(6 / 20) 過去 (6)

あれよこれよとリサに引っ張られる形でローは走った。
そしてついた先はドンキホーテファミリーが根城としている倉庫の奥にある部屋。
その部屋に続く廊下は、あまり人が寄り付かないからか他の場所より2人の走る音が大きく響いていた。
リサが目的の部屋の扉へと駆け寄り、勢いをそのままに、バン、と派手な音をさせ扉が開けられた。
部屋へと入りまずローはその中にいる人物に目を丸くする。
そこには、自分の怪我を治した男と――…


「コラソン!?」


ドフラミンゴの実の弟、コラソンがいた。
ローはコラソンの姿にギョッとさせる。
コラソンは相変わらず何を考えているか分からない無表情で一人用のソファに座っていた。
その向かいにはリサの兄が座っている。


「おや、リサじゃないか…どうしてここに?今はドフラミンゴのところにいるはずなんだが…――っは!もしかして虐待!?ぼくを兄として深く敬愛しているリサがいつまでたっても靡かないから今度は力で屈服させようと!?ああっ!可哀想なリサ!!ぼくがあの時逃げ切れていれば…っ!いや!そもそもドフラミンゴを拾わなければこんなことには…!!さあ!リサ!!体を見せてごらん!!そして証拠を写真に写し今度こそドフラミンゴを幼児虐待として海軍に売ってやろう!!ついでにコラソンと子供達以外のやつらも売ってやろう!!全員の懸賞金で6人で幸せに暮らそう!!」

「違うよお兄ちゃん、ちょっとドフィと喧嘩しただけ」

「喧嘩だと!?一方的に殴られ『いい加減おれの物になりやがれ!!』と組み伏せられリサの愛らしい体を隠している唯一の布を引き裂き―――」

「ねえ、お兄ちゃんは何飲む?」

「え゙」


男はまた暴走し、勘違いを正そうとしたリサだったが、更に拗れてしまい早くも諦め放置した。
少年少女に聞かせられない単語を並べそうになる男をよそにもう無視を決めつけているリサは未だ手を繋いでいるローへ振り返る。
ローはまだ男の勘違いのマシンガントークに慣れていないため、リサの切り替えの早さについていけず戸惑った。
それに天敵とも言えるコラソンがいるのだ。
コラソンばかりに気を向けていたのもありローはすぐには返事を返さなかった。


「飲み物。何でもあるよ?」

「……いらない」

「ふーん……ジョニー!ココアふたつー!」

「…………」


チラチラとコラソンを見ながらローは首を振った。
リサはいらないと言うローに納得した声を零したが、まったく納得しておらず、ローの分のココアをどこかに向かって頼む。
この時、ローは『こいつも人の話し聞かねェなオイ』とか思い、そして男との血の繋がりを感じた。


「じゃ、お兄ちゃんはコラさんの膝の上ね」

「はあ!?ふざけんな!なんでおれがあいつの膝の上なんかに乗らなきゃならねえんだよ!!」

「だってここ座る場所二つしかないんだもん」

「だったらおれはもう帰る!っていうか好き好んでここにいるわけじゃねえしなんでおれがいつまでもここにいなきゃならねえんだよ!」

「―――えっ!?やっぱり君ドフラミンゴに無理矢理攫われて…っ!?」

「そういう意味じゃねェ!!」


まだ2人は突っ立ったままだった。
この部屋には座る場所が二つしかなく、その貴重な椅子は大人が占領しており座る場所はその大人の膝の上しかない。
子供だから膝の上に乗っても可笑しくはない。
だが、だからと言ってなぜ子供嫌いでローの天敵と言っても過言ではないコラソンの膝の上なのか…ローはリサに小一時間問い質したい気持ちだった。
更には『好き好んでここにいるわけじゃねえ』というローの言葉にまだ暴走していた男はハッとさせまた斜め横へ勘違いを始め、ローは勢いのまま突っ込んだ。
何をしても嫌だ嫌だと零すローにリサは大人のように大きなため息をつく。


「お兄ちゃん、リサより年上なのに我儘…」

「おま…っ」

「しょうがないなァ…お兄ちゃんには特別にリサのお兄ちゃんのお膝を貸してあげる!そんでリサはコラさんのお膝!」

「だから!おれは帰るって言って…」

「メアリー!」

「ゴフ!」

「…っ!?」


腰に手を当て溜息をつくリサにローはイラァっときてていた。
馬鹿馬鹿しいと言い扉へ向かって歩いたが、リサがメアリーという名を口にした瞬間自分の体が宙に浮いた。
ハッとさせ後ろを振り向くとそこには白いモフモフがいた。


「な、なんだこれ…ッ!!」

「メアリー。」

「名前じゃねえよ!!こいつ…ウサギか!?」


そのモフモフのシルエットはウサギだった。
だが、メアリーと呼ばれたウサギもどきは長身で、最低でも大人の背丈ほどある。
普通のローが知っているウサギは小さく子供の腕の中ならでかく見えるだろうが、ここまでではない。
何より…


「っていうかゴフってこいつが言ったのか!?それウサギの鳴き声か!?あと何でウサギが二本足で立ってて化粧してんだよ!!っていうか化粧濃いな!!」


メアリーと呼ばれたウサギは二本足で立っていた。
更にメアリーは化粧をしていた。
真っ赤な口紅に頬にはほんのりとオレンジ色の頬紅に青のアイシャドー。
子供から見ても厚化粧を施していた。
そこに突っ込み兼指摘すればリサは意外にもキョトンとしていた。


「だって、メアリーお兄ちゃんのウサギだし」

「はあ…?」


リサの顔は『何変な事聞いてるの?』だった。
いや、こっちの方がその顔したいんだけど?、とローは思う。
そんなローなどよそにリサは小さい5本の指を立てる。


「メアリーだけじゃないよ。ジェニファーもそうだし、他にはジョニーにサイモンにハーヴェイに…」

「待て待て待て!ちょっと待て!どういう事だ…?こんな化けもんがまだいるのか!?」


5本の指を1つずつ折りながら名前を口にするリサにローは待ったをかけた。
待ったをかけられたリサはムッとさせ、メアリー達を化け物呼ばわりするローを睨む。
しかしお互い肝の据わり方が大人顔負けのため怖くはない。
すると小さな声で『ごふ』とまたメアリーと似た声を聞きローは声のした方へと目をやった。
そこには奥にある部屋の壁から身体を半分覗かせるメアリーと同じウサギが立っていた。
そのウサギの姿にローはビクッと肩を揺らす。
そのローの反応にリサもそのウサギに気づき振り返ったリサは『あ、あれはジョニーね』と指差し、ローはもう突っ込む気力を失っている。

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