(12 / 20) 過去 (12)

とてとてとリサは歩き慣れた長い廊下を歩いていた。
先ほどまでドフラミンゴに構い倒されていたリサは若干疲れたが、幹部に呼ばれたドフラミンゴの隙をつきリサは脱走した。
行き先はやはり兄のところだったが、つい最近は目的が違っていた。


「ロー、いる?」


扉を開け顔をのぞき込みながらリサは目的の人の名を読んだ。
ローは最近、ドンキホーテファミリーに正式に入る事になり、会う機会も増えた。
ローは正式にファミリーとなり、ドフラミンゴ達と一緒に海賊稼業をしながら幹部達に鍛えてもらう日々の中、エイルマーに医術も教えてもらっていた。
医者の家庭から幼いころから医療を習っていたと聞いたエイルマーが、このまま忘れてしまうのは勿体ないからとドフラミンゴの許可を貰いローに勉強を教えているのだ。
だからローは大半エイルマーの医務室や部屋にいる。
そのローを求め、リサは逃走した後は医務室か、自分達の部屋へと向かう事が多い。
この時間は医務室にいることが多いため、リサはまずは医務室に向かう。


「やあ、リサ。今日もドフラミンゴを撒いて来たのかい?」

「うん。だって最近のドフィってばずっと放してくれないんだもん。リサ、鬱陶しいから逃げてきた」

「おやそれは災難だったね…まあリサは可愛いからドフラミンゴのように犯罪に足を突っ込んでいても驚きはしないさ…例え幼女趣味だとしてもぼくは医者としてドフラミンゴを否定しないよ!頑張れドフラミンゴ!ぼくはキミが目を覚まし普通に大人の女性を愛することを応援しているよ!!」

「お兄ちゃん、それ、ドフィを否定してるよね」

「ふー…やれやれ分かっていないなぁ、妹よ…これは否定じゃないさ。社会不適合者を真人間にしようとしているだけだよ」

「「それを否定してるっていうんだ(よ)(ぞ)」」


扉を開けて顔を覗き込めばやはりローは医務室で兄に勉強を教えてもらっていた。
机には高々と積み上げられている医療関係の厚みのある本に、医療器具が散らばっている。
今はおさらいとして小テストをしているようで、生懸命問題を解いているローの姿にリサは部屋に入る。
今の時間はドフラミンゴにリサを預けているが、リサの言う通り、最近ドフラミンゴのリサへの拘束が強まっていると感じていたエイルマーはリサがここに来たことには驚きはなかったし、拘束が強まった理由もわかっているためそれも驚きはない。
そして、最近、エイルマーの中ではあれから勘違いを固定しているようでドフラミンゴ=ロリコンとなってしまった。
それを毎回リサを回収に来たドフラミンゴが訂正しても『はいはい分かってるよ』と言いつつ分かっていなかった。
否定していないと言いつつも否定しているような事を言う兄にリサは小首を傾げたが、そんな妹にエイルマーは首を振って溜息をつき決してドフラミンゴを否定していないというが、今度は妹とローのダブル突っ込みが返ってきた。


「で、終わった?」

「あと一問だからそこで大人しく待ってろ。すぐに終わる」

「うん」


ローの言葉にリサは頷き椅子に座る。
医務室にもキッチンがあり、リサが座るとすかさずジョニーが歩み寄り、リサはすぐに終わるというローの言葉にお茶だけにした。
部屋に置いてあるお気に入りの絵本、『うそつきノーランド』をジョニーに持ってきてもらいリサは暇つぶしに読むのが、最近の日課となっている。
どうもローと仲がよくなったのと同時に絵本を読む回数も減っているようで、こうしてローを待って暇つぶしをする時しか読まなくなった。
それをエイルマーは良い兆候だと思う。
今までベビー5などの同じ子供もいたが、どうもあの子たちはリサとの壁があった。
それはリサがドフラミンゴの妹のような存在だからというのもあったのだろう。
そのせいでリサは長く友達ができず、やっとローと出会いリサは友達と遊ぶ楽しさを覚えた。
お茶を頼まれたジョニーは絵本を渡した後『ゴフ』と図太い声で返事した後奥にあるキッチンに向かいエイルマーはリサを優しい兄の目で見つめていた。
リサはジョニーにお礼を言って絵本へ目をやろうとした際、ふとリサの視界に見慣れた影が写り、リサはその影へ目を移した。


「あれ、またいるの?コラさん」

『逃げてきた』

「逃げてきた?誰から?」

『ドフィ』

「ああ…またドジったんだ…」

『………』

「無言は肯定だからね。」

『…………』


影とは、コラソンだった。
コラソンとリサの兄エイルマーは何故か友情を結んでいる。
どうしてそうなった、と最初リサは思ったが、まあ上手くやっているようなら、と流してもいた。
ドンキホーテファミリーの中でもコラソンはリサと同じく特別な存在だった。
リサと同じくドフラミンゴは弟のコラソンには甘い。
コラソンとリサに傷一つ付けた者はドフラミンゴ直々に死を与えるという規律があるほどドフラミンゴは2人を溺愛していた。
だからドフラミンゴはリサの兄のエイルマーに手を出すことが出来ない。
ドフラミンゴとエイルマーは真逆な存在で、お互い殺したいほど気に入らない存在である。
しかしドフラミンゴはエイルマーを友と呼び入り浸る弟に、純粋に兄と慕うリサに恨まれたくないため手が出ないのだ。
そして、友情を結んだのはコラソンとエイルマーだけではない。
リサとローも、あれ以来友と言う間柄になった。
エイルマーは船医としてドフラミンゴが出るときは船に乗っているためリサも外には出ている。
戦闘も隠れても見つかれば応戦できる程度の教育はされているため、強くはないが、弱くはない。
今の所特訓をし始めたばかりのローよりは強いだろう。
コラソンはドジっ子という萌え…ゴホン、何とも情けない体質を持っておりよくドフラミンゴに叱られそうになったり叱られれば友のエイルマーの元に飛び込んできていた。
それは兄がエイルマーを毛嫌いしているのが分かっているからこその避難所だった。
無言を貫くコラソンにリサは肩を竦め、持ってきてもらったお茶を口に含み飲む。


『…………』


その姿にコラソンは妹のアレシアを重ねた。
兄ほどではないが、コラソンも妹にそっくりなリサをどうしてもアレシアと錯覚してしまう時があった。
リサとアレシアは本当に似ている。
瓜二つで、アレシアが生きていて2人が並べばきっと双子と言っても通じるくらいだろう。
髪質、顔立ち、唇の形、肌の質感、体つき、表情、声、言葉、行動、仕草、思考…髪と目の色以外の全部がアレシアとそっくりだったのだ。
だからアレシアだと言ってリサを連れてきた兄にコラソンは帰してこいとは言えなかった。
コラソンも妹を…家族を失った傷は癒えていないのだ。


『リサ』

「なぁに」


声が出ないコラソンの声かけにリサは気づき顔を上げた。
顔を上げるとコラソンはリサの名前が書かれている紙を机に置き、腕を広げる。


「…………」


それはコラソンがリサを抱きしめたいときの仕草だった。
手を広げるコラソンにリサはコトリとコップを置き、トトト、とコラソンの元に歩み寄りいつものようにコラソンの膝の上に乗る。
ちょこんと座るリサをコラソンは壊れないようにギュッと抱きしめた。


(………アレシア…)


思い出の中のアレシアのままのリサ。
それはアレシアが死んだときの年齢と、今のリサの年齢がほぼ同じだという事である。


「…………」


コラソンとリサのやり取りをエイルマーは黙って見ていた。
リサの小さな体をギュッと抱きしめるコラソンは顔は見れないが、どんな心境かなどエイルマーには簡単に汲み取る事が出来た。
エイルマーもコラソンの心境を察してか、その表情は曇り、悲しげだった。


「終わったぞ…ってコラソン!てめェリサを放せ!!」


そんな大人達の想いに気づかない2人の子供のうち一人であるローはエイルマーが出したテストを終え、それをリサに教えようと振り返ると目の前の光景に声を上げた。
振り返るとコラソンとリサが抱き合っていたのだ。
正確に言えばコラソンがリサに抱き付いているのだが…それでもローにとっては同じである。
ローはコラソンの所へ駆け寄り素早い動きでリサの手の取ってコラソンから放す。


「もう行くぞ!リサ!!」

「でも…」


そんなローの反応にエイルマーは『おや』と少しだけ目を見張った。

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