(143 / 274) ラビットガール2 (143)

ロビンは3階にある測量室兼図書室で本を読もうと向かう途中だった。


「ねえロビン」

「あらナミ、なにかしら?」

「アスカ知らない?」


すると後ろからナミが声をかけてきて、ロビンは足を止める。
ナミはどうやらアスカの姿がないという事で探していたようで、見つからずロビンに声をかけたらしい。
それを聞いてロビンはピンときたがここはあえて何も教えず『さあ?』と返した。
知らないというロビンにナミは『そう』と答えキョロキョロと回りを見渡してアスカを探す。
ロビンは二階に上がる階段におり、ナミは芝生甲板にいる。
知らないというロビンに引き留めたことを謝りながらナミはそのまま一階の扉を開けようとした。
それを見てロビンは『あら、マズイわ』とナミを引き留める。


「ちょっと、ナミ…一階には入らない方がいいわよ」

「え、どうして?」

「それは言えないけど…馬に蹴られたくなかったらアクアリウムバーにはいかない方がいいわね」

「……………」


ロビンのその言葉に流石にナミも気づいたのかむっとさせた後忠告を無視し部屋へ入ろうとした。
それを見たロビンがため息をつき能力を使ってナミを引き留める。


「ちょ、ちょっと!何するのよ!ロビン!」

「だから駄目だって言ってるじゃない…ナミ、覗き見は悪趣味よ」

「覗き見って失礼ね!っていうかロビンは心配じゃないの!?」

「心配は心配よ?でもトラ男君もルフィもアスカが決めた相手だもの…ちょっとはアスカを信頼してあげなきゃ…今回の事はナミもサンジもアスカ離れできるいい機会かもしれないわね」

「私も心配だし信頼もしてるわ!でもルフィならまだしもトラ男なんてあの顔よ!?あの顔!!あれどう見ても極悪非道の敵顔でしょ!?……………って…ルフィと…トラ男?」


ナミもサンジもロビンは同じ保護者組だと思っていた。
ロビンも確かにアスカを妹と思っているのだが、どうやらお姉さんとして温かくアスカを見守るタイプの保護者組らしい。
裏切られた気分のナミはむすっとさせるも、ロビンの言葉に『ん?』と小首を傾げ動きを止める。


「なんでルフィも出てくるわけ?」


気になったのはローの名前だけではなくルフィの名前も出てくるところだった。
アスカとローのあの怪しい雰囲気に注目ばかりしていたが、ルフィが出てくるのかが分からない。
ルフィと言えば朝の事を思い出させるが…あれはどう見てもアスカが二人が何を争っているのか分かっていなくて適当に相手をしているように見えたからルフィは眼中になかった。
疑問符を浮かべていたナミだったがハッとさせ俯きかけていた顔を階段の途中にいるロビンへと上げた。


「まさか…」


あの自分の言葉が本当になった…?、とロビンを見れば、ロビンはナミの目線に笑みを深め答えた。
その答えにナミは唖然とする。


「嘘でしょ!?まさか本当に3P!?いやぁぁ!!私のアスカが〜!」

「あら、アスカもルフィもトラ男君も、海賊よ?海賊がルール守って一人だけと結婚するのもおかしいと思わない?」

「思わないわよ!アスカはね!イケメンだけどそれほどイケメンすぎでもいなくて、でもブスメンでもなく、フツメンでもないイケメンじゃないけどどこかイケメンの年収10億ベリーの会社員でちゃんと未来も考えててちゃんと私とアスカの家を買ってくれてついでに土地も譲ってくれる人じゃなきゃダメよ!!あいつらじゃ全然条件に合ってないじゃない!!」

「…いつも思うんだけど、それ、何か違うんじゃない?」


いつものナミの暴走にロビンが突っ込んだ。
相変わらず過保護なナミにロビンは溜息をつく。


「でもこういう考え方はどう?…トラ男君だけと付き合ったらきっとあの子はトラ男君についていってしまうと思わない?」

「まさか!そんなのルフィが許さないでしょ?」

「ええ、"今は"ね」

「………ルフィが…海賊王になった後の事を、言ってるの?」


アスカが離れる、と言われてもナミはピンと来なかった。
アスカだけではなくナミやロビン、サンジ、ゾロ、一度離れたがウソップ、チョッパー、ブルック、フランキーも誰もがこの船から降りるなんて想像つかないが、ふとナミは思った…夢が叶いルフィが海賊王となった時の事を。
ナミの言葉にまたロビンは頷く。


「そうよ…アスカは船を降りることはないわ…でも、ルフィが夢を叶えた後のことって誰も分からないでしょ?もしかしたらアスカはトラ男君のところに行ってしまうかもしれないわ…でも、ルフィも一緒にアスカを愛してくれれば…トラ男君についていくことは免れるわ……そう思えば害虫…ごほん、トラ男君がおまけについていても私は反対もしないわ」


ロビンはローを『害虫』、とうっかり可愛い妹に着く悪い虫と呼びそうになった。
…というより、はっきりと呼んだ。
ナミはロビンの言葉に考える。


「…確かに…アスカの全部をトラ男にとられるよりはいいかもしれないわね…」

「でしょ?だから邪魔しないであげましょう」

「……でも…やっぱりまだ早いわよ!」

「あら、何が早いのかしら」

「あんなことやこんなことよ!!」

「あんなことやこんなこと?」

「そう!!にゃんにゃん!!」

「にゃんにゃん…」


ロビンの説得はナミを納得したが、新たな問題が発動した。
ナミの頭の中ではピンク一色となっており、しかも脳内でのアスカは嫌がっている絵面が浮かんでいた。
更に付け足せば『助けて!ナミ!!』とまで浮かんでいる。
アスカは二年の間に心だけじゃなく体までもが成長していた。
よく言えば可愛い体、悪く言えば胸はAどころかまな板ほどしかなくくびれなどないに等しい子供体系だった。
それが二年を経て胸は大きくなり、くびれもきゅっと閉まり、お尻も出ているという立派な女性になっていた。
しかもまだまだ成長途中であるため、もっと魅力的になっていくだろう。
それでもまだナミの中では可愛い妹のアスカでしかなく、そんな淫らな行為はまだ早いと乗り込もうとする。
それを見てロビンは再び能力で止める。


「むぐっ!?」

「もう、ナミったら…過保護は嫌われてよ?」

「むぅ〜〜!!」

「睨んでも無駄よ…私と一緒に図書室で読書でもしましょう?愚痴も聞いてあげるから」

「〜〜〜っっ!!」


口を塞がれ手足も封じられ、ナミはそのままロビンに連れられ図書室へと消えていった。



◇◇◇◇◇◇◇



そして数時間後…ナミはロビンに勝てず、涙ながらに愚痴る。
もし時間がたっぷりとあったなら、ナミは酒とつまみをサンジに頼み飲み明かしていたところだろう。
だが船は着々とドレスローザに近づいており、ナミは『うっ、うっ』と机に突っ伏して泣いていた。


「なんでよ〜!なんでトラ男なのよぉ〜!アスカの馬鹿〜〜!!」

「ふふ…そうね…私もまったく理解できないけど…アスカの目利きはいいと思うわよ」

「思わないわよ〜!!あんな男!睡眠不足で過労死すればいいわっ!!!」


ナミがこんなに泣くのだ…サンジがアスカの事を知ればどうなるのか……ロビンは考えかけたが、面倒な結末しか思い浮かばないのでやめた。
背中を丸めて泣き崩れるナミの背中をロビンは優しく撫でて慰めていたその時―――


「ロビンッ!!」


バン、と音をさせアスカが扉を開けて入ってきた。
アスカの声にナミは顔を上げ涙で濡れる目でアスカを見上げ、ロビンもナミからアスカへと目を移す。
アスカの表情はどこか怒っているようにも見え、ナミは険しい表情を見せるアスカに困惑し、ロビンは『あら』と何も変わらない反応を示していた。
アスカはギロリとロビンを睨んでおり、ツカツカと大股でロビンに歩み寄ってきた。


「ロビン!ひどいよ!!」

「どうしたの、アスカ?私何かしたかしら?」

「したよ!!ルフィをけしかけたでしょっ!!」

「あら…バレちゃった?」

「バレちゃったじゃないよ〜!!何てことしてくれたの!!」


アスカは珍しく怒鳴り声をあげてロビンにプンスカ怒っていた。
『ごめんなさい』と謝るロビンのその表情はにっこりと微笑んでいた。
反省の色が全く見えないロビンにアスカは『もーっ!!』とポカポカ殴る。
殴ると言っても本気ではないため痛くもかゆくもなく、ロビンからしたら可愛くて仕方ないのだろう…『アスカったら痛いわ』と言いながらも笑みは崩れず深まるばかりだった。
ナミは話が見えなくてついて行けずポカーンと口を開けて唖然としていた。


「で、どうなったのかしら?」

「ゔ…………た…」

「え?」

「………付き合う事に、なりました…」

「それはどっちと?」

「……二人と…です…」

「あら!それはめでたいわね!」

「めでたくないっ!!」

「?、なぜ?」

「だって彼女一人彼氏二人とか!!私どんだけあばずれ!?私どんだけ淫乱ビッチ!?私どんだけ尻軽女!?」

「別にいいじゃない、好きなんでしょ?」

「好きだよ!!でも……ッ、あーもーーっ!ロビンのせいなんだからね!」

「いやだわ、アスカ…私は相談に乗っただけよ…相談に乗って、ルフィがあなたの事が好きだって自覚しただけ…私は何もしていないわ」

「いや!ぜったいロビンのせいだ!!絶対ロビンが『海賊が世間のルールを守るのはおかしいと思わない?世の中には一妻多夫制っていうものがあるのよ、ルフィ』とか言ってルフィを炊きつけたんでしょ!!」

「流石アスカ!よくわかってるわね!」

「やっぱり〜〜!!ひどいよロビンーーっ!!」


ロビンが結果を聞きたがっていたからアスカは結果を教えた喜ばれた。
アスカは自分の意思でルフィとローの手を掴んだ。
それをロビンに当たるのは間違いだと思うが、元凶であることには変わらない。
またポカポカと痛くない攻撃にロビンは微笑ましく笑う。
だが…―――ダンッ!!、と大きな音が響き、アスカはピタリと動きを止め…後ろを見た。
そこにはナミがいた。


「ナ、ナミ…いたんだ…」

「ええ…最初からいたわ……どうせ私なんてアスカに忘れられる程度の存在よ…」

「…えっと…な、なんで…怒ってるの?」

「なんで…ですって!?」

「ひいっ!」


アスカはロビンへの怒りで部屋にいたナミの存在を見ていなかった。
ロビンしか見ていなかったアスカは先ほどの音…ナミが机を叩いた音でハッとさせナミの存在に気付く。
そのナミの表情がどう見ても鬼のような形相なのを見て、アスカはビクリと肩を揺らして怯える。


「アスカ!!今からでも遅くないわ!!トラ男と別れなさい!!」

「へ…?わ、別れる?」

「そうよ!!まだルフィは許せるわ…あいつ自覚するよりも前からあんたにメロメロの骨抜きだったもの……百歩譲ってルフィは認めてやるわ…でもね!やっぱり駄目!!私色々考えたけど…やっぱりトラ男はどうしても許せない!!別れなさい!アスカ!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!落ち着いてよナミ!一体どうしたの!?」

「今からでも遅くはないのよ!!アスカ!!心の傷が浅ければ傷の治りも早いもの!!」

「な、なんの事!?ナミ、何言ってるの?」

「ルフィとトラ男に無理矢理あ〜んなことやこ〜んなことされたんでしょ!?」

「あ…あ〜んなこと、や…こ、こ〜んなこと?」

「言っちゃえばセックスね」


まだナミとしてはルフィはギリギリ許せる範囲だった。
それもこれも船長だとか幼馴染だとかではなく、船の仲間だからアスカもそう簡単には離れないだろうという単純な理由からだった。
ナミはロビンの説得の元納得はしていたが、心からの納得はしていなかったようで脳内でもんもんと被害妄想が広がり、ナミの脳内でのアスカは何故か二人に無理矢理『あんなことやこんなこと』をされていた。
『あんなことやこんなこと』と言われアスカは嫌な予感がした。
しかしロビンがはっきりと言ってしまい、アスカは顔を引きつらせる。


「セ…セ……っ!?」

「セックス…エッチ、性行為、営み、まぐわい…」

「いや…言い方を変えなくても分かるから…」

「そ?―――で、したの?」

「………え?」

「したの?セックス」

「……………してないよ?」


せ、せ、と言葉を詰まらせるアスカのためにまたロビンがはっきりと言った。
しかも単語を変えて。
アスカはロビンのにっこりとした笑みからの問いに答える。
…間を置き、目を逸らして。

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