(145 / 274) ラビットガール2 (145)

「あいつらは私を調教していったよ…上手くできなければ殴るし、蹴るし、剣や銃で脅しもした…嫌だって言えばそれこそ殴られて気絶するまで…ううん…気絶してもそれもプレイの一環として続けてたみたい……上手くできても褒めもしないし、出来て当たり前みたいに続けさせるの………私、さ……私の体さ…一人で、イケないんだよ……そうあいつらが『躾』をしたの…」


『調教』、『躾』…という言葉にロビンもナミも自分がされているように傷ついた表情を浮かべた。
アスカはそれに気づきながらも気づかないフリをして、続けようとしたが、言葉を詰まらせてしまう。
言葉に乗せる声でさえ震えていた。
それでもアスカは震える声で、嘲笑ったような笑みを浮かべ更に続ける。


「それだけじゃない…私ね…"そういう意味"で触れられると…体が勝手に"スイッチ"が入って"そういう気分"になるんだよ…だけど、私は一人じゃイケない体にされてる……もうこれ以上言わなくても先の事、分かるよね…」


ロビンもナミも何も言わなかったが、アスカは理解したと察する。
2人とも大人の女性だから性に対して自分よりも知識はしっかりしているから分からないという事はないだろう。
アスカは一度深呼吸する。


「…パパが見つけた時にね、私…虫の息だったらしいんだ……主に栄養失調だけど…死ぬ寸前まで抱きつぶそうとしてたやつらのせいで私色々ヤバかったらしいんだ…だからパパが見つけて保護してくれなかったら…多分、今、ここにいないどころか…私という存在はこの世にいなかった…」


父親の事を思い出せばいくらか気持ちが落ち着いてきた。
あの頃は毎日が辛く、苦しい日々だった。
子供の体に性を受け入れるのにはまだ成長し切れていない精神では正気を保つのは難しかった。
恐怖から抵抗も出来なかったアスカは鎖で繋がれ常にベッドに寝ていたから自殺も出来ず、いつ死ねるのだろうかとばかり考えていたのだ。
そんな子供を救ったのが父親であるシャンクスである。
最初、シャンクスやマキノ達を信用できなかったのだが、アスカはミコトを見て心を開いた。
窓を開けて風に髪を靡かせ、太陽の光に照らされていたミコトはまさに、女神のように思えたのだ。
今だからこそ、アスカは父にもミコトにも感謝していた。


「ねえ、ロビン、ナミ…2人はセックス好き?」

「え…?」

「素直に答えて…2人はセックスが気持ちいいと思う?」


話を聞いていた二人は突然の問いに戸惑いを見せる。
まあ、当たり前である。
突然妹のように可愛がっている子に『セックスって好き?気持ちい?』と聞かれれば答えるのを戸惑うというもの。
だけど真剣な表情を浮かべるアスカに二人は好きかどうかは置いておいて、戸惑いながらも頷いて見せる。
それを見てアスカは『そう』と目線を落とす。


「私にとって…セックスっていうのは拷問なの」

「拷問?」

「そう…一応感じてはいるみたいなんだよ?声もそれらしい声出すから多分、感じてると思う……でも…その快楽が苦しみに変換されてるみたいで…私自身夢中になれるほどの快楽は感じたことは一度もなかった…あの海賊や貴族とのセックスでも…その辺の強姦魔とのセックスでも…あの…CP9の、化け猫の時も……気持ちいいとは言葉で言うけど…苦しかった…息がつまりそうで…首を絞められてるみたいで…体が別人みたいだった…」


今までセックスした男達を思い出しながらアスカは淡々と呟く。
セックスをした事もされた事に対してもアスカは何も思わない。
辛かったからやっと終わったという安息はあるが、それ以外の感情なんてなかった。
アスカにとってセックスとは拷問であるのと同時に、世間の人間が心を深く傷つけるものでもなかった。
それは既に傷ついているからかもしれないが、それ以上に子供の頃から日常化していて感覚が狂っていた。
ただ怯えるのは仲間にあまり知られたくない事だからだった。
普通、セックスというものは依存者が出るほどの快楽があるはずである。
実際アスカもセックスしているとき、喘ぎ声を出すから本当に苦しいとは思っていないのだろう。
だが幼い頃から与えられた強すぎる快楽は成長してもトラウマのように苦しみのように変換し、そして正確に言えばアスカにとって好まないが故に気持ちのいいはずの快楽が強すぎるように感じてしまうのだろう。
だからどれだけのイケメンに抱かれても、どれだけセックスに自信のある人に抱かれても…アスカは本当に心から気持ちがいいとは思えなかった。
しかし…


「でもね…ルフィとローだけは違った…」


あの二人の時だけ、違ったのだ。
思い出すだけでも体が熱くなりそうでアスカはそれを誤魔化すように、『違う?』と首をかしげるロビンとナミにアスカは頷く。


「2人とのセックスは本当に心の底から気持ちがいいって思えたの…やっぱりまだ苦しいことは苦しいけど…嫌な苦しみじゃなくて…2人に触れられた場所が熱くて、もっと求めてほしいとか、考えちゃって……えっと、とにかく…2人とのセックスは好き…」


二年前、ローと寝た時もそうだった。
今までアスカはセックスはしたくない部類に入っていた。
してもどうせ苦しみしか生まれないのだからしないに越したことはないと。
だが、二年前…義兄のエースが死んだ時…アスカはその苦しみを選択した。
そうすることで他人事のようにエースの死を簡単に受け入れた…と思っていたアスカが自ら科した罰でもあった。
実際はエースの死が突拍子すぎて、そして信じきれず泣くこともできなかっただけでルフィに言われて初めて感情を出すことができたのだが…
しかし、その罰であるはずのセックスが初めて気持ちいいと思えた。
最初、アスカは困惑する。
今まで色々な男に抱かれてきたが、容姿・テクニック関係なくみんな苦しいだけのセックスだった。
だけど…ローとのセックスは…ローとルフィとのセックスは違った。
何もかもが気持ちがよかったのだ。
キスも、体を触れられることも、中に入れられることも、気持ちが良かった。
アスカは初めてセックスに依存する人の気持ちが分かった気がした。
しかし、その感想を言うのもなんだか恥ずかしくなってアスカは頬を赤らめながら二人とのセックスは好きだと簡潔の感想を述べただけに終わる。
あれほど他の人とのセックスはペラペラと喋れたのに。
段々『何言ってんだろう、私…』と恥ずかしくなってロビンとナミに気恥ずかしさから上目遣いで見つめながら『だからね』と続ける。


「私ね、二人が好きなんだと思う……ううん…ローも、ルフィも…私、好き……だから…もう少しだけ、見守っててくれないかな…」

「アスカ…」


アスカはもう足掻くことはやめた。
ローも好き。
そして、ルフィも好き。
それでいいじゃないか、とある意味開き直った。
ローが好きだと自覚したのは早かったが、ルフィは常に一緒にいるから気づくのが遅かったのだ。
確かにローとルフィの二人を愛することは、二股にもなるし、健全ではなく、世間から言わせればアスカが悪役になるだろう。
だが、ローもルフィもちゃんと話し合って共有する道を選んでくれた。
いがみ合っていた二人が共有の道を選ぶというだけでも奇跡にも等しいだろう。
だからアスカは二人を受け入れた。
どちらも本当に、心から愛しているから。
ロビンはアスカの言葉に見守るように微笑みを浮かべたが、ナミはアスカの言葉にまだ少し表情が硬い。
本当言うとナミは認めたくはなかった。
いくらアスカが本当に好きな人だとしても、正直可愛い妹を手放したくはないと思っている。
だけど普段淡泊でこうやって頼むこと自体珍しいアスカにこれほど頼まれては流石のナミも『NO』とは言えなかった。


「…そう…アスカの気持ちは分かったわ…」

「じゃあ…」

「でも!…でも、私にとって、アスカは可愛い妹よ…それは今も変わらないわ…だからアスカは嫌だって思うだろうけど…ちょっとした口出しくらいは許してほしいの…」

「口出し?」

「ええ…大丈夫、もう前みたいな口出しはしないわ……そうね…口出しというよりはちょっとしたお節介かしら?」


色々考えさせられることばかりだった。
可愛い妹に付いた虫二匹、そして奴隷だったアスカが性奴隷だったということの発覚。
ナミは虫二匹よりも、その性奴隷だったことだというのがショック過ぎて戸惑いを感じている。
恐らくアスカは性奴隷だったという事は苦しい思い出だし嫌な記憶だが…世間が同情するような感情はそれほどないのだろう。
彼女にとって自我を保てなくなるほどの恐怖を覚えているのは天竜人の奴隷だった時だから。
ナミの言葉にアスカは首を傾げた。
首をかしげるアスカに頷きながらナミはアスカに近づき、座るアスカの前に膝をついてそっとアスカの頬へ手を伸ばし、アスカの両頬を包みこむように触れる。


「色々言ってごめんね…でもね、本当に私、あなたの事を妹のように思っているの…だからつい色々言ってしまったの……あなたの気持ちは分かったわ…でも…まだ私はトラ男も、ルフィも、あなたの彼氏って認められない」

「ナミ、でも…」

「大丈夫、さっきみたいに頭ごなしに認めていないわけじゃないから…ただ…そうね……悔しいの」

「悔しい?」

「そう…だってこんなに可愛い私の妹が彼氏に取られるなんて悔しいわ………だからこそ、私はルフィとトラ男の見張り役…あなたを傷つけることがあれば私は二人からあなたを奪い返してやるんだから…」

「ナミ…」


ナミも、本当は二人を認めていた。
実力や船長としての力量など、人間性もまあいいとして…本当は認めていたのだ。
だが、それ以上にアスカを取られたように悔しかった。
ナミも反省してちゃんと気持ちを伝え、アスカはそのナミの気持ちに嬉しくなって思わず涙が溜まる。
ポツポツと涙を流すアスカに慌てだすナミだが、そんなナミをよそにアスカはナミに抱き着く。


「アスカ?」

「ありがとう、ナミ…2人との交際、認めてくれて……私を愛してくれて、ありがとう…」

「馬鹿ね…お礼なんて言われる事は言っていないわよ…」


ナミの首筋に顔を埋め、アスカは涙で震える声でお礼を言った。
本当に、心からナミに感謝していた。
自分の想いを曲げるというものは意外と簡単なものではないのだ。
ナミは自分を本当に妹みたいに想ってくれていたから余計に、その想いを曲げて認めてくれたことを感謝していた。
ナミもお礼を口にするアスカに笑みを浮かべ、そっとアスカの頭を撫でてやる。
ナミのその手に身を委ねながら、アスカはナミの肩越しからロビンと目と目が合う。


「ロビン…ロビンもありがとう…」

「ふふ…安心するのは早いわよ?私も2人がアスカを傷つけることがあればナミと協力して奪い返すつもりでいるもの」


ロビンはいつも見守っててくれた。
いつも相談に乗って、アドバイスをくれた。
ロビンにもお礼を言うと、ロビンからはナミと同じような言葉が返ってきた。
ロビンもアスカを妹として愛してるから、ルフィとローを認めてくれたのだ。
だけど、根元はナミと同じらしく、アスカはロビンの言葉にくすくすと笑う。


「2人が協力しちゃうと、ルフィもローも負けちゃうかも…」


いつものアスカの様子に戻り、二人は笑みを深める。

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