(154 / 274) ラビットガール2 (154)

フランキーとルフィがコロシアムにいる時…アスカは直葉を連れてゾロ、サンジ、錦えもんと共に泥棒を追いかけていた。


「何が妖精だ!!ただの盗っ人じゃねェか!!」


ゾロを先頭に妖精という名の泥棒を追いかけて街中に入る。
アスカは慣れない長いスカートと、ヒールのある靴に苦戦しゾロの次に店を出たのにサンジに抜かされてしまっていた。


「どこへ消えた!?」

「待てっつってんだろ!!刀の一本や二本諦めろ!!」

「そうはいくか!アホウ!!」


カツンカツンと音を立てながら走るアスカは既に疲れていた。
ヒールなどナミやロビンが履いているのを見るくらいで、アスカ自身は一度も履いたことがなかった。
だから余計に疲れが回り、更には長いスカートというのも慣れておらず苦戦していた。
幸いにも靴擦れは起きていないが、このまま走り回ればいつ靴擦れが起きるか分からない。
しかもサングラスなども付けたことがない。
見えないわけではないが、いつも見えている視界と違うと色々やりにくい。
だが錦えもんの能力は脱ぐと消えるため、脱ぎたくても脱げない。
ゼーハーゼーハーと珍しく肩で息をしているアスカはついにその場に立ち止まってしまう。


「大丈夫ですか、姉上…」

「だ、だいじょう、ぶ…」


慣れない靴と服装にいつもなら平気なのに疲れが出てしまう。
直葉も服装を変えているが、子供なためヒールは履いておらず着物とは違い洋装は動きやすい。
大人たちの足についてくるのも本来の子供ならそもそも置いて行かれるはずだが、直葉は度胸だけではなく体力もあるのか息切れしていない。
自分を気遣えるほどの余裕を見せる子供に、アスカは自分って体力がないのかと落ち込む。
サンジも立ち止まったアスカを気遣ってくれたが、ハッとサンジが何かに気づいた。


「はっ!!あれは…!」

「いたか!妖精!!」


サンジが何かに気づいた途端、周囲に歓声が沸いた。
イベントか何かをしているような声にサンジはある方へ視線を向ける。
妖精を見つけたのかとゾロもアスカも直葉もそちらに振り向くとそこには―――一人の女性が踊っていた。
その踊り子は女のアスカでも綺麗だと思うほどの美貌を持ち、観客たちからは歓声がわきあがる。


「キ、キレイだ…!」

「なんだ…妖精じゃないじゃん…」

「この国の女は男を刺すと聞いたろ!!お前みてェなのがやられんだよ!!」

「刺されてもいい〜〜〜!!」


妖精ではないとゾロとアスカは意識を別へと向け、直葉はサンジの女好きに呆れた視線を向けた。
サンジらしいと言えばサンジらしいが、ゾロが走ったのを見てアスカもそれに続き、その後を直葉も追う。


「だァ!!しまった!!アスカちゃんと直葉ちゃんを見失った!ついでにマリモも!あの迷子マリモ〜〜!!――――…よし!いい機会だ!!あいつだけ島に置いていこう!追うだけ追ったんだ…誠意は尽くした!!あとはおれと逸れて心細く泣いているアスカちゃんの前に颯爽と現れれば…!!きっとアスカちゃんはおれに惚れ直すにきまってるぜ!!ぐふ…!ぐふふふ!!」


女に夢中でゾロ達に置いて行かれたと気づいた時にはすでに3人の影すら見当たらず、サンジはものの数分で迷子となったマリモに頭を抱えかけた。
…が、それもものの数秒で開き直りゾロだけ置いていく気満々だった。
しかもルフィとローと付き合う事になったと報告したばかりだというのにすっかりいつもの調子を取り戻す。


「もし!!あなたさっき目の合った方ね!!」

「!」

「お願い!!私を抱きしめて!!」

「!?――えええ!!?」


もんもんとアスカとのラブラブを妄想していたサンジに声をかける人がいた。
振り返ればその人とは、さきほどステージで踊っていた踊り子の女性だった。
彼女は突然サンジに駆け寄り、手をギュッと握ってなんと抱きしめてほしいとお願いした。
それに驚愕しているサンジに彼女はハッと何かに気付き、サンジの承諾も聞かずそのまま抱きしめる。
首に手を回し抱きしめる彼女にサンジは目をこれでもかと丸くし絶句していた。
だが、ちゃっかり彼女の腰に腕を回しているところをみると混乱していてもサンジなんだなとは思う。
するとサンジの後ろから人間の兵隊が走り去る。


「…ありがとう……もう行ったみたい…」

「…………」

「………あ、あの…もう、大丈夫……」

「いえ…どういたバしまして!」

「!?―――きゃあ!!」


彼女は兵隊に追われていたようで、サンジに庇ってもらっていた。
ギュッとサンジに抱き着いていた彼女は兵隊が去ったのを見計らい離れようとする。
しかしサンジの腕が腰に回り離してくれずサンジを見上げた。
その見上げたサンジの顔は…主に鼻から下が鼻血によって真っ赤に染まっていた。
それには流石に驚いてしまう。


「ごめんなさいっ…!頭でもぶつけたからしら…」

「あーいや…ぶつかってきたのは出会いという名の衝撃だけだ」

「でも…こんなに血…」

「いや、大したこと…」

「かわいそう…」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」


抱き着いた拍子に頭でもぶつけたのかと心配する彼女にサンジは大丈夫だといいかける。
だが、自分の顔を覗き込む心配そうな彼女の表情にサンジは思いっきりキューピットの矢で刺されてしまった。


「…!!ダメだ…!!もう恋が止められないッ!!」

「え!?ダメよ!!そんな目で私を見ちゃ…!!私はもう恋を捨てた女っ…!!過去私に関わった男達はみんな…」

「そう!!みんな幸せだ!――追われてたな!!あいつら一体誰なんだ!?おれが力になれることがあれば言ってくれ!!」


ドッキュン、とハートを射抜かれたサンジは目をこれでもかと大きなハートにさせ、周りもピンク色のハートを作る。
惚れた彼女を追っていた兵隊たちといい、先ほどの彼女の様子といい…サンジは何か力になれないかと思った。
サンジの言葉に彼女はそっと目を下へと逸らす。


「……追って来たのは…警官よ…私………男の人を…刺したの!恋が…拗れて…」

「えェ!?この国の女は男を刺すほど情熱的って本当なのか!?―――OK!」

「OKなの!?」


兵隊だと思っていた男達は、どうやら警官のようで、彼女は戸惑いながら事情を話してくれた。
彼女は男性との恋に拗れ、つい刺してしまったという。
国に入った時に兵隊のオモチャに聞いた話は本当だったのかと驚いていたサンジだったが…グッと親指を立てすんなりと受け入れた。
もはや恋は盲目としか言いようがない。
彼女は恋が抉れ男を刺したと聞いてもすぐに受け入れるサンジに驚きの表情を浮かべていたが……じわりと大きな瞳から涙を溜め、サンジに背を向ける。


「ウウ…!ダメよ!!こんな魔性の女を許さないで!!……あなたを…好きになっちゃう…っ」

「〜〜〜!!!」


背を向け体を震わせる彼女にサンジは心配そうに声をかけた。
人を刺したという女なのにサンジは優しくしてくれて、彼女は刺した相手への罪悪感と罪の意識…そしてサンジの優しさに揺れていた。
サンジはチラリと見つめる彼女に恋心だけではなくもう奪われるものはないと言わんばかりに骨抜きにされていた。


「…私はヴァイオレット……よろしければ隣町まで私を護衛してくださない?―――そして、そこで……殺してほしい男がいる!!」

「!!?」


女性の…ヴァイオレットの言葉にサンジは目を丸くした。

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