で制し、止めた。
「今の話、教えてくれる?」
「お前らに答える必要はない」
「いいえ、私たちは聞く必要あるわ……だって、あなた達が言っていた"リサ"っていう子……―――アスカの事でしょう?」
「…!」
ナミは止めたロビンを睨んだが、ロビンはナミの睨みを流しローを見つめていた。
ロビンの言葉にローは顔を上げ、ナミ達も目を丸くする。
ローのその反応に、ロビンは笑みを浮かべた。
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