(190 / 274) ラビットガール2 (190)

ズズズ、と地を這うような音が早まり大きくなったのをアスカは走りながら気づいた。
顔を上げれば鳥カゴの糸が狭まっているのが分かった。


「ポッツ!あと何分!?」

「ギャッツだ!なんでお前ら兄弟は人の名前を間違える!?ワザとか!―――あと3分半だ!」

「ギャッツさん!それまで大量の死者が…っ!」

「分かってる!だが戦わねェ戦士をリングに送り込めるか!コイツは復活まで絶対に渡さねェ!!」



ルフィは『キャッツ』、サボは『ペッツ』、更にはアスカは『ポッツ』と人の名前を間違える四兄弟のうち三人にギャッツは声を上げる。
だが恐らく…いや、確実にエースもギャッツの名前を間違えるだろう。
ギャッツはそばを走っていた女性に時計を見せてもらいアスカの問いに答える。
女性の不安そうな言葉にギャッツは分かってはいるがルフィは渡さないと断言し、アスカからの好印象がぐんっと上がった。
それに気づく前にギャッツの前方に薄い膜のようなものが現れ、目の前の瓦礫が消えたかと思うと人が現れた。
その姿にギャッツはギョッとさせる。


「ト!!トトト!!トラファルガー・ロー!!ひ…!ひちひち!七武カ…!!」


目の前に現れたのは能力で移動したローだった。
アスカは目の前に現れたボロボロのローを見て息を呑む。
特にローの右腕からはドクドクと血が溢れ出ており包帯を巻かれてもその真っ白な包帯を赤く染めていた。


「――お前ら遠くへ逃げ過ぎじゃねェのか…?」


ドフラミンゴとの戦いで体力を消耗したばかりか深手を負いながらもローはギャッツを見上げる。
立っているのも辛いのか座っているローの視界にアスカの姿が写り目を見張った。
だがギャッツの傍に、ルフィの傍にいるとうことは…アスカの書き換えられた記憶も修正されたと見て今アスカに声を掛けるよりもルフィに意識を向けることに集中する。
もうすぐなのだ。
もうすぐドフラミンゴを倒せるのだ…チャンスはもう今しかない。


「そいつの覇気は戻るのか?」

「『バウンドマン』っていう技を使うと10分覇気が使えなくなるって言ってた…今はあと3分20秒くらい」


ローの問いに答えたのはアスカだった。
あの七武海の一人が目の前にいて一般人のギャッツが冷静に口を開けるはずもなく、案の定あわあわとさせていた。
それを見て代わりにアスカが答えるとローは『そうか』と零しギャッツを見る。
話題のルーキー、そして七武海のトラファルガー・ローに見られギャッツは心臓を鷲掴みにされたように緊張した。
特に海賊というのもあり目力が凄いのだ。


「一刻を争う勝負だ…あとはおれが預かる」

「ハイ!!」


ギャッツはローの言葉に強く頷いた。



◇◇◇◇◇◇◇



―――一方、北西の『SMILE工場』では…


「押しが足りねェー!引きずられてんぞー!!」

「ハイれす〜!!」


工場を担当しセニョールピンクを倒したフランキーが小人達と工場を盾に鳥カゴを押していた。
工場は海楼石で出来ており海楼石で出来た建物はいくらドフラミンゴの能力でも切れることはなかった。
ただ力は若干負けているのか押されている。
そして―――工場奥、鳥カゴ前。


「「「押せェ〜〜!!!」」」


覇気を纏ったゾロ、錦えもん、カン十郎がギギギと糸を押す。
直葉はまだ覇気を会得していないため、錦えもんの足を抑えその馬鹿力で彼らをフォローしている。
だが、それでもドフラミンゴの鳥かごの力は強く、フランキー達と同じく押されていた。


「どうでござる!?」

「収縮は遅くなってる!!…はずだ!!」

「ぬう!言われるとそんな気がして参ったでござる!!」


どうと言われても押されているのだからゾロもはっきりとは言えないが、そういう気はする。
そう言われればそうなのだろうと気合を入れるカン十郎たちの耳がカツンカツンと聞いたことのある音を拾った。
チラリと後ろを見ればそこには―――海軍大将・藤虎がいた。


「てめェ!何しに…!!」

「おっと…―――どこのどなたかあっしにゃ見えやせんが……馬鹿な人達ってのァ放っとけねェモンですね……微力でござんすが…―――ちょいとお力添えを」

「…!」


海軍大将の登場にゾロは険しい表情を浮かべる。
ここで海軍の相手などしている暇はないのだ、と言いたげだったゾロだったのだが…藤虎はゾロ達と戦うために来たわけではなかった。
藤虎はゾロ達と同じく鳥カゴを止めに来たらしい。
覇気を纏わせた刀でゾロ達と共に糸を押し止めようとする。
そんな大将に驚いて見せると後ろから海兵達が現れた。


「全隊!何者かのカゴ押しを援護せよ!!」

「は!!」


隊長まで『誰か』の援護を命じ、それに部下達も従う。
そう…海軍達は『海賊』達の手助けをしているわけではなく…『誰か』の手助けをしているだけだった。
更にはゾロの耳に聞き慣れ過ぎた声が…否、鳴き声が届く。


「なっ!?―――"ウサギ"!?」


それはウサギ達だった。
ゾロの目には見慣れた様々なウサギの姿が目についた。
普通サイズのウサギならば動物が手助けをしてくれたとファンタジーで片付けられたのだが、その普通サイズのウサギの後ろに続くどう見ても異常な姿の強面なウサギ…二足歩行のウサギまでいては考えは否定できない。


「おい!お前ら!覇気が扱えねェ奴はウサギの背中を押せ!!ナオもだ!ウサギの後ろに回って押してやれ!」

「はいっ!」


ゾロは海兵達と直葉にそう告げ、前を向き力を入れる。
気のせいか入れる力が増した気がした。
『ウサギが覇気を纏っている』など信じがたい話だが、海兵達も直葉も、それを疑う暇はない。
直葉はゾロの言葉に、海兵達は『誰か』の言葉に頷き、覇気が纏えない海兵達は長身ウサギの背を押す。


「ゾロ殿…!このウサギは…!!もしや…!!」

「ああ!アスカだ!!あいつやっと目を覚ましやがった…!!」


錦えもんも散らばるウサギを見てゾロを見た。
頷くゾロを見て錦えもん、そしてカン十郎も笑みを浮かべ力を更に入れる。
何となくだが…頷くゾロの顔は嬉しそうにも見えた。
そして、そう…普通サイズのウサギは『下僕ウサギ』、そして二足歩行のウサギは『長身ウサギ』であり、そして―――アスカの能力でもあった。
ウサギ達は人がいないスペースに向かい、覇気を纏いゾロ達と共に素手で鳥カゴの糸を押していく。

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