(173 / 274) ラビットガール2 (173)

天井が無くなりすっかり広々とした空間となった。
アスカは戦闘での疲れよりも精神的な疲労に落ち着くように息を吐き出す。
何度か呼吸を繰り返せば落ち着くことが出来ると冷静になっていく。


(一体、何だったんだろう…あの人達…なんか…本当、よくわからない事ばかり言ってたけど…仲間とか…敵じゃないとか…待ってろとか…迎えにいくとか……何言ってたんだろう…なんで私があいつらの仲間で、あいつらが迎えに来るのを待たなきゃいけないの?)


冷静になってアスカは悶々と考える。
アスカからしたらルフィやローは『敵』。
だがあの二人にとってアスカは『味方・仲間』らしい。
だがアスカは…とループとなってしまう。
だがどう何度も何度も考えてもアスカはルフィとローを仲間とも思っていないし、彼らと会ったのだって今日が初めてなのだ。


「リサ?」

「!」


考えこんでいると、それにドフラミンゴに気付かれた。
アスカはドフラミンゴに声をかけられビクリと肩を揺らす。


「どうした?ぼうっとして…」

「ぁ…」


ドフラミンゴへ振り返れば、彼はこちらを心配そうに見つめていた。
彼の傍にはグラディウスとベビー5がおり、『鳥カゴ』のため『影騎糸』を形作っている糸を空へと飛ばしこの国を囲むような文字通り大きな鳥カゴを発動させている途中だった。
こちらに近づいてくるドフラミンゴの心配そうな言葉にアスカは返す言葉がなかった。
何故かアスカはドフラミンゴに今の感情を気づかれては駄目だと思ってしまった。


「……なんでも、ない…」

「……………」


誤魔化すにもどう誤魔化せばいいのか分からず、アスカは何でもないと答える。
だが純粋に心配してくれるのが申し訳なくて、アスカはドフラミンゴから目を逸らし、その目を逸らすアスカにドフラミンゴはピクリと反応させる。
顔を逸らすアスカの顎に指で上げ、アスカの顔を見下ろす。
アスカは顔を上げさせられ逸らしていた目をドフラミンゴへと向き直す。
相変わらずサングサスをかけているが、アスカはそのサングラスの奥にどんな色の瞳が隠れているのか知っている。


「どうした、リサ」


アスカが自分を見るとドフラミンゴはもう一度問う。
その問いにアスカは気まずげに答える。


「……疲れただけ…ちょっと休めば大丈夫だから」

「…本当か?」


ドフラミンゴの問いにアスカは頷く。
その頷きに納得していない様子だったが、アスカは頑固なところがあるため問い詰めても吐かないのを知っている。
そして、アスカの様子から疲れのせいではないと気づいている。
だがそれを言ってしまえば、聞いてしまえばアスカが離れていく気がして聞くに聞けなかった。
だから何も言わず、疲れたというアスカを抱き上げるだけにする。
幼い頃ならまだしも19歳ともなったアスカはいくら兄と思い慕う相手とはいえ恥ずかしくて降ろしてほしいと言ったが、ドフラミンゴには却下されてしまう。


「ベビー5」

「は、はい!」

「前線に出てる奴らを除いた幹部を呼び出せ」


『影騎糸』の存在を知らなかったベビー5は『影騎糸』を見つめていたが、ドフラミンゴに声をかけられハッと我に返る。
ボスの命令に頷きその場にはベビー5がいなくなり、ドフラミンゴとアスカ、そしてグラディウスと数人の下っ端しかいない。
ドフラミンゴはそっと抱き上げていたアスカの頬に触れる。
その手にベビー5を目で追っていたアスカは視線をドフラミンゴへ向けられ小首を傾げる。
その表情が幼い頃の記憶と重なり、ドフラミンゴは目を細め笑みを浮かべた。

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