それからついに一週間が経ち、ついにエース処刑の日となった。
舞台は海軍本部があるマリンフォードという島。
その島の住人をシャボンディ諸島に避難させ、三日月型の湾頭及び島全体を軍艦で囲み、地上戦では世界各地より招集された海兵たち、10万もの兵力が戦争に備え待ち構えていた。
その中には海賊である七武海もの姿があり、黒ひげとジンベエを除く全ての七武海が揃っていた。
そして処刑台守るように並ぶのは海軍大将―――『青雉』、『赤犬』、『黄猿』…そして『黒蝶』の最高戦力。
4つのイスにそれぞれ大将が並んで座っていた。
4大将がこうしてメディアの前で揃うのも珍しく、最高戦力が並ぶその光景は圧倒されるもので、シャボンディ諸島に繋いでいる中継で見ていた人達がモニター越しでもその4人の大将にゴクリと喉を鳴らしていた。
「クザンさん」
「ん?」
クザンは正直ミコトは来ないと思っていた。
覚悟があるかないかとは別に弟を想う気持ちが強い子だからどっちつかずで来ないのかと。
でもミコトは現れたのだ。
いつもの姿とは違い、長く靡く髪を高い位置で一つに結び、動きやすさを重視し長いスーツズボンを着用していた。
一番遅く来たが、それでもミコトは海兵としての道を選んだ。
あのやり取りで一応クザンも気まずいとは思っているのか普段ならわきあいあいと二人は会話に花を咲かせているのに、今日はどちらも目も合わさない状況に少なくとも赤犬や黄猿は違和感を感じた。
しかしその雰囲気から二人はあえて触れることはせず、またいつもの通りいつのまにか仲直りしているだろう程度として考えていた。
クザンと赤犬に挟まれたところに黒蝶の席があり、赤犬の前を通り席に着いたミコトはクザンに声をかける。
クザンがミコトを横目で見ればミコトはまっすぐ前を見据えていた。
しかしその表情は何かを決意した者の顔をしていた。
「…ありがとうございます」
ミコトは前を見据えながらクザンに一言だけ伝える。
小声で言おうが近い距離で座っている赤犬や黄猿にも聞こえたが、二人は何に対してのお礼なのか分からないが、クザンには勿論伝わっている。
「どういたしまして」
クザンはミコトのお礼にニッと笑って答えた。
その返しにミコトはフッと笑みを浮かべる。
―――その瞬間、センゴクが動き出す。
「緊張を解くな!!何が起きてもあと3時間!そこで全てが終わる!!」
海兵の言葉に辺りは一段と緊張が張り詰め、それを肌で感じながらミコトは下にいる海兵たちに目線を落とす。
ミコトの目線の先には世界各地より召集された名のある海兵達、約10万人立ち並んでいた。
そしてその最前列に構えるのは5人の海賊、"王下七武海"。
クロコダイルが居ないのは残念だが、彼はもうすぐ現れると分かっているのでミコトは期待を胸に待つことにする。
ミコトは覚悟を決めたのだ。
―――弟を見殺しにする覚悟を。
ミコトは弟よりも祖父を…海軍大将の立場を取ったのだ。
知識が途中まで止まっているため下手に裏切るよりも賭けに出ることにした。
実弟…ルフィが勝つことを。
自分は海兵を選んだ…そしてエースは海賊としての道を選んだ。
…それがミコトが出した答えである。
賭けに負けて結果がどんな事になろうとミコトは決して目を逸らさず受け入れる覚悟を決めた。
それが弟を見殺しにすることになろうとも…ミコトは前を向こうと決意する。
覚悟さえ決めてしまえばミコトはあとは流れに乗るだけ。
まっすぐと前を向き合うミコトをよそにセンゴクが動き出す。
「いいなガープ…全て伝える」
「勝手にせい…わしゃ下におるぞ…」
センゴクが処刑台へ上がり、海兵から電伝虫を受け取る。
≪諸君らに話しておく事がある…ポ−トガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ………!≫
「…………」
センゴクの言葉に海兵たちの誰もが首をかしげ、ミコトはセンゴクが何を言おうとしているのか察したのか足を組むだけだった。
≪エース…お前の父親の名を言ってみろ!≫
「…………おれのオヤジは"白ひげ"だ!」
「違う!!」
「違わねェ!!!白ひげだけだ!他にはいねェ!!!」
エースの声はミコトのところにも届くがミコトは反応せずただ聞いていた。
父親は白ひげだと言うエースにセンゴクが代わりに応える。
≪当時我々は目を皿にして必死に探したのだ…ある島にあの男の子供がいるかも知れない"サイファーポール"の微かな情報と、その可能性だけを頼りに生まれたての子供、生まれて来る子供…そして母親を隈なく調べたが見つからない……それもそのハズ…お前の出生には母親が命を懸けた母の意地ともいえるトリックがあったのだ……!!それは我々の目を………いや…世界の目を欺いた!"南の海"にバテリラという島がある…母親の名はポートガス・D・ルージュ……女は我々の頭にある常識を遥かに越えて子を想う一心で実に20ヵ月もの間子を腹に宿していたのだ!そしてお前を産むと同時に力尽き果てその場で命を落とした父親の死から一年と3ヵ月を経て…世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供…それがお前だ……知らんわけではあるまい…!!お前の父親は!!"海賊王"ゴールド・ロジャーだ!!!!≫
「!!!?」
「……………!!」
センゴクの言葉に海兵達は目を丸くしどよめく。
同様が広がる中、ミコトを含めた大将達は顔をピクリとも動かず動じていない。
エースをロジャーから預かったガープは拳を握り、エースは知られたくなかった真実に耐えるように目を閉じる。
≪2年前か………お前が母親の名を名乗り…『スペード海賊団』の船長として卓抜した力と速度でこの海を駆け上がっていった時…我々はようやく気づいたのだ…ロジャーの血が絶えていなかった事に!!…だが我々と時を同じくしてそれに気づいた"白ひげ"はお前を次の"海賊王"に育て上げるべくかつてのライバルの息子を自分の船にのせた…!!≫
「違う!!おれがオヤジを"海賊王"にする為にあの船に…」
「そう思ってるのはお前だけだ…現に我々がウカツに手を出せなくなったお前ば白ひげ゙に守られていたんだ!!」
「……………!!」
≪そして放置すれば必ず海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮し始める!!だからこそ今日ここでお前の首を取る事には大きな意味がある!たとえ"白ひげ"との全面戦争になろうともだ!!!!≫
「ウオオオオオオオオオオオ!!!!!」
センゴクの言葉に海兵達は雄たけびを上げる。
その雄たけびに体を響かせながらミコトは士気があがる様をただ冷静に見つめていた。
するとある海兵が慌てた様子でセンゴクに駆け寄ってくる。
「センゴク元帥!報告します!」
「!?」
「『正義の門』が誰の指示もなく開いています!!動力室とは連絡もつかず…!!!」
「何だと!!?」
その報告を聞いたミコトはピクリと片眉を上げるもそれに気付かれないように表情を戻す。
すると目の前から数え切れないほどの海賊船が突然現れた。
「来たぞォーーーーー!!!全員戦闘態勢!!」
「突如現れたぞ…一体どこから!!?」
驚きが隠せないセンゴクの目の前には白ひげの傘下である海賊達が不敵な笑みを浮かべながらこちらを睨みつけていた。
「"白ひげ"はどこだ!?確認を!!」
「"游騎士ドーマ" "雷卿マクガイ" "ディカルバン兄弟"…"大渦蜘蛛スクアード"………!!そうそうたる面々…!いずれも"新世界"に名の轟く船長ばかり!!総勢43隻!""白ひげ"と隊長達の姿はありません!!!しかし間違いなく"白ひげ"の傘下の海賊達です!!!」
「…お前らまで…!!」
エースは自分を助けに来た海賊たちを見て唖然とする。
ミコトは錚々たる顔ぶれの海賊達に面白くなりそうだと目を細め口角を上げる。
「攻撃しますか!?」
「まだ待て!"白ひげ"は必ず近くにいる!!何かを狙ってるハズだ!海上に目を配れ!!!」
エースを助け出そうとする海賊達の士気は高いが、こちらとて負けてはいない。
両者の士気が高まり雄たけびを上げている中、ミコトの耳に海から空気が上がってくる音を聞き、音のする方へ目をやる。
「まさか……!!」
「こりゃあとんでもねェ場所に現れやしねェか…!?」
「布陣を間違えたかねェ」
周りはざわめきだし、ミコトは三日月型形の湾頭を見つめる。
そこにはミコトが予想した通りの影が現れ、それは徐々に大きくなっていく。
「そうだったのか!あいつら全船…!!コーティング船で海底を進んでたのか………!!!」
センゴクが気付くも遅く、白ひげが乗る"モビーディック号"が海の中から現れた。
「うわァアアアア!!"モビーディック号"が来たァ〜〜〜!!!!!」
「次いで3隻の白ひげ海賊団の船!!湾内に侵入されました!!15人の隊長達もいます!!!」
「"白ひげ"……!!」
「グララララ…何十年ぶりだ?センゴク…」
「………」
「おれの愛する息子は無事なんだろうな……!!!」
白ひげの登場にセンゴクは拳をにぎり、エースは目を丸くする。
エースの姿を肉眼で確認した白ひげは目を細めた。
「グラララララ……!!ちょっと待ってな……エース!」
「オヤジィ!!!」
ミコトは白ひげの登場に笑みを深め、これからくるであろう殺し合いにゾクリと興奮させた。
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