一同は今の姿では目立つからと、錦えもんの能力で変装した。
あのオモチャの兵隊ですら顔を知られているのだからいつバレてしまうかという危険もあった。
男性陣は襟シャツと白ひげとおじいさん風に、アスカと直葉はワノ国ではない服に疎い錦えもんが周りの女性を参考にドレスを出した。
当然直葉は頭巾の代わりに頭を隠せる帽子を被っている。
そのまま老人5人、若い女性1人、幼女1人で一同は適当な店に入る。
店は広く、結構な賑わいを見せていた。
「サンジの隣は駄目だからな!アスカ!」
「はいはい」
空腹に釣られたとはいえ、ルフィまだサンジの事を覚えていた。
普段からアスカにメロメロなサンジを警戒し、ルフィはアスカを自分とゾロの間に座らせる。
アスカは席順は基本どこでもいいので適当に返事を返し座る。
当然、ライバルである直葉は錦えもんの隣に座らせた。
ぷくっと頬を膨らませる直葉を錦えもんが宥めるのを見ながら、サンジは仕方なくルフィの隣に座る。
ゾロの隣に座った方がアスカに近かったが、死んでも奴の隣には座りたくなかったのである。
とはいえ、アスカの気持ちを尊重しルフィとローの付き合いを認めたがなんかカチンと来たサンジは、火をつけたばかりの煙草でゾロを指す。
「そういやァ、知ってるか?ルフィ…そこのマリモもアスカちゃんを狙ってるらしいぞ」
「おま…!!おれを巻き込むな!」
「なにィ!?」
「えっ…ほんと?」
「お前らも信じるなよ!!」
ゾロはコップに入っていた水を一気に飲んでいたが、とばっちりを受け器官に入りせき込む。
ルフィもアスカもサンジの言葉を信じ、ルフィはギロリと睨み、アスカはルフィへ身を寄せる。
その反応にサンジはニヤリと笑った。
「おれァ、嘘はついてねェ」
「ついてんだろうが!嘘!!なんでおれがこんなボスウサギを狙わなきゃならねェんだよ!!」
「そりゃおめェ…ナミさんとウソップが言ってたしなァ…『ゾロはアラバスタの頃からアスカちゃんに片想いしてる』って」
「あいつらのあれは遊んでるだけだ!!!っていうかまだその設定続いてんのかよ!!」
「駄目だぞ!ゾロ!!アスカはおれとトラ男のだ!!」
「いや、だから!!おれはミジンコたりともアスカを好きじゃねェ!!」
「ああ?んだとゴラマリモ!てめェアスカちゃんの事嫌いなのか!?あァ!?」
「そういう意味でもねェ!!!」
アラバスタから始まったナミとウソップの遊びが今じゃサンジにまで広がり、しかも『そういやァおれも聞いた事あるな』とフランキーまでもが知っていた。
サンジばかり気を取られていたルフィはまさかゾロもとは思っておらず『裏切り者!』と何故かゾロは罵られた。
違うと言っているのに裏切り者扱いに、ゾロもまた短気な方なため『んだとゴラ!』と置いてあった刀に手を伸ばす。
それを見たフランキーが『あ』と声を零し、アスカ達はフランキーを見る。
フランキーはゾロの刀を指さしていた。
「それが証拠じゃねェのか?」
「あ?」
「ゾロの刀の位置」
「……これがなんだ?」
「アスカの方に置くってこたァ………そういうことだろ?」
「なんでだよ!!」
「なるほど…命よりも大事にしてる刀をアスカちゃん側に置く事は………そういうことか」
「いやだからなんでだよ!!これはたまたまだ!!」
「なにィ!?じゃあアスカの方に刀を置くって事はそういうことなのか!?」
「お前もか…!!っていうかお前絶対分かってねェだろ!!」
フランキーが指したのはゾロの刀である。
三本ある刀はいつも腰に差してある右側ではなく、差していた刀は今アスカの隣…ゾロの左側の机にかけて置いていた。
ゾロは世界一の剣豪を目指しており、故に三本の刀は自分の命よりも大切な存在…その存在を安易にあちこちに置くほどゾロはずぼらではなく……と、いうことはそういうことである。
まあ、『いつでも手に取れるように』、『たまたま』というのが大きいが、今のサンジ達にはそれは通用しない。
何故かアスカの浮気相手がサンジから自分へ変わっているのにゾロは慌てる。
「アスカ!!お前も黙ってないで何か言え!!」
「え?アスカちゃんが本当に愛しているのは自分だって?」
「ちげーーよ!!なんでそんな解釈になるんだ!!てめェの頭は脳までグルグルかゴラァ!!」
「やんのかゴラ!!上等じゃねェか!!表出やがれ!!おれのアスカちゃんに恋慕した罪てめェの命で贖ってもらうぞ!!」
「だからお前らアスカはおれとトラ男のもんだって言ってんだろ!!」
直葉は出された水をちびちび飲むのに夢中だった。
それを人は飽きたとも言う。
姉が破廉恥な一妻多夫なのは仕方ない。
姉が望んでいるのならそれを受け入れるのが妹だ。
そもそもあんな父親のような心の狭い人間にはなりたくないと直葉は己の懐の狭さを叱る。
だから今更姉に夫が一人二人増えたって驚きもしないし、そもそも慣れた。
そして子供は飽きるのが早い。
醜い男の争いに飽きた直葉はチマチマと見ずを飲むことで暇をつぶしていた。
そんな直葉に気づかず、ゾロはグルルと獣のような唸り声を鳴らすルフィに困り果て、自覚する前からルフィを尻に敷いていたアスカに助けを求める。
それすら無理矢理そっちへ繋げようとするサンジにゾロは怒鳴り散らし、ついには刀を抜いてしまう。
本当に表に出て喧嘩が始まりそうな空気にアスカは溜息をつく。
周りの客は喧嘩しはじめる老人達にざわついており、アスカ達は注目の的だった。
特に5人の老人、一人の若い女性と幼女一人というのが余計に目立っているらしく、こそこそと『歳の差恋愛?』『5人の老人が若い女性の取り合い?』『あの女性が老人に貢がせてる』という根も葉もない憶測が飛び交い始め、更に『あの女性は小さい老人(ルフィ)と結婚しているが実は財産目当てで、更にあと4人の老人を色気を使って誑し込め金をせびっている』やら『あの幼女は彼女の子供だが誰が父親か分からない』とまで言われていた。
それを聞いてもアスカは平然としており、水を呑気にも飲む。
別にどんな噂が流れようがアスカ的にどうでもいい。
どうせ今は変装中なのだから元の姿に戻れば老人と女と幼女の存在は消えるのだ。
好き放題噂させてればいずれ飽きると普段のアスカなら放っておいただろう。
だが、今は変装中…そう、お忍びでここにいるのだ。
敵にバレてしまうのは極力避けたい。
だからアスカは三人を止めに入る。
開いていたメニューを閉じ、アスカはゾロ、ルフィ、サンジの頭を叩く。
三人は頭を叩かれ頭に血を上らせていたが、鎮火した。
アスカは大人しくなった三人に小さく溜息をつく。
「やめて」
「でもよ!アスカ…!」
遠慮なく叩いたので結構痛かったのか、三人とも頭を押さえていた。
アスカが短く制止の言葉を零せば頭を押さえながらルフィがむっとむくれた。
そんなルフィにアスカはもう一度ルフィの頭を叩く。
今度は力を抜いて軽めに。
「あんた私が浮気するとでも思ってるの?」
「ゔ…思ってねェけど…」
「じゃあ少しは胸はって堂々としてなさい……私はルフィとローの彼女で…ルフィとローは私の彼氏でしょ?」
『付き合って早々浮気とか…私どんだけ尻軽なの』と愚痴りながら言えば、ルフィは納得したのかニシシと笑って『それもそうだな!』と席に着く。
ゾロもルフィが誤解を解いてはいないが機嫌が治った事に安堵しながら席に着き、サンジは『ん〜〜!!流石アスカちゅわ〜ん!!!かァ〜〜っこいいィィ〜!!』と惚れ直していた。
「流石副船長だな」
「か・り!!副船長(仮)だから!!」
「おめェのそれもまだ引っ張んのかよ」
その見事な素早い鎮火に、直葉から拍手を送られた。
拍手を送られながらアスカも席に座り直したが、フランキーの関心した言葉を訂正する。
ゾロのアスカに片思い設定もまだまだ続いていたが、アスカの副船長設定もまだ続いていた。
アスカは『早く副船長誰か変わってくれないかなァ』と思っていると我慢が出来なくなった錦えもんが立ち上がる。
「拙者このような場所で油を売っておる場合ではない!!」
「まァまァ落ち着け…確かに時間はねェが…闇雲に走るよりは情報を掴むべきだ」
「――しかし妙だと思わねェか?仮にもこの国の王が今朝王位を放棄したばっかだぞ?おれァてっきりパニックにでもなってるかと思ったぜ」
「知らねェんじゃねェか?」
「んなバカな!!」
「よし!じゃァ聞いてみよう!おい!おっさ…」
「やめろ!!」
早く仲間を助け出したいと錦えもんは立ち上がるが、フランキーに宥められ座り直す。
サンジは落ち着いたのかタバコをふかせながら周りを見渡す。
今朝の新聞でこの国の王が辞めたというのに周りは落ち着き払っており、騒ぎと言えば来たばかりの時の女が男を刺したことだけ。
あとは平和な国に見えた。
ゾロが氷を噛み砕きながら知らないのではないかと言えばルフィが聞こうとと後ろにいた客に聞こうとした。
それをサンジが『今朝の一面だぞ!てめェの顔が載ったの!!』と顔バレを防ぐために止める。
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