戦いも終わり、アスカ達は食事をしていた。
足の傷は浅く治るのが何週間もかかる傷ではないにしろ、一日二日で治る傷ではない。
一日経っただけじゃ治らないが腹は減るのでアスカもみんなについていく。
ナミが心配性で、治るまで歩くなと言われ、反論も許さない勢いで言われたが、自分よりも大怪我をしたルフィとゾロが平然と立って・歩いて・腹をすかし、まるで怪我なんて負ってませんよ的な装いのため、何だか大げさにするのも馬鹿馬鹿しくなりケンケン歩きではあるが、誰かの背に乗るのをやめた。
それにまたナミが煩く…ではなく…心配していたが、アスカは聞こえませんよと言わんばかりに耳に指を突っ込んでナミの小言…もとい、心配してくれる言葉をシャットアウトする。
何も聞かないようにしているアスカにナミも諦めたのかもう何も言ってこず、アスカは三人と食事を楽しんでいた。
「ふーっ!とれた!」
「バカだな…のどを鍛えねェから魚の骨なんかひっかかるんだ」
「鍛えるとかの問題じゃないでしょ、それ」
「そうよ!あんたらに言っとくけどね!普通魚を食べたらこういう形跡が残るもんなのよ?」
小さな村には店が少ない。
そのため最初に訪れた飲食店でアスカ達は食事をしていた。
三人とも同じ定食を選び、その定食には焼き魚が並べられていたが、綺麗に骨を残したのは女性陣のアスカとナミのみ。
ルフィは骨まで食べるが途中喉に骨が引っかかり先ほどまで引っかかった骨を捕ろうと奮闘しており、ゾロは骨ごと平らげた。
骨にも栄養があり、料理によっては骨も美味しくいただける魚料理もあるが…焼き魚は基本骨を残して身だけを食べる料理である。
それを骨ごと平らげる男二人にナミは呆れてしまう。
「ここにいらしてたんですね」
食後の休憩をしていると、店にある人物が来店し、アスカ達のテーブルに歩み寄ってきた。
声を掛けられその人物を見上げると、そこには――カヤがいた。
カヤはルフィ達を探していたのか、ルフィ達の姿を見てほっとし嬉しそうに微笑んだ。
「寝なくて平気なの?」
「ええ…ここ1年の私の病気は両親を失った精神的な気落ちが原因だったので……ウソップさんにもずいぶん励まされたし…甘えてばかりいられません」
病弱だと聞いていたナミはあれだけの事があった後に外に出て歩いていいのかと聞いた。
カヤはナミの問いに頷いた。
カヤの病弱な体は精神的なものだったらしい。
両親を失った悲しみが体を蝕んだのだ。
しかし昨日の一件で、それに気づき、そして今までウソップに甘えていた自分にも気づいた。
それでは駄目だとカヤはやっと両親を失った悲しみから前を向こうと歩み始めた。
カヤの言葉や笑みにナミも釣られたように笑みを浮かべ、傍から見たら興味なさげのアスカも少しだけ表情が和らいで見える。
「それよりみなさん…船、必要なんですよね!」
「くれるのか!?船!!」
しんみりとした話は終わりだとカヤは先ほどより更に笑顔を浮かべ、ルフィ達が船を欲しがっているのを思い出した。
カヤは今回のお礼として、船を一隻プレゼントしてくれるという。
カヤの言葉にルフィの嬉しそうな声を上げ、カヤはルフィの言葉に頷いた。
食事も丁度終わっていたというのもあり、アスカ達はカヤの案内で、その船が置いてあるという海岸に向かった。
アスカ達はここに来る前までの小船とは比べ物にならないくらい大きな船に一同口を開けて見上げていた。
「へぇ…」
「羊…?」
「キャラヴェル!」
「うおーっ!!」
ゾロは関心したような声を漏らしながら嬉しそうに笑い、アスカは船首にある可愛らしい羊のような顔に興味を惹かれ、ナミはつい最近までの小型船とは違う立派な船に感激し、ルフィに至っては小型ではない大きな、そしてようやく手に入れた船に興奮していた。
様々な反応を見せてくれる4人だが、4人とも喜んでくれている事だけは分かり、カヤもまた嬉しそうに微笑んだ。
恐らく大きな船と言ってもまだ小型ではあるのだろうが、最初のスタート地点のボートや奪ったり譲ってもらった小船に比べれば数倍も大きい。
近づけば近づくほど大きさを実感でき、ルフィの目はキラキラと輝いていた。
近づけばある一人の男性が船の傍に立っていた。
その男性とは、カヤの屋敷で働く執事…メリーだった。
メリーはルフィ達の姿を見てカヤ同様嬉しそうに笑って4人を歓迎する。
「お待ちしていましたよ!少々古い型ですがこれは私がデザインしました船でカーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル"ゴーイング・メリー号"でございます!!」
この船はメリーがデザインしたらしく、お古ではあるがあまり使われることはなかったようで新品同様だという。
古い形だろうが何だろうが、ルフィ達はあのシャワー室もトイレもない小船でなければ何でもいいし、何よりタダでもらえるなら越したことはない。
それにこれは値段や形の問題ではなく、気持ちの問題なのだ。
メリーは船長だというルフィに船の説明をしようとした。
しかしルフィにそんな小難しいことなど分かるはずもなく、最近やっとルフィに慣れたナミが代りに聞きに向かった。
因みに、アスカもまた小難しい事はチンプンカンプンなので幼馴染だからとルフィの代わりに聞こうとすることは一切しない。
何だかんだ言って2人は似た者同士である。
「航海に要りそうなものは全て積んでおきましたから」
「ありがとう!ふんだりけったりだな!!」
「至れり尽せりだアホ」
「……馬鹿」
ナミがメリーから船の説明を聞いている間、カヤが船の中に必要なものを積んでおいたとルフィ達に伝える。
言葉を間違え天然ボケを振りまくルフィにゾロが突っ込みと言う名の訂正をし、アスカが呆れたようにため息をついたその時―――叫び声が坂の上から聞こえてきた。
その場にいる全員がその叫びに坂を見上げていると、何故かウソップがこちらに向かって転がっているのが見えた。
「何やってんだあいつ」
「とりあえず止めとくか…このコースは船に直撃だ」
ゴロゴロと転がった経緯がとても気になるが、今はそれどころではない。
ゾロの言う通りこのままではウソップが船に直撃してしまうのだ。
せっかく貰った船が乗る前に壊れるのは阻止したいのだ。
アスカはルフィの傍にいたが、そっとルフィの傍から二三歩離れた。
アスカが離れたその時、丁度勢いよく転がっていたウソップが間近に迫り、船の前に立っていたゾロとルフィにウソップは足で止められた。
奇跡にも2人の足はウソップの顔面に当たり、その奇跡的な技にアスカは思わず拍手を送った。
「…やっぱり海へ出るんですね…ウソップさん…」
「ああ…決心が揺れねェうちにとっとと行くことにする…止めるなよ?」
「止めません…そんな気がしてたから…」
ウソップはこの村を出るらしく、その背にはこれでもかと言わんばかりにパンパンと入っているリュックを背負っていた。
それを見てカヤは海へ出るウソップを察し、少し寂しそうに微笑んだ。
寂しそうに微笑むカヤにウソップは止めても無駄だと言ったものの、カヤには止めませんと断言され、ウソップもちょっぴり寂しく感じてしまう。
だがだからと言ってウソップは海へ出るという決意が揺らぐわけではなく、カヤに『今度はウソよりずっとウソみてェな冒険譚を聞かせてやるよ!』と笑って約束し、その約束にカヤは寂しさを消し笑みを浮かべて頷いた。
カヤの返事にウソップはリュックを背負い直し改めて船に乗り込んでいたルフィ達へ振り返る。
「お前らも元気でな!またどっかで会おう!」
「なんで?」
共闘したとはいえ、仲間になったつもりではなかったウソップはもう会えないかもしれないが、広い海の中再会できるかもしれないと別れを告げようとした。
だが、ウソップの別れにルフィはキョトンとしており、ウソップはルフィの冷たい言葉に目を瞬かせた。
「なんでってお前…愛想のねェ野郎だな…これから同じ海賊やるってんだからそのうち海で会ったり…」
「何言ってんだよ早く乗れよ」
「そうだよ。早く乗らないと置いていくよ?」
「…え?」
一緒に戦った仲だというのに冷たい言葉だと思っていると、ゾロとアスカの言葉にウソップは呆気にとられる。
そんなウソップを余所にルフィは当然のように言った。
「俺達もう仲間だろ」
そのルフィの言葉にウソップは涙を溜める。
そして、ウソップは急いでメリー号へと向かった。
「キャ、キャプテンは俺だろうな!!」
「馬鹿言え!!俺が船長だ!!」
照れ隠しなのか、憎まれ口を叩きながらウソップはメリー号へと乗り込み…カヤは当分会えないであろうウソップの背を笑みを浮かべながら見送った。
49 / 293
← | top | back | →
しおりを挟む