(153 / 274) ラビットガール2 (153)

コロシアム内は出場者以外は入れない決まりなのか、記入していないフランキーは中には入れず観客席に移動することにした。
その際もルフィに正体はバラすなと口酸っぱく教え、グッと親指を立てるが、正直フランキーは不安で一杯である。


「わ〜…ルーシー君、見るんだピョン!強そうな人達が一杯だピョン!」


コロシアムの控室に案内され見たのは…男男男。
そして筋肉筋肉筋肉である。
どう見てもカタギではないような風貌の男達ばかりで、やはりその中で話題になっているのは商品の事だった。


「"メラメラの実"はおれのモンだ!!」

「おれだ!バカヤロー!!」


がやがやと聞こえる声の中でも何度も聞こえる『メラメラの実』の名前。
それを聞くたびにルフィは闘志を燃やしていた。


「"メラメラの実"、か…」


控室の熱気がすごく、メラメラの実の名前が飽きるほど出てくる。
それを聞きながら鼻をひくひくさせコネッホはぽつりと呟く。
だがその呟きは大きな音にかき消され誰にも届かなかった。


「な、なんだ!?」


その大きな音に目をやればルフィが自分の背丈の倍の大男をひょいっとひねり倒しているところだった。
コネッホはそんなルフィに目を丸くし開いた口が塞がらない状態となる。


「君か!この騒ぎは!!今すぐここを出たまえ!退場だ!!」

「ええ!?」

「試合前に乱闘事件を起こすようなゴロツキに―――わっ!」


騒ぎに駆け付けた係りの兵が現れ、状況を見て大男をルフィがやったと判断し、ルフィを退場させようとしていた。
それに驚くルフィとそしてそんな勘違いをしている係りの兵にコネッホが誤解を解こうとしたその時…どこからともなく大きな斧がルフィと係りの間の床に刺さる。


「コラコラ!やめやい!ドアホ!!仕掛けたのはそこのデカブツだ!退場ならそいつやい!」

「もう意識ねェけどな」


斧を投げた方へとコネッホが振り返ればそこには三人の男がいた。
周りは三人を見てざわめき、コネッホは自分のその長い耳で男達の情報を聞き出す。
係りの兵に誤解を解くような事を言ったのが、サイ、そしてその隣にいる長髪な男がブー…この男が斧を投げた模様である。
そして二人の後ろにいる更に巨体を持つ老人が、チンジャオ。
三人とも花ノ国のギャング、チンジャオファミリーらしい。
サイたちや周りの男達のおかげで誤解も解けたルフィはホッとしながら斧を持ち主に返し、お礼を告げる。


「助かった!ありがとう!」

「いいやい例なんて!カカ!!」


ブーに斧を渡しお礼を告げるルフィにサイは笑う。
それだけを見れば大きな器の男だと思うだろう。
だが…コネッホは少し様子がおかしくなるのに気付く。


「まったく…礼なんていいやい…礼なんか言わなくてもいい……礼を言うんじゃねェやい……――――取り消せ貴様ァ〜〜〜!!」

「わーーっ!!」

「そこまで拒否することじゃねェよ!アニィ!!」


段々と雲行きが怪しくなり、ついには怒りだしルフィに襲い掛かりかけた。
それを弟であるブーが慌てて兄を羽交い絞めにして止め、『感情が盛り上がるタイプなんだ!』と言ってルフィに謝りながら退散していく。
それを見てルフィは『色んな奴がいるなー』とだけ零して終わった。
それを更にコネッホが見て『やっぱ4億の首は違うな〜』と思ったという。
そして、ルフィは放っておいても大丈夫だという判断をし、コネッホはしばらくルフィの前から姿を消した。


『ごしゅじんしゃまっ!』

『ごしゅじんしゃまっ!ぼくたちしゅーごーしまちた!』


人気のない場所を探し、しばらく待っているとコネッホの元に親指くらいの小さなウサギが集まってくる。
キュウキュウと鳴いている小ウサギだが、コネッホには言葉として聞こえている。
小ウサギが自分の何百倍もの大きさであるコネッホの足元に綺麗に整列し見上げる。
小ウサギはコネッホのように二足歩行ではなく、普通のウサギと変わらず四足歩行である。
そんな彼らにコネッホは膝をつく。
だがそれでも親指しかない彼らの大きさではまだ高すぎた。


「ごくろうさま…みんな怪我はないかい?」

『あい!大丈夫でち!』

『ぼくたちちっちゃいからニンゲンには見つけられないでチ!!』

『ぼくたちいっぱい頑張ったでしゅ!ごしゅじんしゃまのために頑張りまちた!!』

『そしたら沢山のおはなし聞きまちた!!』

「じゃあ、焦らず、ゆっくりと一人ずつ教えてくれ」

『『『あいっ!!』』』


キュウキュウ鳴く小ウサギは可愛い。
ほんわかしそうである。
だがここはコロシアム…どこに誰がいるか分からない場所である。
まずは、とコネッホは一匹の小ウサギを指さし、指名された小ウサギは片足を挙手のように上げて発言する。


『えっとでしゅね!えっと、このコロシアムの勝利品は―――』

『それはもう知ってるでち!違う奴でち!』

『あ!そうでちた!!ごめんなしゃい!ごしゅじんしゃま!』

「別に怒ってないからいいよ」

『『『ありがとうございましゅ!』』』


この小ウサギ達は人並みに頭がよく、どうやっているかは分からないが情報収集に長けていた。
しかし、そのかわりに欠点に子供思考なのと戦闘には不向きなのだ。
だからよく話がこうして脱線してしまうことも多々ある。
ちょっと難しかったかな、と思い次はこちらから話題を振る事にした。


「じゃあ、そうだね……麦わらとローはどうして手を組み、そして何のためにこのタイミングでこの国に来たんだい?」

『あい!それはでしゅね麦わりゃしゃんとローしゃんの同盟にはドフラミンゴしゃんが深く関わってるんでしゅ!!』

「!――ドフラミンゴが?どうして…」

『んーとでしゅね!ローしゃんは復讐するために麦わりゃしゃんと手を組んだみたいなんでしゅ!』

「復讐!?……それは…もしかして…」

『あい!ごしゅじんしゃまの大親友のロシナンテしゃんの復讐でち!!その復讐のためにローしゃんは海賊になってパンクハザードで研究していたシーザーしゃんを誘拐してドフラミンゴしゃんをおびき寄せてやっつけるつもりなんでしゅ!!』

「ッ!!――――ロー…!なんて馬鹿な事を…っ!!」


小ウサギ達の報告にやはりまだ穴があるが、コネッホはローの情報にグッと拳を握った。
どうしてもコネッホはその話を聞き平然といられなかった。
大切な親友の忘れ形見が今、殺されそうになっているのに平然としていられないのだ。
だが…しかし…それでもコネッホはメラメラの実を食べなければならない事情があった。
そして、一番の気がかりもある。


「……アスカは…どうしている?」

『アスカしゃんは今妖精しゃんを追ってましゅ!』

「妖精…ああ、この国の守り神か…」

『あい!大切なアクセサリーを持っていかれて追っているんでしゅ!』

「じゃあ怪我はないんだね?」

『『『めっちゃ元気ビンビンでちた!!』』』


それはアスカの事。
グッと握った拳を解きながら落ち着くため深呼吸した後小ウサギ達に問う。
その問いかけに返ってきた答えにコネッホはホッと息をつき、声を揃える小ウサギ達に笑みを浮かべた。


「今のところ目立った動きはないみたいだけど……ローは今どこにいるのか分かるかい?」

『あい!どうやらローしゃんはグリーンピットに向かう予定でしゅ!』

『只今ローしゃんは麦わりゃしゃんのお仲間しゃんと一緒にカフェでおやつタイムでち!!』

『ローしゃんはコーヒーを頼んでまちた!』

『シーザーしゃんはふてぶてしくもコーヒーを頼んでまちた!』

『ロビンしゃんは紅茶でち!』

『ウソップしゃんはお茶でちた!』


位置確認として聞いてみると、どうやらまだローとドフラミンゴは接触していないようでホッとする。
だが、時間が進めば進むほど彼らの距離は縮まり、必ず闘いが始まるだろう。
そしてローの計画は動き始め、この国も恐らくは戦場と化すだろう。


「ぼくたちは無力だ…」

『あい…』

『ぼくたちもごしゅじんしゃまも…むりょくでしゅ』

『でも!』

『ぼくたちは…!ごしゅじんしゃまは!奇跡と言える復活をしまちた!!』

『限りある命をどうか今度はご自分のために使ってくだしゃい!!』

『ぼくたちはずっとずっとごしゅじんしゃまの味方でち!!』

「お前たち…」


コネッホは弱い。
それもルフィやあのチンジャオファミリーよりも。
だけどこの力をもってすればあの大男達には勝てる気がした。


「ぼくのブロックはB…そしてルフィ君はD……彼とは決勝で当たるだろう…」

『でもでも麦わりゃしゃんになら負けても大丈夫でち!』

『あいでち!!麦わりゃしゃんなら後を任せられるでしゅ!!』

「そうだね…彼は強い…なんていったってアスカが船長として認めて、ローが同盟相手に認めた子だ…あの子たちが選んだ子なら、きっと…」


自分のブロックには名のない大男たちしかいなかった気がした。
中にはチンジャオファミリー、ルフィを初めとし、バルトロメオ、キャベンディッシュ、ベラミーなど名のある者たちもいる。
優勝するまで油断は出来なかった。


「さあ、そろそろ時間切れだ…君たちが活動できる時間は半日…そして反動で二日は動けなくなる…もう眠りなさい」

『『『あい!おやすみなしゃい!ごしゅじんしゃま!』』』


『ああ、お休み』、と返せば小ウサギ達は良い子の返事をしながら姿を消していく。
すーっと水に消えるように小ウサギ達が姿を消していったその場は嫌に静けさだけが残る。
ゆっくりと立ち上がるコネッホの顔は陰で隠れていた。
コネッホが思うのはアスカの事。
アスカが無事であればそれでよかった。
コネッホは己の手を見つめる。
何度見ても白い毛だけが見えた。
それでもこの手であの子に触れることができるのだ。
そう思うとこの手も悪くないように見えた。


「一度だけでいい……アスカ…もう一度だけでもいいから…君に触れたい…」


ポツリと呟かれたコネッホの呟きは…誰にも届くことなく空しく消えた。
しかし、コネッホは知らない…物陰にいた影が呟きを聞き消えたことを…

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