デザートを平らげ女性陣のみが無料となりお腹いっぱいになったアスカ達は船長を置いて船へと戻った。
どっちにしろ船長が動けない今、どう焦ったって船は進めず仕方なくレストランの近くで船をつけて過ごすしか他にない。
そして、レストランに船長が雑用として留まって二日後…事件は起こった。
―――海賊が現れたのだ。
それも賞金首1700万ベリーの"首領・クリーク"が。
名のある海賊の船の登場に、レストランの中も、そしてメリー号の中も騒然としていた。
「おいっ!やべェぞ!!逃げた方がよくねェか!?」
「アニキ〜〜!!船を出してくれ!!おれ達ァ死にたくねェよ!!」
ウソップとジョニーとヨサクが焦り、ナミも聞いたことのある極悪な海賊船の登場に身を隠れる。
アスカとゾロはただその海賊船を見上げるだけでウソップ達の言う通り逃げようとはしない。
アスカは騒ぐ三人をよそに海賊船を見上げ怪訝とさせる。
「でも…ねェ…あれ、おかしくない?」
「あぁ……あの船ボロボロだぜ…」
首領・クリークの船はメリー号に比べると、そしてメリー号より大きな海上レストランに比べるとはるかに大きかった。
それを見上げるだけで圧巻されそうだが…その船は素人目に見えも明らかにボロボロで、帆船など全て破けているが、その多くが役に立たないほどビリビリに破けていた。
まだ海の恐ろしさを知らないアスカからしたら不思議でならず、しばらく様子を見ていたアスカだが、流石にルフィが心配になりゾロに声をかける。
「行く?」
「そうだな」
「え、ちょ…ど、何処に行くんだよ!?」
「「あいつ(ルフィ)のとこ」」
「えーーー!!?」
ウソップに聞かれアスカとゾロは同時にウソップに振り返り、言葉を重ねた。
無情にも敵陣へと向かおうとする2人にウソップは絶句してしまう。
「ちょっと待て!海賊王になるのはおれだ!!」
中に入ればルフィはクリークの前に出て宣戦布告らしきものを言っていた。
クリークはグランドラインを渡ろうとしたが、無残にも戻ってきたらしい。
何が起こったのか、アスカには分からないが船はあんなにもボロボロとなり、食べ物も空となり餓死者が出るほど追い詰められた。
ギンはこのレストランに手を出さないという約束の元、戻ってきたのだが…クリークはその約束を簡単に覆しコックたちに他の部下達にも料理を作れと命じた。
しかし海のコックであるここの料理人たちがそんな簡単に言う事を聞くわけもなく、当然対峙するはめとなった。
客たちはクリークが暴れはじめてから巻き込まれるのが嫌で避難し逃げていった。
そんなコックと海賊達の間に入ったのが、ルフィである。
コック達はどよめきルフィを止めるが、当然ルフィは止まらない。
「遊びじゃねェんだぞ」
「当たり前だ」
ルフィとクリークが睨み合い、ざわめく中、コックでもない数人の声が響く。
「さっきの話聞いてたろ!あのクリークが渡れなかったんだぞ!な?悪いことはいわねェよやめとこうぜあんなとこいくの!」
「うるせェなお前は黙ってろ」
「言っても無駄。船長が行く気だもの」
その聞き覚えのない声に全員が振り返った。
ルフィにとったら聞き覚えのある声が聞こえ、振り返る。
そこには、ゾロ、アスカ、ウソップがテーブルに座っているのが見えた。
「戦闘かよルフィ」
「手、貸そうか?」
「ゾロ・アスカ・ウソップいたのかお前ら。いいよ座ってて」
ゾロ、ウソップ、アスカの順に座っており、ルフィはゾロとアスカの言葉に手出しはしなくていいと言った。
その言葉にアスカは体の力を抜き、ゾロも刀を持ち直す。
ルフィの仲間らしいアスカ達を見てクリークは大きな声で笑いだす。
「そいつらがお前の仲間か!!ずいぶんささやかなメンバーだな!」
「何言ってんだ!!あと2人いる!!」
「おい待て!お前それおれを入れただろ!」
どうやらルフィはあの金髪の男を気に入り、コックにするらしい。
金髪の男は否定していたが、アスカから言わせれば無駄な抵抗である。
大抵の人は仲間になるのを断り続けるが、ルフィの強引さに負けて仲間になるのがオチなのだ。
だからアスカの中ではすでにあの金髪の男が仲間になる事は決定事項でもあった。
クリークは指を二本立てるルフィに笑っていたが、表情を険しくさせ、叫ぶ。
「ナメるな小僧!!情報こそなかったにせよ兵力五千の艦隊がたった七日で壊滅に帰す魔海だぞ!!!」
グラウンドラインを経験したからこその言葉なのだろう。
だが、それを聞いて怖気づいてしまうのならそれまでの器である。
一般人代表とも言えるウソップが怯えるなか、ゾロは『面白そうじゃねェか』と零し、アスカも『へー』という一言のみだった。
「無謀というにもおこがましいわ!!おれはそういう冗談が大嫌いなんだ!このままそう言いはるのならここで待て…この場でおれが殺してやる!!」
そう言ってクリークは髭を三つ編みにしているこのレストランの料理長、ゼフが渡した食料を持って姿を消した。
去り際にクリークは部下にこの食料を渡してすぐに戻ってくると言い、それまでの猶予は与えると言った。
また戻ってくるらしいため安心はできないが、ひとまずクリークが去ったことにほっとする。
コック達が戻ってくるらしいクリークに立ち向かう気満々なのを見て、アスカは隣にいたゾロに聞く。
「ここのコック達って強いの?」
「さあな」
ゾロに聞くも当然首を傾げる答えが返ってきた。
その間もコックたちの会話は進み、取り残されたギンから出た情報にゾロが一番に反応を示す。
グランドラインに行ったと言っていたからあの船の惨状は自然相手だと思った。
自然相手でも確かにあれほどの惨状になるのはなるらしい。
だがクリーク達の船の惨状は自然ではなく…人だった。
その男は"鷹のような目をした男"らしく、ギンは思い出したのか体を震わせていた。
そんなギンの言葉に、料理長のゼフがその男の名を口にした。
その男の名は、"鷹の目"といい、1人だけだが、あの大きな船をボロボロにさせ50隻の船さえも沈ませることのできるほど強いらしい。
"鷹の目"と名を言われても全くピンと来ないアスカは腕を込み首を傾げる。
「鷹の目?…どっかで聞いたことがあるよーな、ないよーな…」
「当たり前だ、鷹の目を知らねェ奴なんてお前らぐらいだろ」
鷹の目、と聞いてもやはりピンとこないアスカの呟きにゾロが零すように呟く。
どうやらゾロの言葉やコック達の反応からして名の知れた者らしい。
首を何度も捻っているとアスカはポンと手を叩く。
「ああ、そういえば…お姉さまが言っていた人か…」
アスカは以前、ルフィの姉であるミコトに聞いた事を思い出す。
まだアスカとルフィが海へ出る少し前…アスカとルフィは知らないがその頃には既にミコトは大将"黒蝶"として地位を手に入れていた。
以前遊びに来ていたミコトに政府の事やこの世界の仕組みを教えてもらっていた事を思い出す。
『グランドラインには大きく分けて3つの勢力があるの…"世界政府"、"王下七武海"、"四皇"よ。…世界政府はわたくしが所属している機関であり説明しなくても分かるわよね?王下七武海は海賊なんだけど、世界政府公認の海賊なの…彼らは世界政府に収穫の何割かを収める代わりに未開の地や同じ海賊の略奪を許されているの…その7人の海賊というのが…ドンキホーテ・ドフラミンゴ、バーソロミュー・くま、鷹の目、クロちゃ…クロコダイル、ボア・ハンコック、ゲッコー・モリア、ジンベエ…この7人よ…もしハンコックっていう女に会ったらブチのめして頂戴』
この世界には、三つの勢力がある。
ミコトが所属している機関の"世界政府"、その世界政府公認の海賊である"王下七武海"、そして強者しかその称号を与えられない"四皇"。
その三つの事を教えてもらい、アスカはその三つのうちの一つの王下七武海の部分だけを思い出す。
あとはミコトに申し訳ないが、アスカはミコトに目が眩んで曖昧で、今だってゾロに言われてやっと思い出したくらいである。
思い出し、ミコトの魅力的なところも再確認していると、音から物凄い大きな雄たけびが聞こえた。
その声で店のガラスが振動しているほどで、コック達は雄たけびによって海賊達が復活したのを察し武器である調理具を握り直す。
――そして、宣言通りクリーク達が攻めてきた。
ミコトを思い出し幸せな一杯な時間を邪魔されたアスカはカチンと来たらしくこちらに乱入してくる海賊を滅多打ちにしようとぐっと拳を握った。
しかし、その瞬間…―――クリークの船が真っ二つに割れ、その場にいた全員が目を丸くさせた。
「ね、ねえ!船にナミ達が…!!」
「そうだ!表の船にナミもヨサクもジョニーも乗ったままだぞ!!」
入口から真っ二つになるクリークの大きな船を見てアスカはナミ達がいたころを思い出しハッとさせる。
アスカの言葉にゾロ達も我に返り、ルフィが真っ先に表てへと向かって走りゾロとウソップ、そしてアスカも続いた。
コック達も騒然としており、ゼフの咄嗟の判断で錨を上げに向かう。
「アニギ〜〜!!」
「ア〜ニギィ〜〜!!」
表へ出れば海の中には何故かヨサクとジョニーがいた。
船にいたはずの2人がなぜ海の中にいるのかは分からないが、しかし、ナミとメリー号の姿が見えないのに気付く。
「ヨサク!!ジョニーッ!!無事か!!船は!?船がないぞ!!ナミはどうした!?」
「それが…ずいばせんアニキ…!!!もうここにはいないんです!!ナミの姉貴は宝全部持って逃げちゃいました!!!」
「「「な!!!!何だとォオオオオ!!!?」」」
「そんな…っ!」
ヨサクとジョニーはナミに投げ飛ばされ、海に落ちたらしい。
『じゃあね!あいつらに言っといて!縁があったらまた会いましょって!』という伝言を4人に知らせ、その伝言とナミに船と宝を奪われたという事態に全員が全員絶句した。
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