(159 / 274) ラビットガール2 (159)

―――試合も終わり外にいたゾロと錦えもんと合流したルフィは、今必死に出口を探していた。
それもこれも計画が大幅にズレたのだ。
そもそも計画の始まりであるドフラミンゴが七武海を降りたのは偽りだった。
ドフラミンゴはローがひきつけているはずだったのだが、ドフラミンゴの方が一枚上手だったからかローはドフラミンゴに銃でやられ、連れていかれた。
その緊急事態にメラメラの実と言っている場合ではなくなりゾロ達と合流するために出口を探している途中だった。


「あれ〜!?出口どころか…!ここどこだ!?」


出口を探すも見つけた出口全ては海楼石で出来た扉で塞がれており壊すことも出来ずにずっと走り回っていた。
するとゾロ達が呼んでいると知らせてくれたが途中で気を失って倒れていたバルトロメオを発見する。


「おお!トサカの奴〜〜!!いいトコで会った!!」

「!?―――おわあ〜〜!!ル…ル…ル……!!ルヒィイ先輩ィ〜〜〜!!」


ルフィとまた再会しバルトロメオは声を上げた。
頬が赤く染まるバルトロメオは実は…ルフィの大ファンである。
ルフィだけではなく副船長であるアスカを初めとする麦わらの海賊団のクルー全員が彼にとって大スターであった。
そんな大スターの中の大スターであるルフィに声をかけられただけではなく『いいトコで会った』とまで言われ、バルトロメオは気絶しかけた。
しかしそれをなんとか踏ん張り背を向けることで耐える。


「あ!ベラミー!」

「ル…ルフィ先輩!!さっきァ……ゾ、ゾロ先輩とお会いになら…!なられ…!!(くそ…!眩しすぎて目も合わせらんねェべ!!)」

「ああ!会えた!ありがとな!」

(めっそうもねェべ!!!)


バルトロメオの姿ばかり目に行っていたからか、近づいてようやくベラミーに気付く。
空島の事で揉めた事があったベラミーだったが、再会し、ベラミーが変わった事を知ってルフィはもう過去の事でベラミーを怒ることはなかった。
バルトロメオとベラミーという珍しい組み合わせに首を傾げながらもルフィは出口を探しているのを思い出す。


「ほんで、おれ…急用ができて外に出てェんだけどよ!!出口がなくて…」

「このコロシアムに出口なんかねェよ」

「え!?」


元々ベラミーはドフラミンゴの部下(とルフィは思っている)である。
出口の事なら仲間に聞けば早いと思って聞いたが、このコロシアムに出口がないと聞きルフィは驚く。
更にはなぜか試合以上に怪我をしているベラミーにも驚いたが、それを心配し問えばベラミーには無視された。
どうやら触れてほしくない話題らしい。


「…選手は一度入っちまえば二度と出てこれねェ!…探すだけムダだ」

「なんだ!?どういう事だ!?絶対に!?絶対ねェのか!?〜〜お前ドフラミンゴの部下だろ!?じゃあなんか知ってんじゃねェのか!?頼む!!仲間がヤベェんだよ!!」

「…ッ」


ルフィの『ドフラミンゴの部下』という言葉にベラミーは息を呑んだ。
ドフラミンゴの部下…に、ベラミーはなりたかった。
ベラミーはドフラミンゴに憧れてやっと傘下に入ったが、どうやらそれはベラミーだけが思っていた事らしい。
当のドフラミンゴはベラミーを部下どころか使い捨てのゴミとしか考えておらず、こうしてルフィの暗殺を失敗するのを確認するよりも幹部の一人にどうせ失敗するだろうから先に殺しておけと言われる始末だった。
悔しくてギリッと奥歯を噛みしめるベラミーはゆっくりとルフィを見上げる。


「―――おれは今から外へ出る…ついてくりゃもしかしてお前も…出れるかもな…」

「!!――そうか!!ありがとう!連れてってくれんだな!!」

「お前が勝手につけてくりゃ…偶然そうなるって話だ!!おれにボスを裏切れってのか…!?おれはドフラミンゴを裏切れねェ!!あの人を尊敬してる…」

「おいおい…おめェさっき…」

「ダマってろ!!おれにも通すべき筋はある!!」

「分かった!じゃあつけてく!!」


バルトロメオは先ほどの…その尊敬している人の部下であるデリンジャーに殺されかけたのを告げようとしたが、それを一睨みされてしまう。
睨みつけるベラミーにバルトロメオはあえて何も言わなかったが複雑そうにしていた。
そんな二人に気付かずルフィは頷きベラミーの後をつけることにした。


「――だがしかしルフィ先輩!"メラメラの実"は…」


頷き嬉しそうにもう一度お礼を言うルフィに鼻を鳴らしそっぽを向くベラミーを見下ろしているとふとここに来た目的を思い出し、ルフィに問う。
相変わらず背を向けているが、そのバルトロメオの問いにルフィはグッと出そうになった言葉を呑み込み、『仕方ない』と零す。


「渡したくねェ奴もいるけど…仕方ねェ……仲間の命にゃかえられねェ!」

「んだば!!おれに任すてけろっ!!ルフィ先輩!おれァ元々優勝すたらあの大切なエース様の形見さルフィ先輩とアスカ先輩に届けるつもりだったんだべ!!」

「え!?くれんのか!?」

「もつろんだ!あの実はエース様の形見だべ!!メラメラの実はルフィ先輩とアスカ先輩が持つべきだ!!」


メラメラの実はエースの能力だった悪魔の実。
本当は自分が優勝して持っていたかったが、仲間の命と比べると仕方ないが諦めるしか選択肢がなかった。
しかし背を向けたままのバルトロメオが代わりに手に入れてくれると言いルフィは喜ぶ。


「メラメラの実はおれが必ず手に入れてっから!!安心して外さ出てくんろ!!」

「そうか!それなら助かる!」


だんだんとナマっていくバルトロメオはグッと拳を握り力説するが、残念なことにその熱意を向ける相手に背中を向いているので伝わっているかは分からない。
ベラミーにも『あっちに言えよ』と突っ込まれるほど緊張し目さえ合わせられないバルトロメオはお礼を言われ『きゃ〜〜!!』と心の中で女のような黄色い声を上げた。
ルフィも自分の代わりにメラメラの実を取ってくれる人がいて安堵していたのだが…


「"メラメラの実"はお前には渡せねェぞ…"麦わらのルフィ"!!」

「!?」


ルフィの後ろから一人の男が現れた。
ルフィは振り返るもその男の顔に見覚えはなく怪訝とさせる。


「んだ!?てめェ…!何モンだァ!?ルフィ先輩に気安く声ェかけやがって!!あのお方はかの伝説の海賊"火拳のエース"様の弟にして!未来の『海賊王』であらせられんだっぺ!このバカ!!」

「…――そんな事昔から知ってる」


突然現れた男にさっそくバルトロメオが啖呵を切りに行った。
しかし男にトンと軽く押され、バルトロメオはそばに置かれていた荷物の上に倒れてしまう。


「おれだよ、ルフィ!」


男の『メラメラの実は渡さねェ』という言葉にむっとするルフィは拳を握り男を警戒する。
そんなルフィに男は何も言わず深く被っていた帽子を静かに取り、顔を見せた。
しかし『おれだ』と言われても顔に見覚えのないルフィは怪訝とさせる。


「なーにがオレだ!!"メラメラの実"はエースの形見だ!!欲しいんなら敵だ!!それにおれをルフィと呼ぶけど見ろ!このヒゲを!!おれはルーシーだ!!」

「変装したくらいで"弟の顔"が分からねェわけねェだろ」

「弟ォ!?あのなァ!おれを弟と呼ぶのは姉ちゃんと死んだエースと!もっと昔に死んだ……――!!?」


ルフィは見知らぬ男に『弟』と呼ばれカチンと来た。
自分を弟と呼んでいたのは実姉のミコトと死んだエースである。
そして昔に死んでしまったもう一人の兄――――…ルフィはその兄の顔を思い浮かべた。
そして目の前の男の顔とその兄の顔が重なり…


「サボォ〜〜〜!!?」


目の前の男と昔に死んだ兄…サボが一致した。
驚きのあまり後ずさり壁にぶつかった。
しかしサボはドフラがサボが天竜人によって殺されたのを見たと言ったから、目の前の男がサボだというのはすぐには信じられずきっと睨む。


「ウソだ!!」

「嘘なんかじゃねェ…覚えていないのか?昔ダダンの酒で盗んで…盃を…」

「!!!―――ッサボ〜〜〜〜っ!!!」


その男の口から『ダダン』『酒』『盃』という言葉が出て確信へと変わった。
ルフィは壁にぶつかった痛みからではない、純粋な感激の涙をポロポロと流しガシリとサボに抱き着いた。
飛びついて抱き着いて泣き出すルフィにベラミーは目を丸くさせ、バルトロメオもぱちくりと大きく目を見開いた。


「ばっばよ!!いっぱィイアまェおいいんだんばよ!!おえェきィひんがんがくおんおあいおあァあ!!!」


ルフィは飛びつくように抱き着き何を言っているのかさっぱりな事を言い出しながら大きな声で泣く。
そんなルフィの胸元に顔を押し付けられていたサボは顔を動かしルフィの胸元から脱出する。


「ありがとな、ルフィ!」

「!?」

「生きててくれて嬉しい!!」

「…!!!」


ぷは、と止まっていた息を吸い込みながらサボは抱き着いているルフィを見上げてお礼を言った。
お礼を言われることをしていないルフィは涙をポロポロと流しながら首を傾げていたが、サボの続けられた言葉に首を振る。


「でも!サボ!!おれ゙は…!目の前でエーズを殺されて…!!」

「――ああ!エースは死んだけど…!お前たちだけでも…よく生き延びてくれた…!おれは何もできず三人の兄弟を失う所だった!お前とアスカまで死んだら…1人ぼっちになるところだった!!生きててくれてありがとう!ルフィ…!」


生きていてくれてありがとう…それはサボの本心からの言葉だった。
事情があってサボは戦争には間に合わなかたし、行けなかった。
同じ長兄であるエースの死で三日は寝込んだ。
起きた後だって後悔ばかりが浮かぶ。
だけど…いつも最後にはルフィとアスカの顔が浮かんだのだ。
二人はエースとサボにとって大切な弟と妹。
時を経てサボは仲間の励まされエースの死から立ち直り、エースは死んでしまったが大切な弟と妹が生きてくれていた事を感謝した。
それをやっと二人のうち1人のルフィに伝えることが出来た。
そんなサボの言葉にルフィはすでにボロボロだった涙腺が更に壊れたように涙があふれ出る。


「"メラメラの実"はおれが食っていいか?」

「……!!ゔん!!それがいい!!それしかねェ!!」


弟の許可…できれば妹であるアスカの許可も欲しかったが、アスカはいないためここは仕方ないとして…サボは弟の許可を得て、ルフィの代わりにメラメラの実を手に入れるつもりだった。
ルフィは考えるでもなく即答に頷く。
頷いてくれたルフィにサボは嬉しそうに笑った。



◇◇◇◇◇◇◇



―――おうおうと兄との再会に泣いているルフィにサボは背中を撫でて落ち着かせてやる。
暫くしてルフィが落ち着きを取り戻したのを見て、ある人物がルフィの前に現れた。


「ルフィ君」

「!――コネッホ!?」


その声の主はウサギのオモチャ、コネッホだった。
どうやらサボと一緒にいてサボの後ろにいたらしいのだが、サボとの再会で夢中になって気づいていなかった。
声をかけたのもサボだったたし、コネッホは少し様子見をしていたため、バルトロメオやベラミーも真っ白い毛を纏わせる長身ウサギといういかにも目立ちそうなコネッホに気付いていなかったのか、足音なく近づき姿を現したコネッホの登場に驚いて見せた。
泣いていたルフィも驚き、泣いて真っ赤にさせる目を丸くさせる。


「兄弟の再会に水を差してすまない…君に話したいことがあったんだ」

「話し…?ってお前、口調、前と違くないか??」

「そりゃそうだ…こちらが素だからね」


コネッホも死んだと思った兄との再会がどれほど感激するものか…分かってはいたが、今は時間はない。
コネッホにも、そしてルフィにも、だ。
だから伝えたい事を伝えるため、声をかけたのだ。
ルフィ達と話すときは語尾に『ピョン』とつけていたコネッホだったが、今の方が素であるため、それを言えば『へー』と軽く流された。
そこは重要じゃないので置いておくとして…コネッホは本題に入る。


「突然で驚くかもしれないけど…ぼくはコネッホという名前ではないんだ…ぼくの名前は―――エイルマー……アスカの兄だ」


コネッホのその言葉に、ルフィはサボの時同様驚きが隠せない表情を浮かべた。

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