(148 / 274) ラビットガール2 (148)

予定通りの時間にドレスローザに着き、船は海岸へと寄せる。


「着いた〜〜!!」

「声がでけェっつってんだろ!ルフィ!!ここはもう敵地だぞ!!」

「アーウ!今週のおれはスーパーだぜ!!工場の一つや二つ!!さっと見つけてドカンだ!!」


海岸へ停泊させた途端に真っ先にドレスローザに足を踏み入れたのはルフィだった。
船から飛び降りるように降りたルフィは敵地だというのも気にもせずこれでもかと大声で着いた喜びを叫ぶ。
ルフィに続き、ロー、アスカ、ゾロ、フランキー、錦えもん、モモの助、直葉と次々に降り、ウソップは船から叫ぶルフィにツッコんでいた。


「いい事思いついたぞ!!飛べ!モモ!!」

「重い!!のけ!せっしゃ飛べぬし島へは入らぬ!!父上の申しつけゆえ!!」


下に降りていた龍となったモモの助に乗れば上から工場が見つけられると思ったのか、ルフィは龍の姿になっていたモモの助の上に乗る。
だがモモの助が飛ぶ気配はなかった。
飛べないというモモの助にルフィは首を傾げた。


「何言ってんだよ〜〜!!お前飛んだじゃねェか!」

「翼もないのに?」

「そうなんだよ!コイツ飛んだんだよ!な!ナオ!!」

「はい」


飛んでいたという言葉に船にいたロビンが首を傾げ、ロビンの呟きにルフィが答える。
一緒にいた直葉にも聞くと直葉も頷いた。
しかし、当の本人であるモモの助は覚えていないの一点張りだった。
だが、直葉からしたらモモの助が空を飛べるのは驚きはしない。
あの時は初めて飛んだことに驚きはしたが、冷静に考えてみればモモの助が食べた実でモモの助が飛べるのは当たり前なのだ。


「だから言うておろう!!せっしゃその事は覚えておらぬ!!…ま…万が一飛べたとしても…!!―――っそんな恐ろしい事…!せっしゃ二度とせぬ!!空など飛んでたまるかァ!!」

「?、何だァ…高い所コエーのか!」

「貴様!無礼でござるぞ!武士にコワイものなどない!!」

「痛だだだだ…!!」


決して飛ばないと言い張るモモの助にルフィは高いところが怖いのかと勘違いしていた。
だがワノ国の人間としてそれを軽く否定できなかったのか、頭をがぶりと噛みつく。
龍というのもあって子供ながらに力があるようで、ルフィが痛がる声を上げる。


「やめろ!!コンヤロー!!」


ガブガブと強く噛みつくモモの助にルフィは思わず拳で殴り飛ばす。
それでもモモの助は負けじと噛みつきに向かった。


「何がブシだ!!おれはいつか『海賊王』になる男だ!バーカ!!」

「ふん!ではせっしゃはいつかワノ国の『将軍』になる男でござる!!あほーう!!」

「何を!?うなぎィ!!」

「ズが高いぞ!さるっ!!」

「ルフィさん、相手、8歳ですよ」

「モモの助、相手、サルよ」


お互い譲り合いがないから喧嘩が大事になりつつあり、ついにお互い手足が出る始末。
まるで子供の喧嘩にアスカは止める気すら起きなかった。
ボカボカと蹴る殴る噛む踏む掴むの喧嘩を続けていると…


「やめい!!モモの助!!恩人であるぞ!!」

「!!」


父である錦えもんが止めに入った。
その制止にお互い手を止め、距離を置く。
舌を出し合い睨みあう二人を見て錦えもんは溜息をつく。


「…すまん、ルフィ殿…大目に見てくれ……童なれどワノ国の武士…気位が高い!!…しかしわずか8歳相手にムキになるお主もどうだ」

「おれは意気地なしキライなんだ!」

「!!〜〜〜ちくしょう!おナミ!サルのやつが!!」

「よしよし」

「「「キサマ!離れろォ!!」」」


父の言いつけによって喧嘩は止めたが、意気地なしと言われてモモの助はギリッと歯を噛みしめる。
喧嘩も出来ず、ついにモモの助は泣き出して近くにいたナミに抱き着く。
龍の姿になっているため丁度ナミの胸に顔を埋めることができ、それを見た錦えもん、ブルック、サンジが嫉妬の怒号を上げる。


「…………」


モモの助は嫉妬に狂う大人など気にもせず、チラリとある場所を見た。
そこには直葉がおり、直葉はつまらなさそうにアスカの隣に立っているだけで、モモの助を見ていなかった。
むしろ姉の傍にいられるだけで幸せそうで、姉に夢中である。
愛しい片想いの相手に嫉妬もしてもらないモモの助は『ちぇ』と思いながら傷心を癒そうとナミの豊満な胸に顔を擦りつける。


「錦えもん、さっさと町へ行こう…変装服はどうなった?」

「そうでござった!ドレスローザはみなこのような衣装にござるゆえ、町に溶け込めるようおぬしら変身させてしんぜる!!」

「最高じゃねェか!ドレスローザ!!」

「ウソをつけ!!」


フランキーが騒ぐ錦えもんに声をかけ、錦えもんは頼まれていた衣装のイメージを描いた絵を見せる。
その絵は襟シャツ姿の男の横には『男はえりしゃつ』と書かれており、丸裸の女には『女はまるだし』と書かれており、当然それに反応したのはサンジだった。


「おい、お前にこいつを渡しとく」

「ビブルカード?」

「『ゾウ』という島を指す…おれ達に何かあったらここへ行け」


ローはコントが終わったのを見計らい、航海士であるナミに紙を一枚破って渡した。
それはビブルカードだった。
そのビブルカードは食事中話していた『ゾウ』という島を指すらしく、作戦中に何かありもしもの時にはそこへ向かえと渡された。
いかにも何かありますよというローの言葉にウソップが『おい!何もねェよなァ!』と聞くもローからは『さァな』という気なしな言葉しか返ってこない。
それがまた不安が煽られる。
いかにも嫌そうな表情を浮かべるウソップをよそにローは仲間の書いた地図を広げ、それを中心にみんな集まりだす。
その際アスカはまた喧嘩を勃発させていたルフィが股間を抑えながら自分を睨みつけるモモの助を手で押さえているのを見た。
股間を抑え、モモの助がグッと拳を握っているのを見て『やられたな』とアスカは全てを察した。


「シーザーを引き渡すチームは『ドレスローザ』を通って北へのびる長い長い橋を渡り『グリーンビット』へ進む」


地図はあまり上手くないらしいが、ローは知った事ではないため説明を続ける。
指でツッと今いる場所を指さした後線を描くように進みグリーンビットを指した。
それをアスカが後ろから見ているとグイッと腕を引っ張られ地図から振り返る。
振り返った先にいたのは、にっこりと満面の笑みを浮かべたルフィだった。


「なに?」

「あっちから美味そうな匂いがしてる!いこう!」

「は?でも私サニー号安全確保チームだし……ってルフィ!」

「わっ!あ、姉上〜っ!」


ルフィはぐいぐいっとアスカを引っ張ろうとするもアスカは工場破壊チームではないため断ろうとした。
だが、人の話を聞く性格ならば、ここまでの航海は苦労しないし、そもそも政府に自分から喧嘩を売らない。
みんなが話に夢中になっているその隙にルフィはアスカを連れ、アスカにくっついていた直葉もおまけとして引っ張られた。
そしてゾロ、錦えもん、フランキー、サンジと共にアスカと直葉はその場から消えた。
そんなアスカ達が消えたことに気付いていないウソップはドレスローザを経由して目的地へ向かうルートに異議を申し立てた。


「船で行きゃいいだろ!!全員で!」

「船じゃ不可能らしい」

「あら、それは楽しみ」

「あ、安全に頼むぞ!おい!!」


シーザー引き渡しチームはロー、ウソップ、ロビン、シーザー本人の4人。
この中で一番のビビリだと断言できるウソップの異議など却下されてしまった。
船でいけないという不吉な言葉にウソップは自分のくじ運の悪さを呪った。


「ねェ!!敵が来るってどういう事!?」

「えーっ!?船番安全じゃないんですか!?」

「そりゃここは敵の本拠地だぞ?でも船番はサンジとアスカも一緒だから…………………あれ!?サンジとアスカは!?」


うっうっ、と泣くウソップと共にナミも聞き捨てならない言葉に嫌な予感がよぎる。
ブルックも一番安全が船番だと思ってクジを引いたときに喜んだのに…ナミ同様不吉な言葉に身震いをする。
そんなナミとブルックに対して、同じビビリなチョッパーは余裕を見せていた。
それもそのはず…船番のメンバーはサンジとアスカという心強い戦闘員がついているからである。
そう……チョッパーはそう、思っていた。
しかし、『な!サンジ!アスカ!』と同意を求めサンジとアスカへ振り返ったのだが…そこは岩しかなかった。
チョッパーの言葉に全員アスカとサンジと直葉だけではなく工場破壊チームもいないことに気付く。


「な、直葉もおらぬのか!?って父上もおらぬではないか〜!!!」


錦えもんは元々侍救出チームにいたのでいなくなるのは分かっていたが、まさか直葉まで姿を暗ますとは思っていなかったモモの助は辺りを探すがやっぱり直葉の姿はない。
大変だとモモの助は直葉を追いかけようとしたが、それをナミ達に止められてしまう。


「駄目よモモちゃん!危ないわ!」

「離すのだおナミ!拙者はなんとしても直葉を連れ戻さねばならぬ!!」

「だから子供のお前一人じゃ危ないんだって!ここドフラミンゴが王様をやってる国なんだぞ!?」

「だからではないか!!ドフラミンゴが直葉に気づけば直葉はワノ国に送り返されてしまう!!そんなこと直葉は望んでおらぬ!!」


本気でモモの助もドレスローザに入って直葉を探そうとしているのを見て、ナミ達大人は必死に止めた。
子供の体なら女性のナミでも簡単に止められるが、龍の姿になられると流石にナミでも難しい。
ウソップとブルックも引き留めるが、モモの助の様子からただ事ではないと察したナミ達は怪訝とした顔でお互いを見合う。


「一体どうしたの、モモちゃん…なにか事情があるなら話してみて?」


ナミが優しく諭すようにそう声を掛ければ、モモの助は冷静さを取り戻したのか、ハッと我に返る。
だが、それが逆にモモの助の口を堅く閉ざすことになった。


「…いえぬ…いえぬが…直葉はワノ国に連れ戻されたくはないのでござる…」


冷静になり、モモの助はついポロっと言ってしまいそうになった自分に怒りを覚えた。
直葉がそれを望んでいないと知っているのだ。
グッと言葉を飲み込むようなモモの助の様子からして話してはくれないと考えこれ以上聞き出そうとする気は起きなかったが、『連れ戻される』という部分が引っ掛かった。
ルフィのあの様子からしてワノ国まで行くつもりではあるらしいが、果たしてそれが正しいのかナミ達はモモの助を見て分からなくなった。


「…………」


そのやり取りをローは傍で見ていた。
ローは直葉やワノ国の人間にそれほど興味はない。
だが、アスカをルフィに攫われた今、モモの助の気持ちは理解できた。
深い溜息をつき、ローはドレスローザを見上げる。

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