(181 / 274) ラビットガール2 (181)

ウソップはルフィとローをオモチャにしようとしていたシュガーを再び気絶させることに成功する。
シュガーの心に負ったトラウマを利用し、カン十郎の能力で自身の絵を描かせ具現化させ、ヴィオラのギロギロの実に助けてもらいながら得意の狙撃でルフィとローに触れようとしたシュガーを気絶させたのだ。
そのおかげでルフィとローはドフラミンゴが待つ最上階へ到着することが出来た。
だが、それで終わりではない。
今度は王の台地に登ってきた国民たちに群がられウソップどころか錦えもんやリク王も捕まってしまった。
子供の直葉も容赦なく抵抗できないよう馬乗りにする。
直葉は力をちょっと入れれば鉄製でもないロープなど簡単にちぎれるが、一般人相手に力任せに暴れれば怪我を負わせることになる。
四皇であるカイドウの血を受け継ぎ、その環境下で育った直葉にとって一般人であろうと怪我を負わせても気にも留めないのだが…直葉の心には母がいる。
優しい母はきっと娘が人を傷つけたと知れば悲しんでしまうだろう。
だから、母を悲しませたくなくて直葉は無抵抗に捕まってしまう。
しかし、なぜか国民達は賞金首やその仲間を捕まえたというのに離れていった。
その手には刃物が握られており、ウソップは殺される想像をしたものの…国民達はその刃物で拘束したばかりの直葉達のロープを切って解放していく。
態度を変えた国民達にウソップは困惑を見せる。


「何だァ!?お前らおれ達の首取に来たんじゃねェのか!?」

「――こんな事…!していいハズがねェんだ!!」


ウソップの問いに国民の1人が首を振った。
ウソップの傍にいた国民もその一人の言葉に頷く。


「ドフラミンゴにたった一夜操られたリク王様を10年間も恨み続け…『海賊の国王』を称え…真相がわかっても…まだ"あいつ"の『ゲーム』に救いを求め…!!もう…!自分たちが何やってんのか分からねェ!!この国は…どうなっちまうんですか…?―――助けてください…!リク王様…!!!我々はどうすればいいんですか!!」

「戦えと言うのなら武器でも取ります!!」


国民たちは10年間ドフラミンゴに騙され、なんの罪もないリク王を恨み、その王の孫であるレベッカを蔑んできた。
真相に気付いた時、彼らは深く後悔した。
後悔しているはずなのに彼らはまたリク王たちを苦しめようとしている。
ドフラミンゴに騙されてきたとはいえ、そのドフラミンゴのゲームに救いを求め、またリク王たちを苦しめようとしている自分たちに国民たちはどうしたらいいのかもう分からなくなった。
誰もが許しを請うように跪き涙を流す。
そんな国民をリク王は…


「―――もう少し…待ってみないか」

「…え?待つ…?」

「死を選ぶのは――それからでも遅くはない…」


戦い武器を持つ覚悟を決め、ドフラミンゴに立ち向かおうとする国民たちにそう告げた。
リク王は脳裏にルフィを思い浮かべていた。
いつの間にか、娘であるヴィオラと同じくルフィ達の勝利を信じている自分がいたのだ。
その変化に気付いたのと同時に、リク王の耳に男の声が届く。


「―――かつて平和の象徴ドレスローザに戦争なんざさせやしません…」

「!」

「『海軍大将』!藤虎…!?」


その声の主は海軍大将である藤虎だった。
藤虎の登場に国民たちはどよめきたち、ウソップ達は警戒を高める。
直葉は海軍という存在を初めて見た。
それも、元帥の次に位置する立場の海軍大将。
実はミコトという海軍大将に会ってはいるが、ミコトは休暇中だからと自ら大将だと名乗っていないため直葉は気づいていないだけである。
警戒をするウソップを他所に、直葉は初めてみる外の海兵に興味津々な目で見つめていた。
その藤虎は一向にリク王たちを攻撃する素振りを見せず、背を向けて手にはサイコロを持っていた。


「"麦"の目に一点張り…!リク王の旦那…!あっしもあんたと同じ"賭け"をしていやす…」


藤虎の言葉を信じていいのか分からない…だが、攻撃しないのを見てリク王は完全に敵ではないのだろうと感じた。
藤虎の言う『麦』という言葉が誰を指しているのか…リク王の脳裏にまたある男を浮かびながらもあえてそこは何も言わなかった。


「―――じゃあ…海軍も敵ってことでいいんだね」

「…!」


すると少女の声がリク王たちの耳に届き、誰もがその声の方へと目を向ける。
そこは外壁の上だった。
その場所には一人の少女が立ってこちらを睨むように見下ろしており、その姿にまず反応したのはウソップと直葉だった。


「アスカ!!」

「姉上っ!」


その少女とは…ウソップ達の仲間であり、今は敵となってしまったアスカだった。
ウソップもロビンからアスカの状況を聞いており、アスカの姿に本当は喜びたいが、喜んでいられない。
ヴィオラから聞いた直葉は、姉を心配そうな瞳で見つめていた。
アスカは教えたはずのない自分の名前を零すウソップにズキリと頭を痛めた。
しかも子供からは兄弟でもないのに『姉』と呼ばれ、アスカの頭は更にズキズキと痛みが増す。
ロビンやゾロほど強く関わろうとしていなかったためか、ゾロの時ほど痛みがないが、既に慣れたとも言える(が、痛くないとは言わない)頭痛に『またか』と嫌そうに顔を歪めた。


「あんたらも私を知ってるってわけか…」


こめかみ辺りを指で押さえげんなりとさせる。
ここまでの距離はアスカの能力を使えば遠くはない。
だが、ルフィとロー、ロビン、ゾロと相手にしていたアスカは距離も遠く強い疲労感を感じた。
ウソップもまた何かうるさく言うと思ったが、ウソップは溜息をつくアスカに怪訝とさせるだけだった。
直葉も何か言いたげにしていたが、それをウソップに止められてしまう。
それを見たアスカはとりあえずこの場で一番の厄介ごとである大将へ目をやる。


「ドフィに長っ鼻を殺せと命じられてるから楽勝かと思ったのに…大将もいるなんて…私弱くないけど強くもないからな…困った事になったよ、まったく…」


『長っ鼻』と言われてウソップはドキリとさせた。
記憶を書き換えられたというのは知っているが、まさか記憶を書き換えられたアスカに命を狙われるとは微塵にも思っていなかった。
ウソップはアスカの仲間である。
だからこそアスカの実力はそれなりに知っていた。
仲間だから手加減されていたが…それが敵となったのなら…それも今はシュガーやトレーボルの戦いで全力を出せるほど回復していない。
困ったように呟くアスカの言葉にウソップの顔は血の気を引かせ真っ青となる。


「ま、待てよ!なんでおれを殺すんだ!?だってお前…!おれと初対面だろ!?」


アスカはウソップの言葉に違和感を感じた。
名前を知っていながらもウソップはアスカを『初対面』と言ったのだ。
アスカは返事を返さず怪訝とした表情でウソップを見た。


「あんた…私とは初対面…だよね?」

「え?あ、ああ…"お前は"そうなんだろ?」

「………」


ズキリ、とまた小さいが頭に痛みが走った。
そしてアスカはウソップの言葉から初対面だと思っているのは自分だけだと察した。
『お前は』ということは、ウソップはアスカを知っているという事になる。
どうやらゾロやロビンのように記憶を取り戻せと強制するわけではないらしいウソップにアスカはこれ以上関わるとまた頭が痛くなると思いウソップと初対面かそうでないかという会話をやめた。


「まあ、こっちはあんたらといつ知り合ったとかなんてどうでもいいけど…えーっと、何だっけ…ああ、そうか…確かあんたがなぜ殺されなきゃいけないんだ、っていう質問だっけ?」

「あ、ああ…!俺はお前に殺されるいわれはないぞ!?」

「確かに、私はあんたに恨みもないけど…あんたさ、シュガーを気絶させたでしょ?そのせいでオモチャが人間に戻っちゃってドフィが怒ってるんだよね…ドフィが怒ったらいくら私でも宥めきれないし…だからドフィからあんたを殺すよう言われてるんだよ…あんたがシュガーを気絶させなければ今頃この国はここまで崩壊させられなかったし国民たちも何も知らないままいられたんだけどね…」


『ま、あんたは自業自得よね』と続けるアスカにウソップは青ざめる。
ウソップは小心者ではない。
だが、ルフィを筆頭にゾロやサンジ、アスカのように怖いもの知らずでもない。
ウソップはナミとチョッパー共々(自称)常識人代表なのだ。
しかしウソップは結果的に奴隷たちも解放できたという部分は後悔はしていない。
その解放した元オモチャ達に狙われてはいるが…
見下ろしていたアスカにウソップは反論しようと口を開きかける。
だが…


「ふざけるな!!!」


アスカの言葉に我慢できなかった国民たちが一斉に声を上げる。

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