(152 / 274) ラビットガール2 (152)

コロシアムの前に、今……―――一匹の長身ウサギが立っていた。
周りはオモチャも混ざっており、ウサギもまたその一部だと思われているためみんな気にもしていない。


≪一般からの出場受付はこちらになりまーす≫


受付嬢の呼びかけに答える者は誰一人いなかった。
それもそうだろう。
なんたって今回のコロシアムの出場者は一味違うのだから。
『ま、どうせ出場する人いないだろうけど』と毒吐く受付嬢の向かってウサギは一歩足を踏み出した。
しかし、ふと視界に現れた二人の影にウサギは思わず足を止める。


「……!!」


その影とは…―――モンキー・D・ルフィと、そのクルー…フランキーだった。



◇◇◇◇◇◇◇



ルフィはフランキーと共に下っ端を縛り上げ吐かせた情報によって只今コロシアム前にいる。
どうやらドフラミンゴの言っていた『ルフィが喉から手が出るほど欲しがるもの』というのはルフィとアスカの義兄の能力――メラメラの実だったらしい。
それを聞いてルフィは真っ先にアスカを思い浮かべた。
もしこの場にアスカがいたら…と思った。
アスカが何を言うかは分からない…だが、きっと自分と同じ考えなのだろうとルフィは思う。
大切な兄の悪魔の実…その実はもうエースとはなんの縁もゆかりもない悪魔の実だけど、生前エースが食べているという実がその辺の人間に渡したくはなかった。


「でけーな!コロシアム〜〜!!」

「何だ、おれも出場したくなってきたな!!」


コリーダコロシアムに近づくごとに歓声が大きくなる。
まだ試合前だというのにその熱狂は冷めていない。


「すげェ歓声だ」

「待てーーっ!!」


歓声が沸く中、それでも聞こえる大きな声にルフィとフランキーはその声の方へと振り返る。
そこには片足がない兵隊のオモチャが人間の警察に追われているところだった。


「また出た!『指名手配』のオモチャの兵隊!!」

「もはやこのコロシアムの主だな…毎度毎度…!」


通り過ぎる片足のオモチャは銃を片足なのに器用に避け、コロシアムに近づきジャンプする。


「「あ!!」」

「ノロマ共め!見ろ!!片足をコロシアムへ突っ込んだぞ!!」

「!!!」


オモチャを見送っているとオモチャは片足をコロシアム内に突っ込んでいた。
それを見て今まで追っていた警察達は悔し気に顔を歪め、銃を構えるのを辞める。


「?、なんで銃を下ろすんだ?」

「法律なんだピョン」

「…!?」


それを見て国外から来たルフィ達は首をかしげる。
コロシアムに片足を突っ込んだからなんだという話なのだが…第三者がそれに答えてくれた。
その第三者の登場にフランキーとルフィはその声の方へと振り返る。
そこには…


「「ウサギ!?」」


背の高いウサギが立っていた。
オモチャに慣れつつあったルフィとフランキーだったが、流石に背の高いウサギの登場に驚いてしまう。
しかもそのウサギをよく見れば長身で、ガタイもよく、二足歩行という…見たことのあるウサギだった。
ただ一つ違う物と言えば……顔が優しげで眼鏡をかけているというところだろうか。


「やあ、初めましてだピョン…ぼくはコネッホっていうのだピョン」

「それはご丁寧に……ってお前喋れるのかよ!!」

「えええ!?アスカのウサギって喋れるのか!?おれ一度もあいつらが喋ったとこ聞いた事ねェよ!」

「ああ、それウサギ違いだピョン」

「ウサギ違い!?」

「そうだピョン。ぼくはウサギのオモチャなんだピョン」


『コネッホ』と名乗ったウサギモドキをフランキーとルフィは似すぎているためアスカのウサギと勘違いした。
『人違い』ならぬ『ウサギ違い』である。
手を振るウサギの『オモチャ』だという言葉に二人は妙に納得がいかないが、それよりも気になった事があったためルフィが何かを問う前にフランキーが遮ってしまう。


「まあ、ウサギ違いならウサギ違いで片すとしてだ……コロシアムに片足突っ込むのが法律たァどういう意味だ?」

「なァなァ!!それよりお前ウンコ出るのか!?」

「何でもかんでも不思議生き物にそれ聞いてんじゃねェよ!」

「ウンコ?出るピョン」

「出るのかよ!!お前オモチャだろ!?」

「あっ…そうだった…じゃあ出ないピョン」

「いやもう訂正してもおせェよ!!結局どっちなんだよ!?」


ルフィは不思議な存在になんとも不思議な質問をする事がある。
人魚等でもそうだった。
オモチャだと言っていたのにルフィは排泄はするのかと聞き、それに突っ込んでいたらコネッホの答えに続けざまに突っ込んでしまった。
コネッホはフランキーの指摘に『あっ』と素が出たらしく、慌てて言い換えるもすでに遅い。
どうやら天然キャラのようで、『え?そう?』とキョトンとしていた。
そんなコネッホを見てルフィは『あひゃひゃひゃ!』と笑い出し腹を抱える。


「で?法律ってのはなんだ」

「あのコロシアムには『警察』及び『海兵』は立ち入り禁止なんだピョン」

「立ち入り禁止ィ?」

「そうだピョン…コロシアム内に犯罪者を見てもその権限は発動されないんだピョン…あのコロシアム内にはドンキホーテファミリーの独断の法が存在し、それを破れば犯罪者はあのオモチャではなく、警察の彼らにすり替わるんだピョン」

「なるほどなァ…だから指名手配のあのオモチャを前にあの二人は引き下がるしかねェってことか…」


コネッホの説明に納得していると、近くに注目を浴びていたオモチャが警察の姿が消えたのを確認して降りてきた。


「やや!これはご老体!お荷物でもお持ちしましょうか!!」

「なんだ急に礼儀正しくいな」

「あはは!面白ェ兵隊!」

「ややや!?面白いですかな!?」


降りた兵隊はふとルフィ達に気付けば駆け寄って気遣いを見せる。
今ルフィ達は錦えもんによって黒い服と白いひげによって顔と姿を隠しているため、兵隊は老体と勘違いしたのだろう。
面白いと笑うルフィに兵隊はペタンカチャンと体を使って笑いを取り、それをルフィが大笑いしていた。
相変わらずツボが分からない男である。


「おっさんそこどいてくれ」

「はっ!―――あ…!お邪魔か…!これは失礼!」

「めちゃめちゃ赤面してんじゃねェか!お前マジメだろ、本当は」

「そ…!そんな事はない!人を笑顔にしてこそのオモチャ!!マジメなオモチャなどありますか!!」


ルフィを笑わせているオモチャの先に受付があり、フランキーはそこをどいてもらうよう声をかけた。
しかしフランキーの言葉にハッとさせたオモチャはかぁ〜っとオモチャなのに顔を真っ赤に染めて慌てだす。
どうやら真面目な性格らしく、コネッホは目を細めた。


≪一般からの出場受付打ち切りますよーー!≫

「!」


すると受付の時間ももうすぐ締め切られるのか、あまりにも一般参加が少なすぎて受付嬢が『どうせいないんでしょ!』と拗ねていた。


「おいルフィ、お前は入り口別みてェだぞ」

「ん?そうか」


ルフィは兄エースの実を誰にも渡さないため出場しなければならない。
片足兵隊のオモチャの登場とコネッホの登場で話が逸れてしまったらしくフランキーが指さす方へ向かおうとする。
しかしそれをコネッホが声をかけ止めた。


「え?君も参加するんだピョン?」

「君"も"?……ってことは…」

「そうだピョン、ぼくも参加希望なんだピョン」

「え!お前戦えるのか!?」

「……………………………………もちろんだ!ピョン!」

「…今の間はなんなんだよ」


コネッホの言葉に一歩足を踏み出そうとしていたルフィがコネッホへ振り返る。
ルフィの問いにコネッホは数秒固まり、ビッと親指を立てウインクをした。
あまりにも間が開けすぎて逆に不安になるフランキーにコネッホは『大丈夫大丈夫だピョン』と言って答えるが…それが更に不安を仰ぐことになることをコネッホは知らない。


「知り合った縁だピョン一緒に行かないかピョン」

「ん?いいぞ!よし!行こう!!―――おーい!出る出る!!おれ達が出るぞーー!!」


『本当に大丈夫か?あいつ…』と不安がっているフランキーに気付かないままルフィとコネッホは受付へと向かう。
だが、周りからはどよめきが起こり、コロシアムに出場するという老人とオモチャ(?)は注目の的となっている。


「何だあんなじいさんとオモチャでんのか」

「大丈夫?今日の出場者達知ってんの??」


周りにはルフィが老人に見え、コネッホはオモチャに見えていたらしく、心配する声もあるが大半が笑っていた。
どうやらルフィとコネットは弱いと見られているようである。


(おいルフィ!おそらくバトルショーだとは思うが…いいか、これだけは守れ!存分にやっていいが正体だけはバレるな!!)

「分かった!」


最初にコネッホが名簿に名前を書き、次にルフィが名前を記入する。
その前に小声でフランキーに偽名を使えと言われたのに、馬鹿正直なルフィは名簿に本名を書こうとして叩かれた。
そんなルフィをコネッホは愉快そうに笑う。

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