(151 / 274) ラビットガール2 (151)

自分たちがどれだけ世間に知られ、どれだけ顔を知られているのか全く理解していないルフィにサンジはため息をつく。
すると…


「お料理…お待たせしたとか!しないとか!!」


料理が運ばれてきた。
自分たちの机に運ばれ置かれた料理にサンジ達は怪訝とさせる。


「料理ィ?まだ頼んでねェはずだぞ」

「ああ、それ私が頼んでおいた」

「はあ!?お前、いつのまに…」

「あんたらが喧嘩してる間に」

「……一応お前も当事者だったんだが……まあ、いいか…何頼んだんだ?」


誰も料理など頼んだ覚えどころかメニューにすら触れていない。
若干三人は頭でなら触れたが、アスカ以外の誰一人メニューを手で触れていない。
アスカは三人が喧嘩している間に色々頼んだらしく、フランキーの問いに『えっと…』とメニューを開く。


「"ドレスエビのパエリア"と、"ローズイカのイカスミパスタ"と"妖精のパンプキン入りガスパチョ"かな」

「どれもんまほ〜〜!!」

「…ん?"妖精のパンプキン"って何だ?」


パエリアとパスタはみんなで突っつけるように大きい方を選び、ガスパチョは大きいものはなく一人前しかなかったため人数分頼んだ。
サンジはパンプキンのガスパチョを口に入れながらふとした疑問を零せば、丁度人数分の水を頼もうとアスカが引き留めていた店員がその疑問に答えてくれた。


「え〜〜っ!この国では〜妖精の伝説が今でも…信じられているとか!いないとか!!―――つまり妖精が出るとか出ないとか!!」

「妖精が出る?」

「え〜〜!不思議でしょ?何百年も前からです!――どうぞ旅の人!!お気を付けに…なるとか!ならないとか!!」

「不思議なのはお前らだろ…」


妖精の、とは言葉通りで、この国には妖精の伝説が語り告げられているらしい。
それは歴史ある国ではよくある話で驚きはないが、不思議だという彼―――動くオモチャ達の方が不思議である。


「アスカ〜!これうんめーぞ!!」

「あ、本当だ」


シャンシャンとシンバルを鳴らしながら話すオモチャを見送っているとバクバクとパエリアを食べていたルフィがアスカに美味しさを伝える。
伝えると言っても食レポのような表現ではなくいつものごとく『うまい』である。
アスカにも一緒に味わってほしいのか、ルフィはアスカに自分のスプーンでパエリアを掬い口に入れる。
所謂『はいあーん』状態なのだが、そんな事付き合う前からお互いしているのを見てきたサンジ、ゾロ、フランキーはなんの反応もなかった。
本来なら『お前らアツアツだな〜』というイベントだというのに…
ルフィからパエリアを貰いアスカはその美味しさに顔を和ませた。
自分もルフィ達よりも遅めに食事を開始し、空だった皿に適当にパエリアを乗せる。
パクパクと食べ、次はイカスミパスタに手を伸ばそうとしたその時―――


「…ッ!!」

「き、きゃあ!も、申し訳ありませんっ!お客様っ!!」


アスカの手にスープが掛かった。
それも熱いスープが。
注文された皿を運んでいた店員だが、客とすれ違う際ぶつかってしまい、そのままスープがアスカの腕にかかってしまった。


「きゃあ!姉上!」

「アスカ!!」

「アスカちゃん!?」


すぐゾロが氷の入った水をアスカの腕にかけてくれたおかげで腕についていたスープは流れたが、皮膚が赤くなっておりジンジンとした痛みが走っていた。


「申し訳ございません!!すぐに水で冷やしてください!!」


そう言って店員にアスカはキッチンへと案内され流水を火傷の部分にかける。
ルフィや直葉がついてこようとしたが、大した火傷ではないため『食べてて』と断る。
スープが掛かったのはシュラハテンを付けている方の手で、アスカはゆっくり痛くないようにシュラハテンを外し、汚れているシュラハテンを水で軽く洗った後流水を当てた。
その間も店員は謝りっぱなしだが、アスカはその度に気にしていないと答える。
暫くするとルフィ達がいる方から大きな音が響き、地震のような小さな揺れが起こり、食器や料理器具がカタカタと音を立てる。
その地震のような揺れはすぐに止まったが、コックやアスカに付き添っていた店員は慌てふためいていた。
アスカも驚きはしたが周りよりも大きな驚きを見せることなく『何だったんだろう』と首を傾げていたその時…


「あーーっ!!」


アスカはチラっと視界に入ったものに声を上げる。
先ほどの揺れもあってか、その場にいた全員がアスカの声に驚き、付き添っていた店員が恐る恐る声をかける。


「ど、どうしたんですか?」

「シュラハテンがいなくなってる…!」

「しゅ、しゅらは…?」

「ここに置いてあったブレスレット見なかった!?」


アスカの目線の先には本来ブレスレット型になっていたシュラハテンの姿があるはずだった。
しかし目を離した隙にシュラハテンの姿がなく、アスカは声を上げたということである。
基本アスカから離れることのないシュラハテンだから勝手にどこかに消えるというのは考えられず、店員に聞いても首を振るだけ。
アスカは火傷を負っているのも気にせずキッチンを探し、それでもいないためルフィ達のもとへと戻っていく。


「ルフィ!!」

「アスカ!大丈夫だったか!?」

「大丈夫もなにも…!!シュラハテンがいないの!!ルフィのところに行ってない!?」


ルフィ達のところへ行けば、他の客たちも大騒ぎになっており、アスカは大穴が開いているのに気づかずルフィにシュラハテンの居場所を聞く。
ダメ元なため首を振るルフィに『そう』と返したアスカは少し落ち着きを取り戻す。
アスカの姿に駆け寄ってきた直葉が抱きついて来たが、シュラハテンの事が気になって錦えもんに渡す気にもならなかった。


「バッグがない!!」

「おれは時計が!!」

「サイフがない!!」

「しまった!おれも上着をやられたァ!!」


落ち着きを取り戻したアスカは周りを見渡す余裕が出来た。
すると周りみんなアスカと同じように何かを盗まれたようで、アスカはスリとはいえあまりにも大人数に怪訝とさせる。


「さっきのおっさんスリでもやらかしてったのか?」


どうやらアスカが火傷を冷やしている間に何か一悶着あったようで、そのおっさんが何かしたのかとサンジは勘ぐった。
アスカはそのおっさんとやらは見たことがないので首を傾げていると今度はゾロまでもが声を上げた。


「一本足りねェ!!」

「どうしたのでござる」

「刀がねェんだよ!!ここにあった『秋水』が!!」

「何を!?ワノ国の宝が!?」


どうやらこの騒ぎにアスカだけではなくゾロまでもやられたようで、周り同様ゾロも慌てだす。
周りの騒ぎをよそにアスカ達の傍にいたオモチャが笑い声を上げた。


「みんなやられたみたいだな…"妖精"が持ってったんだよ」

「何だよそりゃ!!妖精ってのは盗っ人の名前か!?」

「妖精は妖精さ…笑って諦めるんだねェ…遥か昔から目に見えない"妖精"はドレスローザの守り神…彼らのやる事にゃ目を瞑らなきゃならない」

「ちょっとなによそれ!!じゃあシュラハテンを連れていかれて笑って許せってこと!?」

「なんだと!?冗談じゃねェぞ!!」

「そうでござる!!あれはワノ国の国宝!!」

「あァ!?おれの刀だ!!」

「おぬしのではない!!―――おぬしにはいずれ決闘を申し込み『秋水』はワノ国に返してもらう所存っ!!」

「フン!いいだろう!!返り討ちにしてやる!!」


アスカはシュラハテンを、ゾロは秋水をそれぞれ大切な物を盗まれていた。
まだ周りのようなバッグやサイフ、上着などなら諦めもつくが…どちらもアスカとゾロにとって大切な掛け替えのない物である。
妖精だか何だか分からない者に盗まれ笑って許せとは簡単にはいかないのだ。
ゾロの持っている秋水はワノ国の国宝でもあり、その国宝を盗まれたと錦えもんも慌てていた。
秋水はスリラーバーグでリューマというゾンビから貰ったものである。
しかしそれを錦えもんが知るわけもなく、錦えもんは決闘をして正式に返してもらおうと申し込み、それをゾロは受けた。
今ではないにせよ二人は決闘するつもりだった。
言い争いを始める二人を呆れたように見つめていたアスカの耳に…"ある音"が入る。
思わずアスカはウサ耳を出してその音を探る。
それは…窓の開ける音だった。


「あ!!いたーー!!」

「!――欲張ったな!!"妖精"!!」


アスカは動物系の能力者…音には普通の人間より敏感である。
騒ぎの中窓をあけようとする音に気付き、アスカはその方へ目をやる。
そこには窓が半分以下開いていて、その隙間からゾロの刀が引っかかっているのが見えた。
アスカは声を上げ、その声にゾロも気づき真っ先に走って捕まえようとする。


「逃がさねェぞ!!」

「私のシュラハテンを返しなさーい!!」

「あっ!姉上待ってください!直葉も!」

「おい!ゾロ!!アスカ!!ナオ!どこ行くんだ!?」


ゾロに先を越されたが、アスカも続く。
二人が同時に走り出し、アスカに置いて行かれると直葉も慌てて追いかけた。
三人が走り出しのに気づいたルフィが声をかけるも、アスカとゾロはお互い大切な物を取り返すのに頭が一杯で、直葉は姉に置いて行かれたくなくてルフィに気づかない。
ゾロが窓を突き破り、アスカと直葉もそれに続く。
しかも…


「待て待てーー!!マリモてめェ!!なに勝手な行動してんだ!!てめェを彷徨わせる時間はねェんだよ!!」

「犯人を見つけたか!!ワノ国の宝!!何人にも渡さぬぞ!!」


サンジと錦えもんもついていってしまった。
錦えもんはゾロの秋水を追いかけて、サンジはゾロがプロの迷子なため仕方なく追いかける。


「面白そうだ!ししし!!」

「待てルフィ!!」

「おい!放せよ!おれ達も行こう!!」

「おれに名案が浮かんだんだよ―――よく分かった…こういう面子だとおれがしっかりしなきゃいけねェんだな…万事このアニキに任せとけ!!」


ルフィも面白そうだとついていこうとするも、それをフランキーに止められた。
止められたルフィは不服そうにしたが、しっかり者メンバーでもあるアスカが抜けた今…自分がしっかりしなければならないのだと気づいたフランキーはルフィを連れてどこかへ姿を消す。

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