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「秘密?」


リサはロー、ベビー5、バッファローと遊んでいた。
だが、ベビー5とバッファローは幹部達に呼ばれ、残りはローとリサだけとなる。
リサは遊びもそこそこに何となく歩いていると海が見える場所につき、リサとローはベンチに座り海や前を通る人に目をやっていた。
何気ない会話をちらほらとしていると、ローは不意にリサの言葉にキョトンとする。
リサは思い出したようにローに『あのね、リサ、秘密があるんだ』と零したのだ。


「そうだよ、秘密!ローになら教えてもいいかなって思って!」

「どんな秘密なんだ?」

「あのね…」


秘密、と言われ、首を傾げるローにリサは誰にも聞こえないようにローの耳元へ顔を近づけ手で壁を作る。
突然無意識とはいえ好きな女の子が近づいてきてローは驚き思わず後ろへ下がろうとするが、それよりもリサが近づくのが早くローは近いリサにドキドキと胸を高まらせた。




「リサの本当の名前ね、―――アスカっていうの」




しかし、リサの言葉にその胸の高まりは収まっていく。
驚いたのだろう。
リサの秘密とは名前の事だった。
リサは偽名で、『アスカ』という名前が本名だという。
それを聞いてローはどう反応したらいいのか分からなかった。
まだ子供なのだから仕方ないだろう。
ずっとリサは『リサ』と紹介されたし、周りもリサの兄さえも『リサ』と呼んでいたから、当たり前だがローはリサと言う名前が本名だと思っていた。
だがそれは偽名だという。
唖然とし目を真ん丸にして自分を見つめるローにリサは悪戯が成功したようにクスクスと楽しそうに笑みを零しながらローから離れる。


「これ、絶対内緒だよ?お兄ちゃんがね、誰にも言っちゃ駄目って言ってたから」

「…誰にもって…ドフラミンゴもか?」


『でも、ローには教えたいなって思って』、と零すリサにローは何故か心が温かくなった。
どうしてかはまだ幼い彼には分からないが、嫌な気分ではない。
誰にも、という言葉にまず頭に浮かんだのはドフラミンゴの姿。
それを問えばリサは考える間もなく頷いた。


「あのね、リサがリサって名乗るのはリサのためだってお兄ちゃん言ってたの」

「リサのためって?」

「んー…わかんない…でもお兄ちゃんが絶対本当の名前はドフィやディアマンテ達に言っちゃダメって言ってた…ベビー5達にもって…」

「あいつらにもって…じゃあおれが聞いちゃって大丈夫なのか?」

「うん!だってリサ、もっとローとお友達になりたいから!」

「……ッ」


まだ子供のローには何故あんなに優しいエイルマーがそんな事を言うのか分からなかった。
確かに、ローから見てもドフラミンゴとエイルマーの仲は良くはないと見れたが。
ベビー5やバッファロー達にも本当の名前を教えてはいけないその秘密をリサからとは言え知った事にローは不安そうにリサを見つめる。
しかしリサの言葉にローの胸は高鳴った。
リサの『もっとお友達になりたい』という意味はローの気持ちとは違うと分かっていながらも、ローはやはり好きな子の言葉に嬉しくなってしまう。
だから、ローも思わず言ってしまったのだろう。


「おれも…実は本名があるんだ…」

「えっ!本当!?リサとお揃いだ!」


ローもリサと同じく名前を隠していた。
と言ってもローという名前は同じなのだが、両親にはリサのように『人には言ってはいけないよ』と言われ、ずっと隠していた名前だった。
リサはローも名前を隠していた事に驚きと同じだったことへの喜びで目を丸くした後喜んだ。
『教えて!』と嬉しそうにローへ近づくリサにローは頬を染め、直視できないため目を逸らしながら口を開く。


「トラファルガー・D・ワーテル・ローって言うんだ…」


ロー曰く、『D』は隠し名であり、『ワーテル』とは忌み名だという。
まだその意味が分からないリサは『へー』としか返せないが、ローと秘密の共有して嬉しいのか笑みが絶えなかった。


「じゃあ!約束!リサね、絶対ローの名前誰にも言わないよ!」

「ああ、おれもリサの名前を絶対誰にも言わない。」

「ふふっ!ローとリサだけの秘密だね!」


忌み名や隠し名がどれほどの意味を持つのか、そしてなぜ自分は誰にも本名を言ってはいけないのか…リサには分からなかったが、ローとの秘密を共有できて嬉しくてたまらなかった。
小指を立ててローへ向け、その小指にローも自分の小指を絡ませる。
約束をしてローもリサも他の誰も知らないお互いの秘密を共有し、絆が深まった気がし、ローはドフラミンゴも知らないリサの秘密を知り、ドフラミンゴよりも一歩先を進んだことに優越感を感じていた。
しかし…


「!―――わッ」

「コラさん!?」


ローもリサも笑い合っていると後ろからローが誰かに掴まれ連れていかれてしまった。
リサは目の前から消えるように浮き上がったローに慌てて顔をあげれば、そこにはドフラミンゴの弟であるコラソンがいた。
コラソンは放せと喚くローを無視し、首根っこを掴んだままツカツカとどこかへ消えてしまった。


「え…えええ!?コラさんがローを誘拐した〜〜!!?お、おにいちゃーーんっ!!!」


コラソンは確かに子供嫌いで、窓から子供を放り出すことも多々ある。
だがローのように連れていくことはなかった。
リサはコラソンの行動に呆然としていたが、ハッと我に返り声を上げながら兄の元へと駆けていった。

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