リサの声にジョニーが出てきたが、その手にはお盆が置かれ、4つの飲み物が乗っていた。
メアリーはひとまず話も終わったと判断したのか持ち上げているローをそのまま男の膝へとおろす。
被害妄想から帰ってきていた男は膝の上に乗るローに『ようこそ〜』と呑気に零し、疲れ果てているローの頭を優しくと撫でる。
その手にローは我に返り振り返ると男はローと目と目が合い笑った。
その笑みがとても暖かくて優しくて、ローは恥ずかしくなりぱっと前を向き直す。
そんなローに男は笑みを深め、ローの腹辺りで手を組みローが落ちないようにする。
リサはローがメアリーによって兄の膝の上に乗ったのを見ると自分もコラソンの膝の上に乗ろうとする。
「ちょっとコラさん、足組まないでよ!リサ乗れない!」
『乗るな』
「乗るの!じゃなきゃリサ、床で座る事になるじゃん!寒いじゃん!冷たいじゃん!一人だけとか寂しいじゃん!!」
『…………』
コラソンは足を組んでおり、子供が乗る場所はない。
それに抗議すればいつも通りの文字の反論が出、リサはムスッとする。
頬を膨らませるリサにコラソンは無言の抵抗を貫こうとしたが、結局折れてしまい大人しく組んでいた足を解く。
それを見てリサはコラソンの足の上に登る。
「…………」
コラソンとリサのやり取りを見てローは目を丸くさせた。
コラソンは子供嫌いで何度もベビー5やバッファローやローに殴ったり蹴ったり投げ飛ばしたりしていた。
それなのにリサには手を出すどころかいう事を聞いていたのだ。
ローは今までのコラソンを見ていたため驚きが大きかった。
「驚いたかい?」
「…!」
ジョニーと呼ばれたウサギがココアを2つ子供の前に置き、もう2つをコラソンと男の前に置き、男とコラソンの飲み終わったコップを片づけまた奥の部屋へと引っ込んだ。
どうやら奥の部屋はキッチンらしい。
男はジョニーにお礼を言い見送った後、コラソンとコラソンを背もたれに座り更に自分の膝の上にも乗って来たジェニファーと呼ばれていたウサギを撫でながら美味しそうにココアを堪能するリサを見つめているローを見て、ふ、と笑みを浮かべた。
ローは降って来た男の言葉に弾かれたように顔を上げ、目を真ん丸にしたまま男を見上げた。
「リサはね、似ているらしいんだ」
「似てる?誰に…」
「ドフラミンゴと、コラソンの妹に」
「…!」
男の言葉にローは怪訝とさせた。
突然語られてしまい子供のローは首を傾げてしまう。
だが何を話しているくらいは分かっていた。
男の言葉にローはまた驚いた表情を浮かべる。
男はローの疑問を知っていた。
ローはどうして子供嫌いなコラソンがリサに甘いのか分からなかったのだ。
驚くローをよそに男は続ける。
「名前は"アレシア"って言うらしいよ…小さい頃に死んじゃったんだって…リサはそのアレシアって子に似てるらしいんだ」
そう説明する男の表情はとても切なそうだった。
その顔の理由はまだローには分からず、ローは話が聞こえていないのかココアを飲むリサとそっぽを向き紅茶を飲むコラソンを見た。
リサは幸せそうにココアを飲み、コラソンは渋々と装ってはいるようだがその表情はローから見たら満更でもなさそうだった。
妹に似ているなら…と納得したローに男は今度は明るい声で話題を変える。
「で、ぼくの名前覚えてる?」
「さあ」
「さあって…この間教えたじゃないか」
「興味ないし…」
「君は素直な子だなぁ…いい意味でも悪い意味でも…」
暗い話は終わり、と言わんばかりに話題を変える男にローは首を傾げた。
確かにこの間怪我の治療をしてくれた時に教えてもらったが、正直一々覚えていられるほどローはのんびりと生きてはいない。
ローは生き急いでいたのだ。
すでに幼くて3年の寿命の彼は時間はないのだ。
一々人の名前を覚えているほど余裕はない。
フイっと顔を逸らすローに男はそれを察したのか責めはせず腹の前に組まれている腕の力を強める。
抱きしめる力が強まりローは逸らしていた顔を男へ見上げた。
「ぼくは"エイルマー"っていうんだ。んで、コラソンの膝の上に乗っているのが妹のリサ。」
改めて自己紹介をする男…エイルマーはついでに妹のリサも紹介した。
妹の方は自分でも紹介したため否応なしに何度も連呼されれば自然と覚えてしまう。
無言を返すローにエイルマーは何も言わずにこりと笑う。
ローはココアを飲んでいるリサをジッと見つめていたが、突然膝の上がモコモコとなり本日何度目かの驚いた表情を浮かべた。
腹の前に回されている腕もモコモコとした感触になり、ローはエイルマーの腕を見た。
「…!?」
エイルマーの腕は人の肌ではなく、何故か白いモフモフしたもの…そう、兎のような毛が生えていた。
決して人の腕には生えない量の白い毛が生えローはギョッとさせエイルマーを見る。
エイルマーを見上げたローだがまたまた驚く事になる。
エイルマーの顔は人間ではなくウサギになっていたのだ。
だがジョニーやメアリーとは違い、彼の性格が滲みている優しい顔をしていた。
「これ、ぼくの能力なんだ」
「の、のうりょく…?」
「お兄ちゃん、ウサウサの実の能力者なんだって」
「うさうさのみ…」
「そ。ウサギ人間」
どうやら先ほどのウサギも、目の前でウサギとなったエイルマーも、悪魔の実の能力らしい。
この世の中、能力者自体珍しくはない。
ドフラミンゴもイトイトの実の能力者だし、幹部たちも同じく能力者だ。
だがウサウサの実という愛らしい実を男のエイルマーが食べた事が何か似合わない気がしてならず、ローは思わず『似合わねェ』と漏らしてしまう。
そう本音を漏らすローにエイルマーは『自分でも思ってるよ』と零し、リサを見る。
エイルマーに釣られローもリサを見つめ、2人の視線にリサは小首を傾げた。
そんなリサにエイルマーは能力を解除しながら愛しげに見つめる。
「こういう可愛い能力はリサみたいな子が食べるべきなんだけどね…ま、悪魔の実は何の能力になるかは食べてみないと分からないから仕方ないけど」
「えっ…リサ、カナヅチになりたくないから遠慮する。船が沈没したら一貫の終わりじゃん!」
「リサがカナヅチになったらきっとドフラミンゴが今まで以上に放さないと思うからまずは落ちないんじゃない?」
「うげ…今も放してくれないのにもっと放してくれないとか…最悪…」
リサは兄の言葉に無言で返した。
最近過保護となっているドフラミンゴに対して窮屈さを感じてはいるが、ドフラミンゴに懐いているリサは若干、悪い気はしないのだろう。
心底嫌そうではなく若干嬉しそうにしながらココアを黙って飲む妹を見つめ、エイルマーは少し悲し気に目を細める。
ドフラミンゴは必ずと言っていいほどリサを傍にいさせたがり、それが原因でエイルマーとドフラミンゴの仲はよろしくないのだろうとローは考えていた。
エイルマーという男は気が弱そうだと思うほど優しげな顔をしているが、どうやら中身も真逆のようで、あのドフラミンゴに嫌みを言うほど気が強い。
ドフラミンゴは見下されることを嫌い、本来ならエイルマーのような人間は早々に殺されても可笑しくはない。
だが、ドフラミンゴはどういうわけか、強気のエイルマーを殺すこともなければ折檻することもなかった。
それには子供ながらに不思議に思うが…エイルマーと一緒にいると少しだけ納得してしまう。
エイルマーのあのマシンガントークに付き合っていれば、誰だって相手にするのが面倒になるのだろう。
エイルマーは表向きとはいえ妹のげんなりした顔を見て紅茶を飲みながら『ドフラミンゴm9(^Д^) プギャー』と思っていたりもする。
エイルマーがドフラミンゴを心の中で嘲笑っていると、突然扉が蹴り破られる。
「リサはここか!!!」
入ってきたのは話題の人――…ドフラミンゴだった。
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