ローは今日も今日とて怪我を負い、それを目ざとく見つけた男によって治療されていた。
治療を終えたばかりのローは一人、ぼうっと何もするでもなくゴミだらけの街を見ていた。
何もするでもなくとは言ったものの、やはり思うのは復讐ばかり。
今すぐにでもこの世の全てを壊したくて仕方ない。
だが、それには力がいる。
力は鍛えればいいのだが、ローにはまだその力さえついていないのだ。
あと三年のうちにローは強くならなければ、自分の望みは叶えられない。
「あれ、お兄ちゃんまだいたの?」
「あ?」
1人でいても大体はベビー5とバッファローがローを見つけ、その度に声をかけ、そしてローの傍に入り浸る事が多いが、今日は平和に終わりそうでローは少し安堵する。
2人は何故かローによく話しかけ、最初は放置するが鬱陶しくなるとローは2人から離れ、2人はそれを追わない。
ベビー5はいつも調子に乗って余計な事を言いギロリとローに睨まれバッファローに泣きつく。
大体がこのパターンがお決まりである。
しかし平和な日は終わりを告げ、ローは背後からの聞いたことのある声に振り返る。
そこにいたのはあの時の女の子だった。
女の子は相変わらず後ろにウサギを引き連れており、決して良い人相とは言えないローの顔など気にも留めず頭のてっぺんから足先までローを見る。
ジロジロと見られローは気分を害し『…何だ』と声を低く呟く。
そんなローなどよそに女の子は『別に?』と返し、何故かローの元に歩み寄ってきた。
「今日もお兄ちゃんに治療してもらったんだ」
「…お兄ちゃん?」
「ほら、マシンガントークの…」
「ああ…あいつか…」
何故か女の子はローの隣に座り同じく何もない風景を見つめ、その膝の上に、ぴょん、とウサギが飛び乗り女の子はそのウサギを撫でてやる。
何故自分の隣に座ってくるのか分からないが、自分から退くのが癪に障りローは更にギロリと睨む。
しかしやはり女の子はベビー5と違い泣きつくこともなく平然と受け流しウサギの柔らかい毛を堪能していた。
女の子の言葉に首を傾げていたローだったが、説明になっているか分からない説明に脳裏にあの男を浮かべ納得する。
『兄』と言っているのだから女の子はあの男の妹なのだろう事は推測は出来た。
「お前ら…」
「リサ」
「あ?」
「リサ、リサっていうの。お前じゃないよ。で、この子がジェニファー」
「…………」
そう言ってウサギ…もとい、ジェニファーの前足の片方を持ってまるでジェニファーが挨拶しているかのようにさせる。
『お兄ちゃんは?』、と聞かれローは女の子…リサに名乗る。
お互いの自己紹介が初めてだったと名乗りながら気づく。
「リサ〜!」
ここにいる人間は、ゴミ処理場に住み、そしてドフラミンゴ達は海賊ということもあって彼らはスレており、こうして呑気に自己紹介をするのも初めてだった。
何だか気恥ずかしくなり、ローは帽子を少し深くかぶった。
すると遠くに聞き慣れた声が2人の耳に届く。
それはベビー5だった。
ベビー5はリサを探していたようで、リサの姿を見ると嬉しそうに駆け寄ってくる。
ローとリサはベビー5へ振り返り、2人のもとに到着したベビー5は走って来たせいか肩で息をしていた。
「なに?」
「若さまがよんでたよっ!」
「…………」
リサはベビー5の言葉にむすっとする。
機嫌の悪さに気付いていないのか、ベビー5は『早く行こ!』と手を差し出して連れて行こうとする。
しかしリサはむすっとしたままベビー5にそっぽを向き、『知らない。いかない。』と呟いた。
「えーっ!だって若さま待てるよ!行ってあげなきゃ可哀想だよ!顔だってなんでか傷だらけだったし!」
「あんな奴知らないもん。喋りたくもない。――って伝えて」
「えー…またわたしー?」
「つ・た・え・て」
「わ、わかったよ…」
ドフラミンゴと何かあったのか、ベビー5が探していると言ってもリサはそっぽ向くばかりでローが『早くいけよ』と思っていても一向に動く気配はない。
また伝言に走らなきゃいけなくなったベビー5はうんざりした表情を浮かべたが、リサに押し切られてしまいまた走っていく。
小さい背中が更に小さくなるのを見送っていたローだったが、ふと手に何かが触れるのに気付く。
手へと視線を落とせばリサがローの手に触れているのが見えた。
ローは驚きバッとリサへ顔を上げる。
「逃げるよ!」
「はあ!?なんでおれが…」
「共犯〜!リサだけ一人とか寂しいもん!」
「勝手に1人で逃げてろよ!おれを巻き込むな!」
リサはローを連れて逃げ出そうとしていた。
だが、ローからしたら巻き込まれたも同然の選択で、当然断ろうとした。
しかしリサは手を引っ込めようとしたローの手をグッと握りしめ逃がすことはなった。
ローはギュッと手を握られ目を真ん丸にしリサを見つめた。
5 / 20
← | top | back | →
しおりを挟む