アスカがいた場所には巨大な食虫植物のようなものが出てきていた。
唖然と見上げていたアスカだが、出てくる前に聞いた声へと辿って振り向けば一人の男がいた。
その男こそウソップだが、ウソップは体が動けないため錦えもんに支えられながらアスカにデビルを撃ったのだろう。
アスカはウソップに気付きエイルマーに向けていた殺気を仲間であるはずのウソップに向ける。
本来感じることのないはずの仲間からの殺気にビビってはいたが、ウソップは辛いのはアスカだと思い悲鳴を挙げたくなるのをぐっと我慢し、冷たく睨みつけるアスカと対峙する。
「そういえばあんたを殺せってドフィから言われていたのを忘れてた」
邪魔され腹を立っていたが、ウソップの横やりで冷静になった部分もある。
冷静になり自分に与えられた任務を思い出したのか、痛みからこめかみに手を当てながらエイルマーからウソップへと足を向ける。
グッと手を握りこちらに近づくアスカにあわあわとさせながらも逃げ出そうとはしていない。
本来ならウサギを使って楽に終わらせてさっさとドフラミンゴのところへ戻ろうと思ったが、エイルマーの登場でアスカはウソップを殴り殺すつもりだった。
ウソップからしたらなんとも迷惑な八つ当たりである。
「ま、待つでござる!アスカ殿!ウソップ殿はアスカ殿に攻撃をしようとしていたわけではないでござる!!ウソップ殿はそなたを助けようとしたのだ!!怒りを沈めてくれ!!」
「い、いいや!やるならこい!!」
「ウソップ殿!?何を申すのだ!!アスカ殿は記憶を弄られているのだぞ!?アスカ殿が怪我をしたらどうするのでござるか!!」
「そうですウソップ殿!姉上が傷物になったらどうしてくれるんですか!?責任とれるんですか!?責任取って姉上と
夫婦になってくださるんですか!?」
「ええい!煩い!!アスカと
夫婦になったらトラ男とルフィを敵に回すだろうが!!大体アスカはおれ達の仲間だぞ!?仲間が苦しい思いをしてるんならそれを助け出すのが仲間だろ!!来いよ!!相手になってやる!!」
「また仲間仲間と…!私があんた達と仲間なわけがない!!!―――いいわ!そんなに死にたいのなら殺してあげる!!元々あんた達を殺せと言われてたもの!!リク王もその王女もその孫も!!死んだってドフィは怒らない!!」
『仲間』と聞くと痛みが増す。
ズキリとするその痛みは強く、痛みに顔を歪ませながらギロリとウソップ達を睨みつける。
もうアスカは何が何だか分からない状態だった。
ただ分かるのは、自分は兄に捨てられところをドフィに拾われ愛されて来たということだけ。
それだけは根付いていた。
アスカはウソップの言葉通りに相手をしてやろうとエイルマーからウソップへ標的を変える。
こちらにパチンコを構えるウソップに向かって走ろうとしたアスカの前に背後にいたエイルマーが飛んで割って入ってきた。
「仲間を傷つけては駄目だ!!アスカ!!」
「うるさい!!あんたには関係ない!!」
間に入ってきたエイルマーに弾き返されアスカは着地しながら声を荒げる。
エイルマーはアスカの様子の可笑しさに苛立ちを思えながらも必死だった。
「お、おい!お前…!」
両者共に睨みあっているとエイルマーは後ろから声を掛けられた。
後ろを見ればボロボロのウソップがおり、エイルマーに声を掛けてきたのはウソップだった。
ウソップはエイルマーと目が合うと焦っているのか早口で喋り始める。
「お前…アスカの能力で出したウサギじゃねェのか!?」
「違う…ぼくはアスカの兄だよ…」
「あ、あに…!?兄って…お前ウサギだろ!?」
「この姿は仮の姿なんだ…ちょっと訳あってね、人間の姿には戻れないんだよ」
先ほどからエイルマーとアスカの会話に疑問に思っていたウソップはエイルマーに聞く。
聞けば聞くほどよくわからずウソップは首を傾げるが、今はその時ではないとその疑問は頭の端に置く。
「ま、まあ…今はそんな事言い合ってる場合じゃねェか…!お前!アスカの兄だか何だか知らねェが今のアスカにいくら言っても無駄だぞ!アスカはドフラミンゴに記憶を書き換えられてるみたいなんだ!!今のアスカにとっておれ達は敵でしかねェんだ!!」
「そんな…っ!」
ウソップはエイルマーとアスカの関係は分からない。
だが敵ではないのだけは分かった。
アスカが記憶を書き換えられていると知らないらしいエイルマーに必要な情報だけを伝える。
今のアスカはいつ襲い掛かってくるか分からないからだ。
絶句したエイルマーはアスカを見る。
確かに、アスカの言葉や態度は違和感しか感じなかったがウソップの言葉で納得出来た。
実際、どんな事情や形にせよ…大切にしていたアスカを置いて行ってしまった事は確かだ。
だから責められても仕方ないと思っていた。
しかしドフラミンゴに対してあの懐き様は少し違和感を感じていた。
アスカがルフィと一緒にいたのは手配書やサボの話から知っているし、サボからアスカの性格も聞いていたため、洗脳というのはないだろうとは思った。
だが洗脳よりも厄介な自体になっていた。
(記憶を書き換えた…!?ドフラミンゴ…!なんてことを…!!そこまでしてアスカが欲しいのか!君は…ッ!!!)
アスカは可愛い妹だ。
だが、それはエイルマーだけではない。
血は繋がらないが、ドフラミンゴもアスカを妹として心から愛していた。
…いや、愛している。
だが、ドフラミンゴはアスカをアスカではなく、幼くして殺された妹と瓜二つのアスカを重ねているだけでアスカを愛しているわけではない―――とエイルマーは思っている。
だからこそ、エイルマーはドフラミンゴが妹と重ねているのではなく、アスカをアスカとして愛しているのには気づいていない。
エイルマーはドフラミンゴのやりすぎる愛にグッと拳を握ったその時―――アスカが隙を突きエイルマーの懐に入り込んだ。
「ッ――――!!」
エイルマーはアスカが間合いを詰めたのに気づかず目の前にパッと現れたような妹に目を見張り息を呑んだ。
アスカは相変わらず敵を見るかのような表情で睨み、エイルマーが気づかず驚いた隙に足を高く上げエイルマーの顎へ蹴り上げた。
鈍い音と共にエイルマーの体に激痛が走り、脳が揺れる震動に襲われる。
アスカはぐらぐらとする意識の中立ってるだけで精いっぱいのエイルマのうさ耳を掴み、前方へ投げ飛ばす。
その先は地面がなく、エイルマーは投げ飛ばされ落下していく。
それをアスカは追いかけ落ちていく。
「アスカ…」
まずはエイルマーの処分が先なのかエイルマーを追いかけたアスカの背をウソップはただ見送るしかできなかった。
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