(174 / 274) ラビットガール2 (174)

ピーカによって外へ出されたルフィ達は外壁塔の庭まで追い出されてしまった。
ピーカがいる以上城には入り込めず、更にドフラミンゴが発動させた『鳥カゴ』によってドレスローザは世界から孤立してしまった。
そしてそこで丁度その場にいたゾロと合流する。
鳥カゴは上空から硬く刃物のように切れる無数の糸の檻で周囲を覆うもので、その中では外から中へも中から外へとの連絡も出来ないが、中にいる者同士の連絡は出来る。
硬く刃物のような糸でおおわれているため触れると当然切れてしまう。
そのため脱出はドフラミンゴを倒すか、バギーのような能力者でなければ不可能である。
更に言えば、ドフラミンゴは悪趣味なゲームまではじめ、10年にも渡り弄ばれた住民たちはその怒りをドフラミンゴに向けていた。
それを利用してドフラミンゴは自分を殺せばゲームクリア、そして殺さなくてもドフラミンゴが決めた受刑者の首全てを取ればゲームクリア…そうドフラミンゴが決めたゲームに住民たちは強制的に参加せざるをえなかった。


「くそォ!!あの石の奴…!!邪魔しやがって…!大体なんでアスカはあいつらなんかについて行くんだ!!!」

「アスカ?アスカが見つかったのか?」


ルフィはアスカへ手を伸ばそうとすれば邪魔をされ、アスカ自身もなぜか自分たちを敵として攻撃をしてくる訳の分からない状況に腹を立てた。
その感情の現れかパシっと拳を手に当ててムッとさせる。
ゾロはルフィから『アスカ』という名前に反応した。


「それがよ〜!あいつなんか怒ってんだよ!!」

「怒ってる?アスカがか?」

「おう!なんでかおれ達を攻撃してきてよ〜!敵だとか言ってくるし……ゾロ〜何したんだ?」

「なんでピンポイントでおれなんだよ!」

「だって最後に一緒に行動したのゾロだろ?もしかしたらゾロの迷子さにアスカがあきれ返ったのかもしれねェし…謝って来いよ!」

「だからなんでおれなんだ!!それを言えばお前だって人の事言えないだろ!ルフィ!」

「どこがだよ!」

「どうせお前の事だからアスカと付き合うのも無理矢理だったんじゃないか?だからアスカはお前に嫌気が差したとか…一種の家出じゃねェの?」

「なにィ〜!!そうなのか!?」

「いや、知らねェ」

「あの…ねえ…ちょっといいかしら」

「「なんだ?」」


ルフィもゾロもアスカが裏切ったと思っていないのか、この状況とは別の事で言い争っていた。
言い争っていたというか…責任のなすり合いというべきか…
そんなとき、ヴィオラは気になっていた事をルフィに聞くべく声をかける。
二人が睨みあっていたため少しおずおずとだったが、二人は同時にヴィオラへ顔を向ける。


「さっきからあなた達が言っていたアスカって…あの紫の髪の子かしら?」

「ああ」

「アスカはアスカだ!」


ヴィオラが気になった事とはアスカの事だった。
あの場で紫の髪の子、と言えばアスカしかおらず、ゾロは頷き、ルフィはよくわからない事を言っていた。
そこはあえて触れず、ゾロの頷きを見てヴィオラは怪訝とさせる。


「そう…確かその子もあなた達の船に乗っていたわよね…」

「おう!アスカはおれの仲間で、おれとトラ男の女だ!」

「お、おんな…!?あなたとこの人の!?」

「ついでに付け足せばあいつは副船長だ」

「ええ!?」


ヴィオラのギロギロの実の能力でローや麦わらの一味たちを見ていた。
その中にアスカの姿もあり、最初王宮の廊下で見た時は驚き、更に攻撃もしてきたことにも驚いた。
ルフィの味方だと思っていた人物が攻撃した、という事は『裏切り』または『操られている』可能性があった。
これから起こる戦いの中でその人物ともし会ったとしたらどう対処したらいいのか分からず整理しようとルフィ達に聞く。
だが、聞けばルフィの仲間なのは確かなのだが、追加すればルフィとローとは恋人関係に当たり、更に追加すれば一味の副船長だという。
驚きの連発のヴィオラはまず彼氏2人彼女1人の関係に絶句していた。
そんなヴィオラをよそにローが話に割って入ってくる。


「その事で一つ問題がある」


ローの言葉にルフィ達はローへ振り返る。
自力で椅子から脱出し、海楼石に繋がれながらも座り込むローの言葉に誰もが首をかしげる。
ローはルフィ達の反応をよそにギロリと王宮にいるドフラミンゴを睨むように王宮を見上げた。


「アスカの記憶が改ざんさせられている」


ローのその言葉に一瞬辺りは静まり返る。
誰もが驚いたのだ。
人の記憶を書き換えることなど、絶対に、ありえない…と。


「記憶を改ざん!?なんだ、それ…!人の記憶を書き換えるなんてありえないだろ!?」

「おれだってドフラミンゴから聞いたときは信じきれなかったさ!だが、実際アスカはおれも麦わら屋も分からなかった!」

「だからって敵の言葉をそう簡単に信じられるか!!」


記憶を改ざんされたアスカと会ったことがないゾロは信じきれず声を上げ、ローも負けじと声を荒げる。
ルフィは改ざんという難しい言葉は分からないがなんとなく勘でローの言っている意味を理解し、そして心当たりがあったため黙りこくってしまう。
黙り込むルフィに、『ルフィ!お前も何か言え!!』と怒鳴ろうとしたゾロだったが、ヴィオラがそれを遮った。


「…それは多分…ルイーズね」

「!、知ってんのか…?」


ヴィオラの言葉に誰もが振り返り、ローが目を丸くし問う。
その問いに頷きながらヴィオラはある1人の女性を思い浮かべた。


「ええ…ルイーズが確か記憶を操る悪魔の実を食べたと言っていたわ…」

「ならそいつがいればアスカの記憶も戻すことができるってことか…そいつは今どこにいる?」

「王宮にいるはずよ…彼女はドンキホーテファミリーの一人だったから」


記憶を弄ることができる能力もあると聞き、ゾロは『もうなんでもありだな、おい』と呟いた。
悪魔の実は雷人間、マグマ人間など聞いただけで使える能力があれば、ゴム人間など微妙な能力、そしてさらにはその記憶を弄る事が出来る能力など使いどころが困る能力もあり、非能力者として呆れるというかレパートリーの多さに関心してしまいそうになる。
ゾロの問いにヴィオラは王宮を見てゾロ達もそれに釣られる。


「じゃあそいつはまだ王宮にいるんだな!?だったらそいつを捕まえてアスカの記憶を戻すだけだ!!」


ルフィはアスカが自分達の事を忘れたという事が気にくわなかった。
アスカのせいではないというのは分かっているが、それでもアスカの中に自分がおらずドフラミンゴがいるというのは気に入らないし、面白くない。


「待て、麦わら屋…そのルイーズという女はもういない」

「!――なんでそんな事知ってんだよ!」

「ドフラミンゴから聞いたんだ…――そのルイーズという女の能力は、死んで完成される能力だとな…」

「…!」


再び乗り込もうとするルフィとゾロにローが待ったをかけた。
止めるローに苛立ちながらも振り返り、ローはドフラミンゴから聞いた言葉をルフィ達にも教える。
ドフラミンゴが嘘をついているという線もあったが、あの様子ではそうは見えなかった。
ただ、ドフラミンゴの方が上手なため絶対に嘘をついていないという保証はない。


「…確かに……ルイーズと私は仲が良かったから聞いた事はあるけど…でも…彼女がドフラミンゴに言うかしら…彼女は娘を人質に取られて無理矢理ファミリーに入れられたと言っていたし…そんなの自分を殺してくださいって言っているようなものじゃない…彼女が教えるなんてありえないわ…脅されたなら分かるけど…」

「言わなくてもあいつならそんな事調べ上げているさ」


ヴィオラとルイーズは仲が良かった。
同じ幹部で数少ない女性、というのもあってすぐに打ち解けた。
もしローの言っている事が本当ならば、ヴィオラはとても悲しい気持ちになる。
友人の死に泣きそうにもなったが、それをぐっと耐える。


「だからなんだ!アスカはおれ達の仲間なんだぞ!?記憶がないとかなんとかなんて関係ない!!取り戻すだけだ!!」


ルフィはアスカの記憶が永遠と間違った記憶を埋め込まれたとしても関係ないと思った。
記憶があろうとなかろうと、敵として認識してようと…ルフィはアスカと過ごした日々の記憶は覚えているのだ。
あっちが覚えてなかろうが、こっちはちゃんと覚えている。
記憶が間違っているならそれはそれでいい…ただアスカを取り戻したかった。
そう思いまた王宮へ向かおうとするルフィにローが止めようとしたその時―――王宮の壁が一部、突然破壊される。


「な、なんだ!?」

「!―――あれナオじゃねえか!?」


破壊された壁は、自分たちが追い出された場所より上にあった。
破壊され砕けた王宮の壁の瓦礫と砂埃と共に小さな影が現れる。
それに目を凝らして見てみれば――アスカと共に迷子(ルフィ談)になっていた直葉の姿が見えた。
ショールを頭に巻きなおした直葉はルフィの声に反応したように視線がこちらに向けられた。
その瞬間、飛び出してきた直葉を追うように石壁の手…ピーカが直葉を掴んで捕まえた。


「ナオ!!」

「あいつも捕まってたのかよ!」


小さな体が石の手にすっぽりと覆われるように収まるのを見て今動けるルフィとゾロが救出に向かおうとするのだが――ピーカの手が粉々に砕けた。
再び瓦礫と砂埃と共に直葉が現れる。
直葉は空中に浮かぶ瓦礫を足場に飛んでルフィ達のところへと逃げ込んできた。
それを当然、ピーカの手が追う。
なぜ直葉を捕まえようとしているのかは分からないが、直葉を攫おうとするのを黙って見ているわけにもいかず、ルフィとゾロが直葉を庇うように前に出る。
そんなゾロ達を気にも留めず、直葉は着地した体を立ち上がらせ振り返り、そして叫んだ。


「触れるならば舌を噛み自害する!!」


その叫びと共に、ピーカの手が止まった。
だが、油断はできない。
ルフィとゾロはピーカの手と対峙するが、リク王、ヴィオラとローは直葉に視線を向けていた。
直葉はピーカの手を通してドフラミンゴへ言葉を送る。


「あなた方が勝ったのであれば大人しく父の下へと帰りましょう!!それまで待てないというのであれば今この場で自害いたします!!それでもよろしいのであればどうぞ連れ戻してください!!」


直葉の言葉にしばらくピーカの手は動かなかった。
直葉もその間、何も言わずジッと王宮を睨むように見つめる。
その空気に誰もが動けなかった。
しかし、ドフラミンゴはピーカの手を砕くことで直葉に返答した。
ピーカの手が砕けた。
それはすなわち直葉を追うことはないということだ。
ドフラミンゴが子供の言葉を信じるわけがない。
カイドウと直葉を天秤にかければ、カイドウの方へと傾かせるのは当然だろう。
だが、連れ戻した後の見張りの手配や人選の面倒と、後で回収する面倒を比べた。
海楼石もつけているというのもあり、ドフラミンゴは後で回収する法を選んだ。
ドフラミンゴの今の最優先は、アスカ…そして敵であるルフィとローの始末である。
いくらカイドウの娘とはいえ、面倒を起こすのが丸分かりな直葉を相手にするほど暇ではない。
傷の一つや二つ見逃してくれるとカイドウ本人も言っていたので、怪我をさせても問題はないだろう。
まあ、それを酔っ払いのカイドウが覚えていたらの話だが。
直葉はドフラミンゴの指示でピーカが追うのをやめたのを察し、体の力を抜く。


「おいナオ!お前も王宮で迷子になってたのか!?」

「いやどう見ても捕まってただろ!」


ふう、と息をつく直葉にルフィが駆け寄る。
ルフィの天然な発言にゾロが思わず突っ込んだ。
直葉の子供の細く小さな手首には似合わない海楼石の手錠がはめられていた。
これを見れば誰だって捕まっていたのだと分かるだろう。


「お前…―――カイドウの娘か」


『見ろよこれ!』と直葉の手首をつかんでゾロはルフィに手錠を見せる。
そんなコントめいた光景を目にしながら、ローは直葉を驚いた表情で見つめる。
ローの言葉はその場にいる全員を凍らせるのに十分で、ヴィオラ達はぎょっとさせながらローを見た。
当然だろう。
子供でも四皇の恐ろしさを理解しているのだ。
まだ5歳の少女に向かって四皇の娘かと問うローに驚かない人間はいない。
いや、ルフィは別のところで驚いてはいたが。


「ナオがカイドウの娘〜〜!?」


誰もが子供に向かって四皇の娘かと問うローに対して驚いているのに、ルフィはローの言葉を疑わず直葉に向かって驚いてみせた。
ゾロもルフィと同じく直葉に驚いてはいたが、ルフィほどではない。
直葉はチラリとルフィを見たが、すぐに視線をローへと向ける。
ローは海楼石の鎖で椅子に縛り付けられており、その椅子は倒れてしまっているため必然的に子供に見下ろされる形になる。
だが、ローはただ黙って直葉の言葉を待っていた。
直葉もローを見下ろしていたが、頭に巻いているショールを取り頷いて返した。


「そうです…直葉はカイドウの娘です」


直葉の返答、そして頭にある白い角にルフィ達は更に驚く。
隠してはいたが、カイドウと繋がっているらしいドフラミンゴに対してであって、それはロー達に対してではない。
父であるカイドウが母の血を継いで生まれた自分を放っておくわけがない。
案の定、父であるカイドウはドフラミンゴに見つけたら保護するよう伝達していた。
一度ドレスローザに上陸したが運よく錦えもん達に隠れて気づかれることはなかった。
もし気づかれていたら今頃父が手配した船で帰国し反省しろと部屋に軟禁でもされていただろう。


「よく直葉が父の娘だと気づきましたね」


四皇と言えど、その身内までは世間は知らないだろう。
現に、アスカが四皇であるシャンクスの養子だとあの戦争までは身内と仲間以外、誰も知らなかった。
ましてやカイドウの娘だとローは簡単に見抜いたのだ。
驚くのも無理はない。
だが理由は案外簡単だった。


「パンクハザードにいる時にモネからカイドウの娘を見つけたら保護するよう言われていたからな…」


なるほど、と直葉は納得する。
どうやら父はドフラミンゴと関りの薄いローまで届くくらいには娘である自分を探していたらしい。
直葉は自分の姿に疑問を思ったことは一度もないが、特徴的な角が珍しいというのは気づいている。
だから父から離された時、もしもと思って角を隠すように母のショールで角を隠していた。


「なんでカイドウの娘がこんなところにいるんだよ」


ヴィオラとリク王は小さな少女がカイドウの娘だったとは信じられない気持ちで言葉を失っている。
いや、今も信じられない。
小さな子供が言う言葉だというのもあるのだろう。
だが嘘をついているとも思えなかった。
この国はカイドウが直接手を下しているわけではないが、ドフラミンゴがカイドウと繋がりがある以上他人事ではない。
カイドウは四皇であり、その強さは無関係な一般人でもよく知るところにある。
それほど強大な男の娘なら、本来なら父の保護下でぬくぬくと生きているはずなのだ。
それはゾロも同じ疑問を持ったのか、二人を代表するように直葉に問う。
直葉はその問いに静かに答えた。


「母のため、直葉はここにいます」


答える必要も理由も直葉にはないし、ルフィ達に言っても仕方がない。
だが、目の前にいる男達は誰よりも信用できるのを直葉は知っている。


「ところで…姉上はいずこに?共にあの方に捕まっていたのですが…」


それ以上のことは本当にこの場にもこれからもルフィ達は無関係だ。
だからそれ以上の事を話す気はなく、直葉は辺りを見渡して姉を探す。
だが周りを見渡すも、姉と慕うアスカの姿がないことに疑問を思った。
ルフィ達ならアスカを連れ戻していると思ったのだろう。
だが、周りを見てもアスカの姿はない。
直葉がアスカの名を出したため、ルフィは直葉の登場で一旦置かれていた感情をお蘇らせる。


「そうだった!!今アスカはドフラミンゴのとこにいんだよ!」

「何をやっているのですか!早く姉上を取り戻して来てください!!」

「言われなくてもそうするよ!!」


ルフィと直葉はアスカが関わると不仲になる。
直葉は今海楼石で能力が使えないので、ルフィに任せるしかない。
それが歯がゆいが、今それが最善の方法だというのは知っている。
何だかんだ仲が悪くてもルフィの実力だけは認めているし、直葉は彼の実力も知っている。
直葉の命令にも等しい言葉にルフィは腹を立てながらもそれに従うように再び王宮へ向かおうとする。
それをローが止める。


「だから待てって言ってるだろ!!麦わら屋!!」

「なんで止めるんだよ!」

「王宮に入り込んだとしてもピーカの能力でまた追い出されるだけだ!!」

「じゃあどうしろっていうんだ!こうしてる間にもアスカはドフラミンゴの仲間だと思い込んでいるんだぞ!!そんなのぜってー許さねェ!!」


止めるローにルフィがムッとさせローを振り返る。
しかし冷静になれと言うがこうしている間にもアスカはドフラミンゴの傍にいるのだ。
それはルフィとしては我慢ならない事だった。
頭に血を上らせているルフィにローは溜息をつく。


「お前の言いたい事も気持ちも分かる!おれも同じだ!恐らく改ざんされた部分は多い…大きく分けても"自分が麦わら海賊団の一人だという記憶"は"自分はドンキホーテファミリーだという記憶"に、"おれとアスカが同時期にドフラミンゴから逃げた記憶"は"おれやエイルマーはファミリーを抜けた裏切り者という記憶"に、"麦わら屋達の記憶"は"おれと同盟を組んでいる名も知れない海賊であり反逆者という記憶"にすり替えられている…行っても敵対するだけだ!…アスカの事は心配だが…この際アスカを無理に取り返そうとしない方がいい」

「!――アスカを放っておけってのか!?んな事できるか!!アスカはおれの仲間だ!!」

「見捨てろと言っているわけじゃねェ!!この騒動が収まった時にアスカを連れ戻せばいいと言っているだけだ!!何もアスカを迎えにいく必要はない!」

「どっちも同じだろ!!お前アスカを何だと思ってるんだ!!アスカはドフラミンゴのもんじゃねェよ!!おれ達のだろ!!自分の女を放っとくことできるか!!」

「おい!ルフィもトラ男も落ち着け!!今言い争ってる場合か!?」


つい先ほどはゾロとルフィ、そして今度はローとルフィと言い争いはじめ、船長格の言い合いにゾロが間に入って止めた。
直葉はルフィに同意ではあるが、記憶の改ざんと聞き下手に口を挟むよりも傍観に回ることにした。
ゾロが間に入り込んでも二人の睨みあいは続き、ゾロは話を逸らす目的も含めローに一つ質問した。


「トラ男…アスカを今取り返す必要はないっていうお前の考えを聞かせてくれ…ルフィもトラ男の考えを聞いてから動いたって遅くねェだろ…いいな?」

「……」


ルフィは何事も考えるよりは行動に移すタイプだが、アスカの事になるとそれに拍車がかかるところがある。
ゾロが仲間になった当初にはアスカが怪我を負えばそれが例えかすり傷だろうが大慌てするほどアスカに対して過保護だった男だ。
そんな過保護対象のアスカと結ばれた(彼氏その2付きだが)のだから余計に騒ぐのはアスカとお付き合いの報告をされた時に分かっていた。
だから一人暴走するルフィの首根っこを掴んでローの考えを聞こうと足止めする。
その間に頭を冷やして冷静になってくれと願いながら。


「麦わら屋…お前と話し合ったときおれの気持ちをお前にも伝えたはずだ…アスカへの気持ちを疑うならそれでも構わねェ…お前に嫌われようが構わねェ…だがだからと言ってアスカを譲る気は一切ないからな……それでもお前はおれを不信に思うか」

「………」


まだ納得いかないルフィにどう言いくるめようかと思っていたゾロにローが助け舟を出す。
ローの言葉にルフィはグッと言葉を呑む。
アスカと付き合う前、ローと二人で話をした。
内容は勿論アスカの事。
ロビンに炊きつけられ、誘導されたルフィはローとアスカを共有することになった。
結局アスカはルフィとローのタッグ(しかし黒幕はロビン)によって落とされ、個性的な彼氏二人を持つことになった。
その時にお互いどれほどアスカを想っているかを主張し、ローもルフィもお互いどれほど強い想いをアスカに向けているのかを確認していた。
だからローの言葉にルフィは渋々だが頷いたのだ。

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