(170 / 274) ラビットガール2 (170)

アスカが着替え終えグラディウスはメイド達に命じた後寝室に向かうアスカの背に声をかける。


「若は今スートの間にいる」

「スートの間?」

「そうだ…ローのせいで国内は少々バタバタしているからな…ずっと寝室にいられるわけじゃない……だから着替え終えたらそちらに連れてくるよう言われている」

「ふーん…」


グラディウスの言葉通り、寝室にはドフラミンゴもピーカもいなかった。
アスカは天竜人に狙われ続けていたという理由からドフラミンゴの部屋から出たことがないと記憶を改ざんされており、スートの間という部屋があったことも、そしてどこにあるのかも分からないことに疑問を持たずグラディスと共に部屋を出た。
するとゴゴゴ、という音や銃声などがし、アスカは立ち止まり周りを見渡す。


「…なに?」

「ローが同盟を組んだという麦わら達がこの王宮に侵入したらしい…今ピーカが対応しているところなのだろう」


地響きのような音や僅かな揺れに不審がっていたアスカにグラディウスが教える。
少し前…まだアスカが記憶を改ざんされ眠りから覚める少し前に電伝虫で侵入者があったという連絡が来た事を思い出しながら答えるグラディウスにアスカは『麦わら』や『ロー』という名前を聞いても動揺した様子も気にした様子もなく『へえ』とどうでもよさげに返し、止めていた足を動かした。
それを見てグラディウスも止めていた足を動かし、今の音でスートの間へと急いだ。
『急ぐぞ』と言い速足になったグラディウスにアスカも釣られて小走りになる。

――暫くすると後ろ方から物音がし振り返れば、小さいオモチャと虫のようなものが向かってきているのが見えた。


「なにあれ…オモチャ?」

「あれは反逆者だ!リサ!下がってろ!」


アスカはグラディウスの言葉にグッと拳を握り構える。
それを見てグラディウスはアスカの前まで腕を上げて引き留める。


「私も戦う?」

「いや、大丈夫だ」

「でも…相手、三人だよ」

「問題はない…お前に何かあれば若が悲しまれる…今は大人しくしておくといい」


向かってくるのを人として認識していいのなら、アスカは三人の相手をするというグラディウスを横目で見る。
しかしグラディウスからは首を振られてしまう。
前の能力者を知っているグラディウスからしたらウサウサの実は戦闘に向かないと思っているのか怪我をしてドフラミンゴが悲しむと引き留めた。
アスカは自分が頼りにならないのかと思ったが、アスカもドフラミンゴの過保護さを知っているため、グラディウスの言う通り大人しく下がる。
アスカが下がったのを見てグラディウスは侵入者のタイミングの悪さに溜息をつきギロリと睨む。


「隊長!!―――また幹部れす!!」

「!」

「あれはピーカ軍のグラディウス!!それに……誰でしょう!あの女の子は!?」

「あんな人今まで見た事なかったれす!!」


隊長と呼ばれた帽子の部分が若干へこんでいるオモチャと、よく見れば虫ではなく妖精の二人はグラディウスの登場に表情を険しくさせる。
しかしそのグラディウスが守るように後ろに控えているアスカの姿を見て怪訝とさせた。
この時まで皆作戦を練りに練って、王宮の間取りを何度も確認し、出来る限りの大敵となるであろう幹部の人数や能力を調べ上げていた。
だが、グラディウスの背後にいる少女…アスカの存在は今この時まで分からなかった。
見た目は可憐だが、情報が少なく分からないからこそ目の前の厄介な相手であるグラディウスよりも恐ろしく見えてしまう。


「あの少女がどんな奴であろうと進むしかない!どっちにしろグラディウスはまともにやっても勝ち目はない!!私とランポーで一瞬のスキを作ります!!どうか先へ!」

「!おい!やめろ!!またそんな事を…!」

「左右から行こう!カブさん!!」


隊長と呼ばれたオモチャはカブとランポーと呼ばれた妖精二人の考えることが分かり、止めようとした。
しかし何とか突破しなくてはという考えの二人は引き留めようとする隊長の言葉など聞き入れずそのまま素早い動きでグラディウスに向かっていった。
しかし―――二人は呆気なく捕まってしまう。


「!!―――カブ!!ランポー!!」


グラディウスは腕をぷっくりと膨張させながら二人を手で捕らえ、隊長が叫んだその瞬間…グラディウスの能力によって捕まった二人は爆発に巻き込まれた。
その爆風や爆音を体に感じているとアスカの視界に赤い影が映った。
それをアスカは咄嗟に蹴り飛ばす。
勿論能力を使って。
一応手加減をしていたのか、アスカの蹴りで飛ばされた隊長は地面を転がる。


「私もいるんだけど」

「くっ…!やはり敵か…!!」


味方とは思っていなかったが、表舞台に現れなかったから幹部達のような強さはないと思っていた。
妖精たちの姫、マンシェリーのようにどこかに姿を隠されていたと思っていた隊長たちは完全に油断していた。
隊長たちは知らないだろうが…この女は麦わら一味の副隊長にてルフィ、ゾロ、サンジに次ぐ戦闘員である。
オモチャを足止めできないほと無力ではない。
ふん、と倒れている隊長を冷たく見下ろしていると、その隊長が起き上がろうとしていた。
ギギギ、とオモチャらしい音を立てながら起き上がる隊長をアスカは攻撃することなく見下ろしていた。
それもそのはずである…起き上がった隊長の背後から、グラディウスがガシリと隊長を掴んだのだ。


「おれは"パムパムの実"の『破裂人間』!!パンクさせられるものは…おれ自身の体……そして―――おれの触れた"無機物"!」

「!!」

「ブリキなどは跡形もなく消し飛ぶ!!」


グラディウスの能力…それは無機物を破裂させる能力。
自身も破裂対象となるが、自分自身ならば無傷。
しかし、自分自身以外の無機物であれば……対象は跡形もなく破裂する。
グラディウスが力を入れれば、隊長の顔が見る見る膨らんでいき、巨大化していく。
それを見てアスカはグラディウスと隊長から離れた。


「は…!離せ…!私には…使命が…!!!」

「粉々に消えてなくなれ…!」


破裂まであと少し…そう思ったその時―――



「"JETスタンプ"!!!」



第三者からの攻撃によってグラディウスは吹き飛んだ。
そのお陰で隊長は破裂せず済み、宙を舞う。
グラディウスはアスカの傍まで吹き飛ばされ、アスカは宙を舞う隊長を目を丸くして見送った。
目を追っていけば逆さに宙を舞う隊長を誰かがキャッチしたのが見えた。
その第三者とは…


「兵隊!フランキー達は!?一緒じゃねェのか!?」

「キミは…」

「麦わら!話してるヒマはないわ!!」


ルフィだった。
ルフィだけではなく元ドンキホーテファミリーの幹部だったヴァイオレットもいた。
アスカは両者ともに見覚えがなく初対面なため反応が薄かったが、砂埃が収まっりルフィの視界にアスカが映る。


「アスカ!!?お前なんでこんなところにいんだよ!」

「は…?」


ルフィがこちらを見たため、ルフィを見ていたアスカは必然的に目と目が合う。
目と目があったアスカの目にルフィが呆気にとられた表情から驚愕した表情への変化がはっきりと見え、そしてルフィの言葉に怪訝とさせる。
眉間にしわを寄せ怪訝とさせるアスカにルフィは一歩足を踏み出す。


「ゾロとサンジとキンもお前を途中で見失ってから分からねェって言ってて心配したんだぞ!!なんだよお前!ナオもまだ見つからないし!アスカ、お前ゾロより迷子になっちまったのか!?」

「い、意味が分からない…あんた誰!?」

「はあ!?誰って…おれだよ!おれ!!」

「だから!誰かって聞いてんの!!」

「お前何言ってんだよ!!今ふざけてる場合じゃねェんだぞ!!」

「それはこっちのセリフよ!!」

「あーもー!!いいからこっちこい!!おれ達今『なんとかの間』に行く途中なんだ!行くぞ!」

「はあ!?ちょっと待ってよ!なんで私があんたと一緒に行かなきゃいけないわけ!?あんた敵でしょ!?」

「敵ィ!?おれとお前が!?」

「それ以外に何があるっていうの!!」

「おれは―――」

「よくも邪魔してくれたな!!お前ら…!」

「!」


アスカはルフィの…初対面の男の言っている意味が分からなかった。
しかしそれはルフィも同じで、事情を知らないルフィにとって、今のアスカは服が違うだけでいつもそばにいてくれたアスカだったのだが、そのアスカの言っている意味が理解できていなかった。
事情を知らないヴァイオレットと呼ばれた女が『知り合い?』と聞けばルフィは『仲間だ!』と答え、更に先ほどのやり取り混乱してしまいそうになる。
そんなヴァイオレットの耳に厄介な男の声を拾った。


「グラディウス!!」

「リサ!そのまま進めば階段がある!その階段を上がれば若がいるスートの間につく!!先に若のところへ行け!!」

「でも…!」

「いいから行け!お前に傷一つつけれるなどという失態を犯せば!若が許そうがおれ自身が許さねェ!!」

「…っ」


グラディウスに与えられた命令は『アスカの護衛』。
その護衛の任務中にアスカが所属していたという船長が登場し、これ以上ルフィに関わらせたくないグラディウスはアスカを先にスーノの間に行かせることにした。
ここまでくれば後は階段を上るだけで扉もスーノの間の扉しかないため迷うことはないだろう。
アスカは戸惑ったが、グラディウスの言葉にグッと言葉を呑み込み、彼に背を向け走る。


「!、アスカ!?おい!アスカ!!」

「待て!」

「!」

「これ以上リサに近づかないでもらおうか!」

「お前…!アスカに何した!!」


この時アスカは一度もルフィを見ていなかった。
その様子からもおかしいのは明白で、アスカを追おうとする自分の前に立ちふさがるグラディウスをルフィはギロリと睨む。
グラディウスはルフィの言葉に鼻で笑った。

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