ルフィは大将を相手にもう逃げるのをやめた。
それはルフィらしいと言えばルフィらしいのだが…
「蹴るぞーー!!」
そう言ってルフィは藤虎に向かって蹴りを向けた。
「殴るぞーー!!」
そう言ってルフィは藤虎に向かって拳を向けた。
「蹴って殴る!!」
そう言ってルフィは藤虎は蹴りを向けた後拳を向けた。
その後も『突く』や『頭』や『踏み潰す』と言って実行していた。
それを見ていたゾロが怪訝そうに見ていた。
「ルフィの言い分はその通りだが…なんだかさっきから妙な戦い方しやがって!」
そう、ルフィは藤虎への攻撃をする際、言葉にしてから実行している。
藤虎はそのルフィの攻撃を受け流し傷一つ負ってはいないが、ゾロと同じく『妙な戦い方』に気づいていた。
「おれはもう逃げねェんだ!!」
「ええ、言うだけの力はある様だ…!その意気はいいが…――一体!何のマネですかい!?さっきから『蹴るぞ』『殴るぞ』と!!同情ですか…!あっしァ『海軍本部』"大将"!!みな怪物だと言いますよ!!」
殴り蹴る前にルフィが言葉にするのは藤虎やゾロ、アスカ達も気づいていた。
藤虎はその行動を『同情』かと受け取り、声を低くする。
藤虎にとって憐れみは不必要な物であり、ルフィの行動からは『盲目が戦場にいるな』と思われても仕方なかった。
「今更憐れみなんざかけられたんじゃたまらねェ…盲目が戦場にいちゃあ迷惑ですかね…あっしを怒らせてェんなら成功だ!あっという間に首が飛びやすよ…!!」
「うるせェ!!おれは目の見えねェお前を無言でぶっ飛ばす事なんてできねェ!!おれおっさん嫌いじゃねェからな!!」
「!?」
傍から見ればルフィの行動は『迷惑だ』と言っているようなものだろう。
だがルフィがそんな差別するわけもなく…もし差別するような者ならばアスカはここにいないしゾロ達もルフィに惹かれてついてきたりはしない。
ルフィはただ、藤虎が嫌いじゃないから目の見えない藤虎を黙って攻撃できないと思っただけの事だった。
それを聞いてアスカは目をぱちくりさせ呆気に取られ、藤虎は…
「っぷーーーっ!!」
吹き出して笑った。
笑われたルフィは流石にカチンと来たのかやっぱり一声かけて蹴りを向けた。
笑われ馬鹿にされたと思ったルフィだったが、藤虎は別に馬鹿にはしていなかった。
「その情けがなんの役に立ちますか!!見損ないやしたよ!そんな筋の通らねェ話があるか!!」
そう叫び藤虎は刀に能力を纏い覇気を纏った腕の攻撃を受ける。
「男の戦いにゃ『立場』ってもんがありやしょう!!そう正直に"同情"やら"好き嫌い"を口にする奴がありやすか!!―――バカじゃねェですか…!?こっちも我慢して立場貫いてんでさァ!!」
そして藤虎は『猛虎』を放ち、麦わらを飛ばした。
それはアスカにはルフィを逃がしたようにしか見えなかった。
「"麦わら"だ!!ハイルディン!」
飛んでくるルフィを発見したキャンベンディッシュは巨人族であるハイルディンに空中キャッチさせて強制的に撤退する。
が、今度はゾロの闘志にも火がついてしまった。
「よしルフィ!交代だ!」
「違う違う!!ゾロ先輩やめでけろ!!こっちにゃこっちの都合があんだ!!」
「都合ォ!?」
刀を抜きかけ藤虎と戦おうとするゾロにバルトロメオは引き留めた。
都合、という言葉にゾロはとりあえず刀を収め怪訝そうにバルトロメオに振り返り、バルトロメオは止まったゾロにホッと安堵した
「おい!港に船って一隻しか…」
「よく見ろ!こんな危なっかしい港に誰が船を泊める!!」
「え!?…あ!良くみりゃ船が一列に並んでる!」
ウソップは逃げるにしても船が一隻しかない事を聞けば、オオロンブスが答えてくれた。
港を見れば船が数隻縦に一列に並び船から繋いでいる即席の橋を作っていた。
その奥には霧が立ち込めておりその霧を見れば船らしき影が数隻浮かんでいた。
その中にバルトロメオ達の船があるらしい。
「おい!まだおれは戦ってんだ!」
「もうやめてくれ!頼むから!!」
アスカ達は霧の奥にある船に乗るため、即席の橋を渡る。
巨人族が乗ってもその橋は沈まず、頑丈だった。
その間もルフィは藤虎と戦わせろと騒ぎ、これ以上厄介な事に首を突っ込むなとウソップにツッコまれていた。
それでもルフィは騒いでいたためアスカは傍にいたローに『ちょっと行ってくる』と言ってハイルディンの肩に乗る。
ウサギの能力を使えば巨人族の肩など簡単に乗ることが出来た。
ハイルディンにとっても体重の軽いアスカが乗っても違和感はなく、『ちょっと乗らせてもらうね』とアスカが言わなければ気づかなかっただろう。
「ルフィ」
「アスカ!アスカからも言ってくれよ!おれはまだ負けてねェって!!」
「いや、負けた勝っただの問題じゃないから…戦いたいのは分かるよ?でもここでなくてもいいんじゃない?それでなくてもあんた完全に傷治ってないでしょ」
「関係あるか!いいから降ろせって!」
「いいから大人しくしててってば!!」
「ぎゃんっ!」
アスカとしては説得しようとした。
ルフィもアスカが納得したら降ろしてくれると思ったのだが…それは最初から無理な話だった。
アスカの考えでは今日を含めた3日も海軍が乗り込んでこなかったのはあの大将が動かなかったからだと思った。
確証はないが、さっきのルフィと藤虎のやりとりを見ていてなんとなく思ったのだ。
ルフィが相手に好意を持つという意味をアスカは知っている。
ルフィは言ったら悪いが本能で生きる動物のようなものであり、ルフィが好んでいるということはそれなりに藤虎は悪い人ではないのではないかとアスカは思う。
だからルフィを吹き飛ばしたのも、藤虎は『早く逃げろ』と言っているのだと思った。
それを言えばきっとルフィはむきになって藤虎と戦おうとするから言わないし、確証もない事を言いふらすこともしない。
それにいい人であろうとルフィと彼の立場は真逆すぎた。
2人は、人を守るため存在の海軍と、本来人を傷つける存在の海賊なのだ。
ミコトという例外があっても、藤虎が海軍の立場としてルフィと会うというのなら、衝突は仕方ないのだろう。
そう…思ったのだが……ルフィが短気ならばアスカもまた短気だった。
ぎゃあぎゃあ駄々を捏ねるルフィにアスカも苛立ち思わずその顔に蹴りを食らわしてしまった。
普段ならばアスカも加減していたし、そもそもアスカごときの力ではルフィが堪えるわけもないのだが…3日間眠り続け目覚めるまで回復したとは言え十分な回復とは言えず、更には先ほどの藤虎との戦い…ルフィは気を失った。
がくりと白目を向いて気を失うルフィを見てハイルディンの手に着地したアスカは思わず『あ』と零し、ハイルディンも『あ』と零してアスカを見た。
ルフィが気を失いハイルディンとアスカしかいないその空間は嫌に静かだった。
点、点、点、と無言が続いた後…
「まあ静かになったし…いいか…」
アスカはケロっとそう言った。
それを聞いたハイルディンは『冷酷ウサギ…なるほど、名前通りだ』と冷静にそう思う。
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