(141 / 274) ラビットガール2 (141)

朝ごはんを済ませ、ドレスローザに着くまでまだ時間があった。


「ドレスローザに着く前にチーム分けをしたい」


その間にローはチームを三つに分けたいと言いだし、ナミ達は首をかしげる。


「チーム?」

「そうだ…主に『シーザー引き渡しチーム』、『工場破壊チーム』、『船の安全確保チーム』の三つに分けようと思う…この三つを14人で振り分ける」

「ま、待ってほしいでござる!拙者はカン十郎を探さなければならぬ故…!」

「じゃあ侍探しは工場破壊チームに入れよう」


チームとは、それぞれの役割の事で、ローはシーザー引き渡し、工場破壊、サニー号の安全確保と考えていた。
その中には全員が入っており、錦えもんはローに待ったをかけた。
ドレスローザには錦えもんも用はあるが、それはルフィ達とは別の用であり、仲間を助けるために島に入らなければならないというもの。
恩人を手伝いたい気持ちはあるが、仲間を探す暇がないというのも困りものである。
ローは錦えもんの訴えに、侍救出を工場破壊チームに組み込んだ。


「おれと麦わら屋、アスカ、ロボ屋、侍、子供以外はどのチームに入るか決めてくれ」

「ちょっと待って!あんた達は!?」

「おれは『シーザー引き渡し』、麦わら屋とロボ屋は『工場破壊』、アスカと子供は『船の安全確保』で決まっているからだ」

「なんでお前らだけ決まってるんだよ!!おれも安全確保チームを希望する!!」

「わ、わたしも!!私も安全確保で!」

「おれもそれがいいぞ!!船番が一番安全そうだ!!」

「別に何でもいいが…決めるなら早くしてくれ」


自分たち以外がまだ決まっていないというのを聞き、ビビリ一派でもあるナミがさっそく抗議した。
決まってないウソップ、ナミ、チョッパーは安全確保がいいと一致して手を挙げる。
しかし懇願も空しく結局くじ引きとなった。
そして…


「「やったーっ!!」」

「な、なんで…」


くじ引きをした結果、『シーザー引き渡しチーム』はロー(確定)、ウソップ、ロビンとなり、『工場破壊&侍救出チーム』はルフィ(確定)、フランキー(確定)、ゾロ、錦えもん(確定)となり、『サニー号安全確保チーム』はブルック、ナミ(希望者)、チョッパー(希望者)、サンジ、アスカ(確定)、モモの助(確定)、直葉(確定)となった。
希望通りになったナミとチョッパーはすごい喜んでいたが、その反対にドフラミンゴとやりあう確率が高いどころか100%なシーザー引き渡しチームに入ってしまったウソップが項垂れる。







まだドレスローザの影は見えない。
アスカは海を見ていた。
ローから教えてもらった過去を思いながら海を見つめる。
ローは思い出さないでくれと言ったが、それでも過去を意識してしまうのが人間というもので…アスカはドフラミンゴではなく兄の事を考えていた。
『兄』、と言えば思い出すのはもういないエースとサボの二人の顔。
それ以外兄と言えば思い出す顔はない。
しかし自分には兄がいたという。
優しいと言っていた兄。
医者だとも言っていた兄。
でも、優しくローの師でもあったらしい兄はドフラミンゴに殺された。
それを思い出しても所詮記憶がない赤の他人だからアスカが心を痛めることはなかった。
『思い出したら悲しいと思うのだろうか』とアスカは海を見ながらそう思ったとき…


「アスカ、ちょっといいか?」


ローが声をかけてきた。
アスカはローへ振り返る。


「なに?」

「ちょっと話があるんだ」

「…………」


振り返った先にいたローはどこか真剣そうな眼差しでこちらを見つめており、アスカは思わずルフィを探した。
喧嘩も仲直りしているから気まずさはないが、どうしてかルフィに後ろめたさがあったのだ。
どうして後ろめたさを感じるのかは分からないが、アスカはルフィの姿がない事にホッとしながら頷きローの後についていった。
――ついた先は、アクアリウムバーだった。
扉を開けて入れば、ルフィがおり、アスカはルフィの姿に目を丸くする。


「ルフィ?」


甲板で見かけないと思えばアクアリウムバーに珍しくもおり、ローも気にしていないような様子だから恐らくルフィはローとアスカを待っていたのだろう。
しかしだから余計に分からなかった。
ローとルフィはどちらかと言えば険悪なイメージしかない。
普段は普通に接しているが、ひとたび自分が入れば二人とも睨みあうのだ。
そんな2人が自らアスカを挟んで睨みあいもなく一緒にいる事自体珍しく思ってしまう。
アスカの姿を見てルフィは二カッと笑いアスカの傍に歩み寄る。
後ろにいたローはアスカを奪うように抱き寄せるルフィに『おい』と低く呟きルフィの腕からアスカを救い出した。
また睨みあいが続くのかとアスカはげんなりとしかけたのだが…


「喧嘩する暇はないと言っただろ」

「でもずりィよ!お前ばっかアスカといて!」


ローとルフィの会話に『ん?』と首を傾げた。
雰囲気はあまりよくはない。
だが朝の時のような険悪さはあまり見られなかった。
『ずるいのはどっちだ』とむすっとしているローを見上げたあと、まだ不貞腐れてるルフィを見てアスカはまた首を傾げる。


「2人とも、どういうこと?なんで私呼ばれたの?」


良く分からない時は分かっている人に聞けばいい。
アスカは怪訝とさせながらローやルフィに問う。
睨みあっていた二人はアスカの問いに同時に顔を向け、アスカは聞いておいてなんだが同時に2人の目線が向けられビクリと肩を揺らして驚く。
『な、なに?』とおっかなびっくりとなっていたアスカにルフィがずいっと迫った。


「アスカ!」

「は、はい!」

「アスカはどっちを選ぶんだ!?」

「…は?」


アスカはデジャヴを感じた。
このやり取りをほんの数時間前にやった気がしたのだ。
アスカはふんっと鼻息を荒くするルフィと、こちらをじっと見つめるローを見比べ、呆気にとられる。
その間もルフィはじっと睨むようにこちらを見ており、ローもまた何か期待しているように見つめていた。


「…なに…だから…選ぶとか…」

「だーかーらー!お前トラ男とおれ!!どっちを選ぶかって言ってんだよ!!」

「いや、だから、何を選ぶのって言ってんだけど…あの席の位置じゃいやだったの?」

「駄目じゃねェけど駄目だ!!どっちが一番だ!?」

「は?一番?」

「おれもトラ男も話し合って決めたんだよ…どっちもアスカを諦める気もないし譲る気がないからさ、じゃあ共有すればいいってなったんだよ!!だけどよ、お前の一番だけはおれもトラ男も譲りたくねェんだよ…だからどっちが一番なんだ?」

「……えっと……、どっちって…どっち?」

「だーかーらー!」

「…ちょっと待て麦わら屋」

「なんだよ!!今更なしは言わねェって約束だろ!!」

「いや、そうじゃねェ…アスカが把握し切れてないようだ」


アスカの頭の中を覗けばクエクションマークばかりが浮かんでいるだろう。
それでもルフィは気づかずアスカに迫り、ようやくローが全く状況把握し切れていないアスカに気付きズイズイと迫るルフィの肩に手を置きとめる。
近い距離で迫られていたアスカはとりあえず離れたルフィにほっと胸を撫で下ろす。


「ねえ、どういう事?選ぶとか言ってるけど…何を選べばいいの?席の位置じゃないの?」

「やっぱりか…アスカ、一から説明するからとりあえず落ち着け」

「…うん」


ルフィは基本、説明が苦手である。
それはアスカも幼馴染だから分かっているし、ローも一日でも一緒に行動すれば嫌でも分かってしまう。
だから必然的にローが説明役になってしまう。
軽い混乱もしているであろうアスカをローはソファに座らせてから落ち着かせ、その前にルフィとローが立っていた。
正直ルフィとローに見下ろされ落ち着こうにも威圧感で落ち着けなさそうだが、そこは我らがアスカさん…深呼吸を数回したら落ち着いた。
アスカが落ち着いたのを見計らいローは説明する。


「落ち着いたか?」

「まあ、一応は…で、一体なんなの?」

「だから…」

「麦わら屋はややこしくなるから喋るな…ここからはおれが説明する」


またルフィが横やりを入れそうになったので、ローが止め、ルフィは不服そうにしていたがローに任せたのか大人しく引き下がった。
機嫌はそれほどよくないようで、ドスンと怒りを露わにするようにアスカの隣に腕を組みながら腰を下ろしむすっとする。
そんなルフィにアスカはそっと腕に手を伸ばし宥めるように撫でる。
その手にルフィは多少機嫌は良くなったのか表情も和らぎ、体の力も抜く。
それをローは不機嫌そうではなく、ただ見つめていた。


「おれと麦わら屋で話し合ったんだ」

「なにを?」

「アスカのこと」

「私?」


朝まではルフィを相手にしているとローの機嫌が悪くなっていたのに、今はそれを見守るように平然としていた。
それも気になる事の一つだがローとルフィが話し合ったということも驚きだというのにその内容は自分だという。
アスカは不思議そうに首をかしげる。


「最初はおれも麦わら屋も本当は譲る気は一切なかったんだ…だがいくら話てもお互い譲り合いもくそもねェから平行線のまま…」

「だからよ!!おれ達決めたんだよ!!」

「決めたってなにを?」

「どっちも譲る気がねェならさ、どっちもアスカと結婚すればいいんじゃねェーかって!!」

「け………?」

「おい!麦わら屋!!」


話し合いはアスカの事だった。
だがアスカ本人は何に対して話し合っているのか全く理解していなかった。
そもそもアスカの事で話し合うのならなぜそのアスカを呼ばなかったのだろうか…という疑問も浮かぶ。
首を何度傾げたか数えるのをやめたくらい傾げたアスカなどよそに黙っていろと言われたルフィがやはり横やりを入れてくる。
ローが声を上げるもルフィは知らん顔でポカーンとしているアスカにニッと笑って見せる。


「大体おかしいと思わねェか?おれ達は海賊だぞ?海賊がセケンのルールを守って一人しか選べないっていうのも変だしさ〜…だからどっちかだけがアスカを貰うとか可笑しいだろってなって、じゃあどっちもアスカを貰えばいいじゃねェかってなってな!」

「…だが、今度は夫としてどっちがアスカを愛し、愛されてるかと揉めてな…これもまたお互い平行線だったから直接聞いた方が早いと思って呼んだんだ」


ルフィの自分勝手はもう諦めたのか、ルフィの言葉にローは付け足した。
ルフィは呑気にも『そうそう』と頷きニッコニコと笑っている。
とりあえずアスカは…


「なんでそうなった!?」


と突っ込んでおく。


「ちょっと待ってよ…さらに話が読めないんだけど…えっ…結婚って誰と誰が?」

「おれとトラ男と、アスカ」

「誰が夫?」

「おれと麦わら屋」

「誰が妻?」

「「アスカ」」

「だからなんでそうなった!!?」


アスカは結婚と聞き問う。
その問いに答えたのはルフィだった。
そして次に誰が夫になるのかを問う。
その問いに答えたのはローだった。
そしてさらにその場合誰が妻になるのかを問う。
その問いに答えたのはルフィとローだった。
その答えにアスカは頭を抱えた。


「どうしたんだ?アスカ」

「具合でも悪くなったのか?」

「ちょっと待って…ちょっと、考えさせて…ちょっと…整理させて…」


項垂れるように俯くアスカにルフィもローも心配した。
一応医師であるローが診ようとすればアスカが待ったと手を挙げた。
ルフィとローはお互い顔を見合わせたが、アスカの言う通り待っててやる。

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