直葉はリク王とヴィオラと王の台地に残っていた。
同行はしているが直葉はルフィ達の仲間ではないし、直葉は今海楼石に繋がれて能力が使えない。
父の血のおかげで強いとは言え、ドンキホーテファミリーの幹部とやり合えるほどの実力はまだない。
「何をしているの?」
ヴィオラは先ほどからガンガンと音をさせる直葉に恐る恐る声をかける。
直葉はその問いにガンガンと音を立てながら答えた。
「海楼石を壊そうと思いまして」
そう答える直葉にリク王とヴィオラはぎょっとさせる。
海楼石は能力者にとったら天敵だが、非能力者からしたらただの固い石だ。
サンジが海楼石の牢を壊したように、海楼石は決して破壊できないわけではない。
ただ能力者が破壊できないのは、海と同じエネルギーを発しているため本領発揮できないのだ。
だが、直葉は母の血のおかげで海楼石には強い体質に生まれた。
更には、直葉はその小さな手で石で出来ている王宮の壁を破壊し逃亡を図れるほどの腕力を父から受け継いでいる。
姉には及ばないが、直葉も両親の血が上手く混ざり合って生まれた子供だった。
そのため、海楼石に繋がれたからと言って非力というわけではない。
海楼石を壁に叩きつけて壊そうとする直葉に、二人は慌てて止める。
「えっ!?海楼石を!?」
「ま、まて!無茶はするな!怪我をしてしまうぞ!?」
「そうよ!あなたの海楼石のカギは後でちゃんと見つけてあげるから!ねっ!?」
ガンガンと音をさせているのは、直葉が王の台地の壁に海楼石を叩きつけるように当てているからだ。
手首の手錠に海楼石は使われているため、ヴィオラとリク王は子供が怪我をするのではとハラハラさせ必死に止める。
ヴィオラは姪、リク王は娘や孫がいるため、子供の危険な行動を見て見ぬふりはできなかったのだろう。
それが例えカイドウの娘だと知っていても。
傍でワーワーと騒がれ止められる直葉は不服そうにしたが、素直にいう事を聞いてくれた。
止めてくれた直葉に、リク王とヴィオラはホッと胸を撫でおろしていた。
しかしその瞬間、ガキン、という音と共に鎖が粉々に破壊されたのを見て絶句する。
「……えっと…」
「鎖が邪魔」
「あ…はい…」
その砕かれた鎖は、直葉の手錠と手錠を繋ぐものだった。
海楼石の破壊を阻止された以上、直葉は不自由を強いられる。
なら、海楼石ではない鎖を壊してせめて手の自由を取り戻そうと思った。
だが、それさえ本来は普通の人間でも簡単には破壊できない素材で作られている鎖だ。
それを直葉は軽々と…道具も武器もなく素手で壊した。
両腕をグッと左右に引っ張っただけで鎖を壊す直葉に、リク王もヴィオラももうカイドウの娘かどうかなんて疑いはせず遠い目をする。
すると、そこにウソップやロビン達が上がってきた。
その場は3人だったのに、ウソップ、ロビン、レベッカ、バルトロメオ、ハック、タンクに加え数十人のトンタッタ族も合流した。
「あんれ〜〜?ルフィ先輩がいねェべェ〜〜!」
王の台地について、バルトロメオが真っ先にルフィ達がいないことに気づく。
ファンである彼はルフィとゾロがいるのを期待していた。
「当然よ」
「当然とはコレいかに!?」
「ルフィは同じ場所に5分とじっとしてねェからな…」
「FREE〜〜!DO〜〜M!フーッ!海賊王流石だべっ!」
バルトロメオの疑問にロビンとウソップが答え、バルトロメオが興奮気味に叫ぶ。
直葉は静かだったその場があっという間に賑やかになるのを感じながらルフィのフリーダムさに叫ぶバルトロメオに『なんだコイツ』みたいな目で見ていた。
「ナオちゃんっ!無事だったのね!」
変な人がいる、みたいな目でバルトロメオを見ていると、ロビンが直葉の姿を見つけ駆け寄ってきた。
アスカと共に直葉も姿が見えず心配していたロビンは直葉の姿にホッと胸を撫でおろしていた。
駆け寄ってくるロビンに『怪我はない?』と問われ直葉は『ありません』と答える。
「ナオちゃん!?それ…!」
直葉に怪我がないことにホッと安堵をしたが、直葉の小さく細い手首に似合わない手錠がはめられているのに気づく。
触れてみると勿論、能力者を無効化させる海楼石だった。
「どうしたのナオちゃん!この手錠…っ!」
「ドフラミンゴという方に付けられました」
「どうしてドフラミンゴがお前に手錠を付けるんだ!?」
「父に保護するよう頼まれたらしいです…直葉は能力者ですから逃亡防止でしょう」
「はあ?父親ぁ?」
「ナオちゃん…あなたの父親って…」
ウソップも子供である直葉を一応は心配していたようで、怪我がないことには安堵したが、ロビン同様その手に手錠を掛けられているのを見て目を丸くする。
しかも、その理由が父から保護するようたのまれたからというものだった。
なぜ直葉の父がドフラミンゴに保護するよう頼むのか、直葉の父親は一体。
ウソップは怪訝とさせたが、ロビンは直葉の言葉とその頭にある角で何となく察しがついているのだろう。
「あったわ!」
ロビンが自分の父の事を察したのに気づき、直葉はロビンをジッと見つめる。
直葉が何か言う前に、何かを探すためにその場を離れていたヴィオラが戻ってきた。
ヴィオラの登場に、ロビンも直葉も言葉を噤んだ。
ヴィオラの方を見れば、その手には一つのカギが握られていた。
「何をしてた?」
「鍵よお父様!トラファルガー・ローの手錠の鍵!」
どうやらこの場所に追い出される際に落としたトラファルガー・ローの海楼石の手錠の鍵を探していたらしく、ヴィオラは嬉しそうに鍵を見せた。
ヴィオラはこの鍵をローに届ける気でいるらしく、父であるリク王はそれを止める。
「待てヴィオラ!あいつらがなんだというんだ!海賊だぞ!」
「ええ!彼らこそこの国の見せかけの平和を壊してくれる"無法者"達!お父様!私…彼らに賭けたの!」
リク王からしたら、一般の人間からしたらルフィ達もドフラミンゴも同じ"海賊"の枠だ。
だが、ヴィオラは彼らと出会い接して同じ海賊でも全く異なるものを感じた。
ドフラミンゴは王下七武海…世界政府が容認している海賊だ。
ドフラミンゴの部下として傍にいたヴィオラは彼がどれだけの悪行を重ね、どれだけの人間を苦しめてきたのか知っている。
それなのに政府はドフラミンゴを七武海に入れて容認している。
それがヴィオラの政府への不信感を積もらせた。
今更正義を掲げて知らぬ存ぜぬと助けに来てくれてもヴィオラは笑顔で受け入れられなかった。
だからだろうか。
同じ海賊なのにルフィ達の言葉がヴィオラの…ヴィオラやリク王の心に響いてしまう。
「リク王様!彼を見てください!」
それはヴィオラだけではなく、トンタッタ族も同じだった。
リク王はレオ達が運んできた彼を見る。
その彼とは、最もドフラミンゴを怒らせたゴッド・ウソップだった。
「この方こそ命の危険も顧みず10年間この国にかかった"オモチャの呪い"を落ちてくれた僕らのヒーローなのれす!!その雄姿はぼくら涙したれす!!」
レオもヴィオラと同じく、ルフィ達麦わら海賊団に救われた者達だ。
ウソップをヒーローとして慕う彼らは、そのヒーローであるウソップの船長という理由で彼らを信じている。
それは彼らが純粋無垢だからだろう。
「リク王様!"麦わらランドの一味"はドレスローザの希望の光なのれす!例え海賊でもぼくらは最後まで信じ抜くれすよ!!」
トンタッタ族の言葉でもリク王は無言を貫いた。
それを傍で見ていた直葉は、それ以上の言葉はいらないのだと何故か思う。
そうしている間にも、レベッカとロビン、バルトロメオがカギを届けに行くことに決まった。
「ナオちゃん!ナオちゃんはここにいてね」
トンタッタ族も数人ついて行くことになり、ロビンは出発する前に子供である直葉に一声かける。
直葉は父の度胸を継いでいるため、心配はしなくてもいいのだが、やはり見た目が見た目なため、ロビンも心配なのだろう。
直葉はロビンの言葉に頷いて返し、彼らを見送った。
◇◇◇◇◇◇◇
戦いは既に始まっており、トレーボル以外のベビー5達は受刑者としてリストアップされた者達、そしてオモチャにされドフラミンゴを殺さんばかりにこちらに向かっているであろう元オモチャ達や名のある者達を止めるため王宮から出ていた。
アスカはベビー5達とは別の任務をドフラミンゴから命じられており、今はドフラミンゴの片膝の上に乗っていた。
「いたか?」
「ううん…まだ見つからない…」
ドフラミンゴがアスカに問えばアスカは目を瞑りながら首を振る。
アスカはドフラミンゴから、受刑者の中で今日一番にドフラミンゴを怒らせたというウソップという男を殺すよう命じられている。
それはアスカが戦いで傷つかないようにという想いと、仲間を殺すことでもしも記憶を取り戻してもそれが『枷』になるためだ。
ドフラミンゴは万が一を考え保険をかけた。
あの時…ルフィとローを追い払った後のアスカの様子がどうしても気になったのだ。
あの時のアスカは確実にルフィとローを気にしていたから、ドフラミンゴの不安は強まっていた。
下僕ウサギを数匹放ち、そのウサギ達の目を介して目的の人物を探していた。
見つかる間、ドフラミンゴの傍にいる…というわけである。
目をゆっくり開けるアスカの髪を撫でていると意外な人物が訪問してきた。
「ベラミー、何をしに来た…"麦わら"の首は取ったのか?」
それはベラミーだった。
コロシアムにいたはずのベラミーの姿にドフラミンゴはアスカからベラミーへと視線を変え、ドフラミンゴの言葉によってベラミーに気付いたアスカもまたベラミーを見る。
アスカは見たことのない男に首をかしげていた。
ベラミーはドフラミンゴの問いにグッと拳を握り声を上げる。
「なぜデリンジャーをおれの下へと送った!!ホントにあんたの命令なのか!!…もう…おれに望みはねェのか…!?」
ベラミーはドフラミンゴに憧れてここまで上り詰めてきた。
ドフラミンゴに操られ仲間を傷つけたこともあったが、それでも昔からドフラミンゴに憧れたから復讐ではなく憧れでドフラミンゴの前に立っていた。
それが…コロシアムの時、ドンキホーテファミリーの幹部であるデリンジャーに殺されかけた。
その時にデリンジャーから『どうせ暗殺に失敗するだろうから』という言葉を貰い、ベラミーは真意を聞くためここまで来たのだ。
ベラミーの縋るような言葉にドフラミンゴはクツクツと笑う。
「…フフフ!ハッキリ物を言わせるなベラミー!おれとお前は目的が違うんだ…昔からな!」
「!?」
「お前はずっと"海賊"になりたがってた…―――だがおれは違う…なんでもよかったんだよ……この『世界』さえブチ壊せればな!」
ドフラミンゴのその言葉に、ベラミーだけが目を丸くし驚愕した。
◇◇◇◇◇◇◇
「あ」
とアスカは声を零す。
「どうした」
「―――見つけた」
ドフラミンゴの片膝に乗っていたアスカはずっとウサギを使ってウソップを探し回っていた。
ベラミーが来ても、ベラミーがドフラミンゴにボコボコにされようとも、アスカは興味なく探索を続けていた。
そして、しばらくして、アスカはウソップを見つけることが出来た。
「大分かかったな…どこにいたんだ?」
「旧王の大地…そいつのほかにもリク王や王女やあのサムライがいる…あと受刑者リストには入ってないけどあいつらの仲間っぽいのも…そいつらはどうすればいい?」
「リサの好きに遊んでやればいい」
暫く、といっても短くはなかった。
奥へと逃げ出していたため探すのに時間が経っていたのだ。
ウサギの目に映るのはウソップだけではなく、リク王やヴィオラ、錦えもんも一緒にいた。
他にも魚人やよくわからない恰好をしている者もいた。
ウソップ以外のリク王達をどうすればいいかと問えば、ドフラミンゴから『好きにすればいい』と答えられアスカは『わかった』と頷き、ドフラミンゴの頬にキスをし、ドフラミンゴからもお返しのキスを貰った後、彼の膝から降りる。
「リサ」
「?」
ててて、と中からではなく外から出ようと壁へと向かって歩き出したアスカをドフラミンゴが引き留めた。
振り返ればドフラミンゴがアスカへ振り向いていた。
「この任務、別に失敗しても構わねェ…ただし、絶対おれの下に戻ってこい…いいな」
ドフラミンゴからしたら本当はアスカを閉じ込めていたかったが、ルフィとローを近づけるのは危険と判断し、この任務を与えた。
仲間殺しもその目的ではあるが…何よりドフラミンゴはアスカとまた離れるのが怖かったのだ。
ドフラミンゴの言葉にアスカは怪訝とさせながらもとりあえず頷いてみた。
アスカの頷きを見てドフラミンゴは満足げに笑う。
その笑みに見送られながらアスカは王宮最上階から飛んで降りる。
「リサ…お前の仲間という人間を…お前の手で…――――殺せ」
既に見えなくなったアスカの姿を思い出しながらドフラミンゴは願う。
―――アスカが仲間の命をその手で奪う事を。
そして…
永遠に自分のモノになる事を。
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